せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜   作:囚人番号虚数番

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されど聖女は祈る

【光柱 ピラーオブムーンライト】

 

ーーー!

 

「ひゃー派手にやるねーセレネちゃん」

 

「守れと言われたなら戦うのも致し方ありませんから……いい気持ちはしませんが」

 

私の参戦で戦いは更に熾烈さを増した。見た目的にも飛び交う弾幕の光で暗い森がまるで森林火災の現場みたいだ。

 

蛇は私達の戦闘の方法が大きく変わった事を瞬時に察し巨体を生かしたパワープレイから私達と同じく弾幕での戦闘に変更した。それでもなお双頭での複雑な接近戦も混在して迂闊に近づけず、かと言って離れても無視もできない混乱するような戦いを強いられる。

 

「セレネちゃん、弾来てる!」

 

「うわっ!ごめんなさい」

 

パァン!パパパパンッ!!

 

やっぱり戦闘向きじゃないや私。速度バフでゴリ押してるから対等に戦えているけれど戦闘に関しては素人だからちょくちょく被弾しかける。蛇の弾幕は爆発するから範囲が広く数も申し分ないので常に油断ならない。

 

「酸が駄目なら火でどうだ!強火でこんがり焼いちゃうよ!」【2nd=火時計】

 

「こんがり焼くなら私からも協力します!」【日蝕】+【流星 ラピッドスターダスト】

 

ズドドドド

 

無数の弾幕が蛇に当たり肉が焦げる匂いがする。蛇は悲痛な声を上げながら弾幕で反撃してきた。反撃は回避ができる範囲だから別にいい。肉が焦げたところで炎上が起こらないから痛手が与えられないのが問題だ。現状蛇の事実上の被害が少ないから相手が一方的にこちらを疲弊させている状態である。このままでは(リューナさんは不明だが私と同じく)スタミナと集中が切れるのも時間の問題である。

 

だけれどもタネは仮説程度だが予測できた。できてしまった。

 

ルナシーさんから渡された薄く黒い塊がある。それを構成する物は蛇から出てくる「髪の毛」……いや繊維状の何かだ。かなり緻密に織り込まれていてほぐすのに苦労したが最終的に細い繊維となる。繊維の1本1本は死体からとは思えない程にかなり肌触りがよくツルツルしている。繊維同士を接着していた粘性の何かが酷く匂い触り難いのは変わりないが。それが撥水性を持ち泡の水分を弾き損傷を抑えている……のだと思う。加えて不燃性もあるかもしれない、でもこれ以上は戦闘外で研究だ。

 

更に戦闘を通して考えられる事はこの繊維は恐ろしく耐久性がある。あのルナシーさんの重火力をある程度受け切る程の頑丈さは勿論、柔軟性も蛇の動きに対応できると申し分無い。

 

そして蛇の表皮の防御、髪の毛もとい繊維が自由に動く事を考えると繊維こそが「外骨格」であり「筋肉」の役割を果たしている。腐肉自体が動いているのではなく自由に動く袋に腐肉という中身を入れて蛇の形になって動いている。戦闘前に蛇の体を構成する腐肉の山を漁った。その時は何も考えていなかったが「死体は肉と繊維のみで骨は極端に少なかった」。何故そうなのかは不明だけれど蛇には「骨が存在しない」という事実がより一層説得力を補強する。

 

その予測をもとに攻略法を思案する。

 

討伐の為に一番問題となるのは「防御力」。これも予想にはなるが【水時計】をリューナさんが撃ち込んだあたりから繊維の織り込み密度が高くなって更に高強度、高耐久となっている。実は戦い始めは火が効きづらくなっている感じはあった。開戦間近は炎により常にどこかが赤々と肉が燃え肉と灰がボロボロ落ちていた。ところが件のタイミングを超えた時からは段々と燃えづらくなっていき、今は焦げつくのみである。

 

だけど……突破方法は不明。でも不幸中の幸いだろうか、最悪な自体は間逃れている。

 

最悪な自体とは「もし蛇の体を構成する死体及び繊維が無尽蔵だったら」というものだ。どこかしらから死体、もしくは繊維を知らない所から取り出してきて自身の体を回復するとしたら……悔しいが逃げざるを得なかった。

 

