せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜 作:囚人番号虚数番
現在位置 荒野 目的敵の敵都市部までの距離 中
弾幕飛び交う戦場。戦闘頻度を下げてただひたすら逃げ進み敵を捌く。本拠地に近づいているだけあってさっきまでいた所よりも確実に弾幕の激しさが増している。言い換えれば私は確実に進行できているということ。目標に着々と近づいている実感を得て私は勇気が湧く。
ターンッ!
1km以上先の真後ろから金属塊が複数。【円環】を張って対処。感知用の魔法に小さな二枚貝からの物理の弾が感知して、それと同時に防壁が弾く。
「不意打ちなんてさせませんよ」
カッコつけたはいいけれど実際はやせ我慢に近い。空からはレーザーと魔法弾の弾幕が地上からは魔法物理問わない数多の種類の弾幕の2つを捌くのに自身の五感では足りない、感知魔法の第7感が途切れてしまえばどうなってしまうかわからない恐怖が背中の後ろについてまわる。
ふと、今ここから都市が見えるか気になる。弾幕の回避が嫌になったか集中が切れかけてるのか一瞬弾幕の隙間から遠くを垣間見る。
「………………?」
何か……さっきまで見えなかったけど遠くに何か建ってる?僅かに見えたそれは遥か遠くに小さく見え灰色の巨大な建築物というのは分かる。もしかしてあれが都市?
「(……いや、それだけ大きい物があれば地図に何かしら書かれるはず)」
頭の中に嫌な予感が浮かび上がる。もしかしてあれが敵?目測からしてかなり大きい金属の塊が遠くにある。
「(避けるべきでしょうか?)」
そういえば敵のデータにそのような生物がいた気がする。たしか鹿の兵器はまだ見ていないからあれがその兵器だろう。まだ敵は動いていない。今なら遠回りで逃げられる。
だけど相手は何かを射出し続けているようだ。弾幕ではなく上空と地面に何かを撒くような意味の分からない弾幕で不思議に思う。
「(?感知魔法に反応があります。弾幕ではないけど魔力があるとは……いや、待ってこれって)」
感知魔法から出力されたのはある種最悪な情報だった。敵の分布が敵都市の方ではなくあの鹿の方から来る敵の数が一番多い。あの鹿の方角と都市の方角が微妙にずれていたから発覚した。
さらなる情報を求めて視線は空の弾幕に戻し感知魔法の範囲を拡大する。むりやりあの鹿を感知範囲に入れ解析をすると……うん、そうだ。
「(すべての敵は……あの鹿から出てきている。そう考えるしかありません)」
鹿の背中からポンポンとトンボが飛び立ち、貝も身体の表層からポロポロ落ちている。あれがどんな仕組みなのか気になりさらに解析をする。
が、しかし
「(解析できない!?まさかこれが『防止機構』?)」
あるところを境に解析をしようと魔力を流すと何故か解析が止まる。それをどうにかしようと適当な所を改変してもどこかしらから修整される。前にリューナさんから教えられたハッキングを防止する為の機構の一種だろう。とてつもなく複雑な関数と式で内部構造が守られていた。これでは情報の入手ができない。こうなったら脆弱性を探し出しそこから内部を解析するしかない。
「(そうなると余計に作戦を遂行しないと駄目ですね)」
こうなったらあれごと釣り戦いやすい所まで誘導しながら戦う。丁度私の感知に気がついた鹿が起きてこちらを静かに敵意ある視線を向けた。ゆっくりと立ち上がりその巨体……おそらく20m位の3本角の金属の巨体が戦闘態勢となる。
「よし、それじゃあ全力で逃げ攻めます!」
そう意気込んでしばし弾幕の処理を一旦休憩するついでに都市へと走り出す。
「…………」
虎の尾を踏む、という言葉がある。危険な事やまたは単に危険なことを表す語だ。
彼の者、いや鹿の者は怒っていた。不快な感触で目が覚め、気がついた時には体から無数の兵の虫が小娘一人の為に這い出ていた。その小娘からはわけも分からぬ不快な魔力で身体を撫で回された。
「…………」ピリッ……ピリピリッ……
彼はそれを彼女からの宣戦布告と受け取った。彼の者の3本の角の内上向いた外2本に緑の筋が入る。
ピリッ……パチッ……パチッ……
角の合間にもその筋が走る。怒りが奥底から湧き出るにつれて筋が少しづつ増え、細い糸が結われ縄になるが如くその筋も一定の形をなす。
バチチチチチッ!
