せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜   作:囚人番号虚数番

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蛇は二度生きる

現在時刻 午前6:30

 

現在位置 谷の村

 

体力的に疲弊しながらも時間をかけて村に帰還する。村の門にナツメさんが待機していた。寝起きから急いで来たのか頭に寝癖がついて服も比較的カジュアルだ。彼は私達を見て心配そうにしていたが無事だとわかった途端いつもの笑顔に戻る。

 

「二人共お疲れ様。無事帰ってきて嬉しい限りだよ」

 

「おはようございますナツメさん。蛇……討伐対象は無力化しました」

 

「へぇ、それはよく頑張ってくれたね。死者が出てしまったのは残念だけど中々の成果だよ」

 

「ナッツー……お話するのは良いんだけどお姉さん達少し休みたいなー。夜通し戦闘で眠いし疲れてるしお話は8時間後にしてね。シャワー浴びたあと気持ちよくねるぞー!」

 

リューナさんは宿屋に戻るらしい。私も彼女と同じく疲れている。急ぎの仕事でもなさそうだし後でもできる話は休息後にしよう。

 

「そうだね。足止めしてごめんね。宿の方にはいつでも迎えられるように頼んだから君たちは思う存分ゆっくり休んできな。僕は他の皆に話を聞いてるから」

 

「ありがとうございます。皆さんは宿ですか?」

 

「ミツキ君はね。ルナちゃんは今何してるだろう?その辺で散歩でもしてるんじゃないのかな?ああ、あと……」

 

「どうしました?」

 

「……あー、後で話すからなかった事にしてくれないか。僕は仕事に戻る」

 

何を言おうとしたんだろう。でも今は考えるのを辞めて休む事に専念しよう。私も後で話すことをまとめないと。

 

ーーー

 

「………zzz………zzz………」

 

現在時刻 正午13:00

 

現在位置 宿屋

 

コンコンコン

 

ガチャ

 

「おーい、セレネ……ってまだ寝てるな」

 

「…………ん………あ、おはようございます。」

 

 

太陽が丁度真上に上がった頃ミツキさんが私の部屋に訪ねてきた。私はドアの開く音で目が覚めた。

 

「あ、もしかして起こしちゃったか?そうならすまん」

 

「いえいえ。丁度いい時間ですし起きます……ふぁあ」

 

あの後時間的にリューナさんとシャワーを一緒に浴びた。だからいつもより長めに体が温まってよく眠れた。睡眠時間に関しては長年の修道院生活で多少短くても足りるから全然問題ない。ただ、寝起きの時間がいつもと違って少し寝ぼけ気味だ。

 

「あまり無理はするな」

 

「もう体も元気ですし平気ですよ……っとと」

 

ベッドから降りるのにふらつく。ミツキさんが体を支えてくれた。

 

「お前、まじで平気か?」

 

「私は別に問題ありません。ルナシーとリューナさんは宿にいますか?」

 

「え、ああ。奴等ならさっき飯を食べてたからこの辺にいるかもな」

 

よし、それなら好都合。私はミツキさんに彼女らとナツメさんに大事な話がしたいから集まろうと伝えるよう頼んだ。

 

話す内容は勿論あの蛇のこと。討伐はし終えたとはいへあの蛇にはまだ疑問点が多い。だから各々の情報をまとめて整理し解決したいのだ。

 

ぐぅぅ……

 

 

 

宿の一室に気の抜けたお腹の音が響く。そういえば昨日の夜から何も食べていなかった。恥ずかしさに顔が赤くなる。うん、まず遅めの朝ご飯が優先だ。

 

ーーー

 

現在時刻 13:30

 

「こんにちはセレネ。よく生きて帰ってきましたね」「聖女様、お体の方は」

 

「ルナシーさんおはようござ……こんにちは。狼さんもこんにちは、私の体の心配はありませんよ」

 

「敬称、ついてます。戦闘中は大目に見ていましたが気をつけてください」

 

「あ……ごめんなさい」

 

「リューナお姉さんナツメとやってきたぞー!」

 

私の頼みを聞いて皆さんと狼さんは時間通りに集まったようだ。ルナシーさんは……うん、また何かと戦ってきたのかな、少し鉄臭い。リューナさんは私と同じく先程起きて食事をしたらしく口元になにかついている。指摘をすると口を拭いて汚れをとった。

 

「失敬失敬、呼ばれて急いでたからさっき食べたのが付いてた。ありがと!」

 

「私こそ急がせてしまって……」

 

「そういえばセレネちゃんはもうご飯は?」

 

私の方は丁度彼女らが来る少し前に食べ終えたくらいだ。田舎の宿屋ということもあり王都道中の宿の食事と比べると質素だけれども逆にそれがとても好みである。あの修道院の素朴さに通ずるものを感じるからだ。

