魔法少女リリカルなのはStrikers~風のエースストライカー~   作:strike

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今回も中々文章がまとまらくて読みずらくなっているかもしれませんが
ご容赦ください。
また意見やご感想お待ちしております。
私の成長のために何かアドバイス等頂けると…(汗)

では、第26話スタートです。


第26話 2人の母親、2人の父親

翔馬が負傷したあの事件から数日が経ち、機動6課の内部でいくつか変化があった。

まず、翔馬の不在。あの事件の後、翔馬は傷の痛みと戦いながらフェイトと共に応援部隊の到着を待ち続け、やっと視界に応援部隊のヘリが見えたかと思うと翔馬は緊張の糸が切れたのかあっさりと意識を手放してしまった。駆け付けた応援部隊含む機動6課の面々は翔馬の様子を見て驚きを隠せない様子であったが、翔馬を急いでヘリへと担ぎ込み治療室へ運び込むと急遽、バックヤード部隊が翔馬の治療を始めた。その日のバックヤードは久々の怪我人で忙しい雰囲気に包まれていたが、シャマルの指示の元、的確な治療を施した結果命にかかわるようなことは無かった。しかし、翔馬が負った傷は思っていたよりも深かったようで、現在もシャマルの城にて深い眠りにつている。怪我自体は半月程安静にしていれば塞がり、2ヶ月もすれば完治に至るだろうとの診断だった。シャマルからもう暫くすれば目も覚ますだろうと聞いたフォワード陣は緊張を解くと揃って安堵の表情を浮かべていた。

そして、こちらは朗報。ギンガ・ナカジマ軍曹とマリエル・アテンザ精密技術官が機動6課へ出向となりフォワード部隊及びバックヤード部隊が手厚くなったことだ。出向理由としては先の対戦で2度も戦闘機人が関与しており、ギンガが所属する第108部隊の目的と機動6課の目的の一致があったという事。また、戦闘機人に詳しいマリエル、通称マリーもギンガの付き添いとして出向することとなったのだ。2人の出向を聞いたフォワード陣は笑顔を浮かべて受入れ、訓練ではギンガを混ぜた模擬戦形式が増え、実戦に近い訓練をより高いレベルで行うことができ、バックヤードではマリーが加わることでさらに速く、質の高いデバイス調整が行えるようになり、機動6課の全体的なステータスは翔馬の負傷を除けば大きなプラスとなった。

そして最後に一つ。機動6課全体の緊張感が高まって来ている事。原因は目前に控えた公開意見陳述会で起こるであろう何者かによる襲撃。1週間程前、騎士カリム・クロノ提督・はやて部隊長から聞かされた内容の中にレリック事件から派生する事件、管理局地上本部の壊滅と管理局システムの崩壊が起こるかもしれないという内容を知らされたなのはとフェイトははやてと情報の公開をどこまでするか相談した結果、フォワード陣を始めとする機動6課の隊員達には詳細を伏せ、副隊長以上の役職を任せている隊員のみに情報を全て公開した。しかし、地上本部が襲撃を受けるかもしれないという情報は全員に流し、その日が公開意見陳述会であること、さらにその日は機動6課主要メンバーが警備に就く事を伝えてあるため、機動6課の面々は地上本部に襲撃が掛けられる戦力がどれほど大きな力かは容易に想像ができてしまう。それに加えてこんな大事な時に隊長の翔馬が動けないとなれば不安も否応なしに高まってしまう。それが、副隊長クラス以上の戦力が規格外だという事を知っていても。そのため、日が過ぎるごとに隊員達の緊張感は増して行くのであった。

 

