せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜   作:囚人番号虚数番

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作戦会議

タッタッタッ……

 

ガチャッ

 

「ただいまァ!!ナツメ帰ってきましたァ!!」

 

 

 

現在時刻 午後七時

 

ダイニングルームにて夕食を取る私達の所に息を切らしたナツメさんが飛び込んで来た。結構な汗を流している所から本当に走ってきたのだろう。

 

「よう、ナツメ遅かったじゃねえか」

 

「ごめん……ゲホッ……病院で馬車に乗れなくて走ってきたからね。遅くなった」

 

「はははっ!ナツメはドジっ子なんだね。着替えてシャワー浴びてきたら一緒にご飯食べよ!!」

 

リューナさんとミツキさんは彼を笑いながらも心配していて言葉をかける。詳細を知る私はただ心の中で彼女に謝っておこう。

 

「そうするよ。あと夕食はもっと後にする。君達の夕食が終わったら僕にはやらなきゃいけない事があるんた」

 

 

 

「夕食後、全員僕の部屋集合で。二週間後の戦いの詳細を話すから」

 

ーーー

 

そしてその時間となり部屋の前にナツメさん除く4人と一匹が集まった。

 

「わー!でっかいわんこだ!!もふもふだー!!」

 

「止めてください」

 

リューナさんはルナシーさ……ルナシーが一応仲間だからと連れてきた狼さんを全身を使って抱きしめている。彼はもふもふというには剛毛な気もしなくもないが平気なのか?本人も嫌そうでもある。因みにミツキさんは何故狼さんまでこの話に参加をするのかに一言言いたげな目線を送り続けている。

 

ガチャッ

 

「お、ちゃんと皆集まってるね。待たずに勝手に入っても良かったのに」

 

ナツメさんの部屋に全員が入室した。彼女の部屋は彼女らしく男性とは思えない薄いピンクで統一された女の子が好むような可愛らしい部屋だった。

 

「趣味の悪い部屋ですね」

 

「ルナシー、いくら思ってても言っていいことと……うん、ごめん。俺もそう思う」

 

ルナシーとミツキさんは彼の趣味に引き気味である。対してリューナさんは目に入る全てに目を輝かせている。私は人の趣味にどうこう言うつもりはないのでできるだけ平静を装う。

 

「じゃあ話を始めるよ」

 

そう言って彼は一枚の地図を机に広げた。地図上の赤丸の付いた箇所が今回の目的地らしい。

 

「僕達は二週間後ここへ移動する。多少の距離はあるけど王都からは転移魔法で一気に行くから移動時間は無いよ。でも一方通行だから一度行ったら暫くは王都に戻れないからこの二週間のスキマ時間を使って各自準備をしておいて」

 

「準備にしては時間がないな。武器とか道具を王都で全部揃えるとしても資金は?」

 

「国から補助(多方面から絞った賄賂)が出る。この際ミツキ君は強めの防具でも買ってきたら?」

 

「だな」

 

相変わらず太っ腹。武器を使って戦うミツキさんやルナシーにとってはこれは最高だろう。だけれど私は剣や道具を使う立場ではない、強いて言えば魔導書やら杖だが期間が期間なので魔法は取得ができるか怪しく何よりどちらも高すぎる。お気持ちだけありがたく戴いとこう。

 

「で、どんな事をするの?どんなリューナちゃん特製魔法が使えるか考えたいから早く教えて!!」

 

「地図上のこのあたりは高い山に挟まれて普段は交通の拠点として商人とかが使ってる。だけど敵がここに自立型の魔導兵器を廃棄したっぽくて。軍にとってもここは補給に使えて戦術的に役立つしここに居座られると都合が悪いから倒す」

 

「自立魔導兵器って……人とか生き物とかの類かは判別できますか?」

 

私にとっては生物と非生物の違いは大きい。

 

「うーん、それはまた分からないかな?敵国のことだし何がどう出るかは僕も予想ができない。確か君は自分の手を汚すのに抵抗感があったね。最悪後方支援に徹してもらえばいいけどどんな生物でも敵くらいはちゃんと攻撃してね」

 

「うーん……そもそも戦い自体を避けられれば……」

 

「ごちゃごちゃ言ってないでやる時はやって下さい。一応あなたも『勇者』と共に戦うんですから」

 

ルナシーに痛い所を突かれた。そうだ、私は役割こそ聖女だけれど勇者と同じ戦う立場の者だ。

 

「で、さっさと兵器について教えて下さい。ぶち殺す対象の事はどれだけ知ろうが悪くはありません」

 

「それがね……全く分からないんだ」

 

