せいくりっどがーる!!!〜戦場に駆り出された聖女は回復よりも光魔法でがんばります〜   作:囚人番号虚数番

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緋色の少女と……

ーーーさあ、間もなく始まります第3試合!!次なる勇者の入場です!!

 

 

 

歓声と怒号が響く闘技場、修道服の私とは一番縁遠いはずだった所に立っている。ゲートが開かれて円状のフィールド内の中心へ歩を進める。

 

 

 

ーーーおおっと、この黒と白のコントラストが美しいこの高貴なお姿、第3試合で姿を見せたァ!!銀の聖女 セレネ ブラウンが闘技場に降り立ったぞー!!解説の□□さん、彼女についてはどう思いますか?

 

ーーーさあ?育ちが育ちだから魔法はともかく身体的な問題で戦いになるかどうかさえ危ういんじゃあないの?

 

ーーー□□さんからは珍しくストレートで辛辣な意見が飛び出しました!!聖女セレネ、この評価を覆すことはできるのかぁ!!

 

 

 

「(おそらく難しいですね)」

 

実況解説からボロクソに言われたがこれは仕方がない、だって白兵戦なんて初めてだもん。でも、正直、人と戦うなんてしたくないからもっと言ってほしい。そうじゃなきゃ、あんな魔法を出せる私が弱いって言い訳ができないから。

 

 

 

ーーー対して相手コーナー、赫巫と狛犬ルナシーだ!!一試合目から溢れ出る殺気は留まることを知りません!!

 

 

ルナシーと呼ばれる彼女はフィールドの中心付近で既に待機していた。

 

意外な事に少女だった。それも私より年下の10歳前後でどう考えても戦場に出していい年の者ではない。

 

茶髪で瞳は赤、赤い頭巾を被り年相応な赤と白で纏められたフリフリの服を着ている。それだけならばどこかで聞いたような話の主人公の様だが服には所々血か飛び散り、背中には巨大な斧、腰には血のついた鉈を装備している。顔も年にしては大人びていて数々の修羅場を乗り越えてきた風を漂わせる。巫女と称されるにはかなり血生臭い。

 

しかし調教師ともあっただけあって彼女自身の数倍もの巨体を持つ灰色の老いた狼を連れている。彼女は伏した狼に馬に乗るように跨って乗っていた。そして観客のことなど興味が内容に反応を示さず狼に指令を下している。数多の古傷と老いが進んだ風格のある狼と赤い少女、まるで貴族の娘とそれを見守る老紳士の様だ。

 

 

 

「……これでお願いします。この程度の相手なら狼さんでも簡単に倒せるので一人でやってください」

 

彼女は狼から降りてそう命令を下す。

 

「………」

 

狼は彼女を無視して眠りにつこうとする。

 

「口答えしないで早くやってください」

 

シャキン

 

「………」

 

 

 

彼女は持っている鉈を彼にチラつかせる。刃渡りが古傷の大きさとだいたい同じな事から彼は何度か彼女に切られていそうだ。狼不服そうな返事をしながら彼女の指示を受け入れてゆっくり体を起こした。調教がそこまでなってないらしい、見るからに乗り気じゃなさそう。

 

 

 

ーーーさーて、両者闘技場中央にて対面しました!!

 

 

 

試合前の挨拶、彼女ルナシーと向き合う。

 

「セレネさんですか。よろしくお願いします」

 

「こちらこそ、といきたいのですか争い事は苦手で戦いはあまりしたくないです。もしあなたが良ければ不戦敗ってできますか?」

 

 

 

ーーー戦いの前嵐の前の静けさ!!今二人はどんな会話を交わしているのかぁ!!それは皆さんお待ちかねの戦いを通して教えてもらいましょう!!

 

 

 

「細かい事は嫌いなので不正なら戦いの間にやって下さい」ナタシャキ-ン

 

「試合開始と同時に私が投降して安全にっていうのは駄目みたいですね」

 

 

 

「おーい!!生き残って帰ってこいよー!!」

 

観客席から人一倍大きいミツキさんからの応援の声がする。私自身戦わない気満々だったけどこれじゃ逃げられないな。

 

ーーーReady……

 

 

 

「狼さん、頼みますよ」「………」

 

ルナシーさんが鉈をしまい狼が構える。獲物を狩る姿勢だ。これから仲間になるというのに相手は完全に殺す気でいるらしい。

 

 

 

ーーーFight!!

 

「行け、狼さん」「………」

 

ダッ

 

「(えっと、私はどうすればいいので……っ!?)」

 

ルナシーさんの狼は開戦と同時に私に向かって駆け出した。巨体からは想像もつかない俊敏な動きで私との間合いを詰める。

 

一方で私は何をするかすぐに判断できず、何をするでも無く棒立ちでスキを晒すだけである。せめて魔法で身体能力を強化でもしていれば判断に間に合ったかもしれない。だが間合いを詰められてしまい動こうにも既に遅し。相対的な圧倒的なスピードに翻弄され少しづつ傷を負わされる。

 

「かっ……回復を……」

 

「させるな。頭を砕け」

 

「………」

 

「判断が致命的に遅いです。早くして下さい」

 

回復をしようと意識が狼から離れる。そこを突かれ狼は私に飛びかかり私を押し倒した。

 

「きゃっ!!え?嫌……っ……!?」

 

「………」

 

生暖かい鼻息が私に吹きかかる。狼の口から溢れる涎が頭のすぐ横に垂れた。

 

「ごめんなさい。これもお嬢の頼みです。私も死にたくないのでやるしかないんです」

 

「……?(誰の声?)」

 

こんな状態の中、誰かの声が聴こえてきた。実況でも、ましてやミツキさんやルナシーさんでもない、知らない男の声。何かを諦めたような仕方がないというニュアンスの声色で私に向かってだ。

 

「………」

 

狼は大きな口を開け、白く鋭い牙を見せる。

 

「あ……ああ……」

 

それから時間を待たずして私に噛み付く。左半身が狼の口の中に入り込んで、肋骨が折れて心臓が牙に貫かれる。

 

「あ"ぁっ!!痛い痛い痛いいだい!!」

 

「……」

 

狼は私の声など無視して顎の力を強める。このままでは本当に死んでしまう。

 

「っゔうぅ……(耐えた!)」

 

幸運な事に意識が落ちるには過剰な激痛のおかげで意識が落ちずにすんだ。あとはここをどう切り抜けるかだ。

 

「うぁ……やば……」

 

しかし、それも間に合わなそうだ。出血で段々力が抜けていく。おまけに視界まで霞んできた。そんな私の頭に過ぎったのは何故か私を噛む狼の痛々しい姿だった。

 

「(狼さん、すごい傷だったな)」

 

 

 

ーーーおっと!!大ピンチの聖女セレネ、ここでやっと魔法を使用するようだ!!

 

ーーーあの手の光、私も知ってそうな魔法だけどどこで見たっけ?

 

ーーーと、解説ありがとうござ……え、分かんないの?

 

私はかろうじて自由な右手にありったけの魔力を込める。少し目が痛くなりそうな程に手が白く輝き、その手を狼に向けて……

 

 

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