せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜   作:囚人番号虚数番

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幻影の御供たち

「うえ"っ!?え?え?」

 

「チィッ、まだ削れないか!」

 

まだ有利、続きの一撃を……とその前に足に強い刺激が走り拘束をゆるます。続けて逆に押され体勢を崩しそのスキに距離を離された。

 

改めて彼女を観察する。「蝶」のような派手な格好の仮面の女。笛には細長い刃が仕込まれていた。

 

「ふぅ危ない危ない。まさか藪をつつく前に人が出るとは。もうHPが4割程削れちゃったよ」

 

彼女はそう言いつつ服と笛の汚れを気にしていて余裕そうだった。煽っているのだろうか。

 

「にしては余裕そうじゃないか。剣士は俺たが体術も魔法もこの距離で捌くつもりか?」

 

「僕じゃ無理だね。でも最後に君の手加減無しの魔法も見てみたいなーなんて」

 

「ならこのまま倒されてくれ!」

 

お望みならば答えねば、彼は空に手を掲げ魔力を集中させる。腕は赤く発光し熱を帯び大気を揺らす。そしてその腕を降ろし魔法を放つ。

 

「【獄炎インフェルノ】!!」

 

爆音と共に紅蓮の炎が広まり森ごと「蝶」を焼き払う。炎は空高くまで上がり少し離れた町中からもそれは見えたらしい。それはそうだ、これは彼の知る中で最上級魔法だ。

 

しかし笛の音は止まない。

 

「〜〜♪♫(危ないねぇ。でも只それだけ。力任せだけじゃ勝てないぞー)」

 

確実に当てた筈の彼女だけはその火の中でも無事だった。あの幻影の騎士が大盾で彼女を守る。そして当の本人は切り株に座り気楽に笛を奏でていた。

 

「くっ、やっぱ一筋縄じゃいかねえか」

 

「なら剣でも使ったらどうだい?その成からして本職は剣士だろう。ここは魔法大会なんて名前だけの闘技大会なんだし楽しもうよ」

 

曲が止んだと思ったらこちらを煽りまた戻る。完全におちょくられている。

 

「なら挑発に乗ってやる。俺にケンカを売った事、後悔するなよ」

 

「(アネッサ、それまで無事でいろよ)」

 

彼は剣を抜き、片手に炎を宿した。このスタイルはあの戦場ぶり。勇者仲間の前では見せ無かった彼のかつての戦い方だ。

 

風より速く距離を詰め、彼女が曲を奏でる前に斬りかかる。横に一線彼女の胸に剣を振る。

 

ガキィンッ

 

だが騎士も身を挺して彼女を守る。彼らの間に突然現れ盾を構え逆にこちらの攻撃を弾くそして彼に一撃を与えた。

 

「ぐっ(さっきまでは確実に居なかったのに弾かれた!?)」

 

「〜〜♪♫(おお焦ってる焦ってる。幻影だから多少めり込んでもいいんだよー。ざーこ♡)」

 

彼女の薄ら笑いに殺意を抱く。だがどこか見慣れたような、仮面で顔は見えないがその顔を殴り飛ばしたい。

 

「〜〜♪♫(はーい幻影ちゃん、次は君のターンだよ)」

 

騎士のさらなる攻撃が始まる。

 

ガキィンッ! 

 

騎士は的確に急所を狙ってくる。彼も己の剣で攻撃を受けるも速度と威力が勇者の彼でも厳しい。魔法を放つ余裕もなく戦いは一方的だ。幻影の動きはまるで何度も修羅場を潜ってきた達人の身のこなしだ。

 

「〜〜♪♫(じれったい……ちょっと揺動するか)〜〜♫♫」

 

音色にスタッカートとフォルテが加わり騎士が剣を振り上げた。言わずとも分かる、強撃の合図だ。削除予定SIII(・Y・)IIIS メー

 

しかし大振りなのはかえって好機だ。ガラ空きになった大きく振ってできた僅かな時間に魔法を叩き込む。

 

