せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜   作:囚人番号虚数番

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破竹の如く

現在時刻 3日後

 

現在位置 リューナの研究室

 

 

 

「蛇には【日蝕】で視界を断っていた筈です。しかし蛇は正常に攻撃をしたりそれどころか弾幕での撃ち合いもしてましたよね。その資料貸してください」

 

「はい。う、これおっも……そうだね。結構被弾しかけたし高精度かつ爆発も自身に当たらないようにしてた。相当な認識能力はあるはずだよね。」

 

「ありがとうございます。勿論視覚がなくても触覚や聴覚等でこちらを把握する術はあります。しかし人の感覚ではありますがいくら何でもあの情報量でのあの機動力には疑問が残ります」

 

暫くこの村に長居することが確定した為リューナさんが村の宿近くに簡易的な転移用の魔法を作り彼女の研究室へと繋げてもらった。(王都には面倒くさいのと後述の理由と同様の理由で行けない)

 

あの繊維に関して大学で研究しようと思ったが大学側から禁止をもらった。バイオテロが起きかねないような危険物は持ち込んではいけないとのことらしい。その代わり資料を持ち出して調べごとをするだけならリューナさんのこの研究室でやってもいいとの事。幸いこの研究室は辺り一帯から隔離された地域に建てられている。いざという時にも鎮圧や放置は可能だ。

 

「んあ"あ"あ"!!づがれだ!!リューナちゃん、回復お願い!」

 

「いいですけどそろそろ寝ませんか?私はともかく3ここ日間リューナさんが寝ているところ見てませんけど」【回復魔法】

 

「時間止めて寝てる。これすると見かけ上の寿命が削れるから普通はこう使っちゃいけないけど」

 

「今すぐやめて下さい!」

 

ーーー

 

まだ研究し始めて3日だから勿論成果という成果はない。成果らしい成果は可燃性のベタつきを外で燃やしてみた事くらい。

 

燃焼実験の結果は一瞬だけかなりよく燃えてすぐに火が消えた。瞬間的な温度だったら物を燃やすのには充分、しかし弾幕で使用した時と比べるとかなり控えめな爆発だった。

 

……あの爆発の原因はそこではない。となると蛇が私達に知覚し得ない何かを使用した。あるいは単に繊維に特殊な特性がある。

 

「でもさっきその繊維単体を燃やしてきても何も起きなかったたよねー科学と生物学はあんまり得意じゃないんだよなー……」

 

「私も人の体には多少の知識はありますけれど生物学となると自身がありませんからね」

 

ということで私達二人は動植物についての理論を勉強しながら地道に特定をしている。

 

ガチャ

 

「ただいま。調べごとは順調か?」

 

「おはようございますミツキさん」

 

「ミ"ッヅーおあよー。こっちは苦戦中」

 

ミツキさんとルナシーさん、それと狼さんには森の巡回をしてもらっている。彼ら曰く森を隅々まで調査すると魔剣士さん達と同様に体が爆発して出来た血溜まりの跡を発見したとのこと。しかも割と最近出来たらしき乾いていない血も何個かある。爪や足跡から推測すると大型の動物が標的であり、さらにそれらの体重から計算するとそう遠くない内にまた蛇はもとに戻るかもしれないとの結果が出た。

 

なのに私達ときたら一向に解析が進まない。

 

「繊維については何か分かったか?」

 

「繊維自体に可燃性が無いというのが辛うじて発見しました」

 

「ほー。じゃあ中は?」

 

中?切って調べろと?ふざけた話だと聞き流そうともしたがその説に関しては完全にノーマーク、まだその手のアプローチはしていない。

 

「でもセレネちゃん、手持ちのハサミとかだと切れなかったじゃん」

 

「そうなのか?」

 

ミツキさんが疑問を抱くのも無理はないがこの繊維1本1本にはとんでもなく耐久性がある。それこそ彼の剣が蛇に通じなかったことすら頷けるほどに。

 

「でもルナシーさんの剣なら……ってそういえば折れてましたね」

 

なお、折れた刃は私の落ち度で放置して来てしまい次に森に入った時には何故か無くなっていた。先人たちの防具と同様蛇に持ち去られたのかもしれない。

 

「お姉さん、強度もそうだけど繊維自体が細すぎて裁断するにも研究するにもちょっと難しいかなと思いまーす」

 

リューナさんの意見もごもっともだ。道具を使うにも難しいというのに異論はない。実際に切断に使用したハサミとメスの刃が使い物にならなくなった。

 

