魔法少女リリカルなのはStrikers~風のエースストライカー~ 作:strike
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それでは第11話スタートです。
翌日、機動6課に出動命令が出された。内容はホテルアグスタでの護衛任務。6課の主力部隊が勢揃いするという大掛かりな任務であった。現在は移動用のヘリに乗って現地に向かっている最中で、はやてはモニターに今回の主犯と考えられる人物、ジェイル・スカリエッティのデータを出して皆に顔を向ける。
「ほんなら改めて、これまでの流れと今日の任務のおさらいや。まず…」
はやては話を進めていき、スバル達は真剣にその話を聞いている。しかし、翔馬は1人少しだけ離れた場所で何かを考え込んでおり、耳には何も入ってこなかった。その理由は昨日の夜にあった。時は少しだけ遡り、昨日の練習が終わってなのはとヴィータが寮に入るのを首を傾げながら見送った後の事。
『…翔馬。今日、少しだけ時間ある?』
『フェイト?どうしたいきなり。しかも念話って…他に聞かれたくないような事か?』
『うん。…少しね。一旦部屋に戻って11時頃、寮の中庭に来てくれる?』
『……わかった。』
フェイトは何の用事かということにも触れず唐突に誘うと、翔馬はこれからする話の内容に感付きながらも頷いた。
「…それじゃ。」
「…うん。」
翔馬とフェイトはお互いに声を掛け合い一度別れようとした。
「フェイトちゃん何してるの?先に行っちゃうよ?」
「あ、ゴメンなのは。今行くよ。」
その時、後ろを付いて来ていたはずのフェイトがいないことに気付いたなのははロビーに戻るとフェイトに声を掛け、フェイトは慌ててなのはの元に駆け寄る。
「翔馬君もお疲れ。また、明日ね。」
「ああ。お疲れ。ゆっくり休めよ。」
「うん。…ありがと。」
なのはに声を掛けられた翔馬は頷いて返事を返すとそのまま部屋へと戻る。その後、日課を終わらせスバル達に関するデータを整理しているといつの間にか約束の時間が近くなっていた。
「…そろそろ行くか。」
翔馬は椅子から立ち上がると、タンクトップに上着を羽織ったラフな格好で中庭に出る。しかし、そこには誰もいなかった。
「早く来過ぎた…。まぁ、のんびり待ちますか。」
そして、のんびり待つと決めた翔馬はベンチに座ってフェイトを待つ。しかし、いくら待ってもフェイトが現れずそろそろ我慢の限界だと立ち上がろうとしたとき、向こうから走ってくる足音が聞こえた。
「…ゴメン。翔馬、…遅くなっちゃった。」
「はぁ…。やっとか。約束の時間からどれだけ……」
少し息を切らせたフェイトは黒いワンピースのような格好でその肩にストールを掛けているといったあまりにもラフな格好だった。翔馬は文句を言おうとしたが、それを見た瞬間その先が続かなかった。それ程までにフェイトの姿は新鮮で綺麗に見えた。
「えっと…。やっぱり怒ってるよね。その…いい訳じゃないんだけど、なのはが同じ部屋だから誤魔化すのに時間がかかっちゃって…。」
「…わかったよ。…もういいから、次からは気を付けてくれ。」
申し訳なさそうな表情をするフェイトだが翔馬はその姿に見惚れそうになってしまう。しかし、翔馬は残りの理性を全力で働かし慌てて目線を逸らすとベンチに再度腰かける。それを見たフェイトは、少し首を傾げると翔馬の横に座って話を始める。
「いきなり呼び出してごめんね。…その、翔馬に聞きたいことがあったから…それもなるべく早く。」
「……。」
フェイトは先程とは一転し真剣な表情で翔馬を見つめ、翔馬はその瞳を無言で受け止める。
「これから聞く質問には絶対に嘘をつかないで欲しいの。翔馬がとても傷つくことになるかもしれない……。それは、私もしたくなかった……でも、もしかしたら翔馬の回答次第で私達の取るべき行動は変わるかもしれない。そして…戦うべき相手も。」
「……。」
フェイトは自分の事のように辛そうな瞳で翔馬を見つめる。しかしその瞳はすべてを受け止めようという覚悟の瞳でもあった。それを見て翔馬は1つ溜息をつく。
