せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜   作:囚人番号虚数番

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退院はしたけれど

現在時刻 退院した日その日の夕方

 

現在位置 病院玄関

 

「やーっと退院ですよ」

 

あれから私の起床を聞きつけたお医者様に私の身体を見てもらって、特に異常も見られず退院した。

 

他の三人、ルナシーさん、リューナ、そしてミツキさんは軍が用意した私達用の兵舎に移動したらしい。

 

「お疲れ様。気分はどうだい?」

 

「ええ、お陰様で。……まさかまたいやらしい事でも考えているんですか?」

 

「やだなぁ。僕もそこまで節操なしじゃぁ無いよ」

 

送り迎えの為にナツメさんが私を待っていた。相変わらず国の大きくて豪華な馬車が病院前に止まってその周りに人々が群がっている。

 

「さあ、君目当ての人が集まる前に早く帰ろうか。セレネ君」

 

彼女……彼が私に手を差し伸べる。

 

「ええ、そうですね」

 

私はその手を取ることなく彼女を置いて馬車に乗る。

 

「出発してください」

 

乗車と同時に御者さんにそうお願いしてすぐにドアを閉じる。

 

「…………ちょ!?え、僕まだ乗ってな

 

ヒヒーン

 

馬車はナツメさんを病院に残したまま宿舎に向って出発した。周りの群衆は私の乗る馬車を追いかけてゆっくりと移動していく。しかし馬車の速度の方が微妙に早く暫くして人混みは見えなくなった。

 

「……ここからあそこまで何キロだっけ?」

 

移動手段を無くし、途方に暮れるナツメ。とりあえず帰宅の為に帰り道を思い出す所から始めなければ。

 

ーーー

 

「……そういえばナツメさんがまだ乗車してなかったのに出発してしまいました。大丈夫でしょうか」

 

出発後数分してやっと気づいたが時既に遅し。既に馬車は病院を遠く離れ貴族や富豪の住む豪勢な住宅街の近くを通っている。時間的にも徒歩では苦しそうだ。でもまあ、彼の事だしどうにかなるだろう。

 

話は変わるが馬車の窓から見える家々に目をやる。私のいた修道院よりも大きく華やかな家が連なり、道を通る人も皆一様に高価そうな服を着ている。御者さん曰くここは王都でも特に地価の高い一帯であるらしく私達の滞在する所はその中でも特に高く所らしい。勿論、兵舎なんて作っていいところではないとのこと。

 

「(兵舎と聞いてお世辞にも良い環境とは言い難いところを想像してましたけどこれはこれで何をされるのか分かりません)」

 

心配になりながらも馬車に揺られて目的地に到着した。

 

「……えっと、場所ここであってますか?」

 

案内された建物は他の建物に習い大きな家だった。しかし周りのみと比べても2、3倍ほど大きく、私の修道院がすっぽり入ってしまいそうだ。おまけにそこそこの庭までついていて正にいたれりつくせり。というよりもはや過剰供給だ。

 

家の門を開けて中を覗いたあと恐る恐る敷地へ入る。本当にここでいいのかな?心配だな……

 

「おや、これは聖女様」

 

庭のオブジェの死角にいた男に声をかけられる。

 

「うひっ!?え、もしかしてここじゃないですか?すみません。今出ていきますね」

 

「あ、大丈夫ですよ。勇者様方の兵舎ならここで合ってます」

 

なら急に取り乱してしまったのは悪かった。冷静になって声の主のもとへ向かう。

 

「そうですか、ありがとうございます。先程話しかけてくれた方は何処へ……」

 

しかし、そこには人の姿はなく、代わりにそこにいたのはどこかで見た覚えのある狼のオブジェのみだった。ってこれまさかオブジェとかじゃなくて本物?

 

「お、狼!?もしかしてあのとき戦ったルナシーさんの」

 

「はい。あの時はお互い災難でしたね」

 

 

 

しかも喋った!?あの巨体の狼が!? 

 

私の聞き間違えか誰かのいたずらかを疑う。しかし他に周りに人もおらず状況証拠だけであればそれを信じざるを得ない。

 

「狼……さん、喋れたんですか?」

 

「そうです」

 

「……世界って広いですね。獣人と一部の高等生物が人語を話す事は知っていました。けれど普通の動物までとは初めて知りましたよ。まだまだ私も知らない事ばかりですね」

 

「気にしないで下さい。私が少しばかり変わり者なだけで聖女様のその反応が正常な反応です」

 

しかもこの狼さん滅茶滅茶丁寧な言葉遣いである。自虐気味だけど私への気遣いもしてくれるなんて。

 

「聖女様のお体のお怪我のほどは……」

 

「もう治りました。狼さんこそ体調におかわりありませんか?」

 

「寧ろ調子がいいくらいです。お嬢からの傷を治していただいた聖女様の魔法のお陰です」

 

嫌な予感はしていたがあの痛々しい傷はやっぱりルナシーさんからのだったのか。だとしたら普段から私にしたような事を彼女は行っているのかも知れない。だとすれば彼女は調教師と言うのにはいささか暴力的すぎると思う。

 

「(自分のパートナーの動物に暴力をするとは見過ごせませんね)そうですか……」

 

「それより、私と話しているよりも中へ入られては如何でしょうか。皆さんがお待ちです」

 

ああ、それもそうだ。中では既に先にここへ来た私の仲間がいるのだから待たせては悪い。

 

「そうですね。では」

 

ーーー

 

