せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜   作:囚人番号虚数番

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笑顔の裏には殺意がみなぎる

現在時刻 数日後

 

現在位置 地方都市 自宅 庭

 

 

 

【旋風】

 

ブワアアアッ!

 

「うん、成功したよ」

 

「おー!今のは上手い……ゲホッゴホッ!うぅ、ホコリっぽいし目が痛い。これも風属性の定め……」

 

「(たった数日で威力が段違いだ。初日とは大違いです)」

 

彼女には魔法の才能があったらしい。たった数日で優しいよ風から屋根までの砂埃を起こす程に威力が成長していた。初めてで魔法の効果が感じられた時点でかなりの素質があるのは覚悟していた。それでいて私達、片方は天才の学者、片方は……自称は恥ずかしいけれどそこそこの魔法の使い手、その二人が合わさって一人に力を注いだのだ。効果は絶大だ。比較対象として私を挙げると試行錯誤の期間を含めて約1ヶ月で環境が整いやっと効果が出てきた。それに比べて彼女は……本人には間違っても言えないがちょっと羨ましい。

 

 

 

「おい魔法組!こっちの事考えて魔法使え!風が強いぞ!……っとさせねえよ!」ガキッ!

 

「うぼあー」

 

一方ではクーとミツキさんが剣の練習をしている。彼曰く「基礎練習」との事で彼が村でしていた練習をナイフ用に色々変えてやっているそう。詳しい事は剣術など微塵も使うつもりが無いので聞かない。今は素振りで練習用の木刀を振っていた。が、時折彼が目を離したスキに悪戯で不意打ちを狙ってその度に吹き飛ばされている。手加減はしているのは承知している、それでも人の手で人は吹っ飛ぶのを繰り返されると心配だ。

 

「またしっぱい。ばくすたいぜんにはんていがおわってる」

 

「バクッスタブとか殺す気か?何度も言うがまだお前には致命の技術は早すぎる。基礎を身に着けてから色々試さないと怪我をするのはお前なんだぞ」

 

「さんかいもすきをみせるのがわるい」

 

「このっ……ああ言えばこう言う」「ふぉーえばーあーゆー」「繋げるな!」

 

なんだかんだで彼らは楽しそうだ。

 

しかしその反面で少し問題もある。家の方から声がし、ナツメさんが飲み物を持ってきていた。皆楽しそうなのに僕だけ仕事で困っちゃうよ、と笑いながら愚痴をこぼす。丁度疲れてきていたし彼の好意に皆が甘えさせてもらう。

 

「こうやって優秀な兵士がすぐ近くで出来てるのを見ると何だか感動的だね」

 

「お前には軍の部下がいるだろ」

 

「ちっちっち、アレはアレでまた別物なんだよミツキ君」「そーだよ!」「そうだよ」

 

リューナさんと関係の無いクーも便乗する。

 

「それに、教育熱心なのは良いけどあんまり強くし過ぎると後で困るよ。もしかしたらいつの間にか抜かされてたり……ってそれは本望か。

 

 

 

ね、『セレネ君』」

 

「きっと平気ですよ。彼女らはここまで優しい子達なんですから」

 

 

 

つまり、そういう事だ。実のところ彼から教育可能な範囲の上限を指定されている。言い方は悪いがその場の勢いに流され魔法を教える約束をしたけれど、悲しくも彼女らは危険な存在だ。約束をした後ナツメさんにそれを相談した。

 

「魔法を教えたい?うーん、有事の際しっかり殺してくれるなら構わないよ」

 

彼はこんな事もあろうかと(!?)詳しい規定を既に決めていた。例の優秀な部下が作ったらしくかなり綿密に作られて分かりやすく使いやすい。しかしこの成長速度だと範囲的に厳しい面もある。勘もいいし教えてない式もそのうち導出しかねない。

 

それと、これを知るのは私とナツメさんだけだ。というか「彼女らを殺す事を事前に伝えられているのが私だけである」。リューナさんとミツキさんは仲良くなり過ぎてなにかの拍子に話を漏らしかねない。ルナシーは寧ろ教えなくても喜んでやりそうな面もあるから放置。結果的に子供の扱いに慣れている私がこの秘密を請け負うことになっている。

 

だからリューナさんにはその事を伝えずに魔法の上限だけを言い包めて指示している。しかし彼女は賢い、バレるのも時間の問題だ。いや、もしかしたら……これ以上は止めておこう。

 

なおクーが剣術を始めた事は流石に想定外だったとの事。これに関しては「買っちゃったなら仕方ない」だそう。ついでに暗殺されかけたら流石に気づくでしょと付け加えかなり諦めムードだった。

 

 

 

「そういえば最近解読進んでないなー」

 

リューナさんが呟く。解読とは例の小説だろう。私は読むだけで精一杯で考察は彼女が殆どしていた。彼女ですら息詰まるだなんて恐らく相当難解なのだろう。

 

「あ、違う違う。それもあるけどアネッサちゃんの魔法で手が回らなくて」

 