そんな機動6課の雰囲気を感じながらも今日もなのはは1人で最近できた日課を果たすために目的地へと足を運ぶ。

なのはは前回の事件で翔馬が意識を失ってから暇が出来れば翔馬の眠る医務室へと向かうようになった。その場所を初めて訪れた時なのははあの時、無理矢理にでもみんなの誤解を解いておけば翔馬とフェイトが現場に向かうことも無く、そして何よりヴィヴィオから目を離さなければ翔馬は迷わず敵が見せる幻覚だと気付き怪我を負うことも無かった。そんな後悔の念が心の底から浮き上がり表情を歪めたが、自分の体と必死に戦っている翔馬の前でそんな事を考えていてはまた笑われてしまうとシャマルに言われてしまったため、なるべく笑顔で機動6課の1日の出来事を翔馬に話すようにした。相変わらず翔馬が返事を返してくれることはなかったが、偶になのはが話しかけると翔馬の呼吸するリズムが変わり返事の代わりなのかなと勝手に考えて、最近では1人で微笑ましく思ってたりする。

そして、医務室の扉を開けてモニターの前に腰掛けるシャマルに一礼するとシャマルはいつも通り笑顔で頷いて翔馬のベッドに案内する。その場所に横たわっていたのは上半身に痛々しいほどの血が付いた包帯を巻いて、口には呼吸器を取り付けた翔馬だった。なのはは表情を歪ませることなくむしろ優しい笑みを浮かべながらベッドの脇に置いてある椅子に腰かける。

 

「こんばんわ。翔馬君。…また来ちゃった。」

 

なのはは翔馬に挨拶の声を掛けてから、今日1日の機動6課に付いて話を始めた。その内容は仕事の話も少々あったが殆どはフォワード陣の訓練の様子や機動6課の雰囲気の話だった。なのはは翔馬が頷いてくれなくともずっと話し続ける。みんなが翔馬の復帰を待っているんだってことを伝えるために。そして半刻程が過ぎた頃になってやっとなのはは腰を上げる。そして最後はいつも同じ言葉。

 

「翔馬君。私も待ってるからね。…早く帰って来て。」

 

なのははそう言って医務室から出て行った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

更に数日後、公開意見陳述会まで残り3日となり緊張感を持ちながらもしっかりと目の前の事を1つずつ確実にこなして行くフォワード陣が朝の訓練が終わった後、とんでもないことを言い出した。

 

「なのはさん達、最近全然休めていないと思って…私達、隊長達がお休みを取れる様に仕事の振り分けを考えたんです。」

「なので今日は1日、隊長達でお休みを取ってゆっくりして下さい。」

「今ある仕事ってそんなに大変なものはありませんし…。」

「公開意見陳述会の襲撃者情報は今洗い出す中ですので、今日1日はアラートが鳴らない限り平穏だと思うんです。」

「「え~っと…。」」

 

そんなフォワード陣の言葉を聞いて思わず固まってしまった隊長2人。しかし、それも数秒で休むくらいなら他にもやれることはたくさんあるという事を伝えようと口を開こうとした時、横で待機していたヴィータとシグナムが口を挟んだ。

 

「そうだな。お前達今日は休んでおけ。こちらの事は私達でやっておく。」

「そうそう。どうせお前達が居たってできることなんて大したことねぇんだしな。」

「でも…っ!?」

 

なのは思わず声を上げるが、頭に流れ込んできた念話に開いた口を閉じる。フェイトもそれに倣ってシグナム達の念話に耳を傾け話を聞く。

 

(それにな、いい加減スバル達に気ぃ遣わせてるって気付けよな。)

(休みをやる代わりに、お前達2人の関係をどうにかして来い。このまま公開意見陳述会を迎えたら他の事にまで気を回さなけなければならなくなる。)

 

それを聞いた2人は顔を見合わせるが気まずさからか直ぐに顔を背けあってしまう。2人共がお互いを嫌いになった訳でもないのだが翔馬の絡みがあった後からなのはとフェイトははどうも話しかけることに躊躇してしまうようになった。それに加えて今、その本人もいない状態だ。2人にしては珍しく踏ん切りがつかない状態になってしまいそれを感じ取ったフォワード陣は2人に休暇を提案したのであった。そこまで言われてやっと理解したなのはとフェイトはやっと首を縦に振った。

 

「みんながそう言うなら、今日はお休み貰おうかな。ね?…なのは。」

「そうだね。…フェイトちゃん。今日は2人でお出かけでもしようか。」

「「「「…わぁぁ。」」」」

 

