せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜   作:囚人番号虚数番

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お風呂は逃げに丁度いい

「…………ん………んっ!?」バサッ

 

目が覚めた。即座に体を起こし傷を確認する。

 

「………………塞がってる(リューナさん……かな?少なくともまだ日付は変わってないよね)」

 

現在位置 自室

 

窓の外は……部屋は日没後の暗さ、月は……よし、まだ日は回ってない。あるいは数日後か。

 

傷を観察する。肌に多少の跡が残るが魔法で確かめた限り内臓の損傷は完治していた。それと腹部の傷にしては服が綺麗だ。赤い汚れが無いからいつもの白い服の替えを誰かが着替えさせてくれたらしい。どれも彼女のお陰であろう。

 

机には昼間自分が使い片付けてなかった資料があった。ついでに作った魔法の添削もされていた。ビミョーに悔しいが、これで何となくまたリューナさんのお世話になったのかと感謝する。

 

そして体の状況が整理し終えてまず出てきたのがこれだ。

 

「何故……?」

 

私が気絶する前、確かルナシーにお腹を刺された。それも唐突に、明確な理由も伝えられずに。いや理由云々の前に人に向かっての刺突はいけないことだけれども。せめて何かするなら一言欲しかった。

 

「……(『恐怖』を感じているか、ですか)」

 

彼女からそう言われた。理不尽だがそうかもしれない。ここ最近、前回の戦闘からかな?魔法に関して緩くなっていた気がする。それで、この流れはそんな私への彼女なりの戒め……なんて、そこまで考えて動いているとは思えない。少なくとも私の知り得ない何かがあるのだろう。

 

コンコン ガチャ

 

「……あっ!セレネ姉起きたんだ」

 

現在時刻20:00

 

「こんばんは。それともおはようございます、でしょうか?」

 

アネッサが来た。別室で私の動作音がしたから来てみたら、とのこと。あまり激しく物音を立てているつもりもなかったからどれだけいい耳なのだろうか。

 

「それはどっちでもいいよ。ってそうじゃなくて……ごめんなさい!」

 

急に彼女は私に謝った。クーが私にと勝負して挙げ句大怪我をさせてしまった事を悔やんでいる。別にこの怪我はクーのせいではないし受けた理由も半ば不可抗力だったから別に気にしていない。

 

「……あ、そう言えばクーとルナシーは何処へ?」

 

「それが、ルナシーは昼間から帰って来なくてクーは私が叱って今は部屋で落ちん込でる。今から連れてくることもできるよ」

 

「そうですか(彼女には悪い事しましたね)……気にしてませんし許してあげて下さいね」

 

私は彼女の頭を撫でながら伝えるように頼んだ。少し照れながら承諾する。

 

ルナシーが行方不明ということについてもう少し詳しくしてもらうと現在リューナさんが彼女の捜索のために不在らしい。夕食はナツメさんの部下が作ってくれているそう。あの人何でも部下に頼ってる気がする。

 

……夕食まで手が空いているのか。もう一度添削の入った魔法の資料を確認する。成程、彼女は片づけついでに余計な事をしてくれたらしい。添削だけでなく大幅な改良案まで提案してくれていた。普段なら有り難い上この上ない。だが何てタイミングが悪いのだろう。これでは一度考え始めたら朝食までかかりそうだ。

 

「それならお風呂が沸いてるし二人で入る?」

 

アネッサが提案した。拒否する理由もないのでそうするか。

 

 

ーーー

 

現在位置 自宅 脱衣場

 

「そういえば」

 

「どうしたのセレネ姉?」

 

「普段クーと貴方の二人で入っているから初めて一緒に入りますね」

 

アネッサの着替えを取った後少し肌寒い脱衣場にて二人で服を脱ぐ。初めて彼女と入る風呂は一方的にちょっと緊張する。あとアネッサの羽の付け根を初めて見た。ああやって傷一つなく綺麗に生えているのか。

 

