せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜 作:囚人番号虚数番
現在時刻 討伐依頼当日
「皆、準備はOK?」
兵舎の前、全員が荷物を持って集合した。馬車に荷物を載せる前にナツメさんが確認をする。
「ああ、バッチリだ」
「私もそうです」
ミツキさんとルナシーさんはこの2週間の間に武器と防具を新調してきたらしい。ミツキさんは防具、防御が心配になる黒い服?みたいなデザイン、ルナシーさんは斧から大剣へと武器を変更していた。
「ルナシーさ……ルナシーは武器を変えたんですか」
「闘技場での戦闘時点で斧には見切りを付けていましたから。どうにも両手持ちの武器は向いてないみたいです」
「今の武器大剣のくせに何言ってんだか」
ミツキさんからの指示の通り彼女が背負うその剣は自身の2倍近い到底片手で持つことを考慮されていていない剣。無骨で、業物というよりかは剣の形をしたただの金属塊だ。
「あれー?新しい剣にしては傷だらけだね。お姉さんの知らない所で戦いでもしたの?」
「はい、ギルドのゴミに喧嘩吹っかけて少しばかり」
リューナさんと問で新たな余罪もとい新情報を得た。また戦闘してるよこの人、呆れて言葉も出ない。
「その二人より僕は遠距離組二人の方が心配かな。本当に荷物はあれだけでいいの?」
私は聖典といつもの魔導書、リューナさんは杖と魔導書を持っていくだけだ。2週間では情報交換位しかできず魔法の取得までは間に合わなかった。魔法において分かるとできるはまた違う問題だからそれも仕方ない。特にリューナさんの攻撃手段の魔法は全て「時空間魔法」、取得は特に困難である。
それとは別に私達は2週間かけて戦闘について二人で研究していた。あの戦闘と同じく防衛戦を何度も繰り返し体の動かし方は少しだけだが学べた。これでいざという時自衛程度ならできる……ということにしよう。最悪バフを積めばどうにかなる。
「私達はこれで充分です」
「お姉さんもオッケーでーす!!」
「それなら良かった。各自指示された馬車に荷物を詰めて。この後は王都から出て転移魔法の所へ移動、そこから更に動いて目的地近くの村にて時間まで待機するから……それと、ミツキ君」
「お、何だ?」
「余計なことしたのはバレてるからね」
彼はそう忠告した後彼専用の馬車に乗り込んだ。笑顔なのに目が笑ってないから少し怖かった。
「……してねえよ。たまたまだ、たまたま」
少なくともこの二週間で彼は比較的穏やかな性格としてみていたが一体彼を怒らせるなんて何をしたんだ?
「あー、馬車内でいいか?」
「私も気になるのでセレネも荷物詰めてください。ほら、狼さんも乗って」「あのこっち荷物用の馬車じゃないですか」
「セレネちゃーん、中でお話しよー!!」
自由な二人は既に各々の事をしていた。私も急いで荷物を指定の馬車に詰め込み旅客用の馬車に乗り込んだ。
ーーー
「で、一体何何しでかしたんですか」
「ルナシー、彼はまだしでかして、ではないと思いますが」
一つの馬車に四人が乗り込み彼の事について問をする。彼はこの二週間で一体何をしたのだろう。
「昔ギルドでパーティ組んでた仲間に手紙を送った。流石にこの四人の中じゃ俺だけ役不足だと思って呼び出したんだ」
「……ミッツー、それホント?」
「ああ。お前らの信用できないギルドの奴等だけと腕は立つ」
二人は微妙な反応だが私個人としては戦いの人手が増える事はそれだけ危険に対処できて安全性の向上に繋がるのでいいことだとは思う。
「お仲間は幾人ほど呼ばれました?」
「3人。魔法使いと魔剣士と弓使い、弓使いだけエルフであとは人間、そんで全員俺の女友達。しかもSランクの天才実力者ばかりだ……お前ら見た後だと多少心配になるけどまあ、仲良くしてくれ」
「魔法使いと魔剣士の名前は?有名な魔法使いならお姉さん知ってるかも」
「私も戦士の名前だけ、後で見つけ次第ぶっ殺しに行きます」
「ちょちょ!ルナシーさん物騒ですよ」
「お前らどんだけ人の事信用できないんだよ。教えるけど」
私達は彼らの名を聞いた。合流するメンバーはどれも聞き覚えのある名字をしていた。それらはそれぞれが剣と魔法の名家であり通常であれば強い方達だ。
そう、通常なら。
「あー!!あの魔法使いの娘さんか。小さい頃あった事あるかも」
「……この人親死んでません?」
「こいつらまだ14、5だしリューナはいつ会ったんだよ。ルナシーのは……そういや聞いてなかったけどそうなのか?」
「……あっこの人修道院のかなり古い名簿で見ました。確か『狼を連れた化け物に襲われた』って運び込まれて」
「セレネさん、世の中には言っていいことと悪い事があります。多分これは母も絡んでますが」
ルナシーから凄まれる。もしかして昔闘ってどうしようなくなってここへ運び込んだんだな。ちなみにこの人は治療した後無事帰宅したらしい。
さて、それでなのだが結局この人達は強いのか?
