せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜 作:囚人番号虚数番
「(……はぁ。私が王様に命を受けるなんて)」
淡々と職務をこなしながらあの手紙の内容を思い出していた。
「セレネ様へ
本日はお日柄もよく……
〜中略〜
P.S.長々と書いてしまったが要は君の実力を見込んで戦争に参加してほしい。君の魔法の腕は町の方では噂になってるんだ。回復魔法も使える君ならどんな戦場でも活躍できるだろう。まあ、王の命だから断りようがないけど最悪血は見せないようにはできるよ。じゃ、いい返事を待ってるよ。
Black Queenより 王の命で」
戦争……近頃この国では隣国と戦争をしていると町の人から聞いた覚えがある。修道院から出ない生活が長いから詳しい事は知らないけれど、既に両国ともに新兵器や強力な魔法も使い無数の死者を出していて前線はこの世の地獄だと言われている。
そのような人の命が軽い所に聖職者の立場につく私のような者がいていいのだろうか。これが人の業の渦中とはいえ、これが誰かを助けるならば神は許すのだろうか。
倫理的な問題でも課題は多いが、もう一つ心配なことが一つ。
「(魔法の腕……たしかに人よりは魔法の知識は持っているつもりですが人様の参考になるような物ではないような)」
私が他人に話せる様な少しばかりの自慢、それは私が回復魔法を使えるという事だ。
私がまだ小さい頃、図書館の本を整理している時にたまたま魔導書を見つけてしまった。それで見様見真似で簡単な魔法を覚え、それを今の先輩方に見せたらその本を私にくれたのだ。今となってはかなり太っ腹な行為だと思うがここから出て行かないことを見越した事だったのだろう。
閑話休題
それから時間を見つけて私はその本を研究した。初めは火や水などその時読んでいた冒険譚に影響されて気になった物を研究、取得していた。しかしそれらには適性がなかったらしく全く魔法が発動しない。今でもそうだ。しかし、それとは対局に光に関する魔法はやたらと使えた。幸運な事にここは修道院、人々を癒す為の魔法の多い光の魔法は私が使う最も強い魔法となった。それでたまにここへ訪れる病人や怪我人の治療にその力を使っている。
ここまでで私の何が駄目なのかというと、この場では自身の実力の測定が不可能だからだ。修道院という性質上、私には他者との関わりが少なく他に魔法が使える者を知らない。院内の者が、とも考えた探したものの存在しなかった。それもそのはず、世間では魔法というものは学者、もしくは一部の冒険者か聖職者、聖職者だけに限ればその中でも特に位の高い専門職しか理解する者はいないという。何故魔法の知識がそのような物なのにこの修道院に魔導書が、というのは未だに不明である。
「(今の実力だと確か……腫れ、痒み、虫刺され、切り傷、腹痛、風邪、それと毒の分解呪いの解除、その他諸々。それ以外も出来ない事はないですか数年に一度使う程度なので少々腕が心配ですね)」
一応、私ですら院内の者から凄いと褒め称えられる実力はある。なら世の魔法使いというのは死者蘇生でもするのだろうか。
「はぁ……」
とりあえず話は夕食後なのでその時になるまで真実は分からない。今は部屋にある研究書のどれを優先すべきか考えることにシフトしよう。
ーーー
現在時刻 夕食後
現在位置 院長室前
話すことでもないしあの事は秘密にして約束の時刻に院長の部屋に訪れた。
「……院長室に呼び出し、ですか」
治療時は当たり前のように会話していたが彼女、院長はかなり口が悪く院内の者から嫌われれている。私も尊敬こそしているもののこんな事でなければ関わりたくないお方だ。
「(院長、今日は機嫌が悪そうでしたし2、3時間の罵詈雑言は覚悟しておきましょう)」
私は心してその部屋に入る。院長が神妙な顔つきで手紙……それも私とは別の送り主の国からのを読んでいた。
「あの……言われた通りやってきました。それは別のお手紙でしょうか」
「そうさ。何度読んでもこの手紙の内容がクソだったもんだから書き間違えじゃないか心配でね」
