せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜   作:囚人番号虚数番

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吸血鬼は月を墜とすか

コリノリヌス……?私はその言葉を聞いたことは欠片もない。何かの種の名前だったりをするのだろうか。少なくとも私には未知である。

 

「……分かりました。コリノリヌスさん、改めましてお手合わせお願いします」

 

正直覚悟は出来ていない。口と態度では先程の荒れ具合を取り繕っているけれど内心は今だ現実を受け入れられないでいる。彼女はコリノリヌス、彼女は敵、そう言い聞かせる。でないと私は全てを投げ出して彼女を抱いて泣いてしまいそうになる。

 

【光柱 ピラーオブムーンライト】

 

だから私は無慈悲にも心を押し殺して極太のレーザーで彼女を撃ち抜いた。

 

が、しかし

 

【トーン:サイレント】

 

「ッツ!(体が!?)」

 

射出と同時に体にいくつもの小さく穴が開く。不可視の弾幕を先撃ちされたらしい。自身のレーザーによる視界不良も相まってどこから撃たれたのか見当もつかない。あるとするならば弾幕を貫通して……しかしそれにしてはあまりにも魔法が干渉しなさすぎる。

 

その間にもコリノリヌスはレーザーを避け私に迫る。

 

「(接近だけは絶対に!)」

 

【流星 ラピッドスターダスト】

 

無数の弾丸が降り注ぐ。夜空に瞬く私の弾幕はまるで星空のように美しいがそれ故に私でも恐ろしい。だが彼女は弾幕の隙間を見つけそこを通り抜けていく。やはりこの程度は彼女にとって障害にはならないようだ。だが、彼女がいくら強くても今の私にはまだ距離的な余裕がある。

 

【禍嵐ノ凪】

 

突然、魔力を含んだ突風が上空の私の式もろとも魔法を吹き飛ばす。魔力はコリノリヌスの物であり、きっと魔法のせいなのは分かる。

 

私に対して追い風の形であり逃げる私の速度も風に押されて大きく下がる。解析を試みるもそこで私は思い出した。

 

これは魔導書に存在した魔法に似ている。しかも記述された内容からは大幅に威力が強化されている。その上解析に対する強度もまるで私とリューナさんを意識したような過剰すぎるセキュリティだ。

 

そして何よりも驚いたのは「全くの無詠唱」でこれらを行った。感覚魔法はともかく、恐らくこれは理論魔法だろう。彼女は理論魔法よりも呪文魔法に適正のあることは以前に確かめた。性格が変わったとはいえ魔法の適性までここまで変化するだなんて。

 

【疾風怒濤】【トーン:サイレント】

 

「追いついた!」

 

一方コリノリヌスは自身にバフを盛ったらしく彼女の方から強い風を感じる。それ以上に弾幕を無視した接近は今までの数倍の速度で私に迫ってくる。対抗して目いっぱいの魔法で対抗するも遅く接近を許してしまった。

 

「当たれええ!」

 

声と共に彼女は剣を横に振る。私は咄嵯にそれを受け止めるがその一撃はとても重く私は大きく吹き飛ばされてしまう。家々の内を貫通し土煙を上げながらようやく止まることが出来たが、すぐに起き上がれないほどにダメージを負ってしまった。

 

「(まさかこれほどとは……)」

 

彼女は明らかに以前の彼女とは比べものにならないほどの力を手にしている。私が知っている限り、彼女が魔法を使用した場面を見たことはない。彼女は私の管理しきれない所でこれだけの技量を身に着けていたのか。

 

しかし、同時に彼女からの距離が出来たのはいいかもしれない。このまま逃げ切れればあるいは……。

 

そう思った時だった。

 

ツ-……

 

「(? 耳が濡れて……?)」

 

ふと、生暖かい何かで濡れるのを感じる。耳に触れてみると出血していた。意識すると確かに痛いし耳も聞こえない。

 

「……鼓膜が破れた?何故でしょうか」【回復魔法】

 

