せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜   作:囚人番号虚数番

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後の祭り

それから暫くして大会は閉会式となった。 

 

大会はご覧の通り大荒れだった。数回の爆発のせいで想定よりも遥かに早期に競技者が一人となってしまい終了時刻前に競技を終えた。その残り一人も別件で問題を起こしているから今日の大会は色々な意味で話題となるであろう。

 

まずはアネッサとミツキさんについて。残念な事に彼等のチームは成績的には2位だった。勿論彼らの努力はずっと見ていた。だから精一杯戦った結果というのは知っている。件の爆発も彼の魔法だと聞いた。もし私が彼と共に戦えていたら……いや、空想の話はしていても無駄だ。

 

成績的には、という点に関してはこういう事情がある。成績一位は驚くべき事になんとルナシー所属のチームだった。閉会式後に名簿を確認させてもらって調べたのだがルナシーの名前は見当たらない。彼女はこんな事しそうにないしきっとチームの登録をした人物が偽名で登録でもしたのだろう。

 

それだけでなく彼女のチームは優勝したにも関わらず誰も閉会式に参加せず、それどころか勝手に競技の為の魔法を解除し帰ってしまったそうだ。結果的にアネッサとミツキさんが優勝となった。おめでたいが誰もが納得できない。

 

 

 

という訳で……現在時刻 大会後 帰り道の馬車内

 

「でもまさかリューナさんがナツメさんと組んでいたとは思いませんでした」

 

「うん、でも皆が驚いてくれたならお姉さんも満足満足!まさかセレネちゃんも何かしたの?」

 

「…………実はちょっと」

 

答えづらい質問に思わず目線をそらす。

 

「お互い悪よのー」

 

馬車内では大会運営組である私とリューナさんが裏の暗い面について語り合う。アネッサとミツキさんが別の馬車に乗っているのでこの馬車には私と彼女しかいない。聖女とて、時には聞かれる心配の無い内に心の闇を晴らしておきたいのだ。

 

「でもまさか彼が2位を取るとは……」

 

「それには私も予想外。ナッツーだし頼み込んで誰かに頼んで倒してもらってたんじゃないかな」

 

戦闘の性質ゆえ実況用の映像にも映らずにいたものだから2位の選手が正体を隠して参加していたナツメさんだったので驚きである。

 

ついでにその前の裏話も教えてくれた。

 

ーーー

 

現在時刻 大会前 打ち合わせ前

 

現在位置 会場

 

「いやーセレネちゃんがまさかアネッサちゃんに伝えてなかったとは。これは計算外」

 

「リューナちゃんの計画だと運営協力ついでにこっそり一人で参戦もする予定だったけど出るなって言われるとは。ま、私が出たら優勝しちゃうし英断だね!」

 

「そこでリューナちゃんは考えたのだ!ヘイカモンナッツー!」

 

「僕の出番です。仕事は昨日に終わらせておいたからフリーでした。ところで今の流れ、本当に必要だった?3回目だよこれ」

 

「雰囲気作り?」

 

そこに居ない誰か向けた茶番を終わらせる。さて、何故彼がここに、そして彼女が何をしようとしているのかを説明する。

 

出場停止の空気が出始めた時点まで戻る。彼女は事前にそれを見越して出場を他人に委託する仕込をしていた。自身で魔道具を自作し、防具も揃える。

 

彼女はとにかく魔法を使いたかった。形こそ違えど魔法の技術が活かせればそれでいい、実験ができるなら手段は問わなかった。しかし決して手は抜かない、もし全くの初心者が魔道具のみで優勝できたなら、そう考えたからだ。

 

「(でもまさかナッツーが『女の子も出るかもね』って提案した時点で返事が帰ってくるのが現状一番の予想外だよ)」

 

「それで、作戦の最終確認だよね。僕が偽名で登録と変装をして参戦、ここまでは出来た」

 

彼の装備に目を移す。極彩色の蝶を模した装備で元々これは彼の私服で戦闘用に魔法で改造したのである。武器は適当に武器屋で買った仕込笛だ。一応内部に刃は存在する。だが、今の彼にそれを使う腕はなく魔道具としての性能が戦闘力の全てだ。

 

「それでこの笛を使って戦うと。でも僕楽器弾けないよ?まして笛なんて久々に持ったし」

 

