魔法少女リリカルなのはStrikers~風のエースストライカー~   作:strike

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更新がめっちゃ遅れました。
リアルの方がとても忙しく書いてる暇が…。
スミマセン。言い訳です。
今後は何とか早い更新を続けたいと思っていますが…


それでは第25話スタートです。


第25話 父親の資格

翔馬とフェイトが海上で戦闘を行っている間、なのはとユーノは隊舎の中を走り回っていた。

 

「なのは!そっちは居た?」

「ううん。こっちもいない。…一体どこに行っちゃったの?」

 

なのはは不安げに瞳を揺らしながら顔を俯かせると、もう一度隊舎の中の心当たりを思い浮かべる。しかし、それは今まで何度も行ってきたことでこの場で思い出せるならとっくの昔にその心当たりにたどり着けているだろう。そんな状況で考えられる答えは最悪の回答しかなかった。そんな頭を悩ませているなのはを見たユーノはなのはの肩に手を置いてわざとらしい笑みを浮かべた。

 

「大丈夫。ちゃんと見つかるよ。だからそんな顔しないで。」

「…そうだね。しっかりしなくちゃ!!」

 

ユーノの言葉に頷いたなのはの瞳には先程の不安の影は幾らか無くなり、少し無理矢理感はあったがそれでもいつもの笑みに近い笑顔で気合を入れ直すとなのはは外に顔を向ける。

 

「これだけ探していないってことは…。」

「うん。もしかしたらヴィヴィオは外に出ているのかもしれない。」

 

2人は神妙な顔もちで外を見つめて翔馬と別れてからずっと探していたヴィヴィオの事を考える。なのは達が部屋に帰った時には部屋は物抜けとなっていた。慌てて部屋の中を探してみたがヴィヴィオの姿はどこにも見当たらず、幸いだったのはベッドに温もりが残っていたことくらいだろうか。そう遠くまで行っていないことが明らかになったためなのは達は急いで隊舎中を探し回ったのだが、結局見つからなかった。外に出たとなってはあの温もりも幸いだったか怪しい所だ。

 

「とにかく急いで…」

 

なのはがユーノに声を掛け足を踏み出そうとした瞬間。隊舎中がアラートの赤で埋め尽くされ、一級警戒態勢が発令された。

 

「っ!?…こんな時に…。」

 

なのははあまりのタイミングの悪さに思わずモニターを睨み付け、険しい表情を作る。すると暫くしてからモニターにはやてが映し出され、隊舎内に待機している部隊に指令を言い渡す。

 

「待機中の隊員は直ぐに出動準備!…レリック反応と一緒に例の集団もおるみたいや。詳細は現場に向かってる途中で伝える。準備が整い次第出撃や!」

「「「了解!!!」」」

 

はやての出動命令に頷いたのは副隊長のシグナムとヴィータそして、リィンフォースの3人だった。3人は直ぐに出撃準備を整えヘリポートに向う。しかし、その途中で思わぬ人物達から通信が入った。

 

「こちらウィング1。現在ライトニング1と共に現場へ先行中。」

「遠目からでも被害が大きそうだったから、出撃命令は無いけど先に向かってるよ。」

 

その人物達とは先程、喧嘩別れの真っ只中を見せた翔馬とフェイトだった。通信が入ったとしても単独だと思っていただけになのは達とはやては思わず混乱しそうになるが、はやては部隊長としての責務を果たすため取り敢えず思う事は頭から一度切り離し2人の出撃許可を優先する。

 

「…2人共。とりあえず聞きたいことは後回しや。2人の出撃許可と市街地個人飛行承認。2人共わかっとるとは思うけど、…気ぃ付けてな。」

「「了解!」」

 

翔馬とフェイトははやてに返事を返すとそのまま現場へと速度を上げて向かう。その時、今まで声を出さなかったなのはが始めて声を出し全員がその声に耳を傾ける。

 

「皆少しだけいいかな?」

「なのはちゃん?どないしたんや?」

 

