せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜 作:囚人番号虚数番
現在時刻 午後五時
現在位置 キッチン
あれから夕方。一日かけて掃除は終わった。午前中で技術のいる仕事は全部済んであとは細かい所だけ……となったのだがこれが災いした。そう、当然の如く私は他の方々とその残りの掃除をしようとしたのだが
「(……あれ、もしかして片手で掃除って意外と難しい?)」
箒とか簡単な作業ならまだしもそれらは午前でやってしまい残っているのはあまりない。それで残りくらいなら私がやってしまおうとしたのだがこれがまた酷い。背は半端に高いから高所の作業はミツキさんだよりで、バフを盛れば出来そうと思ってた力仕事の家具の搬入も直前になって片手だと難しいと気付いた、じゃあ拭き掃除でもと雑巾を手とっても魔法無しで力もないから片手じゃまともに雑巾も絞れない……結果的に魔法以外にできる事があまりなく悶々としていた。
「(流石に今日は無力さを感じざるを得ませんでしたね……」
だから、私は今出来る事が何かを考えた結果キッチンにいる。
「そして協力に俺参戦」
そう、時は夕食時前。出来ることと言えば一つ。「私が夕食を作る」。今、アネッサ&クーは早めの風呂から出てリューナさんと読書兼お勉強中。ナツメさんは来てみて必要そうないくつかの家具や「ルナシーの服」の手配を町で色々としているそう。無論掃除すら怪しい私が料理など……と、そこでミツキさんに手伝ってもらう事にする。
「所で料理の経験は?俺は多少できるぞ」
「私は余り……でも基本的な事は一通りできます」
「よし!それなら安心だな。食材はそこそこ買い込んだから一通り揃ってるし何でも作れるから二人で頑張ろうな」
食材は肉は昼間ルナシーが狩ってた余りをリューナさんが魔法で凍らせたのが、野菜は何種か、それと調味料。料理には十分すぎる。
「それじゃあ、始めますか」
※なおは彼は彼女の料理の腕についての話を知りません
「……?(今何か僕が避けて通った何かが表に出ようとしているような)」ゾクッ
ーーー
「ほい、セレネ。トマトとジャガイモだ」
当然と言うべきか両手の使えない私では包丁は使えないので彼には食材を切ってもらう。レシピは私が修道院で少ないながらも料理の手伝いをしていたのを覚えているからそれをどうするかは私が指示する。
今作っているのはスープだ。今日のご飯はサラダ、トマトスープ、昼間ルナシーさんが狩ってきた肉(リューナさんの魔法で冷凍、現在解凍済)、あとは町で買ってきたパンの予定だ。
「ありがとうございます」
ミツキさんが切った野菜を鍋に入れ炒める。加熱された食材のいい香りがしてきた。
「じゃあ次はサラダ用の野菜を切ってください」
「お安い御用」
スープの具を加熱しながら並行して焼いている肉の様子を確かめる。うん、しっかり焼けている。時間的にまだ中まで火は通ってないから焼けきるまではもう少し掛かりそう。
「(……動作確認はしたから平気なはず)」
肉や具材の焼き加減もそうだが私にとってはそれよりも気になっていた事がある。それらを焼くための魔道具が正常に起動しているのか、勿論点検もしたし動作確認済みだから動かないわけ無いのだがやっぱり実際の運用が出来ていると安心する。
「肉ならさっき入れたばかりだろ……って直したコンロを見てたのか」
「ええ、魔法を使う者として手を入れた設備を正常に動作させる責任がありますから」
「そうか。言ってる事が魔法使いというより鍛冶屋の職人みたいだな」
「そうでしょうか?やった事に責任を感じるのは当然だと思いますけど」
「それが残念な事にギルドじゃ割といるんだよ。魔法を仲間に誤射しても無視したり魔法同士の干渉?とかいうので誤爆したりとかたまーにあるんだよ。その癖魔法を組んだ奴のせいにして放置する」
多分その原因は呪文魔法の制御不足で失敗したんじゃないか、それと製作者が想定されていない魔法の使い方をしたんじゃないかな。災難だったとしか言えない。
料理の方は加熱が続くので暫くは気を使わなくて大丈夫だ。私は引き続き料理が出来るまでその場で待機し彼は適当に出した椅子に座る。
「……そういやギルドで思い出した。一つ聞きたい事があるんだ」
聞きたいこととは何だろう。
「この前の、つってももう一月前以上の事だけど中々話せなくてな。ギルドの話だ。お前、何故あの場で逃げたんだ?」
……今更それを掘り返してくるのか。まあいい、私もあの時は色んな事を考えてたがゴタゴタのせいで忘れていた。正直、あまり思い出したくもない。あんな不快で不気味な思い出は忘れてしまったほうがいい。それでもいざ思い出してしまうと再びあの疑問に対する探究心が湧き出て来た。私は彼に答える事にした。そして答えるついでに彼にあの時のことはどうしてか、そして彼は何者なのか聞きたい。
「……逆に聞きます。何故あの時剣を持ったんですか?」
「そりゃ制裁のためだ。それ以外何があるんだ」
「なら今後はやめて頂きたいです。私は暴力は嫌いなんです」
声色に現れない程度に少し強めな口調で言う。あ、そろそろいいかな?食材の入った鍋に水を入れる。