「…はぁ。何でフェイトがそんな顔してんだよ。……俺は大丈夫。この前は不意打ちだったからあんなことになったが…。今なら話せると思う。だから、そんな泣きそうな顔するなよ。」
「…ゴメン。翔馬。」
「……ああ。」
そして、それから暫くの間フェイトは翔馬に対して様々な質問をした。過去の事、前回の事件の事。そして、今の現状の事。翔馬はその全てに回答をするが、たまに辛い表情を見せながらもフェイトに出来るだけ協力をした。
「これで最後の質問だから…。」
「……わかった。…何でも聞いてくれ。」
フェイトの言葉に翔馬は精神的に疲れながらもホッとしたような、そんな表情を浮かべていたがフェイトの質問でその表情は一転する。
「翔馬。…貴方は、その人を愛して…ましたか?」
「…フェイト?……何言って…?」
フェイトの最後の質問は翔馬にとって予想外の質問だった。翔馬は質問の意図がわからず驚きの表情を浮かべながら、俯き気味だった顔を上げてフェイトを見上げる。すると、その表情はとても真剣だった。今までで一番…真剣だった。それを見たときに翔馬は悟った。この問いかけの答え次第で自分の行動が大きく変わってしまうのだろうと。翔馬は、少し笑みを浮かべるとその言葉を伝える。
「多分、…愛してたんだと思うよ。……あいつの事。」
「……そっか。…ゴメンね。……翔馬が傷つくってわかってたのに。…ゴメンね。」
フェイトは翔馬の回答を聞きその表情を見た瞬間、堪え切れなくなったのか元々潤んでいた瞳から一滴の滴を落とし、翔馬の頭を胸元に引き寄せた。
「…っ!?」
翔馬は声にならない驚きの声を上げてフェイトから離れようとするが、フェイトはそれを許さなかった。そして、暫く抵抗を続けていたが、翔馬は諦めてじっとすることに決めた時やっと気付いた。自分の髪に何度も水滴が弾ける感覚を。それを感じた瞬間、翔馬は何かが込み上げて来るのがわかった。すると、翔馬はフェイトに抱き付かれたままそっと体を震わせ、素直に涙を流すのであった。
「…もう、大丈夫か?」
「なんか…ゴメンね。」
「……いや。フェイトが謝る必要ないだろ…俺の方こそ悪かった。」
「そんな…。今回の事は私が発端なのに…」
いつの間にか抱いていたはずの翔馬に胸を貸されていて、フェイトは赤面しながら申し訳なさそうにしていた。それを見て翔馬は苦笑いを浮かべる。
「まぁ、その…お互いに今日の事は忘れる方向でいいか?こんなこと気にしてたら仕事が手に付かなくなる。」
「う、うん。そうだね。」
フェイトもそれにつられて、まだ顔の火照りは静まらないが苦笑いを浮かべて翔馬の顔を見る。すると、翔馬の顔は思ったよりも近くにあり、少し顔を近づければキスが出来そうなくらいに近かった。
「あっ…。」
「…っ!?」
2人はその距離に驚いてしまい硬直する。そして次の瞬間、2人の顔が高速で赤くなると慌てて離れる……筈だった。
「……フェイトちゃん?……翔馬君?」
2人はお互いの距離にではなく、いきなり現れた声に驚き慌てて離れるとその声の方を見つめる。最初は暗くてわからなったが、雲が晴れて月明かりがその方向を照らすと…。
「なのは…。」
「えっと、なのは。…これは、違うの!さっき言ってた仕事の関係で…」
翔馬は、そこにいた人物の名を呟き、自分の過去を一番知られたくない人物に知られてしまったかもしれないという焦りの表情を浮かべた。それに対し、フェイトは自分が嘘をついて翔馬と会っていたことに対して弁解を図る。しかし、何も知らないなのはから見ればその様子はまるで……。
「…言ってくれれば良かったのに。翔馬君と会って来るって。…仕事って言うから引き止めちゃったよ。事情さえ教えてくれれば、邪魔なんてしない……のに。」
「ん?…なのは何か勘違い…」
「…ごめんね?」
なのはは、なんでこんなに胸が締め付けられるのか。なぜ目の前がぼやけて見えるのか。それがわからず感情のままにその場を飛び出す。なのはの表情を見た翔馬は何か勘違いしていることに気付き、声を掛けようとするがその時にはなのはは駆け出していた。