はやてがなのはの様子に疑問を感じ先を促す。しかし、現場へ先行している最中の2人は少し気まずそうにモニターから目を逸らして声だけに集中しており、それを見たなのははなぜか胸が締め付けられるように感じて表情を歪ませた。そもそも翔馬とフェイトがどうして同じ空を飛んでいるのかもわからず、さっきロビーで感じた険悪な雰囲気は今の2人からは感じられなかった。むしろ前よりも近くなった気すらする。そんな2人を見ていたら思い出すのはホテルアグスタ事件前夜の事だった。あの時も翔馬とフェイトが2人で話しているところを見かけてこんな気持ちになったが、その時は翔馬が真実を話してくれなかったことや自分の勘違い(こちらの方が主なのだが)によるイラつきが原因だと受入れたはずだった。しかし、再び湧き上がるこの気持ちは何なのだろうとなのはは少し俯いて考えようとしたとき隣でユーノがそっとなのはの手を握り締めた。

 

「っ!?…ユ、ユーノ君!?」

 

なのははいきなり手を握られたことに驚き、今考えようとしいたことは全て吹き飛ばされ握られた手とユーノの顔を少し慌てながら見比べて、ユーノの真意を探ろうとする。しかし、ユーノの優しい笑みを見ると思わず赤面してしまい大人しくなる。ユーノはそれを確認してからなのはに誓いを立てるように言葉を紡ぐ。

 

「…大丈夫だよ。ヴィヴィオの事は僕がちゃんと見つけ出すから。」

「ユーノ君…。ありがと。なんか今日は助けられてばっかりだね。」

「そりゃ、ヴィヴィオとなのはの事は僕が守るって言っちゃったからね。」

 

そんなやり取りの後、2人は軽く笑い合うとなのはとユーノは自然にその手を離し、なのはははやてに向かって仕事モードの雰囲気で声を掛ける。

 

「はやてちゃん。私も現場に向かうよ。さっきユーノ君がちょっと言ったけど今ヴィヴィオの行方が分からないの。」

「それでさっきまで走り回ってたんか。…前回の事もあるし…タイミング悪すぎやな。」

「だからこそ、私も出て向こうの気を引ければヴィヴィオから目を背けられるかもしれない。」

 

ユーノはなのはの調子が戻ったことを確認すると笑みを浮かべてから真剣な様子ではやてに声を掛ける。

 

「その間に僕がヴィヴィオを探し出す。だから、なのはには…」

「話の途中悪いな。…なのははユーノと一緒にヴィヴィオを探せ。」

「え?…翔馬君?」

 

なのはは驚いたように翔馬の映るモニターを見つめるが翔馬は相変わらずモニターには顔を向けずに現場へと飛行を続けているためその表情は伺えない。対してユーノは口を挟まれたことが不愉快だったのか翔馬の映るモニターを少し睨み付けた。

 

「聞いて無かったのかい?…なのははヴィヴィオを探すだけの時間を稼ぐために戦場に出ると言ったんだ。それになのはが出れば戦闘もそれだけ早く終わってヴィヴィオの捜索を慌ててしなくても良くなる。…デメリットは無いはずだよ。」

「…お前こそ聞いて無かったのか?現場にはシグナムにヴィータ、リィンが向かってる。それだけでも十分だが、それに加えて俺とフェイトも戦闘に参加するんだ。これにエースオブエースが参加?どれだけ戦力を投入するつもりだお前は。それにな、これだけの戦力ならなのはがいようがいまいが大して時間の短縮には繋がらない。」

 

翔馬はいつもとは違う声色でユーノに反論すると翔馬の言葉の正当性にユーノは悔しげにモニターを睨み付け、なのはは2人のやり取りを聞いて少し落ち着くと、まだ対抗しようとするユーノの肩に手を置いて首を横に振った。

 

「なのは?」

「もういいよ。ユーノ君。…私もどうしても出たいって訳じゃないし。戦闘に私の出番がないなら…他にやるべきことがあるなら私は私のやることをやるよ。…それでいいんだよね?翔馬君。」

 

なのははユーノに優しく微笑んだ後に翔馬の映るモニターに目を向けると初めてモニター越しに翔馬の顔を見て少し驚くがしっかりと翔馬を見て頷いて見せると、翔馬の口元に笑みが浮かんだように見えた。その一瞬で翔馬は視線を現場の方に戻してはやてに声を掛ける。

 

「…部隊長もそれでいいだろ?」

「せやな。…言い方に難はありそうやけど、まぁ、私の言いたかったことは翔馬君の言ってたことと大体同じや。そんな訳やから、なのはちゃんの出撃は認められへん。…ユーノ君と一緒にヴィヴィオを探しに行ってくれへんかな?」

「うん。了解。それじゃ、私達はヴィヴィオの探索に…」

「私達もお手伝いしますよ。なのはさん。」

 