「す、すまない。でも周りの奴も乗り気だったじゃねえか」
「それでもです。貴方は前に戦いの場で戦わないのは失礼だと言いました。私もそれには同意します。だけどあの場では穏便に済ませられました」
彼はまだ何か言いたそうにしたがそれ以上の詮索はしなかった。そしてごめんと一言私に謝った。
「謝らないでください。私もあの時は別の事にも気がかりで冷静な判断が出来ていなかったのもあります。だからそれに答えていただけますか?」
彼は何かそんな不思議な事でもあったのかと疑問に思いつつもいいぞと受け入れてくれた。
「小さな事なんです。ギルドでの情報収集の手段がどうしても気になりまして」
「暴力以外でか?」
「ええ」
それから私は彼の行動の問題点、根拠のないギルドへの突然の来訪、無能な広報、それと周りの態度。色んな事を彼にぶつけて反応を確かめる。
ギルドの来訪についてはそれもそうだなと冗談めかしく笑っていた。流石に指摘されてから迷惑だとは思ったらしい。そして広報についてはただの無能と言い切った。本当にそうなのか、と彼にもう一度考えさせると「それか運が良かったんじゃね?」と返される。
そして最後に周りの態度、暴力に賛同した彼らについて。
「正しいことを言ったならそりゃみんな言ったやつについていくのが当然だろ?」
「……そうですね」
「あの、変な質問をしていいでしょうか?」
「何だ?」
「貴方は……何ですか?」
すると彼の顔が少しだけこわばった。
暫く静寂が続く。ただただ薄暗くなりつつある古いキッチンでボコボコと湯の湧く音が響くのみである。神様、私は今、背筋が凍りました。私はどうしたら……
「…………っておいおいセレネ、鍋吹きこぼれる吹きこぼれる!」
「うぇ?あ、え!?」
話に夢中になりすぎてスープが吹きこぼれる寸前だった。急いで火を弱める。
「危なかったな」
「すみません、ごめんなさい」
それから調理を再開し順調に料理が完成する。トマトスープ、焼いた肉、季節の野菜サラダ、それとナツメさんが町で買ってきた良さ気なパン。味付けはサラダと肉は「味付けには自信がある」とミツキさん、スープは責任を持って私がやった。
試しに味見をしてみる。うーん、まだ調整がいるかな?
「俺も味見していいか?」「それは……ご飯になってからのお楽しみにしましょう」
笑って言う。それと同時になんかいい匂いがする!とこちらへ来るリューナさんの足音がする。それと玄関の方から扉を開ける音がする。
「セレネちゃん、もしかして夕飯?」
「ただ今帰りました。丁度夕飯のようですね」ガチャ
「はい、もうすぐですよ」
そういえばルナシーは昼間からどこにいるか知らなかった。しかもいつも被っている頭巾を手に持っているしそれに何かを入れている。何をしていたのか聞いてみる。
「周辺の地形を調べるのに散歩してました。あとこれはお土産です。セレネの為に盗品ではないと補足しておきますね」
最後のは多分皮肉だろう。彼女は膨らんだ頭巾を開き中身をテーブルの空いたところに出す。それは沢山の果実だった。虫食いも無く腐っているものもない、綺麗で美しい物だった。山葡萄とか木通は山に生えてると聞くからとってこれたのも納得できる。しかし野生の物らしきリンゴやベリーなんてどこで見つけてんだろう。
「美味しければ何でもいいです」
そう言って彼女は部屋を出る。リューナさんは彼女の持ってきた山盛りのフルーツ類を水属性魔法で洗浄した。そして小さなベリーを1つつまみ食いする。
「んー甘酸っぱいー!ねえ、これご飯の時に出そうよ!」
言われなくてもそのつもりだ。
ーーー
それから夕食。午後6時、リビングルームにて全員が集まる。全員が明るく照らされた部屋で料理の並べられた机を囲む。
「わあぁ……!すごい夕食ですね」「じゅんすいにおいしそう」
豪華なものでは無いのにアネッサとクーはその普通の食事に目を輝かせる。
「あっ……騒いでごめんなさい」
「平気だ。お前らこっちの『普通』の食事は初めてだったな」
彼女らは都市ではあの缶詰、王都では捕虜用の質素を越え貧相すぎる飯しか食べておらず「普通の生活」は今日が初日だ。ミツキさんは彼女らの嬉しそうな反応に「じゃあ今日は初めての普通の生活を祝わなくっちゃな」と言った。
「………」
「ナッツーどうしたの?顔色青いけど平気?」
「いや、僕は平気だよ、うん(セレネちゃん……)」
ナツメさんが私に目線を向ける。明らかに私の作った食事を食べたくないらしい。見た目も匂いも美味しそうなのに何を警戒しているんだろう。他の人は今にも食べたいという風で実際味も匂いも見た目も食欲を刺激する普通の料理だ。
それに美味しいか美味しくないかは食べてみないと分からない。料理は久しぶりでも味は確かめたしきっと美味しい。だから私は自身を持って笑顔を返す。
「それじゃ、皆さん夕飯が冷める前に早く食べましょう」
私は食前の祈りをする。リューナさんは私がそれをしてるので真似して祈りそれと同じようにアネッサもし始めた。ナツメさんとミツキさんは各々肉に手を伸ばす。
「これはミツキ君が作ったんだよね?」
「ああ、そうだ。だけどさっきから何に怯えてるんだ?別に変なもんはないが……
ブフッ! ガタン!