建物内は外観に見合った豪華さ。最早兵舎というより貴族の町屋敷と言ったほうが正しいのではないだろうか。おまけに使用人まで用意される物だからいきなり一般聖職者が貴族の子になったみたい……あ、設定上は私も貴族の子供だった。

 

「(……ああ、目眩がしてきた。ここまで来ると気が引けます)」

 

そして案内されるがままに自室へと通される。セレネと掘られたプレートのついた扉を開ける。

 

「(お、ここは雰囲気が落ち着いてます)」

 

 

部屋の中は一転、質素な部屋だった。広さはあるものの飾り気のない木製の家具がいくつかあるだけ。ベッドとタンスそれと書き物机と本棚、以上。本当はもう少しだけ狭い方が落ち着くのだけど変に調度品が置かれた気の休まない部屋より遥かに好みだし、何より与えられた物に文句を言ってはいけない。

 

机に私の荷物が入った袋が置かれていた。私の寝ている間に誰かが移してくれたのだろう。一応無くなったものがないか調べる。

 

「……寧ろ多い?」

 

袋に手を突っ込んだら知らない紙、ナツメさんからの手紙だった。

 

手紙は4種類ある。1つの中身を開けて読むと、予想道理私が寝ているスキに荷物をここへ移したこと、加えて私の魔導書と研究書を勝手に覗いたことの謝罪が一枚。

 

もう一つはここの説明だ。ここは元々彼の持ち家らしくそれを私達用に(国からの補助金をせしめるのに)改造したらしい。だからここでは私達が何をしようと自由という。三枚目の紙はこの家の見取り図だ。設備はワインセラーやら何やらこれまた豪華。そして他の方の部屋の位置もここに書かれている、後で寄ってみよう。

 

そして4枚目は今後の予定らしい。闘技場での予期せぬ事態によって王への謁見や民衆への告知等々のイベントが変更、または取り潰されて赤字で修正が入っている。なお、既に二日後に軍上層への顔出しやその後も色々とするらしくしばらくは戦わないそう。個人的にはこれは嬉しい。

 

「……と、まだ裏がありました」

 

裏が少し透けて反対の字が見えた。

 

「…………はぁ。どうしてこうも神は私を試すのですか?」

 

しばらくは戦わないと言ったがそれは嘘のようだ。裏には既に私達の出動する任務についての詳細があった。ざっと見て分かったのは出発は2週間後だと言う事。

 

 

 

 

 

コンコンコン

 

 

 

そして休む間もなく来客。

 

「?何方でしょうか」

 

バアンッ!!

 

「私です。昼間ぶりですね、セレネさん」

 

ルナシーさんが勢いよくドアを開けて入ってきた。室内だというのに相変わらず鉈を携帯している上、その手には空の酒瓶が握られている。顔もよく見ると少し赤い……え、この年で開けてるの?

 

「酔ってないのでセーフです」

 

「そうゆう問題じゃないと思うのですが……」

 

「夕飯はもう少し切りそうなので、それを伝えにきました。それと個人的な質問があります」

 

質問……心当たりはある。

 

「質問とは何でしょう?」

 

「何故闘技場で死にかけたのに反撃をしなかったのですか?それどころか自分の回復はせずにあのワン公の方を回復して。私には理解できません」

 

剣のように酒瓶を私に向ける。

 

「まずそれを下ろしてください」

 

 

 

私は部屋のドアを閉め、彼女を適当な椅子に座らせてから理由を話した。

 

「神父でもなんでもない私が人に物を言うのは気が引けますが……聞きたいと言うなら話します。私は聖職者です。迷える人々に神の救いの手が届くように人々に尽くす、それが使命です、少なくとも私の中ではですけど」

 

「それで、なぜ私を殺しに来なかった事に繋がるのですか?」

 

彼女は感情の無い顔で答えを催促する。獲物を見定めるようにじっと私の目を見つめて離さない。これには恥ずかしいというより恐怖を感じる。

 

「私の派閥だと自分の為の争いで人を傷つけてるのは神から禁止されている行為です。例外こそありますかなんにせよ修道女の私がルナシーさんに魔法を撃ち込むことはできません」

 

「……それで?」

 

「それだけです」

 

答えられることは答えた。彼女は依然として無表情は貫いたままだ。

 

「本当に?」

 

私にそう問いかけながら彼女は酒をラッパ飲みし始めた。半分ほど入った酒を一気に飲み干すつもりだろう。倒れないか心配になる。

 

「はい、それに私個人、人に危ない事をするのは苦手で……」

 

 

 

 

 

ブンッ

 

 

 

スコーンッ!!

 

「嘘を言うな」

 

彼女の投げた鉈が頬をかすめる。5mm程の浅い傷から血が出てきた。呆然とする私を無視してルナシーさんは壁に刺さった鉈を抜く。

 

「んしょ……しかし、貴方が妄信的なカルト信者で良かったです。アレが単なる同情とか子供だからとかの下らない理由なら今ここで殺してました」

 

「それと一つ、私にさん付けはいりませんし私からも付けるつもりはないです。それでは、セレネ」

 

バタン

 

 

シーン……

 

 

 

結局彼女は嵐のようにやって来て場を乱すだけ乱して帰っていった。

 

「……あの御方は一体何をしたいのですか?」

 

 




タイトル変更をしました。元々乗りで書いてたからどんどん方向性が変わって何か言われそうだなとは思ってたけど……とついにご指摘を頂いてしまいました。ですがご指摘されたうちの序盤の展開の不快感については現在理由を作っているところです。

ご理解の程よろしくお願いします

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  • 狼さん
  • ミツキ
  • ナツメ
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