なのはがはやてに返事を返して外に向かって足を踏み出したとき、背後から聞きなれた声が掛かり苦笑いを浮かべながら振り返る。するとそこには予想通りの4人が立っていた。

 

「何で来ちゃったの?…皆は今お休みの筈なんだけどな。」

「あれだけ大きなアラートが鳴ればゆっくり寝てられないですよ…。」

「それに僕達にできることがあるならやりたいんです。」

「そうです。…ヴィヴィオちゃんを探すなら人は多いに越したことはありませんから。」

 

スバル達はそれぞれヴィヴィオの捜索を手伝う意思を見せるとなのはは溜息をつきながらも笑みを浮かべた。

 

「そっか…。でも、お手伝いしたからって明日の訓練で手は抜いたりしないよ?」

「「「「…ですよね。」」」」

 

4人は明日の訓練の事を考えて苦笑いを浮かべるが、なのはの目が少しだけ揺れていることに気付くと表情を切り替えた。

 

「…それでも良いならお願いしようかな?」

「「「「はい!!」」」」

 

スバル達はいつも通りの声で返事をするとなのは達と共にヴィヴィオの捜索を開始した。一方、現場付近まで到達した翔馬とフェイトは微かに見える現場を確認し思わず顔をしかめた。

 

「やっぱり結構、被害が出てる。」

「ああ、不幸中の幸いは現在使用されていない無人の港だってところ位か。…にしてもヴィヴィオが居なくなったってのは少し気がかりだな」

「うん。そうだね…。」

 

フェイトと翔馬は煙の上っている地点や崩された建物を見つめながらお互いに呟く。そして、現場が目の前に迫ったところで辺りを見回し、周囲に人影がないことを確認すると現場に降り立った。フェイトと翔馬は降り立った後も周囲の警戒をしながら互いに得物を構えてレリック反応のある倉庫に向かって足を進めて行く。

 

「…ヴィヴィオのことはあいつらに任せて今はこっちに集中するぞ。見たところ奴らの動きは無いようだし、…取り敢えずは倉庫の外で奴らが出てこない事を祈ってるとするか。」

「そうだね。シグナム達が到着するまではなるべく手を出さないようにしよう。」

 

2人はレリック反応のある倉庫を確認すると壁に背中を預けて翔馬は周囲の警戒、フェイトは中を覗き込んで現状を確認するため中の様子を伺う。中の様子は真っ暗で良く見えなかったが、1ヶ所だけ月明かりが差し込んでいるところがあり、そこには月明かりに照らされたレリックのケースが置いてあった。まるで見たものを誘っているかのように。フェイトは中の様子を確認すると直ぐに顔を引っ込めて翔馬を連れて入り口付近から2人で移動をする。

 

「中の様子はどうだった?」

「…なんか様子がおかしかった。真っ暗で殆ど何も見えないけど誰かがいるような気配は感じられなかったし、レリックのケースが丁度月明かりに照らされててそこだけわざと見せてるような…。多分罠だと思う…かな。」

「そうか…。…ん?」

 

翔馬は少し考え込むと、ふと倉庫から目を外して燃え盛る奥の倉庫の建屋へ視線を移した。その瞬間、翔馬は表情を驚きの色で染める。

 

「なっ!?」

「翔馬?どうかした…の?…って、嘘…でしょ?」

 

翔馬の表情が一転したのを見たフェイトは疑問を浮かべながらも翔馬の視線を追うとそこには信じられない人物が覚束ない足取りで何かを探すように歩いていた。

 

「あれは…まさか!!」

「ちょっと待って。翔馬。何かおかしいよ!」

 

翔馬はその人物を見て思わず腰が浮き、今にも飛び出しそうな体勢に入ったためフェイトは慌てて翔馬の腕を取り引き止めた。しかし、フェイトが翔馬の腕を取った力は弱々しいものだった。なぜならフェイトも万が一とうい考えが捨てきれなかったからだ。それ程までに2人を動揺させた人物とは先程行方を眩ませたと聞いたなのはの娘。つまりヴィヴィオだった。翔馬は腕を取ったフェイトの顔を見つめて真意を伺う。

 

「フェイト?…あれは確かにヴィヴィオ…だろ?」

「それは…。でも、この状況で飛び出すのは危険だよ。それに…。」

 