しかし、そんな事はなかった。ルナシーさんたちが蛇の体を切り続けた事で少しずつだが腐肉は削れていた。その証拠に見上げるほど大きい蛇が一回り小さくなっている。反面、蛇の機動力は上昇し体の表面積も小さくなるので繊維の密度が上がって結果的に防御が上がっている事となっているけれども。

 

まとめると突破法は……不明、更に攻撃を加えれば加えるほど相対的に強くなっていく。この上ない程の絶望的な敵、思考する過程で何度も考えついた根拠のない予測が理論とともに結論として絶望を突きつけた。

 

「(そんなこと初めから分かってました!だから……私達はどうすればいいんですか!)」

 

ああ、神よ。どうか試練に打ちひしがれ諦めすらいる私達をまだ救えるのならばお救いください。折れかけた心の中で神に祈る。

 

「セレネちゃん、諦めないで!そこまで分かってるならまだ何かできる手はあるはずだよ!」

 

「リューナさん……」

 

彼女が私を叱咤した。彼女も薄々このままでは倒し切ることができないとは感じているはず。なのに今も弾幕を避けて抗う。そうだ、絶望的であるけれどまだ負けてはない。最悪彼ら同様逃走もできるのだ。なら負ける寸前まで粘ってみてもいいんだ。

 

「そうですね。……よし。それならチャンスは作りますのでその内に畳み掛けましょう。」

 

【日蝕】+【光柱】

 

引き続き【流星】で蛇の起動を抑えつついる細めのレーザーで薙ぎ払う。体を真っ二つきにすべく何度も何度も地面と木々を巻き込んで見境なく破壊する。

 

だけど遂に蛇の回避性能の方が勝ってしまいレーザーどころか高速高物量の【流星】、リューナさんの【火時計】にすらかすりもしなくなってしまった。リューナさんの方は弾幕扱いやすい【秒針】に切り替えた。

 

「セレネちゃんほんとにチャンスなんて作れるの?」

 

「ええ、それも『たった今から』。2……1……来ました!」

 

ピキッ……バキィッ!

 

カウントの終了と共に蛇の周りの木が一斉に傾く。レーザーを乱射したのは蛇を狙う目的に加えて「木に傷をつけること」。傷つけられた木は自重に耐えられず折れる、それも調節して蛇に当たるように仕込んでおいた。

 

ギシャアアア!??

 

そして目論見道理一斉に蛇に木が倒れる。枯葉と土煙で姿が確認しづらい。だからそれを無視できるくらいありったけの弾幕を二人で連射する!

 

「策士だねセレネちゃん。お姉ちゃんも最大火力でいっちゃうよー!!」【1st=虚次元展開】【2nd=秒針】】【3rd=火時計】【4th=DIGITALTIMER】【5th=水時計】

 

「今です!」【光柱 ピラーオブムーンライト】【流星 ラピッドスターダスト】

 

ドドドドドドッ!! ーーーーー!

 

弾幕は倒れた木と蛇に過剰なまでの火力を与え続ける。爆発と破裂音が森に響く。後で聞いたことだが谷の村からもこの光は見えたらしい。勿論木の下に下敷きにされた黒い塊もその弾幕の餌食になり蛇もただでは済まないだろう。

 

 

 

 

ヒュンッ

 

「うぇ!?……きゃああああああ!」

 

蛇の体が私に巻き付く。何故、今蛇は私達の弾幕で……

 

「(………………え?)」

 

私の離脱により弾幕が少し薄まった事でその弾幕の向こう側が見えた。蛇はいなかった。代わりにそこにあったのは……

 

「リューナさん、蛇はここです!」

 

「うおおおおっ!!いっけー!!」

 

「(駄目だ、弾幕の音がうるさくて聞こえてない。そこにあるのは蛇の繊維を巻きつけたただの丸太です!騙されたんです、狡猾さに負けたんです)」

 

爆発する、すぐに魔剣士さんや魔法使いさん、弓使いさんの惨状が頭によぎる。しかし蛇は繊維を侵食させる事はしない。その代わりに蛇は大きな口を開けた。

 

「え……ぃゃ………そんな……」

 

まさか、蛇は、私を食べようとしてる?

