せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜 作:囚人番号虚数番
【1st=虚次元展開】
空中の何も無い所に亀裂が走る。混沌とした概念、あるいはエネルギーに満たされたそこはから不気味な雰囲気が漏れ出ている。
「(な……なんですか、あれ。おぞましいなんてもんじゃない、冒涜的な……)」
「固まってる所悪いけどセレネちゃん、いっくよー!!」
【2nd=秒針】
リューナさんがそう宣言して亀裂から魔法を放つ。その弾は普段の彼女からは想像の出来ない赤黒い針のように鋭い狂気を放つ弾。その弾が何本も宙に浮かびミツキさんへ針先を向けている。
「いっけー発射!!」
「っミツキさん!!(【円環】作動と弾の【光柱】での処理……間に合わない、どっちかに絞らないと守るにしてもあの量と魔力だと持って一発レーザーも同じく……)」
無邪気な声と裏腹に弾は高速で彼へと飛ぶ。認識速度上昇を持ってしてもギリギリの速度に必死に回していた思考を投げ出しかけた。しかし……ここで妙案が私に浮かんだ。
【認識速度&移動速度上昇】
魔法で加速させ、弾へと追いつく速度をつける。そして更に……
【耐魔法&物理防御上昇!!】
余りバフの類の魔法は教義上の理由で自身へと使用したくないけどこの場合背に腹は代えられない。ああ神よ、お許しください。この短時間で2度も罪を犯してしまいました。
弾と彼の間はすでに2mを切っていた。私は全力で荒野を走り抜けて彼を思いっきり突き飛ばす。
「セレネっ!?」
「……おー?」
「ミツキさ……」
ザクッ!!ゴキメキバキイッ!!
「ぐっ……あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」
何本もの針が体を貫く。想像を絶する痛みが私を襲う。防御を上げた効果など初めから無意味な様にあっさりと弾の攻撃を受けた。
「へー!結構大胆に体張るね」
「(防御を貫通した……多分魔法にバフの解除効果も載せてそう。【円環】を張らなくて良かったで……?あれ?)」
ここで異変に気がつく。攻撃を受け本能的に叫んでしまったが冷静になって怪我の程を見ると全く痛くないのだ。外から見たら今の私はどう考えても即死と思える状態だ。それでもなお意識が続いていて、更に時間経過により消滅していく弾に合わせて傷が塞がっていく。
「実はリューナちゃんはミッツーが怪我しないように攻撃魔法なのに再生魔法と色んな魔法もつけておいたのだー!!」
「何故……!?」
「それは戦い終わってからのお楽しみ、で。まだまだいくよー!!」
地面に横たわる私の周りに鋭い弾が私を囲む。
……もう、どうにでもなれ。最近妙に周りに流され気味でストレスが溜まっていたからそれが爆発した。普段温厚な私も流石に本気で怒る。神様、本当にごめんなさい。どうか感情に流される愚かな私をお許しください。
「ああもうっ!!そこまで撃ち合いがしたいならとことん付き合ってやりますよ!!」
「やーっと乗り気になった!!ここからがお姉さんとの実践授業の始まりだよ。浮遊魔法付与、三次元の戦いだー!!」
【光柱 ピラーオブムーンライト】
ーーー!!
ドーン!!
ドドドドドドドドド!!
