せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜   作:囚人番号虚数番

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夜の或日

現在時刻 午後8時

 

「アネッサーこれおもしろい?」

 

「面白いよ」

 

一つのベッドに二人で寝ながら読書会。アネッサが読んでいるのは昼間図書室にていくつか選出しておいた本である。撰んだジャンルは様々で今は冒険物を読んでいる。クーはそれを横から覗く。

 

「ほんとー、おなじだねー」

 

「そうだね。次のページ捲るね」

 

「あーいー」

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「お嬢、そう気を落とさないでください」

 

ルナシーは夕食の事について狼に愚痴を言ってちょうど今一段落ついたところだ。

 

「普段まとも振ってるくせにこのザマです。期待して損しました」

 

「まあまあ、本人も食後に『もう台所には近づかないから許してほしい』と反省して謝っていたじゃありませんか」

 

なお狼は体格的にこの家の中には入れてもらえず外壁をよじ登って窓の外から話しかけている。

 

「結構です。明日からは飯は自分で作ります。元々はそういう生活でしたしね」

 

彼女は部屋の窓から外を見る。そしてベッド横に立て掛けておいたナタを持ち……

 

月夜に飛ぶ鳥がいた。月を隠して影となり、飛翔する姿を描く。

 

彼女はそこへ向かいナタを小さく振る。高速の斬撃が空気を裂きながら飛ぶ。そして鳥の影は黒い霧と2つの塊に変わり飛び散って落下した。

 

「うん、予行練習は済みました」「お嬢何も今実践しなくてもよろしいのでは?それにそれ、手首を痛めるとか読まれやすいとか……」「ネタだから使えない。あと戦うなは無理な願いです。ここに来てから日没後の外出が私だけ禁止なので夜は暇でしょうがないです。それに今ちょっとムカついて……

 

 

 

 

 

 

 

ってさっきからおめーらうるせえな!本くらい黙って読めないんですか!」

 

 

 

現在位置 自宅 2階 子供部屋(アネッサ、ルナシー、クー)

 

この家の部屋割はセレネ&リューナ/ミツキ&ナツメ/それと彼女らを一纏めという分配だ。

 

平均年齢的に子供部屋と称しているがベッドが3つなだけで何か特別な物がある訳でもない。強いて言うなら背の低い本棚が多めなのとルナシー用の剣の整備用品が置かれている。

 

「ルナシーもこっちに来ようよ。皆一緒ならきっと楽しいよ?」

 

「頭使うのは嫌いだから遠慮します」

 

「あたまとかしてたのしんだほーがいいよーるなねき」

 

彼女は先程から続くアネッサとクーの雑談にイライラしている。それに加えクーの姉貴というのが癪に障った。

 

「姉貴って呼ぶな!鳥野郎ちゃんと管理しとけ!」

 

「ひいっごめんなさいごめんなさい……あと鳥って……」

 

クーに怒ったはずなのに何故かアネッサが怯えて謝る。一方クーはルナシーに興味を無くしてそれをどうでも良さそうに無視して本のページを勝手にめくり読書に戻る。

 

「(ルナネキって)お嬢、ステイ。アネッサ様は吸血鬼です」「黙れ下さい。だいたいお前ら年はいくつですか?チビのコウモリ野郎が年下ですかね」

 

「じゅ、11です」←身長順三番目

 

「9さいだよー」身長順一番目

 

「…………」←身長順二番目

 

「お嬢、人は見かけに寄りません。次は気をつけましょう」「うっさい」

 

 

 

 

ガチャ

 

「お待たせしました」16歳身長そこそこ&ちっぱい

 

「セレネ姉!うわーん!」

 

私がドアを開けた途端アネッサが私に抱きついてきた。しかも少し涙目だったから事情を聞く、やっぱりアネッサと衝突したらしい。この部屋の三人は性格がかなり違うからこうなるかも知れないとは思ったけど……取り敢えずルナシーには周りの言う事に耳を傾けるようにお願いした。

 

「チックソが」「聖女様すみません。お嬢にはよく言い聞かせ」ゴッ

 

話の腰を折るようにルナシーは狼さんに峰打ちする。そしてそのまま彼は地面に落ちていった。回復は必要な程ではないが体が心配だ。

 

「……と、これ以上待たせるのも悪いですね」

 

私がここへ来たのはアネッサと昼間に約束した事をする為。私も彼女と本を読むために物置の研究書の一部他数冊を持参してきている。

 

彼女も小説を読んでいるらしい。他にもベッド横に積み重ねてあるのは恋愛小説、あの架空戦記と……呪文魔法の本?