とりあえず鼓膜を治すために回復魔法を使用する。さて、音に気を付けて立ち上がり索敵。感知魔法を広げると……どうやら彼女は意外にも私を見失っている。今の内に回復と強化を積もう。

 

「(しかし……どうして今更見失ったのでしょうか。軌道は直線で痕跡も多い筈なのに見つけられないなんてあります?)」

 

と、彼女がまだ壊れていない建物の屋上で留まった。ここは彼女に吹き飛ばされた先の家の中、私が入った場所とは全く別の向きである。高台を取られているのが気がかりだが、潜伏が出来るならいい。

 

「コリノリヌス、あなたはどう来ますか……?」

 

一体どういうことかと思っていると……

 

 

 

「あのクソ聖女、私が近距離しかできないと思ってやがるな。だが好都合だ。感知か何か使ってるだろうし範囲から外れるか」

 

 

 

ズドンッ!!

 

【トーン:サイレント】

 

突然目の前の壁が爆ぜた。

 

「(っしてやられました!)」

 

遠距離に離れたと思ったら感知できない弾を使いだした。魔力の感知が意味を為さず、加えて発射と同時に彼女は感知魔法の効果範囲から逃げ出した。

 

しまった、相手を見失っては距離的な有利も効果が薄れる。しかも恐らく未だ高台にいるとすると完全に相手に有利だ。逃げられる可能性もあるから早急な再特定を優先する。

 

射線に気を付けて玄関から屋外に出る。結構壊したつもりでも遠くに飛ばされたせいで建造物はまだ残っている。これなら隠れる場所には困らないが……

 

破壊音と共に私のいた場所の頭の位置の壁が爆発する。咄嗟に避けてことなきことを得たが問題は玉が飛んできた先が全く分からないのだ。弾幕自体が見えず、着弾からの弾幕の性質が分かりずらい。

 

しかしそれはたった一つであればだ。周囲を見渡すと不自然に割れたガラスや数カ所にある同様の破壊跡がある。弾は多少の反射はするらしい。

 

しかしそんな反射する弾の照準はどう向けたのか。更にいえばどうやってこちらの場所を特定している?

 

私を追い四方カラフル見えない弾幕はどれも数回の反射を確実にしている。建物の下や路地の壁に跡を作り迫る。これを私感知の範囲外からしているとなると……

 

だが、考察に夢中の私は上方からの魔力にすら気づかないほどに注意を欠いていた。

 

「っあ!?」

 

咄嗟に回避をとるも既に遅く体の半分が弾に擦りカミソリの様な小さな傷が無数に走る。加えて被弾の速度と自身の強化が積まれた回避により音速に近い速度で私の体は吹き飛んだ。

 

「ぐっ……!」

 

数メートルの飛行の後に地面を高速で転がる。全身打撲と骨折で激痛が走る。しかしまだ戦うべきと地面に手をつくも力が入らずまたもや倒れ伏してしまう。

 

「(これは、まずいですね……)」

 

痛みに耐えながら必死に思考を続ける。今の私の状態はかなり悪い。元々、戦闘には向いていない上に負傷している。加えて相手の位置が未だに把握していない。

 

 

 

 

 

しかしそんな絶望も私は吹き飛ばされる途中の奇妙な気づきに吹き飛んだ。キーンと、耳鳴りのような音が響いている。鳥のさえずりを何倍にも高くしたような、そして赤子の声よりも何倍にも喧しい。

 

音は私が壁に衝突し止まるまで続き、止まった瞬間に急速に音階を上げて聞こえなくなる。私は音を聞き終えてしばらくは呆然と地面に伏せたままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「(……もしかして!)」

 

奇跡であろうか。かつて魔法を理解しようとしていたときに偶然に覚えていた物を思い出した。確かにそれは無理そうではあるがありえなくはない。

 

それに……

 

 

 

_____アネッサが来た。別室で私の動作音がしたから来てみたら、とのこと。あまり激しく物音を立てているつもりもなかったからどれだけいい耳なのだろうか

 

 

 

私には確たる証拠がある。

 

