魔法少女リリカルなのはStrikers~風のエースストライカー~ 作:strike
第16話スタートです。
翔馬達が指令室に駆け込むと、そこには既にはやてとなのはの姿があった。そして、現場の状況がシャーリーから伝えられる。
「ガジェット2型。12機が海上にて旋回中。」
「レリックの反応は?」
「周囲にレリックと思わしき反応は…ありません。」
「ですが、この機体…。以前より速度が少し…いえ、かなり上がっています!」
グリフィスの問いに対しアルトが答えると補足するようにルキノが機体情報を伝える。
「場所は何もない海上…レリックの反応も無ければ付近に海上施設も船もない…。」
「まるで撃ち落しに来いと誘っているような。」
はやてはこの状況を整理してみると、それに対しグリフィスが見解を伝える。はやてはそれを聞いて暫く考えると、フェイトに相談を持ち掛ける。
「そうやね。…T・ハラオウン執務官。…この状況どう見る?」
「犯人がジェイル・スカリエッティなら、こちらの動きとか、航空戦力を探りたいんだと思う。」
「うん。この状況なら、こっちは超長距離砲撃を放り込めば済む訳やし…。」
「うん。だからこそ、奥の手は見せない方がいいかなって。」
フェイトは新しい手を見せる必要もないだろうと意見すると、はやては頷く。
「まぁ、実際この程度の事で隊長達のリミッター解除って訳にもいかへんしな。…高町教導官はどうやろ?」
「向こうの目的がこっちの航空戦力の探りならなるべくこっちの新しい情報は出さずに今までと同じ方法で片付けちゃうかな?」
なのはもフェイトと同じ意見のようで今までの様に隊長が戦場に出て各個撃破を提案する。
「…藤田一等空尉は?」
「俺も同意見だ。ただ、一言付け加えさせてもらうなら、向こうの戦力があれだけとは限らない。前の一件の様に召喚士や、剣士が混じってくる可能性も考えて空戦魔導師は多めに配置するべきだろう。」
「なるほどな…。…確かにその可能性も考えて動いた方が確実か…。」
はやては、グリフィスと頷き合うと作戦を決めたようだ。
「それじゃ、3人の意見通りそれで行こう。」
「「「了解。」」」
3人は頷くとヘリポートへ向かう。するとそこにはフォワードメンバーと副隊長たちが揃っていた。そしてヘリのハッチが開くとなのはは全員に今回の作戦を伝えた。
「今回は空戦だから、出撃は私とフェイト隊長、翔馬隊長、ヴィータ副隊長の4人。」
「皆はロビーで出動待機ね。」
「そっちの指揮はシグナムだ。留守を頼むぞ。」
「「「はい!!」」」
「…はい。」
最後になのはが出撃メンバーを伝えるとフェイトとヴィータがそれぞれ補足を説明した。それに対し、スバル達はいつも通り返事を返すが、ティアナは俯きながら小さな声で返事を返した。それを見た翔馬はティアナに近づく。
「…ティアナ。お前は今回出動待機から外れておけ。…コンディションも今は最悪だろう。部屋で休んで体力の回復に務めていろ。」
「…うん。その方がいいかも。ティアナ。今日は待機から外れようか。」
「…っ!?」
「「「え?」」」
翔馬の声になのはは頷き正式にティアナに指示を出す。隊長達は少しだけ俯いた後にティアナを見つめ、スバル達3人は信じられないような声を上げてティアナに視線を向けた。すると、俯いたティアナから声が漏れる。
「言う事を聞かない奴は…使えないってことですか?」
「ティアナ…。」
なのははティアナの声を聞いて思わず声を漏らし翔馬の前に出ようとするが翔馬がそれを手で押さえる。翔馬は頭を掻いて溜息をつくと、ティアナを見つめて真剣な表情をした。
「はぁ、当たり前の事だ。ここはお前の遊び場じゃない。自由気ままにやられたら全員が迷惑するんだよ。…言っててわからないか?」
「…私は…現場での指示や命令には従っています。教導だってサボらずやってます。それ以外の場所での努力まで教えられた通りじゃなきゃダメなんですか!?…私は、翔馬さん達みたいにエリートじゃないしスバルやエリオみたいな才能も、キャロみたいなレアスキルもない!!凡人の私は少し位無茶したって死ぬ気でやらなきゃ強くなんてなれないじゃないですか!!」
その瞬間、ティアナの左側から手が伸びて来てその胸倉を掴むと頬に拳を叩き込んだ。
「「「シグナム(さん)!?」」」