ーーー
「……何だよ、これ」
戦いを見たミツキはそう呟いた。
防御もされず無防備でいるのにリューナは彼を攻撃してこないので、この戦いは彼女個人の勝手だとは直感で分かった。戦いから完全にハブられている悔しさはある、しかしそれ以上に戦いの勝敗を決める役割でなくて心底よかったという安心感がある。
その理由は目の前の戦いにあった。
「ほらほら、もっと弾速上げて!!誘導弾に頼らずに自分で狙ってみてよ!!」
「そっちこそ、そろそろ弾幕の種類を増やしてみては!!」
「なんとか視点」と頭に過る。超高速で弾幕を展開しあい避け続けるバフのかかったセレネとリューナの姿は彼には目に捉えることが出来ない。たまに残像が撃ち抜かれたり極太のレーザーが地面に大穴を作るののみが見える全て。しかし音や光の激しさから行われている事の高等さは分かる。
彼自身も闘技場にて戦ったがここまで激しいものでは無く、あの時が子供の遊びにすら思えた。
「(やべぇ……今までギルドで色んな魔法使いを見てきたけどこんな少年漫画みたいな戦いする奴いなかった)」
「それじゃ、お言葉に甘えて」
【2nd=火時計】
【3rd=DIGITALTIMER】
一方、戦ってる本人達はというと
「属性弾ですか。やっと魔法使いらしくなってきましたね!!(さっきから連続で【日蝕】をしてるのに一向に効果がありません。やっぱり解除されてます!)」
「お姉さんは魔女っ子だよ!!(うーん、中々の物量の魔法。やっぱり脳死で魔法裁くのは楽しいなー)」
針状の弾に加え炎の散弾と雷の弾を追加してきた。弾速は【秒針】程ではなく回避はしやすい。しかし数が多い上……
「あっ!!」
グレイス、【火時計】の1つが破裂した。細かい弾に分かれ軌道を変えた弾に対応できず被弾、更にその弾に呼応して他の弾も一斉に破裂する。
「あーやっちゃったねー」
「くっ、これは」
パーンッ!!
ババババババっ!!
無数の破裂音が私を包み込む。
「……!さっすがセレネちゃん。あの短時間で【円環】を張ったんだ」
「ええ、そうです」
「っえ!?もう後r
【光柱 ピラーオブムーンライト】
ーーーーー!!
弾幕の爆発を【円環】に当ててて一部のみを破裂、その爆発を利用して高速で脱出した後死角を通り回り込んでからレーザーを撃ち込んだ。
「裏取りとはやるね!!でもお姉さんのターンは続くよ!!」
だが、無傷。リューナさんには避けられてしまった。
「(【火時計】は大方撃ち尽くした、今張ってる残りの弾は【DIGITALTIMER】だけ)」
見えている弾幕は雷属性のエネルギー弾。しっかり見てよければ……
ドゴーーン!!
「!?ええっちょちょちょ」
轟音ととも稲妻が走る。幾度も軌道を変えジグザグに曲がりながら飛んできた。移動速度上昇を掛けていても流石にこれを見てから回避するのは容易なことではない。辛うじて避ける事はできたものの接近した為肌が痺れる。
「普通雷属性っていっても初手雷飛ばすのは無いでしょ!!」
「そう?でも残念。周り見てご覧?」
はっとそこで気づく。周りには同じような弾で弾幕が張られ、更に【火時計】も追い打ちに増量していた。
「ええ!待って下さい、流石に私でも死んじゃ……」
「そーれ、全弾発射ぁ!!」
どうしてこうもここの連中は他人に致死レベルの高火力を与えるのだろうか。神に問いかけた。
「(でも……このスキに魔法を展開して攻撃に転じられればまだ)」
【光柱 ピラーオブムーンライト】
あるだけの魔力をつぎ込んで魔法の仕込みを始めた。最高速で動かせば多分十数個なら間に合う……と思う。
彼女が杖を振り下ろす。それと共に一斉に弾が飛んで弾幕が作動、避ける場所は勿論存在しない。すかさず防御を試みる。
【円か……
「させないよ!!【秒針】、貫け!!」
ヒュンッ!!