フェイト何とも言えない不安感に任せて翔馬を説得しようとするが、口から出る言葉は形にならない言葉ばかりで翔馬を説得させる材料にはなりえなかった。そんな短いやり取りの間に状況が急速に変わる。行く当てもなく歩き続けるヴィヴィオの頭上に焼け崩れた瓦礫が襲い掛かかろうと落下を始めたのだ。翔馬は思わず舌打ちをしてフェイトの制止を振り切ると倉庫の陰から飛び出してヴィヴィオの救出に向かってしまう。

 

「くっそ!!…間に合えっ!!」

「ちょっと!!翔馬!!」

 

フェイトは嫌な予感を感じながら翔馬を引き留めようと声を上げるが、心のどこかでヴィヴィオを助けたいと思う気持ちもあり、こうなることを望んでいたのかもしれないと複雑な気持ちで翔馬を見送る。しかし、その数秒後フェイトの嫌な予感が的中することになる。

 

「はぁぁぁ!!エアリアルサイス!!」

 

翔馬は全速力でヴィヴィオに向かって突っ込みながら片手で構えたゼフィロスを振るうとヴィヴィオに襲い掛かろうとしていた瓦礫を一瞬で吹き飛ばした。そして、鞘にゼフィロスを収めるとヴィヴィオの無事を確認するため、そしてどうしてこんな場所にいるのかを問い詰めるために近くへ寄って声を掛ける。

 

「ヴィヴィオ。どうしてお前がこんなところにいる?」

「……。」

 

しかし、翔馬が呼び掛けてもヴィヴィオは笑顔で翔馬を見つめるだけで言葉を発することは無かった。そのヴィヴィオの様子に違和感を感じ、ヴィヴィオとその周囲の様子に神経を張り巡らせると、この場所、空間自体がおかしいことに気付く。まず一つ。これだけ大規模な火災が発生しているにもかかわらずそれらしき音が何も聞こえないのだ。火災を知らせる警報の音、消防隊のサイレンの音、それどころか火が燃え盛る音すら聞こえない。2つ目。この港の広さだ。遠くから見たときは手前に5つ、奥に5つの倉庫がありそれ以外は広い空地(きっと資材置き場となっていたところだろう)になっており、翔馬のいるこの場所は空で見たときは空地だったはずで火災がここまで広がるなんてことはありえ無いということ。そして最後にヴィヴィオの存在。先程のなのはの情報ではまだ、布団から抜け出してそう時間が経っていないという話だった。そして、子供の歩く速度も考えればこんな場所にヴィヴィオがいるという事がおかしい事になり、侵入者に連れ去られたという考えもあるが流石に隊舎の周辺に敵が現れれば優秀なスタッフたちが見逃すはずもないだろう。この異常な状況が高速で頭の中を駆け巡り翔馬は自分がくだらない敵の罠にかかっていること、こんな状況になるまで周囲の異常に気付けなかった自分に気付き苦笑いを浮かべた。それでも翔馬はこの状況を切り抜けようと腰をかがめて後ろに飛ぶため重心を後ろに倒して踵に力を入れる。しかしその瞬間、自分の胸に何かが入り込み吐気がするような感触と鈍い痛みが走り、翔馬の体から力が抜け後ろに飛ぶことは叶わず、その代わりに一歩後ろに後ずさる。

 

「…やっぱ、気付くのが遅すぎた…か。」

「?」

 

翔馬は自分の胸に刺さる剣を見つめて呟くと腰にぶら下げているゼフィロスに手を伸ばす。しかし、その言葉を聞いてかどうかは知らないが目の前のヴィヴィオは笑顔のまま首を傾げると剣をさらに深く翔馬の体に沈みこませた。それによって翔馬の手は止まり体を支えることに集中せざるを得なくなる。そんな、翔馬の様子を少し遠くから見つめていたフェイトは何か様子がおかしいことに気付き陰から飛び出して翔馬に接近しようとする。

 

「翔馬?くっ!!」

 

しかし、翔馬とフェイトの間に思わぬ邪魔が入り、フェイトは思わず一瞬驚きの表情を浮かべるがこれから起こる戦闘に覚悟を決めると表情を引き締めて加速した勢いのままバルディッシュを振り抜いた。

 

「っ!!…そこを退いてくれませんか?」

「悪いけど、ここを通すわけにはいかないんだよね。」

 

