せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜 作:囚人番号虚数番
一番初めに初撃へ移ったのはミツキさん、続いて魔剣士さんだ。
「てんめぇえええ!ぶっ殺す!」
「仲間の敵!」
魔力を付与して輝いた剣で蛇に斬りかかる。蛇は回避せず、巨体が傷つく……はずが。
ガキンッ
「なっ!」
「弾かれた!?ってうわっ!」
蛇の尻尾に魔剣士さんが吹き飛ばされた。大柄かつ高速の力は凄まじく、何本かの木を折りながら飛んでいった。
「魔剣士さん【回復魔ほ「要らない!それより攻めて!」
彼女は回復を待たずに再び戦いに行ってしまう。決してそこらにある剣ではない筈の業物、それが腐肉の体に一蹴された。つまりは何かしら手を打たないとまた弾かれる事もあり得る。
「セレネちゃん、ぼーっとしてないで弾幕弾幕!」
【2nd=秒針】
ドドドドドドッ
リューナさんも弾幕を展開した。魔法使いさんもやっと目を覚まして魔法を作動させている。私も加勢しないと。でもどうやって……
「セレネ、引け」
「ちょっと、うわっ!」
戦闘に加わろうとした途端ルナシーが私を引き遠くへ飛ばす。
「前衛には装甲が薄すぎます」
「え、でも協力を……」
私の話を待たずに彼女も大剣で戦闘に参加しにいった。そして大声でこんな事を私に言ってきた。
「あなたはあなたが思っている以上に頭にしか取り柄がありません。前衛で馬鹿してるより逃げながら傍観してるのがお似合いです」
えぇ……。なんてこと言うんだ。だけれどもすぐに狼さんが教えてくれた。
「お嬢の言葉を言い換えます『周りの状態を細かく観察しながら後衛でサポートに徹してください』ということです」
なるほど、その意見にも一理ある。私には回復位しか出来ない非戦闘員だ。ここで私が参戦して無駄死にするよりは大人しく裏方で回復に専念したほうがいいだろう。狼さんが回避を担当するから背中に乗れと提案される。ならお言葉に甘えて回復に徹します。まずは魔剣士さんの回復から。
ーーー
「せいっ!」「やぁっ!」
ガキンッ
「くそっ……まただ」「さっきから弾かれてる」
キシャァァァァア!!
「うわっ!」「【回復魔法】!」「セレネすまない」
ミツキさんと魔剣士さんは先程から攻撃しても弾かれ、私が回復するループが完成している。巨体の割に高速の強さにはスタミナ的にもかなり苦戦を強いられている。
一方苦しい状態とは対象的に他二人はというと
ズバッ バキイッ
ドドドドドドッ ドカァァン
「何ですこいつ、中々骨のあるヒモじゃないですか。戦いと聞いてこういうのを待ってたんですよ」「お嬢、流れ弾、流れ弾を気にして下さい」
「結構燃えてるけどこの蛇中々しぶといね。リューナちゃん直々にさいきょークラスの称号を進呈しよう!」【3rd=火時計】
二人は圧倒的なスピードと火力(リューナさんは文字通りの「火力」)によりやすやすと蛇の体に攻撃を加える。斬撃と残像と弾幕が飛び交う異次元の戦闘が繰り広げられている。リューナさんの掛けてくれたバフがなければ早すぎて見切れれなかっただろう。
キシャァァァァア!
蛇が彼女達に噛みつく。それをルナシーは下顎に剣を貫通させて地面に突き刺して上顎を素手で掴み逆に大きく開く。
べきべきベきっ
「リューナ、やってください」「もっちろん!」
そさてリューナさんが口の中に弾幕を撃ち込む。これにはさすがの蛇も重症のようで体がビクッと大きく動いた。しかし、あくまでもそれだけだ、すぐにまた攻撃に転じられた。
「火力だけじゃなくて体力面も良好、ぜひ実家に来てほしいですねこいつ」
ルナシーさんはこの絶望的な状態を楽しんでいるようだ。戦い始めから口こそいつもの心無いが表情はあの無愛想から一変、狂気的な笑顔となり大剣を振り続けている。彼女の体より大きな剣なのに腰の鉈の如く高速で巨体を切っている。
「ルナちゃんってそんなキャラだっけ!?」
「あたりまえじゃないですか。普段もこんな感じですよね」
「(絶対に違います)」
「でもちょっとワンパターンな戦いで飽きてきましたね」
先程から二人は猛攻を続けているが一向に相手が疲弊している気がしない。彼女の「飽き」はそのせいだろう。
「それじゃあ、久々に『練習』させて頂きます。皆さん、離れろ」
ルナシーさんはバックステップで一旦距離をとり武器をしまった。戦闘中なのに、何を始める?彼女は目を瞑り深呼吸をした後目を見開く。
【餓狼ノ型】
「(ルナシーさんの様子が変わった?一応【物理攻撃強化】を掛けよう)」
「お、セレネさんありがとうございます。行きますよクソヒモ野郎」「あ、やばい」
彼女の殺気が更に強まる。蛇も異常に気が付きミツキさんらへの攻撃を一旦やめて彼女へ向かっていった。
「……」
彼女は剣を中々抜かない。ミツキさんが攻撃の手を止めて彼女を助けようと走り出した。私も何かしないと……
瞬間、音もなく蛇が縦に二分された。
キシャアアアアァァ…………!?