それはまさに荒天を裂く「雷」だ。翡翠の雷がその双角の合間を橋渡しする。ここまで強大な電気の塊には逃げる彼女も音で異常に気がついた。
「(まずい!防壁をっ!)」
そしてついに雷は中心に集まり一つの球体となる。そして、弾けた。
炸裂、壊音、そして閃光。向かう先は彼女とその取り巻きの小蠅もろとも。
彼らが閃光が視認したとき既に体は黒焦げていた。煤が風に吹かれて荒野の砂利に混ざる。貝は殻にこもっていた幸運な個体以外物言わぬ石灰の塊になる。
そして彼女はというと……
ーーー
「凄まじい威力……危なかったです」
後方からの異常な魔力を感知して【円環】を最高出力(リミッター圏内)で自分に張った。かなり硬めだから物理でも魔法でも多分耐えきると思っていた。
そして破壊音とともに閃光が私達を貫いた。それはまさに「雷鳴」、魔法も雷魔法が作動してるのだろう。周りの敵は鹿の攻撃で弾幕ごと焼き払われ空がスッキリした。貝も認知している者の殆どが黒焦げになった。
そして、私の魔法はというと閃光が触れた瞬間に砕け破壊された。魔力は私に辿り着く前に敵により分散されたからそこまでではない。雷の高電圧の純粋な物理要因だけで壊されたのだ。瞬間的な一点集中の高火力には私の魔法でも耐えられなかった。
「後で計算ですね」
敵のいない事に安堵し研究した魔法の耐久面での計算の必要性を残念に思う。
瞬間、殺気。私は振り向く。
「…………」
「(あれは怒ってます。起こしてしまってごめんなさい。でも謝ってどうにかなる訳では無さそうですね)」
遠くで金属質の鹿がじっと私を睨みつける。
その鹿は体は金属で角が3本あり背中には棒が入った直方体の金属塊がある。魔力からして大体が弾を射出する機構だ。体は20m位あり体格差から弾幕の大きさを考えると箱の弾幕の一つ一つ大きさが私の身長ほどあるだろう。もし当たったらどうなるかというのは想像に難くない。敵は戦闘態勢だ。
【光柱 ピラーオブムーンライト】
なら、応戦しないと。鹿に極太のレーザーを撃ち込む。対空兵器がいなくなり途中を遮る障害物はない。一直線に鹿へと飛ぶ。
しかし、鹿はそれを巨体に見合わぬ軽快なステップで回避した。そのままの勢いで鹿は私を踏みつけに来た。
【移動速度上昇 認識速度上昇】【流星 ラピッドスターダスト】
今の速度だと回避できないと判断し移動速度を底上げして足止めに弾幕も撒き散らし全力で敵都市へ走る。敵は追いかける事に夢中で弾幕はそこまで飛んでこない。後方から虫の羽音が増え始めたから彼らの弾が鬱陶しそうだ。つい後ろをチラ見した。嫌になる量の虫が飛んでいて見て後悔した。
一方鹿は棒の刺さった直方体を空中に上向け弾幕を射出するようだ。私も弾幕に関しては最近色々と思案をしていたがあの弾の役割がわからずあれが一体どんな弾幕なのか検討もつかない。
「(だけどあれ間違いなく高火力です。制御系の回路があまりにも強固すぎて回避するしかありません!)」
そして弾が放たれる。
ドッ!
ぎゅおおおおおお!
矢羽の様な物のついた金属の円柱が放たれた。体と同じ緑の筋が上空へと飛び上がる。しかしある高度に到達した途端空中でひとりでに私に照準が合う。
「ちょちょ!?途中で軌道が変わる誘導弾ですかあれ!?」
しかも高速で動く私に合わせてしっかりと飛んでくる。これじゃ避けようとしても避けなれないし避けたら避けたで追尾される!
「(うううう………間に合え……間に合え!!)」
私は虫の弾を捌きながら解決策を探すために全力で敵の弾をハッキングする。式に触れた感じ鹿本体よりもセキュリティが若干薄い。これなら頑張ればぎりぎり……
「(えーとまずここの式とここの変数がここにつながってあそこが最終的に変わればいいんだから最終的な式の形は待ってその前にあそこの機構をどうにかしないとそこをそうすればこうなるのかこれは時間がかかかる別の仕込みもしなきゃって何この初めて見る機構これはリューナさんの魔導書でも見たことないです非常に参考になります)」
僅かな時間を最大に利用して式の解析をする。セキュリティが薄いといっても相手にする魔法のイメージは非線形の製作者の頭を疑うカオスな式。時間的には5分、いや1分、ニ十秒あれば最低限は間に合うのに!
弾幕まで残り10m、既に回避不能。正念場はすぐそこだ。
ぎゅおおおおおお!
「こ、こうすれば!」
半ばやけくそで私は式を組み敵のシステムの脆弱性を探る。そして……
バァンっ!