 

「(っ考えちゃ駄目だ。今は逆にこれをチャンスに変える発想をしなきゃ)」

 

ここでリューナさんが異変に気が付き私の状態に気がつく。すぐに魔法の手を止めこちらの状態をどうにかしようとする。

 

「セレネちゃん!今どうにかするから耐え……」「いりませ……ゲボッ……食べられるくらいならこのまま口の中から体内ごと撃ち抜きます!」

 

最悪な時にこそチャンスというものは訪れる、誰の言葉だっけ?でもよく言ったものだ。それはまさに今の私、たった今天啓がきた。外側が駄目なら内側なら防御を突破すらせずにダメージを与えられるはず。口中に魔法の焦点を合わせ中身の肉を全て消し飛ばして私が蛇を倒す。

 

「蛇さん、ごめんなさい!」

 

手に魔力を込めて魔法を作動させる。出力は引き続き最高火力で蛇の口いっぱいになるくらいのレーザーの式を組む。緊張で心臓が高鳴る、しかも手も震えてきた。死の淵の先へ進むか後戻りできるかの境目に立っているんだから当たり前だ。

 

光の輪が展開される。そして照準を口の中の闇に合わせて………狙い撃つ!

 

「「いっけええええ!」」

 

 

 

ギィジュあ"a……

 

最高火力で放たれたそれは蛇の口内にヒット。体内に強烈な熱と光で蛇は満足に悲鳴を上げることもできず倒れた。

 

「やっと倒れたよ。セレネちゃん。ありがと!!」

 

 

 

 

 

リューナさんは蛇が倒れた事に喜んでいる。しかし私は一向に立ち上がらず蛇に巻き付かれているままである。

 

「………ははは……負けちゃった」

 

小さな声でつぶやく。

 

「…………え?」

 

「締め付けが…………全く緩まってないんです。寧ろもっと強くなっています。蛇はまだ生きている……リューナさん」

 

「セレネちゃん?」

 

蛇は再びゆっくりと起き上がる。彼の者は死した者、故2度死なず、倒れしも再び起き上がる。その不屈さは私達も見習いたいものだ。生き残れる自信はないから参考に使う事はあるのかな?

 

「逃げてください。逃げて事実を伝えてください」

 

二人の全力でこれならもう手の施しようがない。ならばせめて私が犠牲になってリューナさんだけでも生き残ってもらいたい。

 

「駄目だよ!一緒に生きて帰ろうよ……セレネちゃん!」

 

「いえ、いいんです……いいんですよ。これで。リューナさん、貴方だけでも生き延びてくれれば私は満足です」

 

「でも……」

 

「私と違ってあなたは戦えます……まだ、私よりも蛇に勝てる確率があるんです。だから今は逃げてミツキさんとルナシーさんを連れてきてきてください」

 

足が蛇の中に入る。何かの液体と劇臭を放つ腐肉の不快な感触が少しづつ広がっていく。ふりほどこうとしても私の力では抗う事もできずに飲み込まれていく。

 

「嫌だよ……嫌だよ!」

 

「………お願いです。もう長くは持ちません。だから……おねが……」

 

肩の辺りまで体が腐肉に沈む。拘束は解けたが手足も満足に動かせず脱出は困難、いやそれすらも高望みにすら思える程に不可能だろう。

 

 

 

 

そして、蛇が口を閉ざし闇に包まれる。リューナさんが叫ぶ声も段々と肉に阻まれ聞こえなくなってきた。

 

 

 

 

………死にたくない……死にたくないよ………でも……これで……皆のためになるのかな……?

 

 

 

頭が痛い、酸欠と圧迫のどちらが原因なのかも見当がつかない。弾幕で肉を崩そうにも自身が被弾して余計危険であり減った肉の分締め付けが強くなるのも目に見えている。けれど感じる。闇の中、腐肉が蠢く音が響き、自身の死を告げるのを。

 

 

 

カサカサッ

 

 

……ああ、蛇に殺されるのは何も私だけでは無かった。腐肉に群がる虫も同じく肉の棺桶に閉じ込められ飽食の中死を待つ定めである。もしくは蛇のおこぼれを貰うのに闇の中で群れで待機しているのか。どちらにせよ私も彼らの餌になるのに変わりない。

 

…………あれ?

