せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜 作:囚人番号虚数番
現在時刻 王都帰省後数日
ドンドンドン!!
「セレネちゃーん!部屋から出てきてー!!もう5日目だよー!!」
……外からリューナさんが呼ぶ声がする。
「リューナさん、おはようございます」
「おはよう。そろそろ部屋から出てきてほしいな!今日こそリューナ先生と次の戦闘に使う対物魔法弾を作ろうよ!」
「………今日も調子が優れないです、他の方にお願いします。声が頭に響くので少し静かにできますか」
「うっ……うん。セレネちゃんがそれで良いならいいけど……じゃ!」
タッタッタッ
「……………」
私はここ2日部屋から出ずに部屋に籠もっている。理由は勿論腕の事だ。王都に帰って何日かはいつもとそう変わらない生活が出来ていたがやはり精神的なダメージは大きく少しづつ鬱になる事が多くなり遂に少し前から気分が悪くなった。何をするにも無感情で何をしたいにも無気力だ。体は特に異常が見当たらない辺りこれが精神に起因する何かだというのは明白である。
コンコンコン
「リューナさん……だから私は今日は何かしている場合ではないんです」
ガチャ
「あのアバズレと一緒にしないで下さい」
入ってきたのはルナシーだった。狼さんが部屋の外で灰色の尻尾が揺らして待っている。
「ルナシー、ごめんなさい。今日は何もする気になれなくて……」
「そんな事はどうでもいいです。付いて来てください」「お嬢は今日も強引ですね」
「ちょちょ!?まっ、待って!」
私は彼女に強引に左の袖を引かれて部屋の外へ連れ出される。せめて掴むなら右手にして欲しいものだ。狼さんは彼女の代わりに申し訳無さそうに私に謝罪した。
彼女に手を引かれ連れてこられたのは普段使われていない大部屋だった。しかし今日は様子が違い何人もの使用人の方々が忙しなく荷物をこの部屋に運んでいる。
「えっと……何ですかここは」
「いいから入れ。話はそれからです」
彼女にされるがまま私はその部屋に入る。するとそこには天井まで届くまで積まれた大小様々な箱、調度品の数々、見たこともない素材、綺麗な服、本、それらが並べられていた。
「えええええ!?何!?ルナシーさんどうしたんですか?」
「寧ろこっちが聞きたいから連れてきました。昨日の昼間あたりから騒がしくて来たらこれでしたし、この荷物は何なんですかね」「それなら使用人の方々に聞くべきでは?」「あんな機械みたいな奴らと話したくない」
狼さんの言うとおりだ。私達は丁度荷物を運びに来た彼らに事情を尋ねるとなんとこれらは私やミツキさんへの見舞いの品らしい。何でも私の怪我や勇者の所属したパーティのメンバーが死亡した事を上流の方々が知りこれらを送ってきたそう。
なおナツメさんもこれに乗じて私と彼へのプレゼントを買ったらしい。直接渡せばいいのに。彼からの分だけは箱の山とは別に置かれていた。ミツキさんにはナツメさん自身の裸の絵、何に使うか分からない拘束具、それと蝋燭と鞭を送ったらしい。使用用途を教えてもらおうとしたら使用人さんたちは言葉少なく逃げる様に帰った。事情を察した私は恥ずかしさに顔が赤くなる。
私の分はというと……普通の町の女の子とかが着るような服だった。普段の彼のセンスからは考えられない私好みの彩色で、それでいて大人らしい落ち着いた服。しかもオーダーメイドらしく左腕が目立たないような加工がしてある。手紙も同梱されてポケットに強引に突っ込んであったのを読むと「たまにはこれ着て外で遊んでくるのもいいんじゃない?」と書かれていた。
「趣味の悪い服ですね」「そうですか?お嬢にもこういうのよく似合うと思いますよ」「合理性に欠けますし頭巾の配色に合わないです」
「…………」
これを着て外で遊ぶ、か。思えば王都でも外へ行く時も常に修道服だった。それも近所の散歩や図書館に行く位にしか出かけてはいない。室内で篭もっているだけでは陰鬱とした気分を晴れない、この際出てみるか。数日ぶりに何かをする気になれた、このチャンスに今日は外で遊ぶとしよう。
ーーー
現在位置 王都
「(とはいえ……何処へ行きましょうか)」
服を着替えて街へ出たはいいもののどこへ行くべきだろうか。目立つから馬車を出すのを躊躇ったから行ける範囲は限られる。ここから行けるところは……僅かな記憶を辿るとたしかあの辺りに広場があった筈だ。あそこまで行けばある程度遊べるような所はあるかもしれない。
目的地が決まり歩き出す。うーん、やっぱり馬車には乗るべきだったかも、広場についてからはいいものの行くまでに少し目立ちそうだ。しかしそんな心配は杞憂であり幸い変な目で見られることはなく無事に広場へとついた。