「それは息を吹き込むだけで曲になる設定にしてある。そこよりも……」

 

「覚えてる」

 

彼の返事をした直後、リューナは打ち合わせがあると場を離れた。彼もそろそろ競技場へと向かわなければ。

 

ーーー

 

やはり女性が理由か。何というか、彼らしい。でも知れただけ少し嬉しい。もし何も知らずにいたとしたら一段落ついたらミツキさんに彼と「お話」してもらおうと考えたがリューナさんが陰で手を回したからとの事だったので彼女に免じてあげようかな。

 

 

「じゃあセレネちゃんは何をしたの?」

 

「私はですね……」

 

私が話そうとした時、馬車の上からコンコンと屋根を叩く音がした。不思議に思い馬車を止めてもらおうかとリューナさんに聞こう。

 

「何の音ですかね。馬車を止めて確認しますか?」

 

「ううん、そういうのは帰ってからでいいでしょ」

 

「そーだぞ」

 

「そうですよね。私の考えすぎでし……クー?」

 

いつの間にかクーが馬車に入り込んでいた。スペースが狭くリューナさんの横に詰まり小さく座っている。

 

「よー」

 

「いつの間にいたの?今日は大会には居なかったよね」

 

「でてた。セレネがまほうをためしてほしいって。まったく、どっちもおなじあなのむじなだよ」

 

ああ、言おうとしていた事をクーに先に言われてしまった。私もクーに無数の魔法武装とアネッサらにもかけた認識阻害魔法によって変装し参加させていた。

 

しかし彼女はかなり序盤の内に画面外で失格となっていたのだ。彼女の機動力と私の武装と補助があれば優勝が狙えると考えていた。現実はそこまで甘くなかった。

 

結局は私も彼女と同じでやりたい放題していたのだ。アネッサの為にもこれはここだけの話にしよく。

 

「アネッサにはひみつにする。そうじゃなくてもかってにかんちがいしてたしほうちしておくよ。おもしろそうだし。よいしょ」

 

話し終わりにクーはリューナさんの膝の上に座った。リューナさんも抵抗する事なく、彼女はクーを人形みたいに軽く抱き締めている。

 

「おお、ここちよいおもさとはんぱつけいすう」

 

クー頭上に重く大きな胸が当たっている。表情もこころなしか嬉しそうだ。ご満悦らしい。

 

「クーちゃん。負けちゃったのか。残念だね」

 

「そうでもない。やたいのごはんがおいしければわたしはいい」

 

屋台の飯と言う事はつまり彼女は負けた後ずっと大会とは別の所に入り浸っていた訳か。なんとまあ気ままなものだ。

 

「あとアネッサがゆうしょうしたからわたしはうれしい」

 

「閉会式は見てたのですね」

 

「うん。いかやきおいしかった」

 

「(うーん、やはり彼女の掴み所のなさは困ります)」

 

「あははは!食べ物が美味しかったのね。それでいてアネッサちゃんが優勝した。ならよし!」

 

「だがしかし、かのじょにはきがかりなことがひとつある。そろそろ、げんかいがくる」

 

急に話の雲行きが怪しくなった。普段から一緒だ。私達の知らない彼女の情報も知っているのだろう。有益であり、詳細に聞くべきだろう。

 

「それはどの様な意図でそう考えるのですか?」

 

「お姉さんも知りたいなー。アネッサちゃんの魔法の成長に邪魔が入るのは嬉しくないからね。クーちゃんどうゆことなの」

 

「あんしんしてくれ。まほうはまだまだせいちょうするよ。からだもはったつとじょうだからかくじつにつよくなるみこみもある。セレネとリューナねえにもわかるはず」

 

だとしたら何が彼女を阻むのだろう。

 

「あたまがこわれる」

 

 

 

 

馬車が止まった。目的地周辺に着いたようだ。

 

ーーー

 

 

馬車が止まったのは街中だ。リューナさんと私は大会関係者との打ち上げでこの後集まる予定だったのだ。

 

「確か会場はあっちだった筈!」

 

「そうですね。楽しんで来てください」

 

リューナさんは馬車を降りて進行方向を指差し確認した。丁度向きが90度違う。指摘したら慌てて修正し危なかったー、と呟き感謝もされた。

 

