せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜   作:囚人番号虚数番

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【20】作戦会議(失敗例)

現在地 村の宿屋

 

 

 

宿屋の一室。軍がお金を出してくれて私達の泊まる宿は一人一室借りてくれた。今はその一室、ミツキの部屋に集合して彼の話を聞いている。

 

「こーんにっちわー。あなた達が国から選ばれた勇者?」

 

「ん、ねむ。ミツキ、私は寝るから話は私以外で回しといて」

 

「あ……えっと……よろしくおねがいします……」

 

彼女らは彼の事前説明の通り彼の旧パーティの仲間。際どい格好の年下の魔剣士、先程から眠そうな同年代程度の魔法使い、それと気弱で不健康そうなエルフの弓使い、私達程ではないがかなり個性的な面々だ。

 

「という訳だ。お前ら宜しくな」

 

「宜しくな、じゃないんだよな……普通こういうのは僕に話を通してよ。それならそれで宿も借りたのに」

 

因みに彼女達は私達とは別の宿に泊まっているらしい。

 

リューナさん、ナツメさん、ルナシーも同室にて同じ話を聞いている。リューナさんはいつも通り楽しそうに話を聞いているがルナシーさんは興味なさそうに自身の大剣の整備をしナツメさんは……

 

「……うへへ」

 

……彼女達の豊満な胸に視線が釘付けになっている。少し涎も垂れてるし、彼は本当に男性の欲望を体現している。

 

「ナツメさん、そうゆう目を女性に向けるのはいけませんよ」

 

「うぇっ!?嫌だなー。ぼぼぼ僕がそんな紳士的でない行為をする訳無いじゃないか。ミツキからも何か言ってくれ」

 

「胸……まあデカイよな。でもあんま見るなよ」

 

「んー?ミツキにはいつももっと見ていいって言ってるのにーほれほれ!!」

 

魔剣士の彼女が彼の手を取り胸を当てる。私は彼女を止めようとするもその前に彼が慣れた手付きで止めさせた。

 

「セレネ、こいつはこうゆう奴だ。お前には不愉快だと思うが耐えてくれ」

 

「えっでも……はい(な、なんて破廉恥な……でもあの胸……羨ましい)」

 

心の中で胸によく手を当てて考えてみる。彼女らとは違い私は垂直で虚無感に溢れている。……うん、どうせ使う事もないから気にしないでおこう。

 

 

「セレネ、これどうぞ」

 

彼と彼女とは別にルナシーが私に何かを手渡してきた。

 

魔導書だ。比較的新しく使われた跡こそあるがあまり読まれていないらしい。所々に水をこぼした様な染みもある。

 

「これは?」

 

「んぁ〜……私の枕返して……」

 

「あれの本です」

 

ああ、そういう?因みに内容は呪文魔法、数式に慣れた頭に詩的な言い回しは読むと頭が痛くなってくる。

 

「でも何故これを私に?」

 

「あの寝てる奴がどれだけ強いか聞きたいのですがリューナが根暗野郎と話してて仕方なく。で?強いんですか」

 

んー……この系統には慣れないけれど大まかにはどういう魔法なのかは分かる。この魔法がすべて使えるとしたら流石Sランクといった所、多属性でかなり高難度な魔法が使用できる事になる。光魔法も使えるらしい、理論に落とし込んだ後の難度次第では私も使えそうだ。

 

「(でも総合的な力は私には判別しえませんね)噂通りの強さですかね?でも詳しい事はリューナさんにお願いします」

 

因みにそのリューナさんはというあと一人の弓使いの方と部屋の端で二人で盛り上がっていた。

 

「あの……お姉さん。王都でのミツキは……どうでした?その……元気でしたか……?」

 

「それは後で本人から聞いてみて、きっとそうしたら盛り上がるよ」

 

「え、なんで……」

 

「だって、そんな顔してたら誰だって分かるぞい。さては君、彼の事好きだなー?」

 

「…………えっ!?」

 

失礼、恋愛の事に関してでしたか。ルナシーが話しかけづらいのも分かる。

 

ーーー

 

「そろそろ本題に入ろう。ミツキ君の呼び出したメンバーにも今回の作戦を伝えたいからね」

 

暫くの雑談が終わりナツメさんが作戦の振り返りをする。私達は事前に聞いているので彼女らの為だ。

 

「今回戦いに参加するメンバーは僕以外の全員、それでいい?」

 

「「「「「「え?(お前)(あなた)(ナツメ)(ナツメさん)参加しない(んですか)(の!)(のか)?」」」」」」

 

「揃いも揃ってそんな……勇者メンバーには言ってなかったっけ?僕元はデスクワーク専門だよ?戦えるわけ無いじゃん」

 

……言われてみれば確かに、彼が戦うとは一言も明言していなかった。

 

「(……じゃあ闘技場で戦いを棄権した理由ってこうゆう事だったのですか)」

 

話の続きだ。まず数日は該当地域の探索、そして原因となる生物を見つけ次第作戦を立ててから討伐、もしくはその場で討伐可能なら討伐して帰ってくる。

 

探索は現在2日に一回、日没から夜明け前に行う予定だ。視界の悪い森では昼間の方が安全だが唯一の生還事例が夜間での派遣時のみ、確信はないがそれを参考との事。

 

作戦実行は今日の夜。今回は地図を参考に事前調査で踏み入れた領域の再捜索が主だ。今はまだ昼間だ、こと後すぐに寝るなり準備をするなりと時間はまだある。

 

「で、問題は『出会って戦闘になった時』。僕の方の人は平気だと思うけど……ミツキのお仲間さん、君たちは安全な内に帰ったほうがいい」

 

「え!戦ってもないのに帰宅司令!?」

 

「……zzz」

 

「あの……わたし達……一応Sランク……です」

 