着弾した後に破裂、中に内蔵されていた数多の魔力により式が作動し弾幕を中心に大きな緑色の雷の球体が展開される。かなりの高電圧が流れていて衝撃で飛ばされた小石がその空間に当たり砂埃と化した。
【75式-彗星の尾】
「切断系の弾種作っててよかったです!」
ハッキングは間に合わなかった。コードを入れた瞬間になすすべなく魔法は解除された。だから事前にリカバリー用の魔法を解除と並行して仕込んでおいた。
私の弾に当たった敵弾は薪を切るように金属柱が二分する。着弾した弾はその二分された弾で私のすぐ横を通る。
彗星の尾、放物線の形をした巨大な切断特化型弾幕。速度は比較的おそく射程も短いから普通は使わない。だから今みたいに至近距離に物理弾が来たとき弾を切断するのに使えると思いリューナさんと開発していた。
「(リューナさんが『投擲系の弾幕に対する高火力物理弾を作ろう』なんて言い出したときはまさかこう使うとは思いませんでした)」
雷の弾は残留するタイプの弾幕で大きな弾である事も相まって動きを大きく制限される。だが猛攻は止まらない。鹿の背中から虫が飛び出し、胴体側面から体内に収納された沢山の筒のついた奇妙な機関が展開されてそこから高速の金属弾が射出される。当然の様に無力化は難しい。
だけどやる事は決まっている。走って追尾するように斉射される弾幕を切断と相殺しつつひたすら敵都市まで逃げる。
「(そうすれば私の勝ち筋が見えてくる。だから攻める、攻めながら逃げて攻め……)」
「ぐわああああ!?衛生兵ーッ!」
「っ待ってください。今回復を……」
あ
やってしまった。
誰かの声、兵器の声ではない男の叫び声。私以外の人なんてこの戦地にはいないはずなのに反応してしまった。神と他者に身を捧げる者としての本能が戦場で出てしまった。
正体は予想せずともすぐに分かる。視線の先にいたのは地面の上で岩に紛れた薬草を取りに行ったときに見た貝だった。
あの時はただの「音の出る用途不明な兵器」だとたかをくくっていた。だけどもしこのような用途を想定していたとしたら下手な弾幕よりも遥かに意地の悪い仕掛けだ。
そして不運は重なる。
ヒュッ ブスッ
「うぁ!?(横腹に針、しかも毒付き!?)」
逆側から下腹を長い針で貫かれる。感知はしていたけど30m先のそこらの小石程度の貝からここまで射程が届くとは考えていなかった。
空からは数多の魔法弾が降り注ぐ。回避や【円環】はもう間に合いそうにない。
ああ、神よ。ここで止まるわけにはいかないんです。
だから私に慈悲を、救いをください。
どごおおおおおおおおん!
ドドドドドドドドッ!
ドゴオオオオオオン!
現在位置 荒野 目的敵の敵都市部までの距離 中→近
ーーー
『戦い慣れてる?』
「前回の戦闘で彼女の戦いを見ました。その時は光でほぼ一撃死でした」
『あーそんな事言ってたね』
「だから私はてっきり今の戦いも猿みたいに魔法ぶっぱしてると考えていたんです。ですが彼女の行動は冷静な対処過ぎませんか?」
『セレネちゃん、ちゃんとアドバイスどおりに動いてたかなー?』
「一体何教えたんですか」
『あーでも確かに。今音声聞いたけどこれはお姉さんもそうも思っちゃうな。セレネちゃんとは撃ち合いで弾幕戦闘の練習はしたけどそれだけじゃあの臨機応変な対応は難しいし』
「貴方がセレネの戦いで何を見たかはどうでもいいです。今思えばそもそも前回の敵と対峙したときからおかしいと思いませんか?」
『……?』
「例えばです。貴方が初めての戦いでアレを見たとします。そしたらどうなりますか」
『うーん、たぶん怖くて逃げちゃうかも』
「そうです。そういうのが正常ですよね」
『あー……そうだよね』
「リューナさん、どう思いますか?」
『………………』
「悩んでいるようなら答えは後でいいです。私は頭を使いたくないのでなんか分かったら教えてください」
『………………………………』
「リューナさん?」
『…………………………………………………』
「おい、喋れよ」「お嬢通話切れてます」
戦いの最中に使う単語の定義(暫定)
弾幕種
魔法弾 射出する弾の素材が固体ではない弾 弾の形を魔法により維持する為ハッキングで改変の影響を受けやすく種類により無力化が可能。
物理弾 射出する弾の素材が固体の弾 軌道や属性付与に魔力を使うがハッキングされても弾自体の物理面の影響が少ない。
どのキャラが好きですか?
-
セレネ
-
リューナ
-
ルナシー
-
狼さん
-
ミツキ
-
ナツメ