つまり兵器の情報が全く無いという事。これには戦いに慣れている私以外その重大さを身を以て知っていて苦い顔をする。あ、リューナさんはなんか嬉しそう。研究のしがいがあるって感じでワクワクしてる。

 

 

 

「ちょっと待って、資料出すから」

 

地図を丸めて今度は書類の山から1枚の紙を探しだした。

 

「これは谷周辺の被害情報をまとめた奴。一応あの辺の兵を派遣したらしいけど誰も帰ってきてない。その後ちゃんと武装させた調査隊を送り込んだら鎧に大穴空けた兵士が一人だけ帰ってきてその後死んだ」

 

それは……なんで酷い……

 

「それならギルドの連中も動員したらどうだ?Sラン冒険者を数パーティ用意すれば……」

 

「あんな底辺が数でどうにかならなかったから私達が派遣されるんですよ」

 

ミツキさんがいい提案をしたのにルナシーに却下された。人を増やすのも良い手だと思うが。

 

「……お前、前もギルドが信用出来ないとか言ってたよな。仲間じゃないけど流石にこれ以上同業者(なかま)を馬鹿にするな」

 

ルナシーの発言にミツキがキレた。剣は部屋に置いてきたらしく睨みつけるだけであるが今すぐ斬りかからんとばかりの顔つきだ。

 

「わわっ!!二人共落ち着いて下さい」

 

「セレネちゃんのゆーとーりだよ!!喧嘩はお姉さんが許しませーん!!」

 

喧嘩になりそうな二人を鎮めようと慌てる私とリューナさん。ナツメさんはそれを笑いながら見てから一言。

 

「ルナちゃん正解」

 

「なっ!?」

 

正解って、まさか私達以外が既に……?

 

「ルナちゃん言うな。でも、やっぱりそうですか」

 

「因みに……今どれくらいの方が挑まれたのですか?」

 

「彼の言う通りSランパを数個、を3回。みんな死んだよ」

 

「Sランが負けた!?」

 

Sランの冒険者というのがどれほどの物か知らないが私達(私以外)くらいの強さの人が負けたという認識でいいだろう。

 

「情報が少ないからって事もあるけどこれは異常でしょ?多分そもそも正当法で倒しちゃいけないタイプなんだろうね」

 

「そもそも力はあるけどなーんかスピードに欠けるからね、ギルドの人」

 

「そうですリューナさんの言う通りです、負け犬。この前試合で第4第5試合で私とリューナさんにボコボコにされた事忘れてません?」

 

「……チッ」

 

しれっと初耳な情報が入った。この後詳しく聞いたらあの後後日残りの試合をしたらしい。(因みにナツメさんは辞退したとの事、羨ましい)

 

「という訳で話は終わり。情報が少ない分しっかり準備して協力して倒そうね」

 

ーーー

 

話が終わり各々が部屋に戻る。

 

ルナシーとミツキさんは今から暴れてくるらしい。私達に止められた喧嘩の続きをしにギルドの修練場に向かうというのであまり遅くにまでやらないようにとだけ忠告しておいた。私は少し魔導書と研究書を読み込んだ後寝ようかな。

 

「ねーねーセレネちゃん、出発前に暇な時ってある?」

 

「今日は読書をして寝るだけなので行けますよ。あとは国の予定の無い日がそうです。何かありました?」

 

「ルナちゃんとミッツーは武器とか武器の練習とかで外へ行っちゃうだろうしお姉さん一人だから寂しくて」

 

ミッツー……ミツキさんの事だろうとは分かるかセンスがちょっと……

 

「だーかーらー、セレネちゃんはお姉さんとお勉強しない?」

 

「勉強ですか。学問の方は独学なのであまりよろしくはないのですが私で良ければ……」

 

「何言ってるの!私の大学の専門は魔法だよ!!つーまーりー……」

 

大学……で、魔法が専門で、教授、とお勉強?

 

「べ、勉強……ってまさか魔法の講義をしてくださるのですか!?」

 

国最強の魔法使いが私に講義をしてくれるなんて魔法を使う者としてこれ以上に嬉しい事はない。強力な魔法や新しい回復呪文、もしくは最新の理論等を教えてくれるかもしれない。扱えるかは別として。暫く災難続きだったからやっと幸運が舞い込んだ。

 

「いぇーす!!どう?講義って堅苦しい物じゃないけれどセレネちゃん魔法大好きでしょ?」

 

「ぜひ!!是非やりましょう!!それから私の研究書も見ていただけませんか?参考になる事は少ないかも知れませんし正式な物でもないです。でも動作確認はしてあります」

 

「おーありがとー。研究書の書き方に中々癖があるからわからない所もあったし解説期待してるよ!!」

 