私の祈りが終わり丁度食器を手に取ろうとしたその瞬間ルナシーがスープを吹き出し床に倒れる。椅子から落ちて手に持っていたスープの器を床に投げ出し中身は彼女の服にかかった。私はすぐに駆け寄って体の状態を確かめる。が、しかし彼女は私が駆け寄るより先に立ち上がり部屋を出てトイレへ行った。
「……え?」
意味がわからない。
「セレネ……スープに何入れた?」
「ただ、普通に味付けしたつもりですが……」
「ミッツー、セレネの言ってる事は本当。特に変わった物は入ってないよ。野菜と肉、それと調味料、どこにでもある普通の食材で毒物の類はないし命に関わる物は特に入ってない」
混乱をよそにリューナさんは吐瀉物の解析をしていた。彼女は結論として出力したデータでは本当に特別な物は入っていないらしい。
「うーん、若干塩分とかは過剰な気もするけど基本的に吐くほどまででは…………」
疑問に思い彼女は自分の分のスープを飲んでみる。すると、彼女はすぐにそれを口から離し器を机に置いてからありったけの水を飲む。
「え、えっと……」
「ごめん、セレネちゃん。私もこれはカバーできないや。次からご飯は私が作るよ」
彼女はそれから席について残りのスープを一気に飲み干して食事を再開する。そしてそれ以上の言及はしなかった。そして、床の吐瀉物を魔法で洗いながら席について食事を再開する。
この後逆に興味を惹かれたとクーがスープを飲んで撃沈のとナツメさんが食中に離席したのを除けばあとは平和な夕食となった。なおルナシーは食事に戻って来ず、全員が食べ終わり片付け始めたあたりでやっと戻ってきて肉だけ食べて(しかも態々別に焼いてだ)食事をすませた。
どうやら私の飯は不味いらしい。というより正常な味覚ではないから美味しいものが作れないとのこと。
「(こんなに美味しいのに……)」
自作のスープを飲みながら少し悲しい夕食をみんなで囲んで思う。
トイレにて
「ハァ………ハァ……」
「(やられました。まさかスープに……)」
「ゔっ(不味い、思い出したらまた吐き気が)」
「おろろろろろろ!」
時間軸を少し戻してトイレの外にて
「(……うん、ルナシーの気持ちもわかるよ)」コンコン
「(口に入れた瞬間真っ先に来る塩辛さ、その後に来る純粋な痛みと酸味、謎の甘さ)」コンコンコンコン
「(食材は最近買った新鮮な物だから純粋な味付けの才能であの不味さを引き出すとは。全く、恐ろしいよ)」ドンドンッ
「ルナちゃん……ちょっと早く……漏れる……」ドンドン!
お腹を抑えながら彼は必死にトイレの扉を叩く。
魔法勢が中ばエンジニアだから舞台装置すぎる
セレネは味覚が壊れてるタイプのメシマズです。だから味付けを他人に任せさえすれば美味しいものはできます。むしろそれ以外は経験の割に上手な方です。
なお料理の腕は
メシウマ←リューナ>セレネ(腕のみ)≒ミツキ>ナツメ≫≫≫セレネ(味込み)→メシマズ
隔離枠 ルナシー
それとこの話の後半は書いてて楽しかったゾー
どのキャラが好きですか?
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セレネ
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リューナ
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ルナシー
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狼さん
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ミツキ
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ナツメ