ズドォーン……
「……抜刀術だけで即死。前言撤回、もっと固くなって出直してください」
斧に付着した腐肉と髪の毛を払い彼女は斧をしまう。彼女の斬撃を目で捉えることは不可能で何をしたのかさっぱり分からなかった。皆さんと私がバフを持っていたとしても視認出来ないとはなんて速度だ。
「(彼女にはこれ以上の強化はいりませんね)」
「斬撃が……見えないだと?ルナシーお前何した?」「ちょ、あの子どうなってるの?」「zzz……」
「ただ重火力特化のスタイルに変更しただけで特別な事ではありません」「すみませんミツキさん、これだけは本当にお嬢の通りなので納得して下さい」
「うひゃー、流石ルナちゃん仕事早いね。一撃で死んだよ」
彼女の攻撃でひとまず蛇は動かなくなった。……あれ?討伐対象が思った以上に弱い?私は追い出されるだけ追い出されて出る幕なしだった。
「ですね」
「はー良かった。お姉さんもっと強いかと思って弾数増やそうとしたのにざーんねーん」
「いやこいつ結構強いし硬かったぞ」「それじゃ帰ってねzzz……」「それより今は死亡確認が先だよミツキ。弓使いの敵が晴らせた確かめないと」
魔剣士さんはすぐに戦闘から切り替えて蛇を調べだす。それに続きミツキさんらも同じように蛇の切断面を観察する。私は……被害は少ないけれど一応の回復だけをかけてから調べよう。
「流石腐肉の蛇、やっぱり中も臭え肉でみっちりしてる」
「でも腐肉だけじゃなくて髪の毛もまじっ…………」
「でも内臓も特に無いし……一体この蛇は何?」
蛇の切断面及び中身は彼らの言う通り内臓はなくボロボロの腐肉と髪の毛と虫で満たされている。どうしてこんな物があの巨体を維持して動かせたのか不明だ。研究はしたくはない。
「……よし、適当だけどこいつもこんなんだ。死亡済みって事で討伐終了だな。帰ろう」
「弓使い……ごめん」
「気にしないで下さい魔剣士さん。あの蛇の不意打ちには誰も気づいていませんでした。お仲間が死んでしまった事はくやましいですが彼女の分も生きるのに私達の安全のために帰りましょう」
戦いが終わり余裕が出来たからな魔剣士さんが死んでしまった弓使いさんの事を悔やんでいた。しかし彼女がいなければあの蛇をただの肉塊だと錯覚していただろう。
「もう帰宅ですか、残念です」
「弓使いちゃん、お話楽しかったのに。死んじゃうなんて勿体無かった」
さて、私も帰路につこう。先程から会話に参加しない魔法使いさんも起こしてから。
「魔法使いさんも帰りますよ」
彼女は腐臭漂う死体の前だというのにしゃがみながらで寝てしまっている。仕方なさそうに魔剣士さんが彼女を起こしに向かう。
「ほら、帰るよ」
彼女が体を揺さぶる。すると魔法使いさんは押された勢いのまま体勢を崩し倒れた。
「…………え?」
彼女はいつもの様に目を閉じ寝ているようだった。致命的に違うのはその体に血の気が無く、対象的に胸がえぐられそこから流れ出す血により真っ赤に染まっている。そして体中に「黒い髪」が付着して、いや蛇から伸びる「髪」が致命傷になりうる箇所に刺さっている。
ヒュンッ
「いっ……きゃぁぁぁぁぁぁあ!」
突然「髪」が魔剣士さんに伸びる。彼女に触れるのに伸ばした右手に黒い線が入り体内を巡りながら全身へ回る。そして肌を突き破って全身から「髪」が生えてきた。
「がっ……し……いや………いやぁぁあ!」
「お、おいっ!平気か!?」
「あ………ああ………」「聖女様、背中へ」
「これは面白い事になってきました」
「魔剣士ちゃん!間に合え、【No.i=時……」
パァンッ!
無情にもリューナさんの助けが間に合う事はなく弓使いさんと同じく無残な死を遂げた。伸びて体内に入り込んだ「髪」が爆発し魔法使いさんと魔剣士さんの内蔵もろとも肉片に変える。
ズズズ……
重いものが地面をずる音がする。蛇の方からだ。二分された体の断面から「髪」が伸びて体を繋げる。しかし元の1本には戻らず結果的にY字の形で結合が停止。
「なんなんだ……おい何なんだよ!ナツメの野郎からこんなの聞いてねえぞ!」
ミツキさんが嘆く。そんな事みんな思ってる。今日の神様は理不尽だ。
二股の体はゆっくりと起き上がる。そして2つの別れた先が割れて「頭」が作られ双頭の蛇が出来上がり再び息を吹き返した。
彼の者は2度生きる。故「狩り」はまだ終わらない。
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