 

「あっ、これは……」

 

「いいですよ。でもそれならリューナさんも連れて来ます」

 

と、部屋を出ようとする私を彼女は止めた。

 

「り、リューナさんにはもう教えて貰いましたから!」

 

じゃあどうして?と問う前にクーが答える。

 

「いってることがわからない。うん、さっぱり。いろいろがちゅーしょーてき」

 

ああ、なるほど。それはそうか。その後の話も含めて纏めると私が夕食を作る間にリューナさんに魔法を教えてもらっていたとの事。しかしリューナさんの専門は理論魔法で専門外かつただでさえ抽象的な呪文魔法で分からないのは当然の出来事だった。

 

「それよりも……リューナ姉には悪いけど……その……」

 

「?」

 

「話し始めると……止まらなくて……もっと簡単な事でいいのに話が脱線しちゃって、それでその内自分の世界に籠もっちゃって………」

 

……研究者って大変なんだな。それと思い出した、今まで結構リューナさんとは話してたけど確かに話の速度が二次曲線だった気がする。そう思うと教えてるときに余計なことをしないか心配になる。

 

「セレネもこっちきてふとんでよもーよ」

 

「ははは、でも少し狭いですね」

 

「じゃあくっつく」「え、クー?」

 

クーはアネッサを巻き込んでベッドの上でスペースができるように試行錯誤する。しかしクーがどうしようともベッドの上に十分な空きができることも無くただいたずらにアネッサが混乱するだけだったので私はベッドの横にこの部屋の椅子を持ってきて座る。

 

なおルナシーは何してんだコイツらという目でこれを見ていた。

 

ーーー

 

それから少しばかり普通に読書をする。横で研究書を読みすすめる。うーん、リューナさんが読み終えた冒頭から1〜2章の途中を読んでるけど書き出しからしばらくすると話がもうややこしい。まるで誰かの妄言をそのまま文章に写したみたいな支離滅裂な文がひたすら続く。文脈は基本存在しない。しかも解読するにはこれから考察要素を見つけろと……中々無茶な事を要求される。当然解読などできるはずもなくすぐに難航し息詰まる。

 

「(うぅ……頭痛い。どうしてこんな文章に何か意味があると思えるのか分かりません。それに書く方もなんでこれを書いていい物だと思ったのでしょうか……)」

 

このままでは埒が明かない。現段階で私に必要なのは解読を進めるよりも呪文魔法に対する十分な知識を身につけることだろう。

 

 

 

「ね、ねえ……セレネ姉?魔法について聞いていい?」

 

「………え?いいですよ」

 

あ、私も世界にこもってて危うく聞き流しかけた。どうやら相当知らない内に時間が大分経っていたらしく彼女らは既に恋愛小説と歴史小説を読了していた。ルナシーもいつの間にか部屋にいない。

 

「で、どういうのを聞きたいのですか?」

 

「理論じゃなくて『魔法』についてもっと詳しく。元々は魔法を知るなら魔法本を読めばって思って読んだんだけどちょっと思っていたのとちがってて……やっぱりお姉から聞いたほうがいいね。魔法は王国のどこで使われてるの?」

 

「魔法」について、理論とか実践とかではなく?と疑問に思ったけど彼女らは今までずっと魔法とは無縁な生活だった。だから彼女は魔法の使い方どうこうより魔法の使われ方についてを知りたいそう。

 

「私達みたいに魔法を使う人はあまり見かけません。でも魔法だけならどこでも使われていたりするんです」

 

そう言って私は天井の証明を指差す。

 

「明かりが魔法で出来てる?」

 

「あの照明は魔法で作動しています。他にも水道や火も魔法で、厳密には魔道具で魔法を制御して使っているんです」

 

 

 

魔道具

 

いつか書いたとおり魔法は一般には使う者は少ない。技術的にも素質的にも使える人は限られてくる。しかしそれは使うのが人ならばの話。

 

魔法を使えない一般人でも魔法が付与された道具、すなわち魔道具を通してであれば魔法が使える。

 

「(まあでも私の修道院って一部インフラ以外は魔道具未導入だったから王都に来て始めて使いました)」

 

「なるほどー。つまりねこでもまどーぐがあればさいきょーと」

 