そうして、フェイトと戦闘機人の戦闘が始まった。一方、目の前のヴィヴィオが偽物だと気付いた翔馬はこの状況を脱するための手段を考えていた。しかし、時折剣を動かして傷を抉る感触に翔馬は精神的にも肉体的にも激しく消耗していた。

 

「ぐっ!!…容赦しない…ってか?」

「当たり前じゃないですか。…あなた方みたいな邪魔者は1人でも多く消えてもらった方がドクターも喜んでいただけますからね。」

「なっ!?」

 

翔馬はいきなり聞こえた女の声に思わず顔を向ける。するとそこには眼鏡を掛けた女性が倉庫の上に佇んでいた。

 

「あんたの、仕業……がっ!!」

「あんまり汚い口を開かない方が良いですよ?…まぁ、こちらとしてはあなたの苦しんでいる姿を楽しめるので大いに結構ですけどね。」

 

翔馬は何か言い返そうと口を開こうとするが胸の痛みが激しくなり言い返すこともできなくなっていた。膝を付きそうになる体を必死に支えることで精一杯だったがこの状況を脱するためにはどうしたってゼフィロスが必要だった。そのため必死に震える手を伸ばし、何とか得物に手を届かせると容赦なく目の前のヴィヴィオを叩き切った。

 

「くっ…。」

 

しかし、その時の翔馬の表情は胸を貫かれた痛みとは別の苦痛で歪んでおり、翔馬はこんなことをさせた張本人を睨み付けて自分に刺さった剣を激痛に耐えながら引き抜いた。

 

「お前だけは…許さない!」

「許さないからなんだっていうんですか?というよりもその体じゃ…。?」

 

その女は翔馬の事を見下すように笑うが、通信が入ったのかいきなり静かになったかと思うと険しい表情を浮かべながら翔馬を睨み付けた。

そしてもう一方の戦場では幾度も剣を切り結び激しい戦闘が行われていた。フェイトの行く道を塞いでいたのは戦闘機人のディード。辺りの炎と同じ赤い2刀の光剣を使い鍔迫り合いに持ち込むと初めてディー度が表情を変えニヤリと顔を歪める。フェイトはその表情を見て周囲の状況を急いで確認すると少し離れた場所で魔法光が輝いたのが見えた。その瞬間に砲撃が放たれフェイトはディードを押し返すとすぐにバックステップで砲撃を回避し、プラズマランサーを展開させて魔力光の輝いた地点へ放つ。着弾した場所では激しい爆発が巻き起きるがその爆発の中から何かが飛び出し目の前のディードの横に降り立つと銃口をフェイトに向ける。その人物は同じく戦闘機人のウェンディだった。手には大きな盾があり、その先端が砲撃の発射口となっているのだろう。盾をこちらに向け、ディードは剣を構えて2人は戦闘態勢を取っていた。

 

「こんなことしている場合じゃないのに…!!」

「そんなに後ろの男が気になりますか?」

「っ!!」

 

フェイトはウェンディの言葉に触発されて持ち前の速さで一気に接近するとバルディッシュで薙ぎ払う。しかし、ディード達は顔に笑みを浮かべながらその攻撃を回避して着地。そして、すぐにフェイトに向かって反撃をしようと武器を構え直すが直前で動きが止まった。フェイトは放たれるであろう攻撃を回避するために体勢を整えて2人を見据えていたが、2人の妙な行動に思わず様子を伺うことにした。しかし、その後も何かが起こる様子も無くフェイトは動きが止まっている2人に攻撃を仕掛けようとバルディッシュを振りかぶる。その時になってやっと2人が動き出すが、その顔にはつまらなそうな表情が張り付いていた。

 

「はぁ。残念だけど用事は済んだみたいだしここまでだね。」

「そういうことなので、また次の機会にお会いしましょう。」

「なっ!?逃がさない!!」

 

フェイトは何の躊躇いもなく自分に向かって背を向ける2人に驚きながらも取り押さえるためにハーケンセイバーを放つ。しかし、2人に当たる直前でフェイトの魔法は拡散し2人に魔法が当たることは無かった。それを見たフェイトはさらに追いかけようとするが先程の現象が頭の中をよぎり思わず足を止めてしまう。その結果、今更追いかけても追いつかない場所まで敵を逃がしてしまいその背中を険しい表情で見送った。そして、考えることはあの現象についてだった。

 

「…AMF?いや、でもあれは…。って、それより!!」

 

フェイトは先程の現象を頭に思い浮かべて呟くが、それよりも大事なことを思い出すと翔馬の居る場所へと向かった。

 

