せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜   作:囚人番号虚数番

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調査開始

現在時刻 日没後

 

現在位置 谷の森 入口

 

作戦実行の時刻となり全員が森の前へと集まる。

 

「全員揃ったね。僕は見送りだけだからこの後宿に帰る。君たちだけで頑張ってくれよ」

 

「はい。全員が怪我なく帰還出来るように全力を尽くします」

 

「はーい、行ってきまーす」

 

「お嬢が暴走しないように努力はします」「狼さん、余計」

 

私とリューナさん、それとルナシーの狼以外は各々探索に備えている。ミツキさん御一行は宿での事もあってなかなかに燃えている。

 

「ミツキ、久し振りに私とのコンビネーションを見せてあげようよ!!」

 

「眠いけどミツキがいるならしゃーなし……zzz」

 

「ミツキさん………後衛は任せてください……」

 

「おう。ギルド最強のSランクパーティとして頑張ろうな」

 

魔剣士さんは昼間折られた剣も替えがあったのか別の剣を所持していた。他の皆さんも気合の入った魔法付きの装備をしている。

 

 

 

ルナシーはさっきから森の暗闇をじっと見つめている。

 

「……よし。狼さん、行きますよ」「はい、お嬢」

 

出発直前になったからそろそろ魔法のバフを載せてもいい頃だろう。軽めに身体強化系の魔法を全員へ付与する。

 

「ん?セレネちゃん、自分には魔法は……ってそっか」

 

リューナさんは私自身にそのバフを付与しなかった事に気がついて心配した。

 

「ええ、だから私の事は気にしないでください」

 

「セレネちゃんが良ければそれでいいんだけど……お姉さん心配。あっそうだ!!」

 

彼女は何かを思いついたようで杖を出して魔法を私にかけた。それは私が皆にかけた魔法と同じ作用をする、つまり私が使った魔法を態々私にかけてくれたのだ。

 

「自分で掛けられないなら誰かにしてもらえばいいじゃん!!」

 

「え、でも……」

 

「あーあー聞こえなーい!!文句は受け付けませーん」

 

「……分かりました。ありがとうございます、リューナさん」

 

こうして下準備も済み、各々魔法で辺りを照らしつつ私達は夜の森に足を運んだ。

 

ーーー

 

現在位置 谷の森

 

森に足を踏み入れてから数十分、鬱蒼とした森が続き一向に変化は見られない。足元も良いとは言い難く少し疲れてきた。少なくとも私は魔法を再度掛け直そうかと考えてみる。

 

皆さん周りの警戒に勤しみそういうのはなさそうだ。前衛担当の方々はいつでも剣が抜けるようにピリピリしている。バフも薄くなってる気もしない。

 

「(必要はなさそうですね)」

 

 

 

対して後衛の方々、つまり魔法主軸の私達はというと……

 

「……zzz……zzz……はっ……」

 

「……何だろ、あれ」

 

普段はっちゃけているリューナさんが今日は珍しく落ち着いている。前衛の彼らと同様周りをキョロキョロ観察している。

 

「リューナさん、いますか?」

 

「えっ?私ならここにいるけど」

 

「そうではなくて討伐の対象はどうですか?」

 

「ふふーん、私が考え事をしてるのを見抜くとは観察眼が鋭いね。でも残念、私は何も感じたりはしてないなー」

 

あ、そうではない、と。

 

「突然だけどセレネちゃんって植物詳しい?」

 

「えっ何をいきなり……」

 

「あそこに一本生えてるアレ、何か分かる?」

 

暗くて見えづらい、目を凝らしてその植物を探す。……あれの事か?

 

森の木に紛れて一本だけ周りとは雰囲気が違う木があった。森に生える木にしては細長く目測で高さは20m太さは10cmもない。表面に凹凸は無く色は判別しづらいが暗めの灰色、一定の間隔で横向きの白い筋が入っている。

 

医学を学ぶ上での植物についての知識も多少は入っているが少なくとも私の記憶にはない。つまりは医療への使用用途は無さそうな植物だ。

 

「ごめんなさい、私もあのような木は初めてです。でも少し怪しいだけで何というわけでも無いような……」

 

「見た目だけならね。実はお姉さん今生体感知系の魔法を裏で展開してるんだけど……あの木だけ反応がおかしい」

 

「えっ……?」

 

「おい、魔法3人組。何か見つけたのか?」

 

こちらが何かに気がついたことを察したミツキさん。探している対象ではなさそうなので何でもないと二人で返答する。それにこれが私達に悪影響がある証拠もない。

 

 

 

「(でも一応気をつけておいてもいいかもね)」

 

「(はい。ですが今は対象の事だけを考えましょう)」

 

「こっちはそれらしい物を見つけたぞ。見ていい気はしないけどな」

 

剣士組の方々が何か集まっている。しかも顔を真っ青にしている、ルナシーさんだけはあいも変わらず無表情だが。私達もそれを見てみる。

 

 

 

「…………うわぁ」

 

「な?」

 

「セレネ、低血圧で倒れないでくださいね」

 

ルナシーさんがそう忠告するのも無理もない。それは鉄臭く固まった血と錆で赤黒い金属製のゴミ山だった。構成しているものは武器や防具の成れの果てであり大穴が空いていたり歪んでいて使い物にならなかったりのもののみである。少なくともここにいる人を除けばまず人にはできない被害、それはここで起きた恐ろしい何かを想起させる。

 

「あー、こりゃひでえ」

 

「ひぇぇ……もう駄目だ……おうち帰りたい……」

 

「(弓使いさんに同情します。こんな惨状はあまり見たくありません)」

 

私達は禍々しいそれらに狼狽える。いくら修羅場を潜り抜けてきた方々にもキツイらしくミツキさんやそのお仲間も嫌そうな顔をしている。リューナさんに至っては少し距離を取り始めた。