王都の街中はその名に恥じぬ出様だった。聖女である私が私一人が紛れる事くらい容易く広場につき、ベンチで一休みしていても特に何も起きない。
ワイワイ…… ガヤガヤ……
ここは自然とは真逆の静寂とは無縁の場所。街を歩く人の足音、馬車が石畳の上を歩く音、商人の声、芸人の芸に感動する民衆の声、それらが代わる代わる絶えず聞こえる。その全てが自然のそれほど綺麗ではない事は明白だが黒いインクの入った容器を倒した跡みたいな無秩序な良さがある。
「(自然豊かな所も好きですがこうゆう少し騒がしいのも悪くはありません。何だかいるだけで楽しくなってきますね)」
それだけではない。ここではありとあらゆる知らないことが耳に入る。目を閉じ、人の声に耳を向ける。するとどうだろう。流行りの店に食事に行く集団や最近の流行りの服について熱心に語り合う女性たち、新品の剣を持ってギルドへと向かう新米冒険者のパーティ、その他諸々。普段は聞き流してしまう様な綺麗なこと汚いことがここには無差別に投棄されている。
「なあ、お前はもう聞いたのか?この間あの聖女様が大怪我したらしいぞ」
……無論、こういう事もある。私の後方にて男たちが話している。
「そうなのか。いつだ?」
「数日前ギルドで聞いたんだ。敵国の兵器を破壊した時らしい。それも聖女でも治せない位の重症を負わされたとかなんとか」
正確には治せない、じゃなくて治さないだけど。それと彼らは話の内容から判断するに冒険者らしい。
「本当か?前にこんな奴らが戦争に行くくらいなら俺らが行ったほうがいいとか抜かしてたけど冗談言ってる場合じゃないな……」
「ああ。本当に勇者様様々だ」
「(そんな……直接ではないとはいえこうも褒められると少し恥ずかしいです)」
「ところでその兵器は誰が倒したんだ?」
「あのSランク村人のミツキだ。戦闘でもかなり活躍したそうだしやっぱり噂通りのギルド最強だな」
「…………え?」
彼が……倒した?それに活躍したって?彼は戦闘ではお世辞にも活躍したとは程遠い。なのになぜそう言われているんだ?
ミツキって奴がまたやったらしいぞ!
聖女様はミツキを庇って怪我したとか……
ミツキって奴がいれば国は安泰だな
一度疑問気になった意識してしまうともうそれしか入ってこなくなる。周りで話されているのは彼のある筈のない英雄譚。当事者とすれば噂である上で避けられない道だと諦めるべきだけど……
「(何故……何故『ミツキさんと私の話題しか出てこない?』。ルナシーとリューナさんはどこですか?それにミツキさんの仲間も言われてない。ミツキさんがここまで話題になるなら同じパーティであった彼女らも話題に上がるはず……)」
情報の出どころはどこだ?聞いた所この話をしているのは総じて冒険者の方々が多いからギルド、もしくはその周辺か?ギルドの位置は私には分からない。仕方がないから色んな人に場所を聞きながら行こうかな。
「お?セレネじゃねーか。やっと部屋から出てきたと思ったらこんな所で会うとは思わなかったぞ」
と、丁度いいところに彼が来た。偶然にしては出来すぎてる気もするけど今は都合がいい。彼は前回の戦いで手に入れた竹の一部をナツメさんに頼んで分けてもらったから武器を作りに行っていたそうだ。なお素材の性質が不明で加工を断られ、次の戦いでルナシーさんが素材のまま槍として使うのを提案するとのこと。
私は彼に事情を伝え何か知ってる事はないか情報を求めた。
「……という事なんです」
「ほう、鍛冶屋にいた奴らも似たような事言ってたけどそうだったのか。それで、お前の考えではギルドが怪しいって事なんだよな」
「はい。安直な発想ですけど筋は通っています」
「うーん、じゃあこの際ギルドに行ってみないか?もしかしたらギルドの広報が誤報でもしたのかもしれない。一緒に文句言いに行こうぜ」
それはありがたい。文句はいかなくてもこれが何処かから作り出された噂なのか誰かが脚色した虚なのか事実を知りたい。
ーーー
現在位置 王都 ギルド
昼間のギルド。酒場が併設されており昼間から冒険者が酒盛りをしている。それだけなら陽気で楽しげな場所だが汗と酒臭さと血の匂いが僅かにする。おまけに修練場とされる先から途轍もない殺気と魔力がするから戦う者がここにいる事を思い出させる。
ミツキさんは建物に入ってすぐにギルド長を出せ、と叫び周りを騒然とさせる。いやいや、まずは自分達ができることから始めないと。私が彼をそう諭そうとするも時既に遅し、ギルドの責任者が私達のもとへと来た。彼はアポも取らずに来た私達に迷惑そうな顔もせず私達を応接間に通す。
「ナツメ様、今は勇者様とお呼びした方がよろしいでしょうか?」