成程そっちだったか。それに関しては大会の方にも手を出しているから余計に時間がないのもある。

 

それなら今日の午後は久々にそちらに取り組まないかと提案する。私も現在の進捗についてまだ完全に理解しきれてもいないし気になっていた所だったし。

 

「姉、それって私も出来ない?」

 

「(アネッサ?)いいですけれど……リューナさん?」

 

「(規制でしょ?私達も分からないしセーフセーフ!!きっと分かりっこないって!!)いいよ!未知への探求には仲間が何人いても楽しいよ!」

 

規制については私も同意見だ。その他成長する過程で難問を目にするのは良い機会だし何よりアレが呪文魔法についてなら適正のある彼女の才能にかかれば何か分かるかもしれない……流石に幻想を抱き過ぎだろうか。

 

「よーし、じゃあお姉さんはお先に準備ついでに頭を研究用にしてくるねー!!」

 

そうして彼女は家に戻っていった。ミツキさんは練習は、と冷ややかな目をしていた。ナツメさんはそれに彼女らしいねと笑う。

 

彼女らにこの後どうしたいか聞いてみた。アネッサは本の続きが読みたいとリューナさんと同じく家に戻る。クーはいつの間にか居なくなっていた、と思ったら教会の扉を開けていた。ミツキさんも練習を止めて何処かに行ったし止めるつもりもないらしい。

 

やっぱりというか流れ解散らしい。取り敢えずクーが気になったから私は彼女を追いかけた。そしてすぐに彼女がここに来た理由が分かった。

 

「うた、じゃない、きょくがきこえる」

 

「曲?」

 

静かになって気がついた。扉越しでオルガンの荘厳な音が微かに聞こえる。しかもそれは明確にメロディの形を成した規則性のある音の配列。ただ一つ、果たしてその音色に見合った音楽ではない事を除けばそれは「音楽」だった。まさかと思い扉を開ける。

 

「この先の配置どう考えても人のやる譜面では無いです」「もう十分お嬢は人ではない気もしますけれど」「ごもっともなのは承知です。首洗っとけ鎮魂曲は弾いてやる」

 

「あの、ルナシーさん?」

 

「話なら狼さんとお願いします。もう少しで終わるので待っていてください。複合が途切れる」

 

そう言いつつ彼女は両手で複雑な指裁きで鍵盤を叩き続ける。本物の音楽家がどのような物なのかは知らないがそれは私が見てきた数少ない鍵盤の弾ける者の中で最も上手いと言える腕前だ。数日前まで音階も知らなかった人物と同一人物と信じられない。

 

困惑し呆然とする間に曲は終わる。クーが拍手を送るので初めて終わりに気がついた。黒い楽譜を閉じ床に積まれた山にそれを置いた。そしてそのまま何食わぬ顔で鉈を抜いて出ていこうとした彼女を止める。

 

「何?」

 

「何って……今のあなたには色々とお話を聞きたいから「狼さん」「はい。聖女様、お嬢については私が説明します。といっても見たままです。普通に調べて弾いただけですが」

 

「ええ……」

 

そんな話があるものか。普通こういう技術のいるのは……と思ったがよくよく考えたら先程似たようなのを見ていたから何も言えない。案外天才とはその辺にいるんだな。半ば現実逃避気味に考えを巡らせながら何処かの戦場に向かうであろう彼女を見送る。

 

「そういえば」

 

彼女がドアノブに手をかけた所で止まる。

 

「オルガンの音がおかしかったので少し点検したら本が出てきました。楽譜と一緒に積んであるので戻しといて下さい」

 

 

 

ガチャ バタン

 

彼女が伝えた通り確かに楽譜の山の一番上にそれはあった。架空戦記だった……のだがオルガンの音がおかしくなるという事はこの楽器の中にこれが?

 

「(不思議なこともありますね)」

 

というか音だけでそれに気が付ける彼女も彼女だ。本当に、彼女は何なのか。あそこまでの技能と才能があるのに態々戦闘に身を投じるだなんて。勿体ない。

 

 

 

「かみはにぶつをあたえず」

 

クーが呟く。曲の感想だろうがいつもの辿々しい喋りでまたよく分からない事を……

 

「ゆえににぶつはひとのごう」

 

「……クー?」

 

「だがかみはいっぽさきだった。とかくかみのちょうあいなどうけたくないものだ。あんなわるふざけがすきなやつとはかかわりたくない」

 

よく分からないことを言うなと覚悟してたら本当によく分からないことを言い出した。言葉選びも雰囲気が違う。少なくとも曲の感想などではない……何?教会を出るに合わせ続けた言葉。最後に彼女は

 

「セレネ、われおもうゆえにわれあり。つまりおもうわれがわれなのだ」

 

そう言い教会を出る。追いかけて私も教会を出た時には彼女はもういなかった。

 

 

 

 




ストーリーの進む回:小説の花、書くのも楽しい

ストーリーでは無いがある程度テーマが決まっている回:一発ネタ、書きやすい

接続回:ストーリーとストーリーの接続部、正直色々きつい、この回

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