「なら成長?培養のほうが正しいのかな?させてみたらどうだ。セレネの回復魔法でそれができるかは知らないけど」

 

「…………」「…………」

 

ミツキさんの言葉に返事は無い。

 

 

 

 

 

「……冗談だ。今すぐ帰……」

 

「中々妙案じゃない、それ」

 

「危険は伴いますがやって見る価値はあります。医学書と魔導書を追加で取ってきます」

 

ーーー

 

現在時刻 16:00

 

現在位置 谷の村 周辺

 

「なあ、本当にやるのか?一応こいつ敵だったししかも生きてるんだろ。流石に危なすぎるぞ」

 

「それでも手が無いよりはマシです。リューナさーん、仕込み終わりましたー」

 

「おーし、それじゃあそろそろ式を起動しよっか!」

 

村から離れたそこそこ広い平地に結界を張る。やる事が敵の強化と相当危険なので念には念を入れ10cmにも満たない1本の繊維に対し直径10mの結界を3重に張った。そうそう破壊される事は無いだろう。

 

掛ける魔法はミツキさんの提案通り繊維【成長促進】。文字通り生物を成長させる魔法だ。正直魔法を組んでて思ったけどこれ成長分の栄養足りるのかな。足りなかったら……何が起こるのだろうか。

 

 

 

ガサガサッ

 

「なんか大掛かりな事してますけどまた魔法ですか?」「そのようですよ。私達は離れましょう」

 

ルナシーさんが森の中から出てきた。いきなり森の中から出てきて驚く。探索に疲れて休憩と遅めのおやつついでに帰ってきたらしい。相変わらず武器には血が付着している。今日は何を倒してきたのだろうか。

 

「蛇野郎が爆発させた死体を少し調べてました。死にたてで新鮮でしたよ」

 

新鮮って、それだけ最近死亡したって意図は伝わるけどもっといい言い方があるのでは。まさか食べた……

 

「食べるわけ無いじゃないですか。セレネは私をなんだと思ってるんですか」

 

「ルナちゃーん、お肉は焼いたほうが美味しーよー!」

 

「皆様ご迷惑をおかけしてごめんなさい」

 

えぇ……。とにかく魔法の方に戻ろう。デバックは、うん、平気そう。どこにも不具合はない。試験的に結界内に生えている草に魔法を掛ける。草はみるみる背を高くし、蕾ができて花が咲き、そして枯れた。

 

「リューナさん、準備完了です」

 

「それじゃ、カウントいっきまーす!さーん、にー……いちっ!セレネちゃん、どーぞー!!」

 

彼女のカウントに合わせて魔法を繊維に掛ける。さて……どうなる?

 

【成長促進】

 

魔法を掛けられた繊維は暫くは何も起こらずそれどころか少し縮んでいく。しかし突然針金の様にビンっと伸びる。その後繊維はプルプルと震えだした。

 

そして、来た。

 

繊維は急速に成長を始め結界の直径に届くまでに伸びる。太さも髪とそう変わらなかったのが10cmにまで太くなっている。外見的な特徴は一定間隔で横向きに筋が入っていて質感もかなり木に近い、やはりあの繊維は髪の毛ではなかった。けどなにこれ?どこかで見たような……

 

「セレネちゃん、これ森に生えてた奴だよ!?」

 

「……あっ!?」

 

言われてみれば森に生えていたのはこの木である。……え?あの蛇は体が腐肉で、実は繊維が本体で、その繊維の正体が木?

 

「竹っぽいな。なんか懐かしい」

 

なんとミツキさんがこの木の名前について知っていた。彼が言うにはかなり前住んでいた所に生えていた植物の一種とよく似ているらしい。その植物は高い成長速度と繁殖速度があり群生する種らしい。

 

もしその特性がこの植物にも適応されたとしたら森を超えて村周辺にも根を張っていると推測できる。

 

結界を解きその木の特性を調べる。表面温度は成長前より下がるがそれでも少し暖かい。木材にしては軽くよくしなる、強度はそこそそ。

 

まだビチビチと動くそれを抑え込んで木に刃を入れる。驚くべき事に繊維のときとは違いミツキさんの剣でも幹を両断できた。成長すると防御が落ちるらしい。そしてその中身は……

 

 

 

「空……ですね」

 

「まあ、竹だしそうなるよな」

 

中は外観とは違い石灰のように真っ白である。若干嫌な匂いがする……ガス?もしかしてこれが加熱されて爆発するのかな。

 