院長はその手紙を破り捨ててくずかごの中に捨てる。国からの物をそのような扱いでいいのかは多分聞いたら怒られる。
「さて、本題だ。あんた、魔導書と研究書は持ってきたね」
私は持ってきたそれらを彼女に渡す。長年私が読んで日焼けした古本、可能はそれをひったくるように取ったあと中身を一瞥した。
「うーん……」
「(ますます顔が険しく……私国の命をこなすのには力不足でそれについてお怒りでいらっしゃるのでしょうか)」
「あんた、魔導書と研究所の光魔法は全部使えるかい?」
「は、はい!!」
唐突に聞かれたものだから返答の勢いが良くなってしまった。
魔導書の魔法は使用頻度こそ少ないものは多いが光魔法であれば何でも使える。ただ一部の魔法は体質に合わなかったり圧縮して効率を良く出来たので改造した。その結果、色々いじって使いやすいようにした研究書にまとめてある魔法をメインで使う。魔導書はもう公式を確認する程度でしか使わない。
「……奴らの気持ちも分かる」
院長はそう呟きながら今度は私に数枚の書類を渡してきた。
そこには沢山の人の名前と病状が纏められた書類と医学書の治療困難な病に関するヶ所からの引用文だった。壊死、伝染病、薬物依存、脳損傷……纏められた病はこの表に書かれた物と一致する。どれも酷い病気、しかも末期だ。もしこの様な状態の患者が訪れてきても私にも治療する自信はない。
「何勝手にいじけてんだい」
「え、あ、ごめんなさい。この人たちも私が治療をすることが出来たならと思って」
「そこに書いてあんのは全部あんたが昔治した病人だよ。年食っておっ死んだ奴以外は今もピンピンしてる」
「………え?」
「今日の兵士もそうさ。何でも来る途中賊に襲われたらしいが酷い怪我だった。私の見立てだとあんなの町医者ん所だと手足の数本は切られてるね」
「……それを私が…………え、ええええええええ!!??」
「耳元で叫ぶんじゃぁない!!耳が悪くなる!!」
「ごめんなさい!!」
驚きのあまり叫んでしまった。この末期の患者を、私が?
「今までおかしいと思わなかったのかい?普通血を吐いてるような奴は病院から投げ出されたどうしょうもない連中だ」
「でも、何で私のところへ?」
「街じゃあんたはこういう触れ込みで有名人さ。『老いと死と恋心以外治療可能』って。なかなかセンスあると思わないか?」
「センスはたしかにあるような……」
これが私の治療を施した人たちなのか。改めて名簿を見返す。私の読み間違えじゃなければ大富豪や貴族なんかの名字がちらほらと見受ける。い、いつの間に……
「ここまでで分かっただろ。あんたは国の上層の中じゃ有名人もいいところ、何でも治せるすごい医者だ。……で、ここからが本題だ。セレネ、あんたはこれから聖女だ」
「え、聖女?」
「そう、それが国がお前に与えるあんたの立場だ」
「………はぁ!?いやいや、そんな……大昔に書かれた聖典に記載されてる聖女が実は私っていうのは無理がありますよ」
「あたしもそう思う。だけど驚かれても国がそう言うんだから諦めな。いいかい、後で詳細な資料は渡すけどお前はこれから聖典の聖女だ。内容は分かるな?分からないなら聖典の聖女のページを開きな」
聖典は魔導書の次に小さい頃から読み慣れた書物、暗唱も余裕でできる。
「聖女は私達の信仰する神の言葉の中の聖人の一人で『聖女、万人を癒し悠久の命授けん。聖女、道外れゆく者に浄罪の光与えん』から始まる節が有名な人物ですよね」
「国はそれがあんただと。こじつけにも程がある」
そうだ、これはこじつけだ。私には癒しの力こそあれど浄罪に値する力は無い。正確には教義上殺生が忌避されるから使う機会が無かったというのが正しい。
「でも魔法自体は使えなくないんだろう。素直に行きな」
「ええ……」
「迎えの馬車が明日来る。それまでに魔導書を見返すなり何なりしときな」
「え、明日!?」
「手紙持ってきたのがあれだから発送が遅れてた風だよ」
そんなわけで、私は明日から聖女として久々に修道院の外に出ることとなった。
前作から思っているのですがこのような後書きでは何が正しいのだろう。テンプレを作るべきなのかな。