せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜   作:囚人番号虚数番

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【戦場編】イクサバ

現在位置 谷の森跡 馬車内

 

現在時刻 約1ヶ月後

 

 

 

ガタンガタン

 

「〜〜♪」

 

「リューナ、さっきから何歌ってるんだ?」

 

「さあ?私もよくわかんない。音楽には詳しくないからね!」

 

「さっきからフンフンうるさいです。喉潰されたいですか」

 

「ルナシー、そんな物騒な事を口に出すのはいけませんよ」

 

馬車内で四人仲がいいのか良くないのかよくわからない会話をする。外の景色は焼け焦げた木の堆積するかつて谷の森と言われていた所。しかし生命とは意外としぶといもので1ヶ月の間に緑色の新たな命が芽吹き始めた。

 

「リューナさん、今日は機嫌が良さそうですがどうされました?」

 

「だってー王都ってなんか狭っく苦しいじゃん。めーいーぱい魔法を使える所の方がリューナちゃん好きだし!」

 

「それは私も同感です。町中の袋小路で暴れるよりも多少地形は悪くても広いほうが向いてますから」

 

これから行く所ではルナシーもリューナさんもが窮屈な思いをせずにのびのびと戦闘できるだろう。特にリューナさんは魔法の誤射を気にしなくていいしいいことこの上ない。

 

ルナシーは果たして暴れさせてどのように破壊の限りを尽くすのか予測不能だけれど。

 

私達の馬車が向かう先は谷の村を過ぎた所にある軍のキャンプ。つまり私達は本格的に軍の和の中に入るのだ。

 

ーーー

 

現在位置 荒野 北の野営

 

「お邪魔しまーす。ナツメでーす」

 

「えっま……はっ!騎士団長様!」

 

「うんうん、君は真面目だね。でも責任者でもないんだから僕みたいに固くならずもっと緩くなろうよ」

 

「で、ですが……」「おーい皆、勇者と聖女連れてきたから場所開けて。会議で使いたい」

 

彼はここについた途端一番大きなテントに私達を連れて行った。それから許可も得ずにその中に入り適当な言葉で中にいた怖い顔の兵士さん達を一人残らず追い出した。

 

「えっと、その、あの兵士さん達仕事で忙しそうでしたが追い出しちゃって平気なんですか?もの凄く困った顔してましたけど」

 

「大丈夫だよ。ここには僕より偉い人いないし文句言うのもいないからね」

 

「うおぉ……さすが国家権力(さすが軍人、どいつもこいつもギルドの並の冒険者よりも強そうなのばかりだった。多分AとかB位だよな)」

 

彼はテントの中心の机の上にある地図と道具を払うように強引にどかしてから上座の方の椅子に座る。物を落とした物音で外の兵士さんが異常かと訪ねてきた、が別の上官に呼び出され何処かへ行った。

 

私達も適当に椅子に座る。木製の汚れた大きな椅子の座り心地はいいものではない。なんかベタベタするし。しかし文句を言っても仕方がない、仕方なくここで私達が何をするかの確認をする。

 

まずここは北の野営という所。

 

ここは私達の国の軍が建てた拠点の一つ。拠点は他にも東西南の3方にもあり、ここはその中でも王都から比較的近く拠点の中でも一番大規模である。なお実際に兵士同士が戦っている所自体はここから少し離れた所にあるという。

 

それで、今回の任務は敵国の都市を落とすとのこと。各々が別れて各拠点にて活動し別方向から同時に敵地を攻め続ける、そうゆう作戦らしい。西にリューナさん、東にミツキさん、南にルナシー、そして北が私とのこと。

 

「都市1つですか。ついでに天下も取りましょうか?」

 

「おっルナちゃんいいねそれ!!お姉さんもやるやるー!!」

 

「ははっ是非ともそうしてほしいね。でも流石に君達一人で前線を維持するのはいくら何でも無理だと思うから各基地にいる人員と設備は自由に使っていいよ」

 

更に私達にかなり強い権限を与えくれているらしく私達の指揮で人を動かしてもいいらしい。動かし方が分からないかなら彼の優秀な部下(曰く彼自身が調教し続けた)がアドバイスしてくれるそうだ。勿論自分が前線に赴いて兵士と混じり戦うこともできる。

 

「ちなみに北は前線がかなり消耗しているから僕が直接指揮してるよ。だからここ担当の人は僕がそのアドバイスをする係。よろしくね」

 

この自分の指揮で戦争ができることを知ったミツキさんは嬉しそうだった。やっぱり冒険者だと人材の重要さは通ずる物があるのか、それとも単に頭を使うのが好きなのか。傍からでも分かるほどソワソワしている。

 

「各拠点への出発は夕方頃、移動は馬車だからそれまでにやり残した事があればやっておいてね。あとは……えっとこれかな?」

 

