せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜 作:囚人番号虚数番
現在位置 地方都市
私達は石造りの町並みの暗い裏通りを進む。行き交う人々はやはり王都よりも少なく身分も比較的低そうだ。しかし活気はそれなりにあり道行く人の足音がどこかから必ず聞こえる。
「うわぁ……クー、凄いねここ」
「うん」
二人は石造りの町の景色に感動している。二人は拘束されていたから王都の町並みを見ていない、しかもこの国の町に訪れるのは初めてだ。文化の差異に思う所があるのは当然だ。
「お前らそんなこの街が珍しいのか?」
「はい!向こうでも石造りはあったけどこんなに綺麗じゃなかった」
「どうじょう」
彼女たちの言う石造りとはあの地下都市のあの塔の事だろう。私個人はあの幾何的な建物も嫌いではない。勿論石やレンガの建物も、なんなら木造も味があって好きだ。結局は住めば都である。
そうして裏通りからメインの大通りへと合流する。建物と建物の間の大きな道は日で照らされ雰囲気も賑やかだ。裏通りから人の数は一気に増え活気はさらも増す。道沿いには店だけでなく露天やカフェ等も道に店を構えいい意味で混雑してきた。
「武器屋までは後どれくらいでしょうか?」
「この大通りを進んだ先の裏通り。距離的にはすぐだな」
それなら良かった。じゃあさっさとこの道を渡ってしまおうか。
だが、私達はある事を忘れていた。大通りに踏み出してから数歩、ミツキさんが目的地への道を確認していると
<あれもしかして勇者じゃないか?
「!?……あっまず、バレ……」
「了解です」
瞬間的に式を組み起動、私達の周囲に魔法を付与する。するとさっきの声で起きたどよめきはすぐに収まり人混みに霧散した。
「ナイス、騒ぎにならなくて良かったな。で、今何て魔法を……」
「私達の周囲に光を捻じ曲げる空間を作りました。今私達は周りからは顔や輪郭の細部がぼやけて見えているはずです。相当近くで凝視されない限りは正体に気が付くことはないでしょう」
「つまりにんしきされないのか」
中々勘がいいじゃないか。一言でまとめるならクーのそれになる。しかしまだ簡素な式なので非効率かつすぐに壊れる構造の為戦闘でははっきり言って使えそうにない。
「ん?ねえセレネ姉、あれって」
「アネッサ?気になるものがありましたか?」
「あそこ、道の向こうの赤い人。あの子ルナシーじゃない?」
そう言われてアネッサの指差す方を見てみる。……あ、今丁度赤い頭巾の少女が店の中に入っていった。背丈的にもそうに違いない。
「武器屋に行くならルナシーも連れて行かないの?勝手にいなくなっちゃったから誘えなかったけどルナシー戦うの好きそうだったし」
「そうですね。ミツキさん?」
「そうだな。目を話すと危ないのはアイツもだし連れてこう」
人混みに気をつけ道を渡りその店に向かう。店名と外装のデザインからおおよそここは流行りの服を売る店だと分かる。うん、思うところは皆同じだろう。
「((なぜ「ルナシー」「アイツ」に限って!?))」
「……あっ!このショーウィンドウの服ってナツメ兄のだ」「このくろさとはでさはそうにちがいない」
ミツキさんはこういう所はちょっとな、と子供二人と店先で待機し私は魔法を解除して店に入る。店の扉を開けると狭い店内に綺羅びやかな装飾と流行りの洒落た女性者の服が売られていた。服にはあまり詳しく無いがデザイン的によくナツメさんの服と同じ系列っぽい。
で、当の本人は……
「お客様、これでよろしいでしょうか?」
「はい、これでいいです」
いた。しかも新しい服を試着している。相変わらず派手な服で赤と白のたくさんのフリルやリボンのあしらわれた服だ。
「ルナシーさん……何故ここへ?」
「あれセレネ、貴方ですか。そろそろ新作が出る時期なので服を買い替えに。逆に他に何がありますか?」
服を買い替えにか。確かに彼女の服は戦闘中々酷使されていたし当然だろう。だけど私はある一点を指摘せずにはいられなかった。
「いやその……普段流行りの服とかに興味があるようには見えなくて意外だなと」
「はい、クソほど興味無いです」
「じゃあ何故!?」
「服に興味の無い内は服は店員に流行物をフルセット買わされとけば間違いないと母から教えられまして」
そう言われて改めて彼女を見てみると頭の頭巾は据え置きで首から下のすべての箇所の服が普段と違う。彼女は私に見せるだけ服を見せた後試着を止め着替えた後に会計をする。
彼女の買った服は結構似合っていたがこれで武器やナタを持つとなると複雑な気持ちになる。
そして、本題を忘れかけていたが彼女に武器屋に来るかを尋ねると……
「武器の話なら会計の後にしてください。店員さん、請求書と郵送は『ここ』にお願いします」
「分かりました。ミツキさんにそう伝えておきます」
「貴方のですよ?後ろの店員がいかにも『いい服があるから買っていかないか?』みたいな目で見てます」
……へ?