「……風属性と火属性。属性的なセレネちゃんの予想はあたりっぽい」

 

「なんかこれ面白いですね。切断面を撫でるとピクピクしますよ」

 

ルナシーさん……よく敵の体では遊ぶことができますね。ミツキさんが何だ言いたげなすごい目であなたを見てますよ。

 

「ほらルナシー、研究なら私達がするので遊ぶのは危ないのでやめて下さいね」

 

「どう考えても私の方が強いのに」「お嬢」「分かってます。じゃあ頼みますね」

 

そう言うと彼女は憂さ晴らしとばかりに木を鉈で斬りつける。木が大きく動き再び静かになる。木材が川の魚みたいに動く姿は流石に頭が混乱する。

 

ーーー

 

現在時刻 18:00

 

現在位置 宿屋 食堂

 

「……で、実験の結果はどうでしたか?」

 

「残念ながら」

 

「全然だめ!お姉さん達にもこれ以上はお手上げだよー!!」

 

あの後性質だったり何なりを調べても有益な成果は何一つとして出てこなかった。ミツキさんが指す竹という植物についても調べてみたが植物の図鑑に一切の記載がなかった。不思議に思って図鑑だけでなく植物に関してのいろいろを漁った結果原因をやっと見つけた。

 

「おお、それは凄いな」

 

「ミツキさんが名前を教えてくれなかったらもっと苦労してましたよ。だって……」

 

「まさかまさかの絶滅種でしたーわーパチパチ。そりゃーお姉さん達も知らないわけだよ」

 

「……ああ、そうか。そうなのか」

 

早々に打つ手がなくなり暗雲が立ち込めてきた。どうすればいいのか分からなくなり不安になる私達である。

 

「取り敢えず飯の時位は元気になって下さい。飯がまずくなる」「(狼です。私だけ宿の外に放置されてます)」

 

「そうだぞ勇者様方。こんなときこそいっぱい食べて明日に備えないと体が持たないぞ」

 

宿の人が夕食を運んできた。そうだね、今だけはルナシーさんが正しい。こんな時だけは暗いことを忘れて一瞬だけ食事を楽しむのに

専念するのがいい。

 

 

 

「アレがリューナのでこれがセレネのだな」

 

「ミッツーありがと。で、その高そうなワインはルナちゃん?」

 

「いや、知りません。おじさん注文間違えました?」

 

 

 

ルナシーがそう聞くと彼は笑いながら部屋の端の席に座る誰かを一瞬見た後教えてくれた。

 

 

 

「あちらのお客様からです。これでいいんだよな、そこの美人さん」

 

「うんうん、ありがとうございます。みんな今日も収穫無しかい?」

 

 

 

なんだ、ナツメさんのイタズラだったか。ワインはありがたく頂くとして……って全員未成年だから飲んじゃいけないじゃん。

 

 

 

「ここでは僕が法律だ、許可する」

 

国家権力の上層がそれを言ったら、ってああもうルナシーが手を付け始めてるし。

 

「(……でも、楽しいからいっか)」

 

「「「「「いただきます」」」」」

 

 

 

〜そして数時間後〜

 

 

「……zzz……C2H5OH……」←早々に撃沈したリューナさん

 

「ねぇねぇミツキ君、君は男の体には興味がないかい?今僕は体が火照って仕方ないんだ」←自分で追加の酒を頼んで酷く酔っぱらった上とにかく絡むナツメさん

 

「ちょっおまっ、脱がすな脱がすな!百歩譲ってここじゃない自室で自分が脱いでくれ!」←ナツメさんに絡まれる少しだけ酔ったミツキさん

 

「……酒くらいもっと静かに飲めないんですかね」←酒を追加した上ハイペースなのに今だシラフと変わりないルナシー

 

「ちょっと難しいと思いますね」←シラフの私

 

 

 

飲酒は流石に駄目だと良心が止めたので結局飲まずに他の人の様子を見ていたら周りの収集がつかなくなってた。飲まなくて良かった。取り敢えずお水をたくさん持ってきてもらって起きている人たちには飲んでもらおう。それと寝てしまったリューナさんを部屋に運ばないと。

 

 

 

「私はリューナさんを部屋に寝かせてくるのであとの方の面倒はしばらくルナシーに頼んでも宜しいでしょうか」

 

「構いません。そこの男共一旦酒の手を止めろ。給水タイムです」

 

マテルナチャン マダボクハカレノ………

ウルセエピッチャーナゲマスヨ

 

 

 

 

 

見た目に反して軽めな彼女を担ぎ騒がしい食堂を離れる。明かりも少なく少し薄暗い廊下を歩き彼女の部屋の前についた。

 

ガチャ

 

 

……?