 

 

 

「中が気になりますね」ヒョイッ

 

しかしルナシーさんだけは違いなんの躊躇もなくガラクタの中を漁り始めた。今だけは彼女の鋼鉄製の心が欲しくなる。

 

「皆さんもぼさっとしてないでさっさと手伝ってください。こんなペースじゃ日が暮れます」「今夜ですけどね」「狼さんにはジョークセンスが無いようです」

 

彼女に続くように他の皆さんも続々と調べ始めた。私も少し抵抗感はあるものの調べてみる。錆びたゴミ山から手か足の鎧の1つを引っこ抜く。他の例にもれず破損が激しい。内側に血の塊がこびりついている。

 

血の塊をよく観察すると毛のようなものが多く混入していた。それも長く黒く、手足の体毛とは程遠い。

 

「(血の汚れに髪毛が巻き込まれて酷いことになってる。って何故手足の防具に髪の毛?)」

 

防具の破損の方にも目を向けるとなにかのパーツとの接合部の金具が外されていた。形からしてここに何かを打ち込んで固定していたらしい。その何かは関節部に挟まっていたから物自体はすぐに特定できた。

 

「(これは……穴の空いた甲殻の破片?)」

 

穴は固定具を嵌めた跡だろう。恐らくこれを固定していたのはこれだ。防具の素材が取れただけだった、と落胆しかけだが違和感がある。

 

この防具だけではその違和感に気がつけなかったから他のものも見てみよう。再び適当なガラクタを手に取り情報を元に他の物も調べてみる。意外にも何個か調べただけで違和感の正体は簡単に気がつけた。でも確信するのは冒険者の方に聞いてからにする。

 

「剣みたいだけど刃だけが外されてるな」

 

「こっちはまたベルトの金具だよ。流石にこれは不自然だね」

 

「ミツキさんと魔剣士さん。1つお伺いしてもよろしいですか?」

 

「何だ?こっちはこっちで調べてるが収穫は無い」

 

「持っているのは剣の柄と金具ですか。分かればでいいのですかこれを見てください」

 

私はその甲殻を彼らに見せる。すると少し考えてから二人で相談した後に質問してきた。

 

「これ、ドラゴン類の甲殻だよね。セレネだっけ?これ、どこで拾ったの?」

 

「防具に付いていたものです。で、これから調べるならでいいのですが……」

 

「早く言ってくれ」

 

「『金属製の部分だけ捨てられている』気がするんです、この山」

 

「どういう事?」

 

「さっきから革ベルトの金具が多い気がして何個か調べてみました。そしたら革素材自体が見当たらないんです」

 

「ああ、言われてみればそうだよ。私はまだ見てない。ミツキは見つけた?」

 

「見てないな。それで、ドラゴンの甲殻も取られかけてるとなると相当強い奴が鎧を捨てて逃げた、もしくは……殺された。となると」

 

「今回の討伐対象かも知れませんね」

 

「おっミッツー達は話が進んでそうだね。お姉さん達にも情報プリーズ」

 

リューナさんと弓使いさんにもその情報を共有、意見を出し合う。

 

「で、リューナさんも何か分かったことはありますか?」

 

「ねぇ、それって『金属を捨てたんじゃなくて動物の素材だけを持っていった』とは考えられない?それで余った所はここへ捨てて……ん?」

 

リューナさんの言葉が止まる。動物素材を持っていく奇妙な行為も気になるがそれ以外にも何か気がついたのか?

 

「ミッツーとそのお仲間、私の間違えじゃなければセレネちゃんの拾った甲殻ってどのレベルの依頼で入手できる?」

 

「……え、Sランク用の依頼……です……」

 

弓使いさんがおどおどしながら答えてくれだ。つまりあの鎧の主はSランク冒険者の所持品……あ!?

 

「リューナさん、もしかして!?」

 

「多分ここは『ゴミ捨て場』。誰かが先遣隊と冒険者の鎧を剥ぎ取ってここにこのゴミ山を作った。しかも先遣隊が派遣された期間もまちまちっぽいから長期的に。とすれば、もしかして?」

 

「こんな所で話してる場合じゃないですね」

 

「なら『それ』が来る前に逃げるのがいいな。地図に記してから別の場所を調べよう」

 

討伐対象がここへ来るのならば今は記録だけして安全地帯へと去るのが一番である。

 

「ならさー問題があるよー……ふぁぁ」

 

「魔法使いさん?どうしましたか?」

 

「あのちっさい子、一人で奥に行ってたよー……あっ」ドサッ

 

突然に彼女が倒れた!?敵かもとリューナさんは辺りを警戒し、私も彼女を起こそうとする、と?

 

「zzz……」

 

寝てるだけだった。ってそこではない。ちっさい子、ルナシーさんが奥に行ってしまった。

 

「ルナシーが居ないだと。おい皆、移動は中止だ。ルナシーを探すぞ」

 

ミツキさんの提案には全員が賛成した。いくら強さに自身がある彼女とはいえ仲間が一人自由に動けば相応の危険も伴う。

 

「お嬢の場所なら分かります」

 

狼さんがいい提案をしてくれた。彼は狼らしく彼女の匂いを覚えていてわずかに残る匂いを追うとのこと。

 

「ありがとうございます。ルナシーさんの所まで案内お願いします」

 

「(どうか安全でいて下さい、ルナシーさん)」

 

ーーー

 

 




作者の癖で前作から!が…と同様に複数個付けてしまう事が多いのです。画面が煩いので今後は自重します。

さらに…の多様も見受けられるので今後矯正します。

どのキャラが好きですか?

  • セレネ
  • リューナ
  • ルナシー
  • 狼さん
  • ミツキ
  • ナツメ
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