大日本帝国召喚1941:Re   作:久里浜燐

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弐話 旧世界より

大日本帝国。極東に存在"していた"列強国がこの新世界に転移してから早4カ月が経とうとしていた。

しかし、大日本帝国を取り巻く環境は好転していた。

経済の伸び率は今までに無いほどであり、同盟国となったクワトイネ公国とクイラ王国から買い取った各種資源類は大日本帝国に大量生産・大量消費に触れさせる機会となるのであった。

また、大日本帝国は桑杭両国に科学技術やインフラ・ライフラインを売り渡すか資源とバーターで取引することで、域内の経済発展はより上向きに、そして三国の結びつきはより強固なものへと変貌していった。

しかし、二国の発展どころか存在そのものを許容しない勢力が、二国と共にロデニウス大陸に存在していた。

 

東京府東京市に存在する大本営、日本陸海軍の頭脳ともいえること建物の中では白熱した議論が繰り広げられていた。

ロデニウス大陸のロウリア王国が友邦クワトイネに対し宣戦布告。

これに伴い日本・クイラは同盟に基づき参戦することを決定。

しかし、同じ大陸にあり陸路で繋がっているクイラ王国とは違い、大日本帝国は大洋を跨いでの戦力展開を求められる。

幸いにして不穏な動きを見せるロウリア王国に対抗するために一部の日本陸海軍は前乗りしクワトイネ・クイラ両国の軍を日本式に塗り替えている最中であった。

そこで大本営は彼らを先鋒としてロウリア軍に打撃を与えつつ輸送に充てる時間を確保することとした。

 

 

新世界に転移して以降、日本陸軍は転移で零れ落ちた部隊を補うかのように自動車化が進められ、量より質を重視するようになっていた。

無論、それはロデニウス大陸に展開している部隊も例外ではなく、本土で増産が進められているが未だに数が少ない重機類も配属された工兵を組み込む師団も存在していた。

彼らは国境からおよそ20キロ後方のギムの街を拠点とし、クワトイネ軍の近代化にあたっていたために彼らが日本軍の先鋒としてロウリア軍の正面に出ることとなった。

 

ギム郊外に設立され、駐屯地の併設されているギム飛行場。ここはクワトイネのワイバーンと日本軍の航空隊がともに活用しているこの世界でも希少な飛行場であった。

そのギム飛行場から明朝、未だに眠るワイバーンとそれらの御者の目を覚ますような轟音が響き渡る。

ワイバーンによる先制攻撃を警戒し、クワトイネに派遣された一式戦闘機部隊が滑走路から次々に飛び立つ。

改良され雑音の少なくなった無電通信を用い、従来よりも遥かに手早く空中で編隊を組んだ彼らはその翼を国境まで向ける。

 

一式戦闘機のパイロットが空中に黒点を見つけると、無電でそれを列機に知らせる。

実用に問題ないレベルのノイズ越しに聞こえる無電越しに連携を取りつつ、彼らは増速する。

クワトイネ軍のワイバーンを用いて編み出した、対ワイバーン用の空戦戦術。

速度の優位を生かしての一撃離脱。12.7粍の機関砲は当たるだけでワイバーンもその騎兵も葬り去るだけの威力を保有していた。

 

日本軍が制空権を奪取すると、遅れて攻撃隊が参加する。

万が一に備えた護衛の一式戦と主力の九九式双発軽爆撃機とクワトイネのワイバーン隊。

既に制空権を奪われ、対空攻撃に十分な装備を持たないロウリア軍は爆撃と導力火炎弾、機銃掃射をまともに受ける。

 

ここで活躍したのが、日本海軍が保有し一時的に陸軍に貸し出された二式飛行艇の通信強化型、あるいは早期警戒型と呼ばれるタイプの機体であった。

はるばる日本本土から飛来し、洋上で飛行艇母艦からの補給を受けたのちに飛来したこの機は攻撃隊と共に、攻撃隊の後方高空から戦場を俯瞰するような前線司令部として活用されていた。

高度な通信/魔信機を搭載しギム郊外の空域の管制を行いつつ、また敵地上軍の配置を把握し攻撃隊を差し向けるといった地上での処理を受けた本機が空中での指揮所となる。

この実戦では後に同様な機体を建造するときのノウハウが蓄積されていったのであった。

 

さて、ここでロウリア軍は撤退を決断するが、すでにそれは困難なものとなっている。

特に目立つ高級将校は火炎放射と機銃掃射の標的となりやすかったので指示系統が寸断されていたために、軍隊としてまともに機能しなくなっていたためである。

それでも少数が撤退に成功し、初戦の敗退と日本の脅威をロウリアに持ち帰ることには成功した。

ロウリア軍は侵攻部隊の過半を失い、初戦を終えることとなった。

 

 

帰路、洋上で飛行艇母艦との合流を果たすべく北方に機首を向けた二式早期警戒飛行艇は機首電探に反応したものをギム飛行場に通報すると、そこから飛び立った一〇〇式司偵が一つの情報を持ち帰った。

ロウリア海軍出港。4000隻超のジャンクに近しい船舶を確認。

その無電はギムと市ヶ谷へと早急に届けられた。




久里浜です。
2話です。
書き溜めはあまり多くないけど吐き出していきます。

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