「ちょっと待って。なのは!!…最後までゴメン。なのはの誤解といて来る。…明日の任務には支障が無いようにしておくから。…今日はありがとう。お休みなさい。」
「ああ、わかった。…なのはの事、頼むな。」
フェイトは、そんななのはを見て焦った表情になると早口で翔馬に声を掛けてその後を追った。そして、ヘリの中に戻る。
「…くん?…まくん。……翔馬君ってば!!」
「うおぉ!!…な、なんだよ?」
翔馬はいきなり声を掛けられ、驚きながらその声を発した女性に目を向ける。
「なんだよじゃないよ。…今までの説明、ちゃんと聞いてた?」
「…聞いてたよ。ガジェットドローンの製作者、及びレリックの収集者がジェイル・スカリエッティである可能性が高いってこと。これから赴く先はホテルアグスタ。任務はそこで開催される骨董美術品オークションの会場警備と人員警護。だろ?」
「聞いてたなら、1回で返事できると思うけどな。」
「まぁまぁ、なのは。もうそろそろ着くからそこらへんで…。」
「今から着陸準備に入るっす。皆さんちゃんと掴まっててくださいよ~。」
雲行きが怪しい雰囲気にその場の全員が黙って行く末を見守っていた。しかしフェイトがどうにかなのはを鎮めようと声を掛けたとき、丁度操縦手のヴァイスから着陸準備の声が掛かり
「「「「「「「はぁ…。」」」」」」」
なのはが何か言いたげな表情を浮かべながらもそのまま席に着くと全員が安心の溜息を零し、翔馬は1人これからの生活に支障があるのではないかと心配になるのであった。フェイトが尽力した結果は、翔馬がすべて悪いということで完結したそうだ。それを聞いて以降、何度もなのはに謝ってはいるのだが、成果が中々でないといった状況であった。そしてそんな雰囲気の中、現場に到着するとはやて、フェイト、なのはがヘリに残り、スバル達は副隊長の指揮の元配置に着き始める。そして、男性であるヴァイスと翔馬はヘリから少し離れた場所で待機していた。
「何で俺まで追い出されないといけないんっすか?」
「女性の着替え中に扉一枚向こうに男がいるってのも向こうとしては安心出来ないんだろ?…ふぁぁ。」
ヴァイスの質問に適当に答えながら欠伸をしてしまう。
「大丈夫ですか?…なんかお疲れみたいっすけど。」
「ああ、すまん、大丈夫だ。…仕事が始まれば気分も変わるだろ。」
「…お待たせや。」
「どうかな?」
「少し派手な気もするけど…。」
その声と共にヘリのハッチが開き中から現れたのはドレス姿となった3人だった。
「ヒュ~。めっちゃお綺麗ですよ。お3方。」
それを見たヴァイスは口笛を鳴らすと、3人に近づき見え透いたお世辞をかます。
「わかりやすいお世辞ありがと。…めっちゃうれしいわ。」
「いや、マジですって!?…そんな顔しないで下さいよ。…ちょっと翔馬さんもなんか言って下さい。」
はやてに迫られるヴァイスは思わず翔馬に助けを求める。しかし、翔馬は
「え?…俺?…3人ともよく似合ってると思うぞ。着せられてる感が全くなくて…すごく綺麗だ。服の1つでここまで変わると思ってなかった。見違えたよ。」
「「「えっ!?」」」
「そりゃないっすよ。翔馬さん…」
ヴァイスの思いには全く気付かず、3人を見て笑みを浮かべると本当に思った事をそのまま伝える。すると、3人は少し頬を染めて、ヴァイスにいたっては額に手を当てて呆れていた。そんなこともあって、現在。ホテルに入った4人は会場内を見て回る。その4人とは、当然ながらドレスを身に纏ったはやてと、フェイト、なのはにもう1人…タキシードを着た翔馬だった。
「…俺って、外周警備じゃなかったか?」
「一応、外と中との連絡要員で翔馬君には動いてもらうって言ってたはずやけど。」
「ホテルには入らずに連絡を取りながら警備を固めて、最悪の事態になった場合のみ、会場内のサポートに回るって話だった。そして、その件についてはヘリでは一言もしゃべってなかったぞ?」