シグナムは倒れ込んだティアナを身をろしてから、翔馬達に目を向ける。
「大丈夫だ。加減はした。駄々を捏ねるだけの馬鹿はなまじ付き合ってやるから付け上がる。…ヴァイスもう出られるな?」
「乗り込んでいただけりゃすぐにでも!」
シグナムの問いにヴァイスはヘリから顔を出して答えるとなのは達は、移動用のヘリへと乗り込む。なのははティアナの様子が気になるのか、ハッチのところでティアナに呼びかける。
「ティアナ。なんか、思い詰めちゃってるみたいだから、帰って来たらちゃんと話そう!」
「ほら、だから付き合うなってのに!!」
そんななのはをヴィータは服の裾を引っ張って中へと連れ込む。そして窓際に座っていたフェイトはエリオ達に念話を送る。
『エリオ、キャロ。ゴメン。そっちのフォローお願い。』
『わ、わかりました。』
『頑張ります。』
そう言ってフェイトがエリオ達に伝え終わるとヘリは現場へと向かって飛び立っていった。そして、シグナムはティアナを見降ろす。
「目障りだ。いつまでも甘ったれてないでさっさと部屋に戻れ。」
「あの、シグナム副隊長。…その辺で。」
「スバルさん…取り敢えずロビーに。」
キャロが、スバルに声を掛けるとスバルは何かを決意したような目でシグナムを見つめる。
「シグナム副隊長。…命令違反は絶対ダメだし、さっきのティアの物言いとか、それを止められなかった私はダメだったと思います。…でも。…自分なりに強くなろうとするのとか、きつい状況でも何とかしようと頑張るのってそんなにいけない事なんでしょうか!!自分なりの努力とか、そういうのもしたらダメなんでしょうか…!」
スバルは涙声で思いを訴える。頑張る事の何がいけないのか、自分たちの努力がなぜ認めてもらえないのか、悔しくてその目には涙を浮かべていた。…そこにシャーリーがやってくるとスバル達に声を掛ける。
「自主訓練とか強くなるための努力とかはすごくいいことだよ。」
「持ち場はどうした?」
ヘリポートに現れたシャーリーに驚いて全員が振り向き、シグナムは与えられた仕事を放り出してここに居るシャーリーに問いかける。するとシャーリーは苦笑いを浮かべる。
「リィン曹長が取り持ってくれているので…。なんかもう、みんな不器用すぎて見てられなくて…。みんな、ロビーに集まって。私が教えてあげるから。隊長達の過去と、隊長達の教導の意味を。」
ロビーに集まったスバル達にシグナムとシャマルを交えてシャーリーが説明を始める。1人の少女と1人の少年の物語を。隊長達がどれだけの無茶を押し通してきたのか、どれだけの辛い思いを経験したのか。そして、…どれだけの大切なものを守ってきたのか。それらを全て伝え終わると、シャーリーは最後にこう締め括る。
「なのはさん達はね。みんなが自分達みたいな思いをしないようにって。みんながいつでも、どんな状況でも元気に帰って来られるようにって。…凄く丁寧に一生懸命、練習メニューを考えてくれているんだよ。」
するとスバル達は顔を俯かせて、その言葉をしっかりと胸に刻み込むのであった。一方ヘリに乗り込んだ翔馬達は先程のティアナの様子について話していた。
「ティアナ…大丈夫かな。」
「帰ってからちゃんと話をすればわかってくれるだろ…。」
なのはの呟きに対して翔馬は俯いて答える。それを見たヴィータはため息を付いてなのはの前までやってくる
「はぁ、お前たちまだそんなこと言ってんのか?…あんな奴放っておけばいいんだよ。」
「ヴィータ。そんな言い方しなくても…。でも、2人とも。今は任務の方が優先だよ?そのことは終わってから考えよう?」
「…うん。」
「…わかってる。」
そう答えると翔馬はヴァイスの後ろでコックピットを覗き込む。
「現場まであとどれくらいだ?」
「もうすぐ着きますよ。…後、5分位っすかね?」
「わかった。…こちらウィング1。ロングアーチ、現在の状況は?」
翔馬はありがとうとヴァイスに声を掛けると後ろに戻り、司令部に連絡を取る。
「こちらロングアーチ2。…今は12機編隊が2組。相変わらず海上を旋回中です。」
「…うん。これは確定かも。」
「まぁ、何もないとは思うけど、できるだけこっちは作戦通り今までの対処法で行こう。」
「…翔馬。2本抜けたからって、使うんじゃねぇぞ?」