「Sランだから一応はドラゴンソロ討伐くらいなら出来るから、まあ」
「家(黒き森)で無双できますか?」
「それはまだ試してはないな。調査に魔法使いの奴が行ってたくらいから」
「お姉さん魔法使いの論文とか気になるなー」
「いやギルド勢だから論文とか書くやつじゃないし……」
「じゃあいいや」
……多分強いんだろう。しかしそれ以上にこちらの面々の方がぶっ飛んでいて聞いた情報だけではそもそもの比較にならない。
時間もそこそこ経ち、王都の賑やかさも次第に静かになっていく。そして丘を超えた先あたりから目的地と思わしき転移魔法がある気がしてきた。まだ丘の下だから見えてはいないけれど何か強大な魔法が作動している気がしてソワソワする。リューナさんもそんな感じになっている。けどあちらは絶対何かを弄くろうとしてる顔だ。
「リューナさん、まさかこの先の魔法にイタズラとかしてないですよね」
「そんなことするわけ無いじゃん」
それは失礼な事をした。
「デバッグと整理はしてるけど。少し形歪だし」ボソッ
「?何か」
「ううん、何でもないよ!!」
「あー、確かに漠然とだが魔法が作動してる気がするな」
どうやら私達だけでなくミツキさんもこれを感知できたようだ。そういえば曲がりなりにも彼も魔法を使えたな、研究に関わりが少なく演算も一緒にしてなかったからすっかり忘れてた。それとは対局にルナシーさんはどうでも良さそうに窓の外を見ている、気がついているのか気づいてないのかよく分からない。
「ルナシーもなにか感じるものがありますか?」
「魔法的なものですか?無いですね。魔法はからっきしなので」
馬車は進み転移魔法の所へ到着する。半径50m程の緻密な魔方陣が数人の魔法使いにより敷かれ既に何個かの物資が送られている。今もなんか私達の使う道具が光とともに転移された。
「やっぱりアレがそうみたいです。思ったよりも多量の魔力で動いてますね」
「そう?輸送する物の大きさがこの規模なのは分かるけど単に効率が悪いからだと思うよ」
「じゃあリューナ、お前ならどうやってこの規模作動するんだ?」
「そりゃーミッツー、時空間捻じ曲げたり座標書き換えたりしてだよ」
魔法の傾向からしてやりかねないとは思ったけど出来るのか。
「セレネ、引き気味なところ悪いですけどあなたの専門分野の回復に関して言えば周りはあんな感じらしいですよ」
話ながらも周りではせっせと転移の仕込みをしている。いよいよ転移するらしい……なんか緊張してきた。
<ソレジャアテンイシマース
外の魔法使いの注意の後私達の馬車は転移した。
バシュッ
ーーー
「オロロロロロロロロロロロ」
「ルナちゃん、平気?」
「回復魔法掛けるので早めに気分が治るといいですね」
「転移酔いって……お前三半規管弱いのか?」
「知らねえ……知りませんよ……うっぷ……自力で来ればよかった……」「お嬢は今度からそうしましょう」「荷物は静かにしてください」
現在地 谷の村周辺
私達の乗る馬車は森のそこそこ開けた場所に転移した。
転移の感覚は高い所から落ちたみたいな妙な浮遊感で初めてだった。しかし人によってはこれで酔を生じるらしく、実際にルナシーさんがその餌食となっている。
荷物類は既に村へ運ばれたようでタイヤ跡が何処かへと続いている。ルナシーさんの調子が治ったら早く行こう。
「いや……行きます。吐きそうになったら窓から顔だして吐きます」
「えぇ……汚いですよ」
それから馬車を一時間ほど走らせて村が見えてきた。商人の中継地にもなっているらしく小さいながらも宿屋が見える。しかし普段なら賑わってるであろうそこは今や見る影もない。話を聞いてみるとやはりこの辺りに放たれた兵器の事だ。有用な道が絶たれた為ここに来る者もめっきり減ったらしい。
「あ、でもちょうど昨日かな。なんか強そうな集団が来たな。なんでも冒険者ギルドのSランクで勇者の仲間だとかなんとか」
「それは、ありがとうございます(恐らく彼らがミツキさんのお仲間でしょう)」
「ありがとなおっさん。どの宿屋にいる?」
「あー、どの宿屋かは知らねえや。だけと多分あの人達の事じゃないかな?」
「え?」
指を指した先には……!?え、何あれは。リューナさんほどではないがとんでもない魔力量を持つ集団がいた。
「お、あいつら。おーい!」
ミツキさんがそれに遠くから声をかける。彼らはそれに気がついたようでこちらを見た後こちらへ来た。
「おおっと、何処かから聞き覚えのある声」
「聞いたことあるって……まんまミツキの声じゃんかー」
「あ……あそこだ。また女の人連れてる……」
「おー、待たせたな。お前ら元気にしてたか?」
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ナツメ