 

「じゃあもしかして、食堂の端席で食べてた?」

 

「えっ?何故それを知っているのですか?」

 

「セレネちゃん……」

 

彼女は急に真剣な顔になり私の肩を掴んだ。そして私の体を揺さぶりながら熱弁しだした。

 

「今は育ち盛りでしょ?ならもっと食べなきゃ駄目!あの机、パンの皿とコップしかなったよ。王都でも食が細いのは心配だったけど今日だけは言わせてもらうよ!昨日の戦闘で体もボロボロだったのにこれじゃ栄養が足らないよ!もっとタンパク質と脂肪分、それと牛乳?とにかく食べて!」

 

「え、ええ……でも」

 

「ルナちゃん!宿屋のおじさまに出せるもので一番栄養のある物出してもらって」

 

「私が朝とってきた肉でも焼いてもらいます」「お嬢、それは貴方が朝食に食べたでしょう」「なら今から私が狩ってきますからおとなしくしてろください」

 

えぇ……確かに少食なのは認めるけれどあまり多くても私が食べられないのですが。という訳で二人をどうにか説得してみた。

 

「あの、私元々少食であまり多く作ってもらっても食べられないと思います」

 

「あーそっか。それらなら少ない量でも栄養が取れるものか……ごめんね。お姉さんじゃパッと出てこないなー」

 

「この際固体じゃなくて液体でもいいんじゃないですか。それならいい案が……」

 

ーーー

 

現在時刻 13:40

 

ガチャ

 

「すまねえ。ナツメ連れてくるのに手こずった。こいつすぐフラフラどっか行くから2回くらい見失ってた」

 

「ミツキ君、僕を担ぐんだい?尻に手があたってるし何よりパンツ見えてそうで興奮してしまいそうだからやめてくれないかい」

 

 

 

 

「ゔっぷ………もう飲めない……」

 

「……お前ら、何してんだ?」

 

「セレネの栄養補給です。リューナ、ミツキが来たのでそろそろ止めましょう」

 

ミツキさんが動揺するのも無理はない。部屋には何本かの牛乳の容器と使用済みの大きなジョッキがいくつか。それと口の周りを白くしながらぐったりと机に突っ伏す私。ここまでくれば何をしていたのかは分かるだろう。

 

「朝食が細かったから栄養が付くように飲んでもらってたよ!セレネちゃん少食でしょ?」

 

「いや、その理屈はおかしい」

 

「そうだよ、ミツキ君と同意見だね。いっぱい食べる女の子も好みだけど女の子は自分にあった量を自由に食べてる姿が一番可愛いからね。無理して食べる事は本人にも僕にもよろしくない」

 

いつもいつもナツメさんは煩悩にまみれた頭をしている。けれど今は心配してくれるだけありがたい。とりあえず口を拭いて机の食器類を片付けてから彼らに各々適当な所に座ってもらって会議を始める。

 

 

 

「呼び出してしまってすみません。でも私自身あの蛇には気になる事がまだあります。ナツメさんはもう状況はお聞きになりましたか?」

 

「うん。といってもミツキ君から断片的にしか。ルナちゃんは帰ってからすぐに寝ちゃって起きたらどっか行っちゃってたからまだかな」

 

成程、今朝もミツキさんのお仲間の死亡は既に耳に入っていたから予想通りではある。私はリューナさんとの戦いの最後までを事細かく話した。詳細を聞いた彼らの反応は様々だ。ミツキさんは仲間の敵が討てた事を喜びルナシーはちょっと残念そうだ。そしてナツメさんはいつも通りの笑顔。この場合はかえって何を考えているのかよく分からない。

 

「なんだ。面白そうな戦いじゃないですか。帰らずもうちょっと待っておけばよかったです」

 

「お前がいたら場は安定しただろうな。だけどありがとう。蛇を倒してくれて」

 

「でも話を聞いてて疑問点が出てきたね……まさか、喜ぶのはまだ早いってことなのかい?」

 

そのとおり。私達は蛇の体を構成する肉こそ削りきり一先ずの無力は完了したもののを動かす繊維のことに関してはほぼ手を付けていない。体を動かすのがあの繊維だとすると対象はまだ復活する可能性もある。

 

「繊維?俺は接近担当だったけどあいつに毛なんて生えてなかったぞ」

 

「実はですねミツキさん、あの蛇の表皮はこれで出来てるんです」

 

私はベッド横の引き出しにしまっておいた黒い繊維の塊をちぎって彼らに渡す。……あれ?何故だろう。私が最後に見た時よりも少し編み込みの密度が下がってる。

 

「何だこれ?黒い髪か?」

 

「色合い的に僕の髪の毛によく似てるね」

 