服を脱ぎ終え風呂場に入る。今日も魔道具の調子がいい。今もバグ一つなく円滑に少し狭い浴槽の湯に熱を供給している。扉を開けると心地のいい熱気が私達を包み込んだ。しかし建物の古さからかすぐに冷えそう。早く体を洗って湯に浸かりたい。

 

「セレネ姉、私が洗ってあげるね」

 

「えっ?」

 

「セレネ姉にはいつも魔法を教えてもらってるからお返ししたくて……だめ?」

 

「構いませんよ」

 

という訳で彼女に背中を洗ってもらい、その後私もお返しに彼女を洗う。でも何故だろう。医療目的以外で誰かの体を洗う事はパッとは思い出せない。なのにこの感覚、妙に懐かしい。そして、幸せだ。ああ、修道院の子供達だ。

 

体を洗い合い、頭を洗い、湯船へ。入って気がついた。アネッサの羽が思ったよりも体積があり二人で入るには少し狭くなる。仕方がないので抱くように密着して入る。

 

「クーとなら入れたんだけど……計算外だったね」

 

お湯が溢れて少し勿体無い。

 

「でもこれはこれでいいのでは?」

 

「そうだね」

 

彼女の心拍は私より僅かに早い。それと体温も少しだけ。温もりがある、と言ったほうが心境的には正確だろう。でも羽から落ちる水滴は冷たかった。

 

「クーともいつもこんな感じに?」

 

「うん。だけどクーが水苦手だからシャワーとかは私が無理やりしないと洗わないしお湯にもずっと入らないの」

 

「ああ、猫ですからね」

 

「猫だからね」

 

「貴方も吸血鬼なら水が駄目とかは……」

 

「無いよ」

 

「(前もそうですし彼女は私の思っている『吸血鬼』とは違いますね。本当に吸血鬼らしくありません)」

 

最も、偽物だとしても本物がどういう物かは知らないが。

 

そういえば私の体はどうだろう。傷跡を改めて見る。うん、まるで刃物が刺さったみたいな跡だ。これをルナシーは己の手刀のみで行うとは恐ろしい。

 

と、傷を確認していたらアネッサが急に心配そうな顔になる。背中側を確認していないのか、だそうで私は傷口の真後の側を触れる。確かに肌触りが違う。もしかして、とアネッサに聞き返すと服を脱いでいる段階で指摘しようか迷っていたそう。視覚でなく魔法でしか確認してなかったから見落としたのか。なんか悔しい。

 

「すごい戦闘だったんだね。私はあの時地下図書館で調べ事しながら魔法の練習をしてたから何も聞こえなくて知らなかったよ」

 

「(この傷は戦闘後の物ですけれどね)そうでしたね、戦場にも引けを取らない、凄まじい戦いでした。特にクーの初撃には驚かされました。だっていつの間にか首の後ろに刃を当てていたのですよ」

 

「…………クーから聞いてない。あれで全部ってはずなのに」

 

怒ったアネッサがちょっと怖い。それにクーも懲りないな。

 

「もー、これだったら私もセレネ姉と一緒に戦えばよかった!」

 

「そうなると仲間はルナシーですが仲良くできそうですか」

 

「うっ、それは……ルナシーに頑張って頼む。聞いてくれるか分からないけど」

 

ですよねー。

 

 

ーーー

 

 

「ねえ、セレネ姉。戦うってどうだった?」

 

風呂から出て体を拭いているときアネッサが訪ねた。

 

「魔法の腕を確かめる目的のみに絞れば課題が見つかるので良い機会でした」

 

彼女の為に言葉を選んで答える。それから彼女はそっか、と一言つぶやいた。

 

「【活力満ちる南方の風よ 我ら人の子に情熱の恩恵を】」【南国の風】

 

呟くのに続けて彼女は魔法を詠唱した。どこからか熱風が吹き私達の体を乾かす。こんな魔法を私は教えた覚えがない。リューナさんに教わったのかと問うと自分で取得したらしい。