 

 

【聴覚強化】

 

 

攻略手段を考えるのに少し時間がかかりすぎた。おそらく彼女は既に遠くへ、最悪町の外へと出ているかも知れない。弾幕が届いているとはいえ、彼女の才能は私が可能性を警戒する位には素晴らしいのは認めよう。

 

だが、彼女の命中率のトリックには致命的な欠陥があったのだ。

 

「(思えば、初めてあったときからお互い隠しものばかりしていたのかもしれませんね)」

 

魔法で自身の耳の捉える音の範囲を広げる。やっぱりだ、あの喧しい音が遠くから聞こえてくる。同時にあの不可視の弾幕も見えずとも「聞こえた」。

 

つまりあの弾幕の正体は音の塊のようなものなのだ。聞こえれば対処の方法は検討が付く。弾幕が音を放つなら予備動作が大きい攻撃と同じである、そこに魔法を放ち相殺すれば簡単に防げる。防壁を張る必要すらない弾幕に何を怯えていたのだろう。

 

相手も私の異変に気が付いたのか弾幕が通常の物に代わり始める。だけどもう時間は十分に稼げた。この街の地形は覚えてる。そこに魔法での解析を挟めば……よし!弾幕の反射のシミュレートから相手の居場所を特定できた。これは音声の指向性が高くなければできない芸当だ。しっかり魔法を学んだのが逆にあだとなった。

 

ならば、私はもう怯える必要はない。堂々と立ち上がり街を駆ける。

 

「(相手の弾幕で最も厄介な弾幕、ならば私も使わせていただきます)」

 

私もレーザーと通常の魔法弾に反射と私の出来る透明化を仕込む。そして私もまた反射のシミュレート、自動射出、ランダムルート巡回を設定し彼女を狙う。私の目にも見えないけれど今、私の魔法が地上に落ちた星空が誰かには見えているかもしれない。

 

「さて……来た!」

 

最初に彼女の元に着いて10秒、フィードバックの情報を元に感知魔法を展開、コリノリヌスを補足した。更に彼女を中心座標として感知魔法を固定する。彼女がハッキングで解除、逆利用が可能かは不明だ。しかし私がそんなことさせない。

 

絡め手で来るのならこちらは裏の裏を突くのが最善であり礼儀だろう。場所が特定できたのならば彼女にとっての最も意識外から攻める事にする。

 

照準は彼女に、精一杯の魔力を込めて式を組む。夜明け間際の暗い街に芸術的で、だがそれ以上に恐ろしさを本能的に感じる光が明るく照らして血だらけの私も光輝かせる。

 

ああ神様、どうか許してください。私は今から罪を犯します。短い合間、家族のように過ごし愛しあった大切な仲間を今から手に掛けます。どうして私にこのような試練を課されたのか私には分かりかねます。ですがもう少し手心が欲しい、だなんて願う私は罪でしょうか。いいえ、罪なのでしょうね。

 

祈るように手を合わせ、私は魔法の枷を外す。研究の成果で私の魔法の効率は更に増し出力は200%にまで到達した。

 

「(神よ、お導き下さい。どうか私が狂わない内に)」

 

【光柱 ピラーオブムーンライト】EXTENDED

 

そして夜の街から一筋の光の筋が放たれた。

 

 

 

一方

 

「ッくっそ!あの野郎なんてもん放ちやがる!?街ごと吹っ飛ばすきか!?」

 

魔法が放たれる少し前、彼女は着々と自身が追い詰められつつあるのを肌で感じていた。不可視の弾幕の正体が自身の声と特定された、しかも先程から自分の行く先に弾幕が彼女を蝕んでいく。自身が何度も使ってきた搦め手であるのに敵に回るとこの上なく恐ろしい。だから体は一瞬で満身創痍、今は逃げ先を探している。

 

しかし、それも遅かった。

 

放たれた魔法は先程まで彼女がいた場所を簡単に消し去る。音もなく、ただ徹先の全てを破壊する光線に本能的に恐怖した。直前で真上に飛び回避をしていなければきっと光に飲まれていただろう。