 

ガチャガチャ

 

 

開かない。ああ、私としたことが鍵を開けてなかった。失礼ながら彼女の服を適当に弄り部屋の鍵を借りて鍵を開ける。

 

ガチャ……ガチャガチャッ

 

 

…………立て付けが悪いのかな。それか扉の奥に何かがつっかえてるか。少しうるさいけど強く叩いたり体を使って扉を押す。軋む音がするけど少しだけ扉が開く。どうやら何かが引っかかって開かないっぽい。開いた隙間から指を入れてそれを動かしなんとか扉を開けることができた。

 

「……何でしょうかこれ?」

 

ドアに引っかかっていたのは細い木の棒だった。私の部屋にはなかったし一体何の為に?

 

彼女をベッドに寝かせて、よし。あとはアルコール抜きの回復だけしてそれが済んだから私は部屋を出よう。

 

「リューナさんおやすみなさい。またいい明日を?」

 

ふと布団に落ちている物に目が行った。彼女の枕あたりに落ちていたそれは「黒い長髪」だ。彼女の髪は青、この色の髪はあるはずが無い。それにその上を辿った先にはあの木の棒に癒着する形で繋がっていた。

 

最悪な予想が頭によぎる。すぐに調べようとその髪をとる。

 

「(……なんでこんな時に気づいちゃうんですかね)」

 

髪にしては長すぎる。これは……あの繊維だ。先はベッドから落ちた布団の塊の中に続いている。恐る恐るその山を崩して正体を確かめてみる。

 

「…………」

 

山をどかすとその下には彼女の持ち物が入ったカバンがあった。実験の試料を輸送する為に使用した物だ。当然試料を入れた物もそこに入っているのでそれも確かめると内側から強い力で壊されていた。

 

「(……何故『一本』?残りはどこへ行ったのでしょうか)」

 

よく見ると床板の隙間何本もの繊維が生えていた。引き抜こうとそれらに手を伸ばそうとするとすぐに隙間に引っ込んでしまった。まさか……床下を経由して地面の中へと逃げたのか。

 

まずい、ただでさえ何ひとつ倒す手がかりが無いのに試料まで無くなられてはたまったものではない。すぐに彼らに伝えて探し出すのを手伝ってもらわないと。

 

 

 

 

 

しかし、私のその心配は杞憂だった。食堂から彼らの叫び声がした。まさか逃げた繊維がそこに、と思ったがそうじゃなかった。実際はもっと最悪な自体が起きていた。

 

バキイッ

 

ドアの前から床を突き破って白い螺旋の筋の入った円錐の何かが生えてきた。身成長の竹である「筍」に似ている。これは蛇もとい竹が再び動き出したらしい。こんな時に戦闘って私達もそうだけれど村の人もまずい。

 

「リューナさん、起きてください!」

 

「ん〜まだリューナちゃんねむ……っ!状況を!」

 

「竹が逃げました。戦闘準備お願いします」

 

外の方からも大きな音がし始めた。爆発音と剣の金属、完全にルナシーさんやミツキさんが交戦をしている音だ。こうなったらどうにかして撃退するしかない。

 

「そうだね。ところでセレネちゃん、その白いの平気なの?」

 

「敵の体の一部らしいですが……まだ謎が多い植物なので気をつけておきましょう」

 

私達も戦闘へ、そう思い筍から目を離す。だがそれが私達に痛手を食らわせる事となる。その瞬間を竹は見逃さなかった。視界の外で筍は白く輝いて温度が上がっていく。加熱により中の気体が膨張、密閉されたガスは行き場を求める。 

 

「セレネちゃんは村の人達を逃がすのをお願い。私は蛇、じゃなかった竹を倒してくるから!」

 

「分かりました。まだ怪我が出てなければいいですが」

 

私達はそれに気が付かない。しかし着々と竹内部の気圧は上昇し続ける。そして……

 

「!?セレネちゃん、まず……」

 

「へ?っ筍がg……」

 

 

 

 

破裂、そして表面の物質が着火、よって起こるべき事象は1つ。

 

 

 

 

ドゴーーーン!!

 

その瞬間に筍を起点として宿が吹き飛んだ。

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