大日本帝国召喚1941:Re   作:久里浜燐

3 / 3
参話 ロウリア沖海戦

4000隻を超す軍艦を擁するロウリア艦隊。

日本・クワトイネ・クイラの三国で構成された統合艦隊に比べればはるかに数は上回るが、質はそれらに大きく劣る。

蒸気タービンの心臓と鋼鉄の鎧で構成された近代的な軍艦と、帆とオールを用いた歴史上の存在に近い戦列艦。

数世代どころではない程に隔絶した技術力であるが、それでも尚物量というものは無視できない。

そのため、日本軍はロウリア艦隊の洋上での殲滅を画策し、成すための戦力をクワトイネ王国の複数の"日本化された"港湾に集めることとなった。

対ロウリア艦隊殲滅作戦の主力として選ばれたうちの片方は、世界最強──それも、前世界で──の機動力と打撃力を備えた、機動部隊。

旗艦赤城以下正規空母6隻を根幹とし、金剛型戦艦で構成された速力・打撃力ともに申し分のないこの機動部隊はクワトイネ・クイラ近海での練度向上に励んでいた。

 

その艦隊の一角に、十六条旭日旗──大日本帝国海軍旗ではない旗を掲げる艦艇が少なからず存在していた。

特型駆逐艦や5500トン級軽巡洋艦に掲げられた旗はクワトイネとクイラの海軍旗であった。

日本人の教官をわずかに載せながら、両国の軍人が操る艦隊は大日本帝国の艦隊の一部として機能している。

日本海軍の教官に徹底的にしごかれたクワトイネ・クイラの水兵たちは、最低限ではあるものの彼女らの御者としては十分の技量を有していた。

 

そして、その統合機動部隊(三国連合機動部隊でないのは既存の連合艦隊との混同を防ぐため)とはまた別の海域に、もう一つの矛ともいえる艦隊がいた。

その中心には、前世界ではビッグ・セブンと呼称された長門型2隻が随行して尚、彼女らを巡洋艦に思わせてしまうサイズの巨艦。

3本の砲身を束ねた主砲を艦上に3基備え、これまでの戦艦とは違い艦の中央部に艦上構造物を密集させた超戦艦。

大和型戦艦のネームシップ、《大和》は国民に広く存在を知られても尚その詳細は知らされていない箱入り娘は、統合機動部隊とはまた別の艦隊の中心にいる。

長門型と大和を擁するその艦隊は、『大和打撃群』の呼称が充てられていた。

 

二つの大艦隊はロデニウス大陸近海を戦闘待機状態で遊弋しており、またロウリア艦隊発見の報は彼らの戦闘意欲を奮い立たせた。

統合機動部隊の6空母はさかんに攻撃隊を発艦させ、大和打撃群は長門型の速力に合わせながらも徐々に艦隊決戦の舞台へと接近する。

二陣営の海軍力が正面からぶつかるその時は、刻一刻と迫っていた。

 

最初に見つけたのは、編隊を先導していた瑞鶴の偵察型二式艦爆であった。

上空警戒にあたっているワイバーンを見つけると偵察型二式艦爆は増速しつつ高度を上げ、艦隊の所在と細やかな──それでも4000隻であるから、精度は高くないが──布陣を打電し、さっさと踵を返す。

高度・速度共に劣っているワイバーン騎兵は高速での侵入と離脱を行った二式艦爆に追いすがることなく、それを見逃すしかなかった。

そして、臍を噛むワイバーン騎兵を、横から殴りつける存在がこの空域に現れる。

零式艦上戦闘機。1200馬力のエンジンと20ミリの機関砲を誇る日本海軍の主力戦闘機がワイバーン騎兵によって構築された(日本から見たらとても脆弱な)防空網をずたずたに食い破る。

クワトイネのワイバーン兵や本土から持ってきた(クワトイネ・クイラに譲る予定の)九三式練習機を敵役として徹底的に叩き込んだ対ワイバーン用の戦術も、熟練である一航戦二航戦だけではなく、彼らと比較して(それでも尚前世界では上位に入ってくる腕前を持つ)未熟である五航戦のパイロットまでもが活用して圧倒的優位の状況を生み出している。

徹底的に訓練で扱かれたまったストレスやフラストレーションをぶつける標的に選ばれたのが、ロウリア王国のワイバーン騎兵であった。

 