「焦ったな女!【ブレイズキャノン】」

 

次の瞬間、目の前が爆裂し騎士は後ろへと吹っ飛びそのまま空へ発散した。彼の近距離での爆裂魔法がクリーンヒットしただけだ。だが彼女は突然で飲み込めず、愚かにもその去勢を張る。が、同様する本心は隠せず彼には突然笛の音が割れたのを聞き逃さなかった。

 

 

「ふ、ふふふ……良くやるじゃないか君。まさか僕の幻影が負けるなんてね」

 

「なら潔く失格になってくれ」

 

「嫌だね」

 

彼女の笛から突然ピーッと音が鳴る。と同時に横から殺気を感じ距離を離す。音が鳴れば騎士が現れるという訳か。

 

「くっ……一々手がせこいな女!」

 

「女だなんて照れるね。『舞姫』……いや『奏者』とでも呼んで」

 

奏者が再び笛を吹くと騎士が再び現れた。別に彼女の名前など別に聞いてはいない。それ故彼女の言葉が終わる前に騎士との戦闘を続けた。

 

先に本体を叩く考えもあるが彼女がここまで近くにあるとなるとそれだけ騎士が強い、という事だろう。それと敵は重装だ。とすれば答えは1つ。

 

「(ひたすら避けて間々にぶった切る!)」

 

騎士が突進し剣を突き刺しそれをステップで回避、回り込んで背中を切りつける。が、堅牢な盾で防がれ一時撤退を余儀なくされた。

 

ここから暫く一進一退の攻防が続く。傍から見れば彼が押されているように見える、しかし反撃狙いだから先に手を出したら負けだ。

 

先に動いたのは彼女の方だった。痺れを切らし貯めてから横に一線、それを彼はその攻撃を受けずに避ける。そこから2、3度の連撃を挟んだ後少し攻撃が弱まった。

 

「【ギガフレア】!」

 

そこへすかさず炎を放つ。盾で火はすぐに防がれる。だが逆にこちらの姿は一瞬だけ捉えにくくなる。回り込んで騎士の剣を持つ腕を掴み剣を突き刺しそのまま切断した。

 

ぼとり、と剣を持った腕が落ち切断面から透明な霧が吹き出た。続けて騎士は特に痛がる様子もなく程なく消え去った。これで彼は倒したも同然だ。

 

彼女も動揺し笛の音が狂った。即ちそれ程に危険な状態な訳で、彼もそれを聞き逃さなかった。

 

彼女の座る高所に飛び距離を詰め動けないように肩を掴む。

 

「げっまず!」

 

「(刺せ!左胸っ、左心房!)これでさよならだ!」

 

心臓に狙いを定めて剣を突き刺す。これでHPが減らし切れれば彼はスコアが得られる。そしてまたアネッサと……

 

「……なーんてね。雉ちゃん」

 

彼女の握る笛がひとりでに音を奏でた。驚き笛を見るとただ笛の穴を1つ抑えているだけで到底音色を捌いているとは考えられない。

 

動揺する彼は数十分の一秒だけ、僅かに剣が減速した。彼女にスキを晒した。つまり、反撃される番だ。

 

死角から何かが飛んできた。彼に視認こそできないがそれは霧でできた槍だ。槍は彼の頭の位置を的確に当たり、HPを7割程削る。保護魔法がなければ彼は死んでいた。

 

「うわあああっ!!」

 

保護魔法で貫通しない分の威力で槍にふき飛ばされた。彼はバランスを崩し受け身も取れず地面に叩きつけられ転がる。彼女はそんな彼を見下すように笑いながらひとり語りする。

 

「実は僕音楽に関してはぺーぺーでさ、これ自動演奏なの。指先の動きとか譜面の種類だとかそういうので操ってる訳じゃぁない。強いて言うなら穴の位置さ。ほら、さっきの猿、見せてあげる」

 