恐る恐る振り向くと……ああ、既に後ろに私には似合いそうにないいかにも女性らしい服を持って期待の眼差しを向ける店員の姿があった。
「あ、あの、友人の呼び出しに来ただけなので私はこれで……」
だが店員は返事はせずジリジリとにじり寄ってくる。どうやら私はもう駄目らしい。せめてもの救いでもとルナシーに助けを求める。
「助けてルナ……「では外で」あ、待って、置いてかないで!」
ガチャン
ーーー
現在時刻 30分後
「セレネ、その、何だ……気にするな」
あれから私は話を早く切り上げるのに必死で適当に返事をしていたら店員がオススメするものを買わされるだけ買わされた。今日は服にはお金を使わないつもりだったのでとんだ災難だ。
「そうだよセレネ姉、とっても似合ってたよ」
私でもちょっと似合ってると思ったよ。でもさ、流石にあの服は私には過激すぎだよ……
「そっちょくにいってせいじょのへそだしはとてもえろい、ほそくてしろくじょうひんなすがたはせいてきなよくじょうをだれからもひきだす。むろんねこもそのはんちゅうである」
「私はエッチじゃありません!」
「店員をあんなにさせておいてどの口が言いますか」
周りに弄られつつ慰められながら認識阻害の魔法をかけて歩く事十数分、目的の武器屋に到着する。
先程の商店の並ぶ一帯の華やかさとは打って変わってこの近辺は冒険者ギルト周辺特有の雰囲気のある所だ。ここへ来る過程でも既に数人の武器を担いだ方々とすれ違った。
そして武器屋に来てまず目についたのはある張り紙だった。
「(第1回魔法技術大会……主催はこの町の自治体で会場もこの近くですね)」
しかも参加費も安く飛び入り可能、リューナさんが知ったらきっと喜んで参加しそうだな。私としては見せびらかすような用途で魔法を使うのは聖女としても違うと思うし競うのは苦手だからあんまり参加したくは無い。……力試しには少し興味はあるけど。
この張り紙に興味を示したのは私だけではない。アネッサもこの紙に興味を示した。が、それよりも先に他の方々が店に入るのに合わせて彼女、そして私も魔法を解除して入店する。
入店早々ルナシーが第一声に「何でもいいから店で一番重いのを下さい」と店主のおじさんに頼んだ。
当然店主はお世辞にもここに来る筈もないような小柄な少女のそれに素っ頓狂な声を上げた。だがその後で普段見ない女子供連れの客という事に驚き、加えて更に数秒経って相手をしていたのが勇者だった事をやっと理解しやや興奮気味で接客に応じる。
「え、えーどもっかしてミツキ様がお連れしているのはあの聖女様と勇者様でっか?」
「そうだからさっさと剣を持って来い」
ルナシーは店主を睨んで脅す。だがミツキさんが彼女を後ろに下げてカタログを持ってきてもらう。しばらくは彼らは店主を相手しているだろう。
その間アネッサとクー、それと私は暇なので店内で売られる剣や鎧でも見ていよう。棚には丁寧に短剣やそれらの整備用品、壁には槍や長剣、ハンマーなどの打撃武器、遠距離武器ととにかく多種な武器が並べられる。鎧は金属や革製のがいつくかで数は少ない。戦いに関わり始めてからの剣や防具と関わる過程で覚えたにわか程度に身に着けた知識を元に武器の質を確かめる、いい品質だ。だが果たしてそれが価格に見合っているかどうかまでは私には分からない。
「(使われている材料的にはどれも質は良さそうです。魔法の通りもいいですし私も持っておいたほうが良いのでしょうかね)」
アネッサとクーはどうだろうか。アネッサは沢山の武器に囲まれた店内に少し怯えて私の後ろにくっついている。吸血鬼なのにまるで冒険者に狩られる小動物みたいな反応でかわいい。対してクーは棚に置かれた1本の短剣を目を輝かせてじっと見ている。
「ねーセレネー。これすごい」
「この綺麗な剣ですか?」
「ほしい」