ロウリア艦隊の指揮官、シャークンはある程度聡明な男であった。

数日前から幾度となく高速で領空侵犯をする鉄竜、一〇〇式司令偵察機を敵と判断しワイバーンにあたる航空兵力を敵、得体も知れないニホンが保有しているという思考に至り、東征艦隊のエア・カバーに充てていたのだから。

惜しむらくは、ワイバーンを上回る速力と火力、防御力を備えて対ワイバーン用の空戦機動を叩き込まれた日本海軍の航空戦力をぶつけられたことだろう。

判断こそ間違っていなかったが、そもそも手も足も出ない相手であったのだ。

 

零式艦戦がロウリア艦隊上空の制空権を確保すると、二式艦爆《彗星》は渾名に恥じない急降下で250キログラムの爆弾を投下していく。

対空火器の少ない木造船用に信管を過敏に設定されており、それらは爆ぜるべき艦上や或いは舷側近くの海面で爆ぜてロウリア艦隊の戦力を確実に奪う。

また、制空権を奪い取った零式艦戦や爆弾を投下しても尚戦意の残ってる血の気の多い二式艦爆も機銃掃射にてロウリア艦を攻撃し、ロウリア艦隊の隻数はがくりと落ち込む。

そして、ようやく日本軍機が踵を返し統合機動部隊の空襲が終わったロウリア艦隊であったが、散々なものであった。

艦隊前縁にいた船は軒並み沈められるか爆ぜて跡形もなくなっているかのどちらかで、海に投げ出されて船の残骸につかまって浮いていられるものはまだ幸運であった。

 

指揮官シャークンが撤退か進撃かの選択を覚まられ、思慮している最中であった。

ロウリア艦隊の真横から日本海軍の二本目の矛が突き刺さる。

軽空母龍驤・祥鳳・瑞鳳の艦載戦闘機が直掩をしながら、空母を中心に据えた輪形陣から空母を切り離し打撃力の高い単縦陣へと切り替えた大和打撃群は、その有効射程に入ると8基16門の41cm砲と3基9門の46cm砲が一斉に砲声をとどろかせた。

遠雷のような轟音と、超音速で飛翔する砲弾。そして、最初から一斉に放たれた25発の砲弾は空中で爆ぜた。

試製焼霰弾。対空射撃用に開発されたこの砲弾は、役割を変えて柔目標に対しての必中範囲の極めて大きい攻撃を役割として、《大和》《長門》《陸奥》から放たれていた。

ロウリア艦隊の頭上で炸裂し、弾子を艦に降り注がせる。

3000度にもなる焼夷弾子は木造船を着火させるのに十分であった。

煌々と燃え盛るロウリアの船団は、無事な後方の船から我先にと戦線を離脱、残ったのは海面に浮かぶ友軍を救わんと懸命に努力するシーマンシップ溢れた者たちか、或いは彼らに救われる漂流者のみであった。

 

ロウリア艦のマストには降伏旗が掲げられ、それを確認したクワトイネ海軍の巡洋艦《エジェイ》(旧日本海軍重巡洋艦《古鷹》)艦橋のクワトイネ艦隊司令が確認する。

ここに、ロデニウス沖海戦は終結した。

ロウリア海軍は投入した戦力のうち55%ほどを失い、今戦争で大規模な海上作戦を行うことが困難となる。

また、艦隊指揮官のシャークンも捕虜になり、残余艦隊撤退の指揮を執ったホエイルが新しく指揮官の座に就くこととなった。

以降、ホエイルの指揮するロウリア海軍は艦隊保全主義に走り、この戦争で再び日の目が当たることはなかった。

 

 

日桑杭の三国はロウリア艦隊指揮官シャークン以下多数のロウリア海兵を捕虜として確保することに成功した。

彼らはギム郊外に建てられた捕虜収容所へと送られ、そこで日本との技術力を思い知らされることとなる。

 

 

さて、日桑杭三国同盟は次の作戦を奇襲的なものとするために目標を定めることとした。

王都強襲。三国同盟は一気に終戦へと舵を切ることとしたのだった。




久里浜です。
活動報告にもありますがデータが消えたので今まで以上に執筆速度が遅くなります。

感想などで声援を頂けると励みになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。