彼女が見せつけるように笛の穴を一つ塞ぐ、すると先程の腕のない騎士が何処からともなく現れた。

 

削除予定 彼は愚かさを呪った。幻影の腕を折った所ですぐに再生されるだけなのにそれに至らぬなんて、なんと情けないことか。

 

「それと実は戦っててスコア的に逃げた方がいいんじゃないかと考えていたのだけどどうやら僕は君を倒さないといけなくなった。腕時計見て」

 

「とけ……な、スコアが!?」

 

 

 

ミツキの爆発を切っ掛けに競技場は変化していた。赤々と輝く木々に身を潜めていた者は去ることを余儀なくされ、あるいは倒れた木でHPを削られミツキらのスコアへと変換される。外道であれどある種これが一番原始的で正しい勝ち方であるのかも知れない。そのお陰で自覚はないがこの時点で全体順位トップに入っていた。

 

逃げたい者は平野へ行けばいいでないか、しかしそうは問屋が卸さない。それとスコアも彼より上手のものは幾らかいる。偶然は馬鹿にできない、だが限度はあるのだ。

 

 

 

彼がスコアに目を移した次の瞬間彼の姿が消え気づけば彼女の間合いにいた。腹に笛の仕込み刃を突き刺そうとしている。

 

「!っお!?」

 

刃との距離が一センチを切ってから彼は剣でなんとか軌道をそらす。しかし余りにも無理やりだったからか仰け反ってしまった。

 

「猿!」

 

その声に呼応するように騎士が彼女の後ろから彼の胸元を切る。幸い傷は浅い、しかし既にHPは残り3割の重症だ。ちょうど今の攻撃で残りHPは風が吹けば死ぬようになってしまった。

 

「はぁ……はぁ……くっ!」

 

息苦しい。それに暑い。戦闘中の脳内物質により苦しさはないがここは火事現場だ。煙は酷く自身の放った炎が燃え広がりそれがかえって自身を苦しめている。

 

「(何でだよ……こんなのおかしい……)」

 

「どう?大分苦しいんじゃない?もう体力も数ミリでしょ?本番ならバーはもう無くなってるよね」

 

わざわざ演奏を止めて奏者は彼に声をかけた。笑いながら心配そうな言葉でだ。舐め腐っている。

 

「黙れ!」

 

剣を拾い上げ奏者を睨む。彼女はいつの間にか木の上に腰を掛けて笛を吹いていたらしい。黒焦げで、今にも折れそうな木の上で火の海の中とは似つかわしくない技巧的な音色に興じていた。先程から彼は彼女のHPの1つも減らせていない。

 

「うーん、噂は噂だったか。ねえねえ、君の本気はそんなんじゃないはずでしょ?ねえねえねえ」

 

ケラケラと笑いながら彼を煽る。笛を操り彼の周りに二体の騎士を近づけた。一人は先程の、もう一人は槍の飛んできた方角から現れた槍を持った騎士だ。彼らは倒せるように切っ先を常に彼に向けている。

 

「まあ、僕はこうなるとは思ってたさ。勇者が出るって話をリュ……その手の人らから聞いてきて対策をしてたしね。戦ってて違和感無かった?調子が悪いとか」

 

「何かしたのか!?」

 

「何かしたというより適正値に戻した……いや、何でも。まあそこよりも少し僕も事実確認がしたくて」

 

「(何が聞きたい?俺はお前を知らないぞ。何かしたのか?)」

 

「君、勇者?冒険者ギルド最強のミツキ ミナモだよね。顔は少し違和感あるけれど」

 

「……なぜそう思う?」

 

紛れもない事実だがあえて誤魔化す。彼女は彼の出場を知っていた、だが彼はセレネの魔法で顔を隠している。なのに何故彼と特定できたか分からないからだ。自分で確認した限り認識阻害の魔法は解けていない。セレネの魔法を解除出来たとしたら彼女は相当な魔法使いである、と当の本人が恥ずかしがっていることを知らないのは知らず考えた。