「それは勝手にしてくれ。俺の友人がこの前の俺の戦いについて知りたいらしいから連れてきた。軍のデータは機密ばっかだからここならいい情報もあるだろ?」
「ちょっとミツキさん、私は……」「待ってろ、騙す」
小声で言われた。ギルドの長と名乗る彼はミツキさんは知っているものの私の正体に関してはまだ感づいてないようで本題に入る前に私の名前を聞いてきた。騙す、との指示はこの事だろう。適当に「回復術師見習い」としてお茶を濁す。
「それで、知ってる事は?」
話を聞いた彼は人を連れてくると部屋を出てある男を連れてきた。
「広報担当の者を連れてきました。彼には王都だけでなく国中の全ギルドに伝える勇者様達と聖女様の情報を専任しています。軍から指定されている情報公開の線引もよく知っているので答えられる範囲でなら彼に聞いてください」
ギルドの長が部屋を出て世間知らずな私でも目に見えるような媚びへつらうような笑顔で彼は自己紹介をした。彼の役職や仕事についての詳しい言及は割愛する。彼の自己紹介が終わってからこの件についてを聞く。
「今このギルド内で戦争で俺が大活躍してるって噂が流れてるがその事について何かを知っているのか」
「ええ、勿論。貴方のご活躍は私の耳にも入っております。所で、ご自身からお話はされないのですか?私めより自身のご経験を話された方がよろしいかと」
「俺の事は話したからな。それ以外の……噂とか社会的な方を聞きたくて」
その後の彼の話と事実の相違点をまとめる。1つ目はミツキさんが敵を倒しリューナさん、ルナシー、私は手も足も出なかった。2つ目は私はあの戦いで死ぬ筈だったがそれをミツキさんが助けたから腕一本で済んだ。そして3つ目が……
「なあ、一ついいか」
「はい?私めに何でしょうか?」
「俺の事について俺の元パーティ仲間はなんて言ってた?」
「ふむ、思い出すのに少しばかりお時間を……ああ、そうだったそうだった。ギルド内で貴方の凄さに触れ回っておりましたよ。『あの頃から変わらない強さだ』と、たいそう嬉しそうな様子でした」
「(んっ!?)」
ミツキさんの元パーティの人達は戦いに参加しておらず生存している事になっている。だから彼女の事は誰の耳にも入っていないのか。持っていた疑問は解決した。だけどそれと同時に怒りを感じる。
彼はギルド内に私達の活躍を伝える係だ。しかしそのような立場の者が事実と大きく乖離した嘘を真実のように話す事は倫理的におかしい。それに何故本人たちの耳に入らないと思ったのだろう。
「……という事です。他には何かありますでしょうか?」
「ああ、ありがとう。おかげで色々と分かったよ。こっちもお礼に一つ教えてやるよ」
私はミツキさんの目を見る。彼もまたギルドのこの男に怒りを抱いているようで視線に憤怒が交じる。
「実は俺らあんたに一つ嘘をついてんだ」
「ははは、勇者様が嘘だなんて一体どの様な御冗談を。して、どの様な内容でございますでしょうか」
「隣のこいつ、服は違うけど実は聖女だ」
「勇者様はジョークまで面白い御方でありま……………………ん?んんん?」
彼は私の顔をジロジロと観察したて何かを察したようだ。血相を変えて慌てた後、先程の話は忘れてくれないかと懇願してきた。
「駄目だな。生憎記憶力には自身があるんでな、一度聞いたことは中々忘れないんだ(勿論ハッタリだぜええええ!!こんな屑の言葉なんかさっさと忘れちまおうぜセレネ!)」
「そうです。私も今のお話を聞いてジッとしていられる程優しくはありません(今のミツキさん、まるで勇者の顔には見えません)」
「な、何を……そんな……そんな…………そんな話がっあるわけがない!!」
もう駄目だと踏んだのか彼は逆上して喚き散らし始めた。聖女がこんな馬鹿そうな女の筈がないだとかミツキさんを偽物だと言ってみたりとかそれはもう散々だ。ここまで清々しいとさっきまで感じていた怒りも何処かへ行ってしまい彼に対するある種の称賛すら感じる。
「せ、聖女がこんな、こんな所にっ……!」
「『いる訳がない』、そう言いたいなら確かめてみるか?セレネ、見せてやれ。お前の目いっぱい」
彼は広報係の男の頭を掴み応接間を出る。どこへ行くのかを私が彼に問う。彼は修練場で私が本当の聖女だというの信用させるらしい。そしてそれは私がいなければ始まらないと彼は言う。すぐに部屋を出てついていく。
「………………どうして?」
「なんか言った?」
「いえ、何も」
〇〇ノ〇と〇式と〇〇〇の〇〇を連続で聞くと作者が同じだから頭が混乱する事を発見した。自分だけかも。
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セレネ
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