彼は床に落とした崩れた紙束の山の中から書類を拾ってきた。私達が担当する拠点や前線、周辺の地形の書かれた地図、それと補給や兵の数が簡単にまとめられた書類と概ね戦線の様子をこれで知ってくれと言わんばかりの情報が書かれた資料だ。それを彼は私を除く三人に手渡して1つは机の上に置いた。

 

「わー!ありがとねナッツー!……うわ、すっごい人の数。軍隊って結構大きい数扱うんだね」

 

「(ゴワゴワしてクソ拭く紙にもなりません)」

 

「……よし!ありがとなナツメ。これでやっと俺の真の実力が出せそうだ」

 

「セレネ君はここ担当だから後でじっくり読む時間あるし自分で読み込んでおいて。一応机のソレがそうだから」

 

ーーー

 

そして夕方となり彼らは馬車で各々の拠点へと向かっていった。戦火にも劣らない赤々とした夕日に照らされて彼らは戦地へ赴く。荒地に走る地平線の上に点のように見える彼らだった。

 

「リューナ転移魔法の仕込みもしてなかったから暫くは誰にも会えそうにないですね」

 

もしかしたらリューナさんの気まぐれで空間魔法でやって来るかもしれない。しかしそれもあり得ない。谷の村で彼女が研究室と接続する所を見ていたのだが式が複雑で組むのに手間がかかる上接続にかなりの魔力を使う。だから彼女は今回野営に転移魔法を仕込まなかった。しかたないけどちょっと寂しい。

 

「心配なら補給が出るときに手紙を運んでもらって彼らに送ってみたらどうかな。それか通信関係の魔道書を王都から取り寄せたりとか。なんにしても僕たちにできる事は自分の持分をこなしながら彼らが無事に帰ってくる事を手を合わせて祈るだけだからね」

 

「そうですね。私にはもう合わせる手がないけれど……ここは平和とは程遠い環境です。そうしましょう」

 

見送りも済んだことだしそろそろ帰ろう。私達はここでも優遇されているらしく個人用のテントを用意してくれた。今日は一日馬車で揺られた上各々の荷物運びやら施設の紹介やらで疲れた。すぐにでもベッドに向かい資料を読み込んで寝てしまいたい。

 

すると帰る前に聞きたいことがあるとナツメさんから止められた。

 

「そうだそうだ。忙しくて大切な事聞き忘れてたんだ」

 

「大切な事とは……そこまでの急用でしたか?」

 

「なるべく早く答えてくれると、ってとこかな。じゃあセレネ君に聞くよ。君、人を殺す勇気はあるかい?」

 

…………!

 

その質問に思わず顔を強張らせる。

 

「えっ……それは……」

 

「都市を落としたあと現地の兵士が襲ってきた時とかに必要だから聞くけどそれはどうなのかい?」

 

私は戦う者として呼ばれた身、当然戦う事が使命としては正しい。しかし私の心の中ではまだ一修道女としての良心が人を傷つけるのを簡単には肯定してくれない。たかが1、2ヶ月と数週間前までは人殺しと無縁だったからその気が抜けないのも当然だ。

 

加えて左手の件もそうだ。未だに片腕のない生活には慣れずふとした時に無いはずの左手を動かしてしまう。魔法もそれ用に改造し終えてはいるけど扱いには慣れていない。

 

「私は…………」

 

数式のように唯一の答えが無い問に中々答えを出せずに悩む。そんな私に彼は笑顔でアドバイスをくれた。

 

「まあまあ無理しない無理しない。こうなる事を見越して僕と一緒のここに君を配置したんだからね。僕からオススメの仕事があるんだけどどう?君にしかできない事なんだ」

 

「……もしかして治療ですか」

 

「そ、前線でもここでもいいから衛生兵と混じって兵士の怪我を治す仕事だよ。きっとむさ苦しいオヤジじゃなくてカワイイ女の子が怪我を治してくれるって兵士の士気も上がるし」

 

彼の提案には邪念が混じっているものの慣れている仕事をするというのはいい事かもしれない。戦闘に直接参加するのはまだまだ時間はかかる事にはなりそうだけれどそれが一番だ。

 

「いい考えですね。私の魔法の腕で兵士さんが少しでも楽になってくれれば私も幸せです」

 

「おっけ。それなら物資とか医療に必要な資料をまとめ次第届けるね。30分くらいでちゃちゃちゃっと部屋に届けるよ」

 

ナツメさんはそう言ってあの大きなテント(どうやらあそこは立案などをする会議室のような所らしい)へ行った。私も自分のテントへ……の前にある場所へと立ち寄りたいと思う。

 

 

 

 

案内された記憶を頼りに野営の中を巡る。鎧を脱いだ屈強な兵士の集まりの中では小柄で修道服の私はかえって目立ち、少し恥ずかしかしい。けれどそれは仕方ないのでそんな事は気にしない。そして目当ての場所の近くへと来た頃。

 

「えっと……この先を曲がって……」

 

ギャアアアア!! ウルセエ ヤッテルホウモツレエンタ"! ダレカクスリモッテコイ!!