「なんかベタつきます。軟膏でも塗られてるみたいです」

 

「セレネちゃんちょっと一本もらっていい?」

 

勿論。私は彼女に繊維を渡す。すると彼女は私でも難解な魔法を展開した。でも使われている変数や式からなんとなくだけど魔法で物質の解析をしているらしい事はなんとなく分かる。

 

「なんか凄そうなことしてるな。どうだ、何かわかりそうか?」

 

「んー……このベタつきに火属性と土属性の含有率が多いから可燃剤に似た性質がある可能性があるって事くらい?詳しい事はお姉さんのお友達の科学屋さんに聞いたほうが早そうだね」

 

「つまり、よく燃えるってことですか?」「多分お嬢の認識で間違えないです」

 

だとしたらあの繊維の爆発はここから来てるのかも知れない。しかしあくまでも可燃剤、爆発と明言してない以上原因は別の物由来なのか?

 

「それならリューナ聞きます」

 

「what?ルナちゃんも何かあるの?」

 

「この汚いコレが微妙に温かいのもその『可燃剤』って物のせいですか?」

 

その指摘をされて気がつく。彼らに見せていた繊維塊を少し貰い軽く握る。するとルナシーの指摘通り人肌程度に温かい。彼らがそこまでベタベタ触っていて、というわけでも接触時間的に無さそうである。私も光魔法(通常は体温計代わり)でこの繊維の温度を解析すると40℃前後とほぼ人肌と大差なかった。

 

「違います。ですが……これ、まさか」

 

まさかと思い追加で簡易的な検査をしてみる。リューナさんにも頼んで魔法を使ってもらう。そして結果が出た。

 

「……セレネちゃん、私が間違えてなければでいいんだけどもしかして」

 

「信じ難いかもしれませんが私も同値が出力されました。この繊維はまだ生きていると考えても良さそうです」

 

最悪だ。体積が小さくて分かりづらいだけで繊維にはあの蛇の魔力が今だ存在している。なら私が持ってこなかった残りの繊維にも……

 

「そういえばセレネ君、僕が朝伝えようとしたことがあったね」

 

朝、ああ、あの時ナツメさんに引き止められた。だけどそれを今伝えるというのは意味があるのか。

 

「ルナちゃんが『夜が明けたのに二人が帰って来なかった。蛇の殺気もするから二人は死にましたよ』って。二人が蛇を倒したのは夜明けとほほ同時だよね?」

 

「もしかして蛇は囮で本体はその繊維なのか。だとしたら面倒くせえことしやがったなあの野郎!」

 

そう言ってミツキさんが持っていた繊維塊を壁に投げつける。少ない情報だから確証は持てないけれど……いや、もう認めよう。あの蛇は生きている。

 

部屋の空気が一気に緊迫した空気になる。

 

「ルナシー、今その蛇の殺気は感じられますか?」

 

「少し待ってください」

 

彼女はそう答えると目を瞑り武器を取り出した。彼女の空気が変わる、精神統一的な意味合いもあったのだろう。しばらくした後彼女は歩き出し部屋を出る。

 

「お嬢、せめて行き先だけでも伝えてからにしませんか」「狼さんも分かってますよね。集中してるので私より他の方とでも話してもらえますか」

 

「そうだよー!お姉さんも敵がどこへいるのか知りたいし!」

 

全員で彼女の向かう先を心配していると狼さんが説明してくれた。

 

「実は彼女の言う殺気、私自身もひしひしと感じておりました。というよりも今も感じ続けています」

 

「なっ……それならもっと早く言えよ!」「ミッツー落ち着いて。それで、それはどこから?」

 

「蛇の殺気は地下へ植物が根を張るように広がっています。賢者様と聖女様も地面の下に僅かながら魔力を感じませんか」

 

「ええと……ちょっと待ってください」

 

意識を地面へと向けて魔力を探す。確かに足の下に薄い魔力の網が広がっている感じもしなくはない。しかし森からここまでその魔力が広がっていたらどこかしらでおかしいと考えるはず。

 

……いや、例外ならある。強い魔力に晒されて感覚が少し麻痺した状態からこの場にいたのならば気が付かないかもしれない。例えばそう、転移魔法をした後とか。

 

「(もしかして既に転移した地点まで魔力が広がっている?)」

 

「殺気の出処の検討はついています。まあ、あそこでしょう」

 

ルナシーさんについて行き、宿を出て、しばらく歩いた後に彼女は歩みを止めた。

 

「この先です」

 

「ルナちゃん、嘘だよね?」

「おいおいマジかよ……!」

「おっと?」

 

彼女が歩を止めたのは、今朝私が帰還した谷の森の入口であった。

 

 

 

現在時刻 14:00

 




親知らず痛い

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