 

ーーー

 

 

「…………」

 

彼女は1人沈黙していた。今すぐ蛇を切り裂きその仲間を救い出したいと心から願っても中にいる彼女のも巻き込んでしまい迂闊に攻撃もできず、ただ立ちすくむ事しかできない。

 

蛇はもう彼女など眼中になかった。体力の回復にはかなり肉が足らないが小さくなった体では小柄な獲物でも腹が満たされてしまう。しばらくは狩りをやめ散歩でもしながら消化を待とう、そう考えていた。

 

「……【No.j……ん?」

 

突然、蛇の体が発光し始めた。蛇自身が発光しているというより中の光源が光っているというのが正しい。彼女は新手の蛇の攻撃かと警戒したがすぐに違うと分かる。

 

「(これはセレネちゃんの魔法!?しかも【代謝促進】って)……何をしてるの?」

 

ーーー

 

 

 

蛇の体には腐肉と一緒にそれを食す微生物や小さな虫が大量に潜んでいる。いくら蛇が緻密な繊維で覆われていてもそれらが一斉に食事を始めれば塵も積もれば山となる、肉体が一気に分解し腐肉の体は崩壊する。

 

【代謝促進】

 

それは私にではなくその捕食者たちに向けての魔法だ。なおこれでもし微生物物が分解した物が蛇の表皮から出ずに中に留まったら死亡が確定する。しかし元からこの状態から脱する術も考えつかない。

 

それと分解される肉は何も蛇だけでない。肉だけならこの私でも条件を満たしてしまう。つまりこのままでは蛇もろとも私も消えてしまうわけだ。

 

【烈日 灼熱SummerSunnyRay】【熱耐性】

 

その為のこの魔法。本来は物体を発光させる魔法。だけど光と共に熱も放出されてしまう事が欠点で出力を上げすぎると発火の危険すらある。しかし今回はこれを応用し自身にこの魔法を掛け周囲の生物を熱殺する。

 

「(出力調整100……200……500、1000℃。ここで止めて……あとは)」

 

キシャァァァァア!?!?

 

蛇が今までに聞いたことのないこえをあげた。それから体にかかる圧力がちょっと軽くなる。彼らは私の期待に答えてくれた。蛇の内側からでも土が飛び散り暴れ狂う音がする。

 

「(………ああ、光が見えた)」

 

蛇に振り回され方向を見失いかけてもゴミと蛇の表皮に隠れて見えているのは月、あるいは暁か、それが見えた。どちらでもいい、私にとってその光こそ希望。手も僅かに動く、照準は空へ、蛇を撃ち抜く。

 

【光柱 ピラーオブムーンライト】

 

 

ーーーーーー!!

 

ーーー!

 

 

ーーー

 

ボコッ

 

「うう……どうにか倒せました。けれど……」

 

蛇の抜け殻みたいな体から這い出て起き上がる。体中に付着した肉片と虫を払った。

 

クンクン

 

「うう……やっぱり臭い。体もベタつくし早く体を洗いたいです」

 

「やった勝った!セレネちゃん!」

 

リューナさんが私に駆け寄ってきた。そしてあまりの匂いに一歩引いた後水属性魔法で軽く洗い流してくれた。そして私が何をしたのか問い詰められて内部での事を簡単に説明した。

 

「……ということです」

 

「成程、その発想まで至らなかった、今後の研究のためにも戦闘の理論を取り上げるのも……あ、ごめん考え込んでた。セレネちゃんって戦闘はこれが初だっけ」

 

そうである。あの模擬戦は除いたら生死をかけた物は初めてだ。リューナさんは更に感心したらしくじゃあ帰ったら模擬戦だー!なんて誘いを受けた、講義のお誘いだけ受けた。

 

「でも講義をするのは少し待ってください。帰る前にやらないといけないことがあります」

 

「ん?もう蛇は倒したはずじゃ?」

 

「だからです」

 

私はその場に膝を付き手を合わせて祈る。

 

「…………」

 

「…………そうだね。私もいい?」

 

リューナさんも意図を察して同じ様に祈る。今まで戦いを挑み死した者たちの願、私達の都合で殺してしまった蛇、彼らの安静を願った。

 

「……さて、帰りましょう」

 

「だね、もう朝になっちゃったしお腹も空いてきちゃった。……ところで、お姉さん思ったんだけどなんでセレネちゃんは倒すに至るまでの知識を知ってたの?」

 

「修道院にあった本に書いてありました」

 

「最近の宗教施設は学術書も充実してるんだね!」

 

私達は帰路につく。私達の猛攻で開けた森に朝焼けが差し込んで私達の背中を照らしている。

 

 

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