だけどこれを使えば一般人でも最強になれると言う訳でもない。魔道具がする役割はあくまでも制御のみ、魔法を動かす魔力は外部的な要因から供給される必要があるからだ。一般家庭の多くの魔道具は大気中から、特殊用途になると使用者自身の魔力やいわゆる魔石等の物が必要とされる。戦闘での最強となると恐らく後者が該当すると考えられるがそもそもその類の道具は組織レベルか強力な個人でないと運用が不可である。

 

そういう内容をクーに噛み砕いて伝えると彼女は途中から聞き飽きて猫のように丸まって寝ていた。

 

「寝ちゃいましたね。運んであげましょうか」

 

私はクーを抱いて彼女自身のベッドに寝かせた。

 

「魔道具……それでこの国は生活が成り立っていてセレネ姉はそれを道具無しに普通に使えるししかも作れるから凄いんだ」

 

「凄いだなんて、私なんかより魔法に詳しい方は他にもいますよ」

 

「そんなことないよ。私の国だって電気は誰だって使えるけど道具を作れるのは一部だったし……物を作れる人はどこでも凄い人だよ」

 

「そうでしょうか?……いや、そうですね。ありがとうございます」

 

改めてそう褒められると何だか恥ずかしい。大それた事をしているつもりも無いし、でもやっぱり世間からしたら使えるって凄いんだな。

 

「それとセレネ姉のことも聞いていい?」

 

「はい、何でしょうか?」

 

「リューナさんから聞いたけどセレネ姉ってシスターさんだったんだよね?」

 

リューナさん、私の事も彼女に教えてたんだ。まあいずれ分かることだし早い分にはありがたい。

 

「その白い服も魔法なの?」

 

「…………いえ、これは普通の服です」

 

「?じゃあ初めて「恋愛小説を貸していただけますか?最近その分野には手が伸びなくて久し振りに読みたくなりました」

 

私は彼女から恋愛小説を借りて読む。

 

「あっそれ……」

 

本の厚さはそこまででもない、大きさも文庫本程度。これくらいならすぐに読めてしまうだろう。ページをめくり内容を大雑把に斜め読みする。が、読み始めてからそうしない内に私の手が止まる。

 

「アネッサ、これ、貴方が?」

 

「私は読んでない。けどクーがいつの間にか私の本に紛れさせて入れてたよ。『じんるいにははやすぎる』とかクーは言ってた」

 

「そ、そうですか。じゃあお返し……いや、預かっておきますね」

 

「(これ……官能小説だ)」

 

思わぬ所から不意打ちをもらい顔が真っ赤になる。何で教会の図書室にこんなものが!?少なくとも私の修道院にはこんな露骨な「検閲済み」表現なんてしてる文章なんて無かったし……

 

「うぅ……」

 

「どうしたの?お顔が真っ赤だけど」

 

「いえ、何でもないですよ!私は平気ですから!だから気にしないでください」

 

「あっそういえば昼間掃除中にナツメ姉が図書室に本を並べてた中にそれもあったとかクーが言ってた」

 

……ああ、納得した。明日になったらそれらの本をアネッサとクーの手の届かない所に移すか彼には悪いけど焚書してもらおう。

 

ーーー

 

同刻 ミツキ&ナツメ部屋

 

「な、なあナツメ?お前この本って」

 

「3分の1くらいはエロいのだよ」

 

「壁一面の1/3ってどういう事だよ」

 

「これでも厳選してるから我慢してくれ。はみ出たのを図書室に置いてるよ。自宅の積み本も含めたら総量はこの数倍はあるかな?」

 

「えぇ……」ドンビキ

 

ーーー

 

同刻 リューナ&セレネ部屋

 

 

セレネが部屋を出て数時間、月明かりの照らす部屋で彼女は一人あの小説の解読をしていた。

 

「(この小説は全13章、ブラフと分かる分を抜いてもかなりのページ数、そしてこの何とも言い難い脈絡のない文の羅列。研究の為に理論魔法以外も使えるけど偽装にしてはかなり難解だ)」

 

彼女はセレネが読んだ箇所より先の章の読解だけをしている。当然難度と情報量もそれ相応で片手間でしていたセレネの組んだ魔法の最終調整の方が早く終わるほどに解読は難航を極めていた。

 

「(流石にこの先ずっとこの調子なら専門家にお願いかな?)」

 

「ダメダメ!これはリューナちゃんとセレネちゃんのプライドにかけて私らだけで解読してみせる!」

 

「明日から!」

 

しかし夜は思いの外短い。高く登った月を見て今日の研究は断念した。

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  • 狼さん
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