「…使いたくても暫く使えないって。…久々の抜刀でゼフィロスがエラー起こしちまったしな…。帰ったら見といてもらわねぇと。」
翔馬の一言に3人は声も出なかった。そして、
「…翔馬君?無茶はダメなんだよって教えたかったんじゃないのかな?」
「翔馬がそんなことでどうするの!?」
「ってか、その状態で良く戦場に出ようと思えたな!?」
なのはは笑顔で翔馬に詰め寄り2人は何を考えてるんだと怒鳴り散らす。それに対して翔馬は驚いたように目を見開くと苦笑いを浮かべる。
「まぁ、確かに無茶やったかもしれない。けどあいつ等には知ってもらいたかったんだ。無茶するってことの恐怖を…。それにゼフィロスのエラーは元々俺が設定してあった2刀抜刀禁止命令だから特に問題はないしな。」
翔馬の言葉を聞いたなのは達だが当然の如く納得がいかなかったようで、その後も翔馬はずっと言い訳を重ねるのであった。そして、数分が経過するとヴァイスから声が掛かる。
「お楽しみのところ悪いんっすけど、現場近くに到着しましたんで出撃準備お願いします。」
ヴァイスの声に全員が先程とは打って変わり真剣な表情を浮かべるとフェイトと翔馬がハッチへ向かう。
「それじゃ、私達が先行して牽制しておくから、ヴィータはヘリで射程圏に入ってから出撃。」
「その後、3人が揃い次第戦闘開始。それであらかた片付ける。」
「…それで一旦空域から離れてなのはが支援射撃だな。」
「うん。ばっちりだね。…それじゃ、気は抜かずに周囲に警戒しながらサクッとやっつけちゃおう。」
4人はこれからの作戦行動を確認し、なのはが全員に声を掛けると3人は頷く。
「うん。」
「了解。」
「任せろ。」
フェイトと翔馬はそのままハッチから飛び出す。
「バルディッシュ。」
「ゼフィロス。」
「「セットアップ!!」」
フェイトと翔馬は黄色と緑色の魔力に包まれるとバリアジャケットを身に纏い戦場へと向かう。すると、数分もしない内に魔力の衝突が遠くから見えるようになり、ヴィータはハッチの近くからそれを見守る。そして、暫くすると圏内へとヘリが侵入した。その瞬間。ガジェットから魔法弾がヘリに撃ち込まれる。
「はぁぁぁ!!」
しかし、フェイトが持ち前の速さを活かしヘリの前でバルディッシュを構えると、その魔法弾を切り裂いてヘリを護衛し、翔馬はガジェット達に攻撃をさせないように牽制を休むことなく続ける。それを見たヴィータは空中に身を投げる。
「グラーフアイゼン!!」
ヴィータは相棒のデバイスを呼ぶと真っ赤な魔力に包まれバリアジャケットを纏うとそこから飛び出しアイゼンを近くにいたガジェットに叩き込み1機撃墜する。
「さぁ、ここから戦闘開始だ!」
「うん。」
「おう。」
ヴィータの活き活きした声に翔馬達は笑みを浮かべながら返事を返すと3方向に散らばり各個撃破を行って行く。その時なのはは1人ティアナとのやり取りを思い出していた。
「やっぱり、ちゃんと話すべきだったのかな…。」
「なのはさん。そろそろお願いしますよ。」
「あ、うん。任せて。…それじゃ、行って来るね。」
なのははヴァイスに声を掛けられると一旦考えることを中断して、頷くと表情を切り替え宙へと飛び立つ。
「レイジングハート。セーーット・アップ!!」
なのはは桃色の魔力に包まれてそこから一直線に射撃ポイントへと飛び出した。そして念話で全員に声を掛ける。
「皆お待たせ。…支援射撃魔法。行きます。」
「なのは。」
「おう。頼むぞ。」
「やっとか。」
なのはの声に全員が反応すると4人での殲滅作戦が始まった。しかし、ものの20分弱で戦闘は終了し、少し物足りなさを感じるほどだった。
「これで終わだね…。」
「なんか手ごたえねぇな。」
「ヴィータ。そういう事言わないの。不謹慎だよ?」
「……。」
4人はあっけなく終わった戦闘に良かったのか、悪かったのか複雑な表情を浮かべながら帰投準備を始める。そんな中翔馬は遠くを見つめていた。
「翔馬君。どうかしたの?」
翔馬の様子に気付いたなのはは翔馬に声を掛ける。
「…いや、何でもない。帰ろうか。」
それに対して翔馬は素っ気なく答えるとヘリへと向かい、なのはたちは首を傾げるのであった。それから暫くの時間が経ち、翔馬達は現場から帰ってくると、第一声に聞いたのはシャーリーの謝罪だった。
「……マジか?」
「ダメだよ、シャーリー。人の過去勝手にばらしちゃ。」