グサッ
「ゔっ……(的確に急所を狙ってきました)」
しかも今度にも自然回復力上昇の効果が盛られている。しかし先程よりも効果が弱い、その上当たりどころが悪く痛みで魔法に集中できない。
「(目測だと被弾まで0.01秒を切っている……回避は不能、魔法も制御できる状態じゃ無い)」
だがここで私にある最悪の考えが浮かぶ。
「(……ん、魔法が制御出来ない?となると今仕込んでるアレは……あっやばい、これじゃ)」
カッ
突然、弾幕の星空に混じり太陽の様に強い光を放つ魔法陣が現れる。
【鬲疲ウ輔′豁」蟶ク縺ォ菴懷虚縺輔l縺セ縺帙s縺ァ縺励◆】
「えっ!何々、なんでここでエラーコード!?」
「(あああああ!!やっちゃったぁぁぁぁぁあっ!!」
弾幕が私に当たる直前にそれは作動した。空一面の弾幕の星の更に上空、本来任意のタイミングで発動する予定だった数々の魔力充填済の魔法が制御を失い不安定になる。そして行き場のなくなった魔力は暴走し、一瞬で貯められた量を力、すなわち弾へと変化させた。
つまる所、現在進行系で私が仕込んだ魔法が無差別にそれが飛んできてる。一つ一つの威力も生半可ではなく即死とまでは行かないがかなりまずい。
「もしかして、セレネちゃんが仕込んでたやつが暴走した?あはは、偶然とはいえこうなったらお姉さんも流石に対処できないよー!!」
「せ、制御を取り戻さないと……ゔっ……」
こういう時に限り痛みで動けない。リューナさんの弾幕が目の前に迫りただでさえどうしょうもない状態なのに、これではもう救いなんて……
「ああ、神よ……」
絶望する私の横、というか魔法で飛んでるから上のリューナさんは対象的に楽観的である。むしろ楽しそうにも見えた。
「あーはっは、この勝負はセレネちゃんの勝ちだね。ご褒美にお姉さんがこの状態を何とかしてあげるね」
「何とかできるのっ!?」
「いぇーす」
【No.i=時間停止】
カチッ
「………」
「……………」
時の止まった空間、弾幕は空中で静止して灰色の世界が広がる。ただ一人魔法を作動させたリューナのみがこの場で動ける唯一の生物。ここは今、彼女の世界である。
「さて、やりますか」
空を見上げる。魔力から魔法の規模を予測していたが思ったよりも数がある。規模的にここら数キロは良くて焼け野原最悪クレーターと化すと予想した。
「よいしょっと……お、結構細身の体してる。えー、ミッツーはどこだ?あ、いたいた。んしょ」
彼女は人形のように固まる二人を担いで研究室へと戻る。
「セレネちゃん、やっぱり強かったね。お姉さんも一応Sランクの冒険者資格は仕事した時に取ってるけど……OVER JOY相手だと安定しないや」
「あー、せめて【虚次元展開】と【時間停止】の魔力消費が半分……いや6割くらいになってるか時止め中に魔法が使えればなー。本当、なんで停止中魔法使えないの?」
【解除】
ドォォォォォォン!!
「……っわ!!ってここはリューナさんの……何故?」
「っリューナ!!いきなり何した!!」
被弾する直前、リューナさんが魔法を作動させる所までは見えた。しかしその間に何をしたのか一切見えなかった、気が付いたら弾幕の中を出て研究室のドーム内へと帰っていた。まるで、止まった時の中で動いているみたいに一瞬の出来事である。
「規模が規模だから時間止めて二人を逃した。セレネ、ミッツー、平気?」
「私は……はい、傷口は塞がりました」
「時間止めたって、え?それ、ぽんって使えるタイプじゃないよな。どう考えても」
「そうでもないよ?あ、でも時空間専攻してるからもあるね」
さらっと言ってたけど時空間魔法使えるの!?
「うん、ていうか私の魔法殆ど時空間魔法でサルベージしてきてる」
「変な空間から引っ張り出してたもんなお前。てか時間止められるなら……」
「これ凄い魔力食うし欠点も多いんだよ」
……流石学者、やること成すことが全て違う。趣味で極めている私とは踏み込んだ場数が違う。
「で、そろそろ聞いていいですか?なんで弾幕に態々回復を?」
「だって怪我したら危ないじゃん」
「意味が分からないです!」
意味が分からない。だったら戦いなんて初めから……いや、もういいや。
「あ、やばっ!!山の上に太陽出てる!!」
「時差的にはまだ日は登ってない。セレネ、帰るぞ」
「……ええ、帰ったら寝ましょう」
ネタバレになりますが別にこの世界はMMORPGとかではありません。作者の脳内で扱える単語の容量が無いだけです。
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セレネ
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ルナシー
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ナツメ