 

「やっと会えましたね」

 

そのさらに上、傾いた満月を背に私はいる。

 

「はっ!?」

 

 

 

【光柱】を放つ瞬間、私は彼女に向かって跳んだ。壊される建物をかきわて逃げた先の彼女を確実に仕留める為の裏の裏、正面突破で距離を詰めた。

 

「【【日蝕 クローズドアイズ】、光の波長を変える魔法です。弾幕の波長を可視光から外しました。だから見えなかったのですよね」

 

「仕返しってわ………!?」

 

空中で落下しながらコリノリヌスは振り返る。彼女の焦りようは激しく、だが私の左目を見た途端に絶句した。ああ、そうだとも。私はあなたに顔を切られた時に左目の瞳が切れたのだ。止血はしてあるけれどもう二度と視力は戻ることはない。完全に失明している。

 

「はい、ですが二度と使うつもりはありません。この技はあまりにも非人道で強すぎますので」

 

しかし私はその程度では止まってはいけない。ただ今は、敵を倒し後で嘆けばいい。だから最後に彼女に精一杯の最後を。

 

5本の細い【光柱】を作り出す。一本一本が彼女の四肢と声帯に殆ど接触する位置に照準を向けている。小さな円環の式が輝く様は神性な光輪にも感じてしまう。だが、いやだからだろうか、彼女は今後に自らの身に降りかかるであろう最悪の結末を予感し青ざめていた。

 

「い……嫌だ!死にたくない!止めて、止めろおおおお聖女セレネええええええええ!」

 

しかし私は魔法を止めない。最後に私は目を閉じ、一筋の涙を流しながら微笑んだ。

 

「また会いましょうね、アネッサ」

 

言葉が言い終わると同時に【光柱】が手足を貫いた。

 

【光柱 ピラーオブムーンライト】

 

 

 

ー--

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

手足の無い、声も出せない彼女を背負い連れ帰ボロボロの街を歩む。傷だらけの体に【回復魔法】で鞭を打つ。

 

私は彼女に魔法を向けた。だが私だって彼女を殺すのは嫌なのだ。たとえ彼女が私達の知るアネッサが虚構だとしてもアネッサとしての思い出は消えない。きっとまたあの丘の教会で一緒になれるかもしれない。

 

だから私は自力で再生できる範囲で彼女を生け捕りしたのだ。四肢を切断したのは一見重症で、だから私やリューナさんに頼らないといけない状態にした。帰ったらナツメさんにと交渉して彼女の持つ情報と引き換えに身の保証をしてもらう。

 

「ごめんなさい……ごめんなさい……きっとすぐに、あなたの体を戻しますから……」

 

気絶した彼女の重さと不安定な地面に何度も足を取られながら私は馬車での道を歩いた。気が付けば空は少しずつ赤く、美しい朝焼けが私達を照らしている。希望を見失わないように私は空を見上げる。

 

「あとちょっと……あと、ちょっと……!?」

 

私は思わず足を止める。見上げた空の赤さは何も朝日だけではなかった。赤い空には黒い煙が立ち上り、ぬくもりとは程遠い焼けるような熱さを肌で感じる。煙の場所は私達の住んでいた家だった。

 

私は走った。そして息が切れるまで走り続けた。

 

 

 

 

 

 

そしてようやくたどり着いた先に待っていた光景は。

 

「そんな……」

 

「ああ、終わったんですね。朝食に肉でも要りますか?」「おかえりなさい、聖女様。お勤めお疲れ様でした」

 

 

 

無残にも思い出も詰まった私達の家は黒く熱く燃えいる。そしてその横ではまるで燃える家とは無関係のようにルナシ―と狼さんが食事をしていた。

 

私はその場に崩れ落ち、涙を流す。

 

私の大切な場所はもうないのだ。

 

 

 

「ぅ……ぁ…………」

 

同時に戦闘と回復で多量の魔力と体力を使い果たし私は遂に気絶した。

 

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