彼女が欲しがったそれはダガーだった。他に売られるどの刃物よりもそれは小さく私でも扱えそうな程だった。しかし刃はそれと反比例するように鋭い。黒い刀身に走る白の木目状の美しい模様もその特異さに更に拍車をかける。
「ええっと……」
想定していない事象に答えをすぐに返せず言葉が詰まる。彼女も私に聞いたのが間違いだと判断し
「そっかーざんねんだー」
と呟いてまだ店主を待っているミツキさんに同じことを聞いた。彼はまだルナシーと店主が武器について相談していたから暇なのだろう、私と違い彼はすぐに言葉を返す。
「クー、お前剣に興味があるのか?」
「すこし。みんなつよいしどーせならとねー」
「クー、流石にそれは無理があるよ……剣どころか私達喧嘩なんてしたこと無いし。セレネ姉もそうだったよね?」
「えっ!?あー……やれば出来るのではないですか?」
……アネッサから急に話を振られたものだから適当な変な答えをしてしまった。これにはミツキさんも思わず苦笑する。
「やれば出来る、か。それはちょっと夢見がちで無責任じゃないか?」
まあ……うん。返す言葉もない。しかし彼はそこから不敵な笑みを浮かべて彼女の頭を撫でながらこう続けた。
「だけどな、俺はこうも思う。『夢なら出来るまでやる』俺ならそうする。
だから責任持って剣術は俺が教える。店主のおっちゃん、これ買う」
彼は店員にダガーの代金を払う。ついでに彼女に合う防具やらその他備品までもを適当に選んだ。
「ほれ、お望みの剣だぞ」
「ふぁーありがとーこれでつよくなれるぞー」「クー……もういいや、おめでとう」
私は彼にフォローをしてくれたお礼をする。彼はそんな大層なことじゃないだろ、と恥ずかしそうに笑った。
「なーみつきー。これからまいにちけんのけいこしてくれる?」
「おう!そしたらいつか一緒に戦える日も来るかもな」
「その稽古、私も参加してよろしいでしょうか?最近外出禁止食らったせいで剣の腕がなまってないか心配で」
ルナシー、貴方が参戦したらそれはもうお終いなんですよ……
それから暫くして彼の用事も済み、ルナシーも無事に新しい大剣を買えた。ルナシーさんは今度は度を超えて大きなハンマーを使うそうだ。本人はまさか自信が打撃武器を使うときが来るとはと驚いていたものの仕方が無いと割り切っていた。それについてミツキさんが苦笑していたのは最早言うまでもない。
店を出るとちょうど昼頃、そろそろリューナさんと合流して皆で何処かに入ってお昼にしたい。
「それは出来ません。たった今用事が出来まして」
「ルナシーさん……ああ、うん。いいですよ」
彼女は返事を返す事もせず新品の武器を持って何処かへ行ってしまった。方向的には街の外側へ、恐らくこの後街を出て山に狩りと試し切り?をするのが目に浮かぶ。
「ルナシーお前……」
ミツキさんも呆れていた。が、これから移動して町中で問題が起きる事も無いも考えると彼、そして私達にとってはいい事なのかも……何だか複雑な気持ちだ。
ぎゅっ
後から服を引く力が強まる。後ろにいるアネッサのせいだ。
「セレネ姉、私にも同じだけ魔法の使い方、理論を教えてくれる?」
この前にも彼女は魔法に興味を示していた。
「構いませんが……覚えることは多いですよ」
「クーが頑張るんだもん、私も何かやらなきゃ。それにセレネ姉とかリューナ姉もいるから何でもできそうだよ」
………それなら。
「ならいいですよ。リューナさん程上手ではありませんがお互い精一杯頑張りましょう」
「やった……!」ぱあぁ
日も高く登り日陰だった裏通りに日が差し込んだ。
どのキャラが好きですか?
-
セレネ
-
リューナ
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ルナシー
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狼さん
-
ミツキ
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ナツメ