強さには自身のある筈の彼女達にとって暗に弱いから出ていけと指示されるのは意外なことであり混乱している。

 

「うん。正直お姉さんもおすすめはできない。魔法使える人、ちょっと魔導書見せて」

 

リューナさんが魔剣士と魔法使いの方から魔導書を借りてパラパラとめくる。そして一通り見て返してから結論を述べた。

 

「この魔法であなた達の魔力量だと結構キツイんじゃない?ねぇナツメちゃん、相手って多分上から4番目位でしょ」

 

上から3番目というと冒険者だとS、A、B……Cランク?なのかな。冒険者の階級の仕組みは知らないから予測でしかない。でも値的にはSランクなら楽勝な依頼だと思うけれど。

 

「おいおいおい、この司令ってCランク依頼程度なのか?それなら寧ろ俺らだけでいいじゃねえか」

 

「いい加減にしてください。あなたみたいな情弱だけでも足手まといなのに売女と根暗と三年寝太郎が加わったら私が戦えません」

 

「ルナシーさん!?それは言い過ぎですよ」

 

キレッキレの暴言にミツキさんのお仲間も怒ってる。魔法使いさんは相変わらずだけど弓使いさんと魔剣士さんが特にだ。弓使いさんに至っては矢を装填しかけてる。魔剣士さんは剣を抜いて……え、抜いてる?

 

 

 

「そこの赤い子、撤回して。私は別にいい、仲間を貶すのは仲間とはいえ許せない。覚悟っ!!」

 

魔剣士さんは一瞬でルナシーさんと距離を詰め首元に向かい剣を振る。

 

「たあっ!!」

 

私が意識を向けてなかったのもあって斬撃を放つ腕は目に追えない。一直線に向かう鋭い刃、しかし気迫に押され気味だったが多分殺すつもりではないのかルナシーが全く回避しない事を察すると速度が若干落ちた気がする。

 

しかし魔剣士はここで慈悲を見せた事を後に後悔することになる。彼女以外、少なくとも私にはルナシーが攻撃を避けない理由を分かってしまった。何故なら……

 

「……チッ」

 

舌打ち。首が斬られる直前だというのに何を不満げに思うのか。

 

 

 

「せい」

 

小さく落ち着いた掛け声。首へ向かう刃を素手でへし折り投げ捨てる。そしてそのまま魔剣士さんの腕を掴み地面に投げた。

 

「なっ……!」

 

「それっ」

 

加えて流れるようなスムーズな動作で彼女の蹴り飛ばす。小さな体格から想像つかない怪力、小石を蹴るみたいな軽い蹴りで彼女の体は凄まじい速度で吹き飛んだ。

 

 

「セレネちゃん壁に防御張って!」【対物耐性強化】

 

「っえ!?あ、えっと」【円環 ジュピターの理】

 

リューナさんの急な指示に驚きつつ私も防御を壁にかける。彼女の方は魔剣士さんに防御魔法掛けている。

 

ドゴーン!

 

ドサッ

 

パラパラパラ……

 

半径を大きめに設定した【円環】で擬似的に壁全面を保護したお陰で激突して壁が壊れることは防げた。しかし……

 

「がっ……痛っ……何するのよ!!」

 

威力を殺し彼女の怪我を防ぐ事は出来なかった。【円環】に激突してに床に落ちた彼女は四肢がありえない所から曲がり骨が露出して血も出ている。すぐに治療に入るとむち打ちや脱臼、全身骨折、内臓破裂、肺挫傷、それと感覚器官の機能低下と若干の意識障害……外傷の有名な所はだいたい取り揃えていた。

 

「(この人なんで叫べたんですかね。普通この怪我だと話すどころか呼吸すらきついはず、即死でもおかしくない。流石Sランクの冒険者、強い肉体と精神力です)」

 

若干完治できるか自身が持てなかったがいつもの様に魔法で無事に完治させることができた。後で栄養補給もさせないと。

 

「おいルナシーてめえっ!!」

 

「なんだ、やり合うんじゃないんですか?がっかりです」

 

「ルナちゃん、やりすぎだよ!!お姉さんも流石に怒るよ!!」

 

「うるさい……zzz」

 

「あの……みんな……おち……」

 

「皆さん、落ち着いてください!!……ルナシーさん、何故?」

 

私が声を荒げるのはあまり無いが場を収束させるのには寧ろそれが効果的であった。周りは一旦冷静になってルナシーさんの意見を聞く。

 

「攻撃するつもりが無いのは分かってます。あんなのろまな攻撃、まさか本気な訳無いでしょうし。攻撃したのは本能です、手と足の方が動きました」

 

「ふざけないで!たったそれだけで剣まで折って……馬鹿なの貴方!」

 

「そうだ、お前がふざけた理由なのか?違うよな、ホントの事を言えよこの暴力女!」

 

しかし、ミツキさんは怒りを抑えきれずルナシーの胸ぐらを掴みまくし立てる。そこへ治りたてでまだ足のおぼつかない魔剣士さんも加わり気迫が更に強くなる。

 

 

 

「はいはーい、喧嘩はやめやめ。僕の話を聞いて」

 

しかしナツメさんがそれを引き剥がし無理矢理場を鎮める。普段とは違いここだけは有能だ。

 

「これで実力は分かった?他の皆も彼女程ではないけれどそこそこ強い、それこそ……今回は参戦は認めるよ、来てくれて帰れは失礼だったし。あと武器を使う喧嘩は宿の外でやってくれると僕の責任にならないから嬉しいな」

 

最後の一言が無ければ数秒前の発言を撤回しようとは思わなかった。ひとまずやっと参戦を認められた彼女らは多少の怒りは収まり夜の準備をする為彼女ら自身の宿へと戻った。

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