「まぁ、いずれはばれる事だしな。いい機会だったんじゃねぇか?」
翔馬はシャーリーから事情を聞くと、頭を掻いてどうしたものかと苦笑いを浮かべ、なのははシャーリーに注意をする。
「シャーリー。…ティアナ、今どこにいるかな?」
なのはと翔馬はティアナの居場所をシャーリーから聞き出すと、そこへと足を運ぶ。そして、2人は暫く歩くと訓練場をの方を見つめ、座り込んでいるティアナを見つけた。するとティアナは2人の足音を聞いて後ろを振り返る。
「翔馬さん、なのはさん…。」
「隣いいかな?」
「…はい。」
なのははティアナの隣に座り、翔馬は後ろでその様子を見守っていた。…しばらくの間、沈黙が流れていたがティアナが思い切ったように口にする。
「シグナム副隊長やシャマル先生に色々と聞きました…。」
「なのはさんの失敗談?」
「そうじゃなくて!!…その……。」
ティアナが慌てる様子に少しだけなのはは微笑み話を続ける。
「無茶すると危ないんだよって話だよね?」
「…すみませんでした。」
ティアナは俯いてなのはに謝ると、なのはは頷いてティアナに微笑みかける。
「ん。…それじゃ、わかってくれたところで私から少しだけお説教しようかな。ティアナは自分の事凡人だって言うけど、それ、間違ってるからね。スバルもエリオもキャロも…そしてティアナもそれぞれまだ原石で本当の価値も分かり辛いけど、磨いて行けばどんどん輝いてくるところが見えてくる。」
「スバルはクロスレンジの爆発力。エリオは戦場を駆け巡るスピード。キャロは皆を守る支援魔法。そして、ティアナはミドルレンジからの射撃と幻術。そして、勇気と知恵を兼ね備えた戦術。それがうまく組み合わさった時、このチームは最高のチームになる…そう言ってなのはは色々と考えながらメニューを組んでいたし、俺達もそれを願って教導をしていたつもりだった。」
翔馬は優しげな表情でそう言うとティアナの頭に自分の手を置く。すると、ティアナは驚いたように翔馬に顔を向ける。
「あっ…。」
「ティアナ、気付かなかったか?…俺との模擬戦の時。本気の俺に一発当てたんだぞ?…それも、訓練通りの動きもできてた。…それにな。お前がちゃんと魔法を使えば避けにくいし当ればちゃんと効果もあるんだ。それがさっきの模擬戦で証明したかったことの1つ。そして無茶な戦い方の恐怖が2つ目。見ててどう思った?普段と違う俺の戦い方。」
「…私が言うのもおかしな話ですけど、完成された1刀流の方が、もっとうまく立ち回れるんじゃないかって…思いましたし、いつもと違って…うまく言葉にできないですけど…その、怖かった、です。」
翔馬は満足したような笑みを浮かべると手を離す。するとなのはが苦笑いを浮かべる。
「ティアナが翔馬隊長の戦い方に違和感を感じた様に、私達もティアナ達の戦い方を見て怖いって思うときもある。だから、一番魅力的な所を蔑ろにして、他の事に手を出しちゃうから…危なっかしくなっちゃうんだよ。って教えたかったんだけど…。」
「…。」
「まぁ、ティアナが見せたダガーとアサルトは考え方としちゃ、間違ってないんだけどな。…テストモードリリース。」
翔馬はクロスミラージュを手に取って言葉を掛けるとティアナに手渡す。
「命令してみて。モード2って。」
「モード…2…。」
なのはに言われてティアナは恐る恐るその命令を呟く。するとティアナのクロスミラージュが光り出し、銃口からは魔力の刃がグリップの端からも魔力刃が手の甲を大きく覆うように出てくる。
「これって…。」
「ああ、ティアナは執務官志望だし、いつか1on1で戦闘を乗り越えなくちゃならない時が来る。その時のために用意はしてあったんだ。」
「うん。…クロスもロングももう少ししてから教える予定だったんだけどね。今は、直ぐにでも戦場に出ないといけないから…今ある武器をより確実により強くしていこうと思ったんだ。」
なのははティアナからクロスミラージュを受け取るとテストモードに切り替える。ティアナは2人の想いに強く心を揺さぶられ、ついに涙がこぼれ、なのははティアナの肩を抱いた。
「私の教導地味だから、強くなってることの実感がなくて辛かったんだよね。…ゴメンね。」
ティアナはなのはの言葉を聞いて堪えられなくなり声を上げてなのは達に何度も謝りながらひたすらに泣くのであった。