 

「いや、普通に剣技とか魔法とかの話から想像した」

 

「(あ、思ったより原始的だった)」

 

だが態々知った上で勇者の彼を訪ねてきたのだ。どちらにせよ怪しいことこの上ない。彼女はじゃあ愚痴でもいいから聞いてってくれよ、と彼を無視して問いかけた。

 

「噂は聞いてるよ。数々の魔道士よりも強く、それでいて剣聖すらも圧倒し強大な仲間を従える。現に君をダシにした人の話もこの前耳に挟んだ」

 

「(ダシにしたって……ああ、ギルドの広報のクソ野郎か)」

 

「君のカリスマ性は誰もが認めてる。あるいは女を侍らせ大したこともしていないのに持て囃され挙げ句暴力を正当化する不思議な力を容認している。

 

そこで僕は聞きたいんだ。本当にそれは君の力?例えば『神様が授けてくれた』とか?」

 

 

 

 

 

 

ーーー!

 

「………………俺が何者だろうと関係ないだろ」

 

「その様子、図星かい?」

 

「うるせえ!」

 

【終極エクスプロード】

 

煽られた彼は最早冷静さの欠片もなく周囲の被害を考えずに最高火力をブチかました。この爆発は競技場の殆どの範囲に衝撃が波及したという。本日彼の二度目の大爆発である。 

 

「猿、雉、守って」

 

彼女は爆発とほぼ同時に木から飛び降りる。凄まじい爆風と瓦礫が彼女に迫るがその前に剣の騎士は大盾で防ぎ後ろで槍の騎士が彼女を受け止めた。

 

「お姫様抱っこかー雉ちゃん分かってる♪」

 

「(く、クソッ!何で……)」

 

「そうだよね。普通こういう魔法使われたら君のお友達らは『うわ〜こんな難しい魔法なんて使えない〜!勇者様には勝てません〜!』なんて持て囃して。さぞいい気分だったでしょ。烏合の衆、皆が皆馬鹿ばかり、……お、今我ながら上手いこと言ったな」

 

その発言に、彼はブチ切れた。

 

「俺の仲間を馬鹿にするなああああああああああああああああああ!!」

 

危機的な状況で冷静さを失いやすい状況で煽られ続け、明確に彼の仲間を馬鹿にした発言に彼の堪忍袋の尾は耐えきれなかった。

 

もはや大会もなにも関係ない。彼はただ一人の人としても彼のプライドとしても彼女を許さなかった。

 

【新生ニュークリア】

 

怒りに任せて放った3度目の爆発は前より少し強かった。それは己が身、それと競技場全てをも焦がし、HPを溶かし切る程に。

 

ーーー

 

 

 

時間は少し前後して

 

炎の中での幻影の騎士と勇者の戦い実況席も目を引かれた。

 

「おおっと、森の中から炎の渦が現れた!」実況

 

「早速面白くなってる!あれは制御してるようには見えないし高度な呪文魔法を腕っぷしだけで出したっぽいけど……威力面だけ言えば魔法が拡散して非効率、だけど火蓋が切られたよ」リューナ

 

「他画面の映像でも爆発音がした時から森の中でも動きが見えます。多くの選手から隠密効果が確認されるのでさっきまでは戦いが始まっていない訳ではなく多くの選手が隠密に特化していただけみたいです」セレネ

 

だが……彼らは無事だろうか。私はそれ心配だった。私の見た映像からは火の主がミツキさんとはっきりしている。しかしその時には既にアネッサは見えない。映像を切り替えながら注意深く彼女を探す。

 

「…………!」

 

見つけた。喜びの声を抑え冷静に解析をすると……

 

「(……ああ、神よ)」

 

自信がただ祈ることしかできない事実にゃっと気がついたらしい。

 

「(せめて……せめてこれ以上は彼女が気が付かないよう……慈悲を)」




二度と大規模透明化はやらない

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