「でも本当に打ち上げ行かないので良かったの?」

 

「ええ」

 

私はその打ち上げを辞退させてもらう。態々開催してくれるのに勿体無いし失礼だしせっかくなので寄りたい所なのだが……

 

「クーがいますし彼女を私が送り届けます。だからリューナさんはぜひ楽しんで下さい」

 

「うーん、セレネちゃんが来ないのは残念。私も顔出しだけしてすぐ帰っちゃおっかなー……時間もそろそろだしここで考えても仕方ない。行ってくる!」タッタッタッ

 

 

 

…………よし。

 

「さて、クー……クー?」

 

ふと目を離している内にクーまた何処かへ行ってしまった。馬車から降りる音すらせずに虚空に消えるように、そもそもさっきまで居た事実ですら疑わしくなるような自然な消え方だった。

 

でも、今は寧ろ都合がいい。彼女ならまたふらっとどこか出会えるはずだ。

 

私も待たせるわけにはいかない。認識阻害魔法を使い馬車を降りてリューナさんとは逆方向の指定された場所へ向かう。

 

待ち合わせ場所は「喫茶 リヴァイアさん 3号店」。日も暮れかけて薄暗くなり店の明るさが際立つ。入るには一人だと気が引ける店に勇気を出して店のCLOSEDの札のかかる扉を開けた。

 

「セレネ様ですね。こちらへどうぞ」

 

中には店の外観とは不釣り合いな上質な制服の店員が一人だけだった。今更だが帰宅した後ドレスコードを整えたほうが良かったのだろうか。

 

「その必要はございません。お客様は当店のオーナーが今日の大会を観戦して招待されたのです。お題も結構ですのでお食事をお楽しみ下さい」

 

今日の大会を見に来てくれていたのか。しかも聞くところによるとお代も無しでいいそうで、裏があるのではと怪しむ程に気前のいいオーナーさんではないか。

 

「お気遣いありがとうございます。それで、彼は?」

 

「中でお待ちです」

 

「ありがとうございます」

 

店員は私を店の奥の扉の前へと案内した。彫刻が施された両開きの扉。古い雰囲気に紛れ前に昼間に来た時には人も多く気が付かなかったが一度意識するとかなり違和感を抱く。

 

ギギギィ……

 

扉が開けられて現れたのは地下へと続く階段だ。先は薄暗く照らされ1階の店内とは完全に空気が違い緊張する。

 

階段を下りきりまた現れた扉を店員が開けるとシックな内装の豪華で上等な、ある意味王都ではよく見慣れたレストランの個室だった。テーブルには既に本日の主役のミツキさんとアネッサが座っていた。

 

「大会の運営お疲れ様。それと急にすまなかった」

 

「ありがとうございます。こちらこそ待たせてしましたか?」

 

「ううん、セレネ姉が来てくれただけで嬉しいよ」

 

私も用意された席に座る。実は彼らに大会後、3人だけの秘密の優勝祝に食事をする約束をしていた。私はただ実況席で彼らの活躍を見ていただけなのに。同じ三人であるならナツメさんは無いとして隠れて参加した仲のクーを呼べば良かったのでは。

 

それでも私を呼んだのはアネッサが今までのお礼もだそう。お礼「も」というのに少し引っかかるが彼らが良ければ私は何も言わない。

 

「アネッサ、ミツキさん、改めて魔法大会優勝おめでとうございます。しかしいいお店みたいですがよく招待されましたね」

 

「俺もそう思う………つーか色々本当にごめん。大会後の撤収とかあっただろうに呼んじまって」

 

「私のこと気にしないでください」

 

大会会場から離れる馬車に乗る前に彼から渡された物がある。今、改めてそれを見返した。

 

ーーー

 

「破れた紙のメモ 大会で配布された冊子の余白ページを破いた紙に書かれた文章」

 

セレネへ

 

下に詳細があるから大会が終わり次第とにかく来てくれ。ただし他の人には話を伝えないでほしい。リューナやナツメにもだ。

 

アネッサとクー、そして俺について話がしたい。

 

ミツキより

 

ーーー

 

「あなたからこのような招待状を受け取ったのなら断る理由もありません。しかも私を指名した、というのならただの優勝祝いという訳でもないのでしょう?」

 

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