「うん。そうだったんだけど意外と外は結構人が集まってるし、何かあった時はこっちの方が大変そうだから…翔馬君には急遽こっちに移って貰うことにしたの。と言っても、オークションが始まれば会場の外…ホテル内を巡回してもらう形になるけどね。」
「それ自体は構わないんだが…はぁ、まぁいいか。」
翔馬は言われた通りの配置に着く予定だったが、いきなりなのはに呼び出され渡されたのがタキシードで…。翔馬はホテル内の警護に変更となった。流石の翔馬でも事前に伝えられていない事だったため戸惑ったが、文句を言うのも場違いだと考え周囲に目を配り始める。
「会場内は流石に警備は厳重っと。」
「一般的なトラブル位なら俺達が出るまでもないだろうな。」
「うん。そうみたいだね。」
「外はスバル達が固めてるし、私達が出るのは本当の非常事態だけだからね…。」
そう言って4人は会場を一通り見回ると、4方向に別れて再度会場の巡回を始めた。その頃、スバルとティアナは今日、集まった守護騎士たちに珍しさを感じながら、隊長達について念話で話をする。そして、スバルの持つ情報を改めて聞くとティアナはより一層自分が凡人であることを認識してしまう。しかし、ティアナは立ち止まることを良しとせず今自分にできる事を全力でやる。そんな決意を持って警備に臨むのであった。…その結果が不幸を生むことも知らずに。そして、ここはホテルアグスタから少し離れた森の中。
「どうした?お前の探し物はここにはないのだろう?」
「ん。」
大きな体格をした男が小さな紫色の長髪が目立つ女の子に声を掛けると、女の子は頷きを返した。それを見ていたもう1人の女性は女の子の様子が気になり問いかける。その女性はクリーム色のウェーブが掛かった髪をした、身長は160cm程だろうか翔馬達と年が近く見える人だった。
「…気になる事がおありなのですか?」
「ん。……。ドクターの玩具が近づいてるって。」
小さな女の子はそう答え、2人を見上げる。それを聞いた女性は少し考える素振りをした。
「…そうですか。それなら少しだけ、ご挨拶に伺って来てもよろしいでしょうか?」
「あの男か?…俺はお勧めしないが、行きたいのなら止めはせん。奴の魔道機械が半数以上を破壊されたらここを去る。それまでには戻って来い。」
「承知致しました。…それでは。」
その女性は大きな男と小さな女の子に一礼するとその場を離れるのであった。そして場所は戻りホテルアグスタ。ガジェット達がシャマルの張った結界を通りそれがシャマルに伝わる。
「クラールヴィントのセンサに反応…。シャーリー!」
「はい!」
そして、司令部ではシャーリーがモニターに移り始めるガジェット反応を見つけアルトとルキノはその数を伝える。
「来た。来た。来ましたよ!」
「ガジェットⅠ型…35!」
「ガジェットⅢ型…4!」
それを聞いた機動6課フォワード部隊はそれぞれに動き出すのであった。
「エリオ、キャロ。お前たちは上に上がってティアナの指揮でホテルの前に防衛ラインを設置するんだ」
「「はい!!」」
シグナムからの指示を受けてエリオとキャロは返事を返す。
「ザフィーラは私と来い」
「心得た。」
シグナムはザフィーラに声を掛けると、地上に上がる。そしてシャマルは敵の位置を把握しモニタを続けていた。
「前線各員に告げます。…状況は広域防御線です。ロングアーチ1の総合管制と合わせて、私シャマルが現場指揮を行います。」
「「「「了解!!」」」」
シャマルの声にスバル達は返事を返すと持ち場に着くため移動を開始した。そしてその情報が入った翔馬はなのは達と合流し、自分も出ることを告げる。
「それじゃ、出番はないかもしれないが俺も出てくる。そんな有事にはならないと思うがこっちは任せるぞ。」
「うん。了解や。」
「…気を付けてね。」
「翔馬…。」
フェイトは何か言いたげな表情を言浮かべるが、翔馬は察して笑みを浮かべる。
「心配するな。…いざって時はしっかりやるからさ。」
「…うん。」
その様子を見ていた2人はそれぞれに思うところがあったが、翔馬は最後に3人に声を掛けるとホテルの外へ移動するのであった。