 

男達の悲鳴と怒号。丁度私が目指していた建物の所から聞こえた。仕事柄居ても立っても居られない私はそのまま駆け出して患者の所へ……

 

「止めときな聖女サマ。そこはアンタの思ってる以上に地獄だぞ」

 

突然後ろから肩を掴まれる。驚いて後ろを振り向くとそこには顔に大きな傷のついた男の兵士だった。

 

「っえ!?あ……でも私は!」

 

「はいはい、一兵の俺も噂には聞いてるぜ。アンタが聖女だろ。こんな血なまぐさい所にシスターさんなんて場違いにも程があるしな」

 

彼の話はどうでもいい、そんな事より怪我人を。そう無視して先へ向かおうとする私を彼は私の腕を掴み強引に引きずり近くの誰もいないテントへと連れ込んだ。

 

「ちょっと……何するんで……ん"んん〜!!」

 

「騒ぐな。俺が叱られる」

 

彼に無理やり口を手で塞がれる。力の差では到底勝ちようがなく少し抗った後諦めて話だけでも聞くことにした。

 

「いいか、あそこは『野戦病院』なんだ、普通の奴が軽い気持ちで入る所じゃねえ。昼間案内されれる所見たからお前も当然知ってるよな」

 

「え、はい。そうですがそれが……」

 

「予想だが中は見せられてないだろ。あん中にゃそりゃ酷え怪我人しかいねえ。下っ端は禄に治療も受けられねえし熱くらいなら追い出される」

 

「なら尚更「黙れ!今さっき兵が帰ってきた所だ、行くなら深夜か明日の早朝にした方が身の為だぞ。OK?」

 

「っ!はい……」

 

突然の大声に涙目になりながら弱々しい返事を返す。そして何事も無かったかのように外へと出され彼は何処かへ行ってしまった。

 

「(……さっきの兵士さんは居なくなりましたね)」

 

辺りを見回すと彼は見当たらない。よし、これで邪魔する者はいなくなった。私は急いで患者の悲鳴の場所に走る。あの悲痛な声は今も続いている。そしてその入口の前に着いた。忠告は無視する事になるけど私は心してそのテントに入る。

 

 

 

 

「………えっ?」

 

「あーあ、だから見るなって言ったのに」

 

そして、後悔した。後ろからさっきの彼の声がする。もしかして隠れて私の後をつけて来たのか。しかし今の私にそんな冷静な思考ができるわけが無かった。

 

怒号、悲鳴、阿鼻叫喚、そこは地獄すら生ぬるい惨状だった。

 

テント内には汚れたベッドが並べられその上に重症の兵が何人もいた。数人がかりで暴れる兵を抑え込み傷口に回復薬を塗りたくる人達、血だらけの包帯が巻かれ呻き声を上げながら天井を見つめる兵士、無麻酔で切除手術をする兵士……なによりその不衛生な環境。病院では当たり前な白一色の設備が鮮血で赤く染まり、肉が散り、蛆と羽虫が湧いている。

 

最悪の悪夢だ、それは私の修道院の病室が何個あってもたどり着けない領域であり考えたくもない状態。思わず入口の前だというのに座り込んでしまい腰が抜けて立ち上げれない。

 

「おい!そこの邪魔な黒チビ……って聖女様ではないか!?おい、そこの奴、聖女様をここから離れた何処かへ案内しろ」

 

「はっ!聖女様こちらです!」

 

あの兵士から肩を貸され私はどうにか立ち上がり私は自室の前へと運ばれた。

 

「すまねえがアンタの部屋は勇者と女、それと団長様以外立禁だって言われてんだ。あとは自力で歩け」

 

「…………」

 

私は彼に返事をしない。

 

「……だから忠告したんだ。丁度戦ってたやつが運ばれて来て一番やばい時に覗くからこうなるんだよクソ。ここは街みたく帰ったら清潔で設備の整った環境で治療ができる天国とは違うんだ」

 

「………」

 

その言葉にも私は返事をしない。

 

「……聖女サマ?」

 

「…………………」

 

「……………もしかして気絶してるのか?」

 

正解。今の私は返事をしない、というより出来ないというのが正しい。だって余りに刺激的な光景を突然見て気絶してるのだから。

 

どうしていいか分からない彼は取り敢えずその場に私を寝かせて何処かへ行く事にした。

 

「セレネ君、そこはギリギリテントの外だから寝るところじゃないんだけど」

 

 

 

そしてナツメさんに見られた。

 

 

 

「騎士団長様、お疲れさまです!聖女様がどうされました!?」

 

「ちょいと書類揃えるのに時間がかかりそうだから今ある分だけの書類を届けにね。君は?」

 

「はっ!聖女様が病院前にて気分を害されたようで部屋の前へとご案内をしていました!」

 

「あーそりゃセレネちゃん駄目だね。なまじ看護系も知ってるからただの死体とかスプラッタよりもキツイだろうし。で、流れでそのまま失神した感じみたいだね。彼女は僕が中にまで運ぶから君は持ち場に戻っていいよ」

 

「はっ!」

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