 

修道院にいた頃とはまるで真逆だ。今まで私は彼女と同様に覚えて他人を驚かせてきたがされる側の感覚を初めて知った。

 

「私、クーがお姉と戦ったって知って考えたの。私はクーとは違う、ミツキ兄ともリューナ姉とも違う。戦うのには向かないって」

 

何故そう思うのだろう。リューナさんとの勝手な見立てだと彼女の成長速度なら戦闘用の呪文も取得できると考えているのに。

 

「そうじゃないの。戦いたくない。セレネ姉とだって本当はそうしたいんじゃないの?」

 

何も答えない。私も決めた所でその時になれば迷うのだ、できれば答えたくない。意図を察したのか彼女は答えを待たずして続けた。

 

「クーが話してくれた。お姉を相手して楽しかった、またやりたいって……でも一歩間違えたらセレネ姉みたいになってたかも知れないって、そしたら怖くて。

 

だから私、お姉みたいになりたい。誰かの為に魔法を使いたいって思ったの。今の【南国の風】みたいに私の力を平和の為に使いたいの」

 

私になりたい?こんな私に?

 

「それなら、どうしますか?」

 

答えが聞きたい。

 

「魔法大会に誘ってくれたでしょ。それに出てどこまでやれるか試してみたい。お兄が大会は何でもしていいって言ってたから私みたいな人が居ても良いってことなんでしょ」

 

 

 

 

 

 

「その言葉を待ってたんだ!!」バアン!!

 

「っうわ!?……ってリューナさんですか。お帰りなさい」

 

確か彼女はルナシーを探していたとは聞いていたので見つかったという事なのか。

 

「Yes!ついでにセレちゃんの治療したのもリューナちゃんだぞ。どや!」

 

その節は本当にありがとうございます。

 

「でーアネッサちゃん、魔法大会だって?あいよいいよ!私もセレネちゃんも君の成長を止める者などいない!お姉さんがエスコートしてさしあげますわー!!」

 

ちょ……テンションが上がりすぎてリューナさんの頭がおかしくなってる。一先ず落ち着かせよう。

 

「申し訳無いですがまずはせめて扉を閉めて話しませんか。その、見られても困りますし肌寒いです」

 

「それもそうだね。お姉さんもシャワーだけしようと来てたんだった」

 

中に入って扉を閉めて私達は服を着る。

 

「まー詳しい事は後にしてご飯食べながら決めちゃおう。でもありがとね、魔法大会に出てくれて」

 

「うん、私も早くお姉達みたいになりたいって思えたから。お姉たちも私と出てくれるよね?」

 

「リューナさん、私の体どうでしたか?」

 

「体の話ならご飯の後に話すよ」

 

彼女も私達と会話しつつ服を脱ぐ。

 

「ふんっ!」

 

ボロン バルンバルンッ

 

「リューナ姉すっご…………」

 

「……………………」←メソラシandチラミ

 

 

二人してたわわに実ったそれを羨望しつつ風呂を終えた。

 

 

ーーー

 

「糞が」「今回は十割お嬢に非があります。弁解の余地も無いので……」「爆乳ビ○チに既に平手打ち食らってる。何も言うな」

 

「逆に平手だけでよく済んだな」

 

「ホントだよ。あんな鬼の形相のリューナちゃん見たこと無い」

 

所変わって男2名と女1名、それと屋外の一匹。リビングにて。

 

「だから手土産も作ってきてやったっていうのにあの野郎それでもやりやがって」

 

「手土産ってそのテーブルに出てる気味の悪いそれがか?」

 

「はい。友人に料理の上手い人が居ましてスペースを借りて作りました。ゼラチンの宛もありましたし」

 

「『鰻ゼリー』なんてルナちゃんどこからレシピ引っ張ってきたんだい?」

 

「地下。因みに私は食べるつもりは無いので処理は頼みました」

 

「お前今日生肉食ってただろうが……」

 

 

 

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