「翔馬!!大丈夫!?」

「まぁ、なんとか…な。」

 

翔馬はフェイトの声を聞くと顔だけをフェイトに向けてに気怠げに声を出した。フェイトはその声を聞いてひとまず安心すると、翔馬の座り込んでいる辺りを見渡して状況を確認し始める。翔馬の居る周辺には機械の破片が散乱していた。先程叩き切ったのはヴィヴィオでは決してなく、眼鏡の女、クアットロが見せていたヴィヴィオの幻覚つまりはガジェットだった。翔馬はそれに気付き破壊したのであった。しかし、辺りにはガジェットの破片だけでなく翔馬の血も大量に流れていた。

 

「…取り敢えずここから移動しよう。肩貸すよ。」

「ああ、悪い…。体に力が入らなくてな。」

 

フェイトは翔馬に対して言いたいことが山ほどあったが今は言い合っている暇すら惜しい状況だった。そのため、フェイトは少しかがむと翔馬に肩を差し出す。対して翔馬は少し辛そうな表情を浮かべながらもフェイトの肩を借りて立ち上がる。翔馬は自分が女の子に肩を貸してもらう日が来るなんて思わなかっただけに少し複雑な表情を浮かべるが、そんな考えは直ぐに吹き飛び胸に走る痛みに思わず声を漏らしてしまう。

 

「ぐっ…!…はぁ、はぁ。」

「翔馬?大丈夫?…直ぐにシグナム達が来るから、それまで我慢して。」

 

フェイト達は落ち着きを取り戻した倉庫街の中で海風のあまり当たらない場所を選んで座り込むと翔馬は壁に背中を預けて荒い息を何とか整えようとする。しかし、それは叶う事無く、額には脂汗が滲み息はさらに荒いものになっていた。それを間近で見ていたフェイトは何もできない自分に歯痒い思いをしていた。目の前の苦しんでいる人を癒す力はフェイトには無いものだ。そのため、今のフェイトには翔馬の苦しんでいる姿を見ている事しかできず表情を歪める。しかし、翔馬は隣に座るフェイトから何かを感じ取ったのか少しだけ笑みを顔に張り付けるとフェイトに顔を向けた。

 

「そんな顔するな。…かわいらしい顔が、台無しだろ?」

「っ!?…こ、こんな時に何言ってるの?」

 

翔馬の場違いな言葉にフェイトは思わず目を丸くしたあとに、驚いたためか顔を少しだけ赤く染めて翔馬に抗議する。翔馬は悪いと少しだけ笑って言うと夜空を見上げた。そして、同時に翔馬は唐突に話を始めた。

 

「中庭での話の続きだけどな…。」

「うん?」

 

いきなりの話にフェイトは思わず首を傾げるが、翔馬はそれを気にした様子もなく続けた。

 

「俺が、ヴィヴィオの父親になる事を拒む理由だ。…大した話じゃないが、あいつの父親になるってことはなのはと俺が親になるってことだろ?」

「…なのはが、原因だったの?」

 

フェイトはなのはの名前が出てきたことに少しだけ戸惑いを見せるが、今は怪我を負いながらも話を続ける翔馬に対して体調を気にしながら相槌を打つ。すると、翔馬は苦笑いを浮かべて少しだけ目を閉じた。

 

「…まぁ、原因と言えなくもないけどな。…なのはと俺は同じ武装隊で最前線に赴く仕事だ。お互いに何かあっても不思議じゃない。…ここまで言えば大体わかるか?」

「最前線で命を落とす危険が管理局の中でも最も高い部署に2人が所属してるってこと?」

「まぁ、そういう事だ。そうなればヴィヴィオは、最悪の場合…第3の親を探さなくちゃいけなくなる。そんな悲しい思いを、あいつにはさせたくない。…親が居なくなる悲しみなんてもう、2度と味あわせたくないんだよ。…だから、俺には父親の資格なんて元々無かったんだ。」

 

翔馬は目を開けると、とても優しい父親のような目をして夜空を見つめていた。そんな姿を見てフェイトはこの人はやっぱりこういう人なんだと改めて認識すると心が暖かくなるような気がした。

それからしばらくして、シグナム達が到着すると翔馬は直ぐにヘリで隊舎へと搬送され、シグナムとヴィータ、リィンフォースの3人は周囲の状況確認を行うのであった。

 

 

 

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