そして私は軽い足取りで部屋に向かう。期待に胸を弾ませて魔導書と研究所を読み返し今度の勉強会の準備をしよう。

 

「(これでまた一つ強くなれます。戦いには余り使いたい物ではないですが何か新しいものを学ぶのはやはりいい物です)」

 

 

 

 

ーーー

 

現在地 ギルド 修練場

 

深夜のギルド、建物裏のスペース。

 

昼間は若手が訓練に励んだりする為や新しい剣の試し切りの為に人々がやってくる。しかし日も暮れてからのこの時間ともなると普段は誰もいない。

 

だが、今日は違った。深夜の依頼を受けに来た冒険者が書類を書く手を止めてそこへ集まり最強と何者かの闘いを見ていた。

 

「口の割には弱いですね。次です、立ってください」

 

「クソッ……何で……何で!!」

 

「おい、勇者だろ!!早く立ってあのガキを倒してくれ!!」「国一番の冒険者も勇者の中じゃ最弱だとはな」「悪魔だ……赤い悪魔がいる……」「何で狼がここに?」

 

 

 

「外野は黙っててください。狼さん、頼みます」「了解しました。皆さん、本当に命が惜しいなら静かに見てたほうが身の為ですよ」

 

兵舎での決着をつけるためにミツキさんとルナシーは武器を用いた模擬戦……いや、ルール無用の殺し合い、あるいは一方的なリンチが行われている。ミツキさんがルナシーに突っ込んで、その度斧で叩き潰される事の繰り返し。実力差は明らか、しかも片方は国最強の冒険者、それがなすすべなく負け続けているのだ。

 

見物の者は後にこう語る。ギルドのSランクが稀に負ける事は知っていた、しかしSランクの強さは俺らの想像できる程度でしかないらしい。

 

「それか……もう止めときます?」

 

「うぅ……やってやるよ……やってやるよ!!!あ"あ"あ"あ"あ"!!!」

 

彼は剣を捨て魔法弾を彼女に発射した。制御しきれず歪んだ魔法弾が彼女を囲む。

 

ズドドドドドドド!!

 

ボーーーン!!

 

「やったか!?」「流石にこれはきついんじゃないか?」

 

観衆がどよめく。ミツキ自身もこれには手応えを感じていた。

 

「(これなら流石のルナシーも……)」

 

爆発で起きた土煙が段々と晴れていく。少しづつ地面を抉った跡のクレーターが見えてきた。そして、彼女の姿は……

 

「な!?」

 

彼女の姿はそこには無い。

 

「一体どこへ……まさか消しとんだ「遅い」

 

 

 

 

 

ズバァン!!

 

 

彼女の持つ斧が彼に向かい振り下ろされた。その衝撃は地面へと伝わり20m程の切られた跡が壁を巻き込んで出来た。

 

「ちょっとお嬢、斬撃で建物壊さないでくださいね」

 

「反応スピードが全然足りません。でも魔法は悪くはなかったですよ。横着して全弾受けたら服が少し焦げました。建物?知りませんよそんな事、暴れる所作ったのに想定してない間抜けに文句言って下さい」

 

彼女の言う通り彼女は彼の弾幕を避けず全てをその身に受けた。その威力は凄まじく服が焦げたというより頭巾を除きほぼ消し飛んでいる。しかし彼の攻撃では彼女自身は火傷どころか傷一つつける事が出来なかった。

 

「って……聞いてないです。諦めたようなら私は帰ります。……もしくはそこの群衆でやり合いたい方は?受けて立ちますよ」

 

「ああ、安心してください。流石に知らない人にあのゴミ見たく情けない姿を晒す真似はしません。お互い果てるまでお相手します。だから息の根が止まるまで殺し合い続けたい奴、さっさとここに出てこい」

 

当然ながら彼女との決闘を受ける者はいなかった。冒険者達は蜘蛛の子を散らすように逃げ帰り彼女が帰る道を開けた。

 

「………っ……くそ……」

 

一方、ミツキは一人絶望していた。斬撃は彼のすぐ横を通った。わざとだ、多分彼女はあの攻撃を当てる事は容易だった。なのにわざわざ外して……

 

彼はこの世に生を受けて今まで持ち上げられ続けてきた。だから当然数日前の試合と今の戦いという醜態を晒すのは初めてであった。詰まるところ、この敗北は初にして最大級の屈辱となった。

 

「ってお嬢まさか破れた服のままで帰るつもりで?」「勿論。こうゆう全裸はよくあるじゃないですか。でも本当に嫌であれば適当なやつから強奪します」「あ、それならそのままお帰りください」

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  • ミツキ
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