なのはとフェイトが頷いて見せるとスバル達は声を上げて喜び嬉しそうに笑い合っていた。その後は、スバル達にお土産を買ってくることを約束し、なのはとフェイトは自分たちの部屋に向かって出かける準備を始める。そんな2人の様子を不思議そうにヴィヴィオが見つめていた。

 

「ママ?…どこか行くの?」

「そうだよ。ママと一緒にお出かけしてくるんだよ。…あっ、そうだ。ヴィヴィオも一緒に連れて行こうか。滅多にお散歩なんてできないだろうし。」

「そうだね。ヴィヴィオも一緒に行く?」

 

なのはは膝丈の白いワンピースに薄いピンクのカーディガンを羽織った格好、フェイトは襟付きの黒いシャツに白い長いズボンでピチッとした格好に着替えを終えた2人はヴィヴィオの目線に自分の目を合わせて聞いてみると、ヴィヴィオは頷いて手をなのはに伸ばした。その手を取ってなのはとフェイトは早速ヴィヴィオの着替えを手伝いおめかしをしてあげるとヴィヴィオは鏡の前でクルリと回って自分の格好を嬉しそうに見つめ、なのはとフェイトもヴィヴィオの喜ぶ姿に思わず笑みを零すのであった。そして3人はもう一度出かけることを機動6課の人達に伝えると町へと繰り出した。

 

「こうして一緒にお出かけするのっていつ振りだろうね?」

「うん。確かに最近纏まったお休みとかないから中々一緒に出かけることって無かったんだよね。」

 

2人は間にヴィヴィオを挟む形で手をつないで街をゆったりと歩いていた。そんな中、ヴィヴィオは2人の様子がいつもと違うことに気付いたのか、不思議そうに首を傾げながら声を掛ける

 

「…なのはママとフェイトママはケンカしてるの?」

「「えっ!?」」

 

ヴィヴィオの声に思わず2人して声を上げるが次の瞬間お互いに顔を見合わせて笑い出してしまう。それを見たヴィヴィオが2人で笑い出したことで混乱し表情を歪めてしまった。なのはとフェイトはヴィヴィオが混乱してしまっていることを理解すると笑いを押さえて空いている手でヴィヴィオの頭を撫でてやった。

 

「ママ達は喧嘩なんてしてないよ。」

「そう。少しだけ遠慮し合っていただけなの。」

「…えんりょ?」

 

ヴィヴィオがさらに困惑している様子だったのでなのははヴィヴィオの手を離すと抱きかかえてヴィヴィオの顔を目の前に持ってきた。するとヴィヴィオの瞳が少しだけ揺れ始め、その瞳がなのはを見つめた。

 

「ケンカじゃないの?」

「うん。ケンカじゃないよ。ママ達はすっごく仲良しなんだから。」

「そうだよ。だから大丈夫。心配してくれてありがとね。」

「うん!!」

 

それを聞いたヴィヴィオはやっと笑顔になって頷くと物珍しい街を見渡し始めた。それを見たなのはとフェイトは思わず念話で会話を始める。

 

『ヴィヴィオにまで心配かけちゃったね?』

『うん。もう少ししっかりしないと。…翔馬との事だけど、やっぱり翔馬がなのはに対して酷い事なんてすると思えないんだ。』

『うん。』

『最初は翔馬の言葉とか2人の様子を見て思わず頭に血が上っちゃったけど冷静になって考えてみたんだ。そしたらいつもの翔馬はそんなことする筈ないって。…それに翔馬、なのはやヴィヴィオの事ちゃんと考えてるんだってわかったから。』

『そっか…。これは翔馬君が起きたらちゃんと皆に説明してもらわないとね!…それにユーノ君は未だに翔馬君の事…。』

 

フェイトは自分の考えが間違っていたことをなのはに告白しなのははそれを優しく受け止めると2人はいつものようにお互いに顔を合わせて笑う事が出来た。しかし、話題がユーノの話になると少しだけなのはの表情が曇ってしまう。そんな時タイミングがいいのか悪いのか書店からユーノの姿が現れ、ユーノはこちらのことに気付いたのか手を振りながら近づいてきた。

 

「なのはにフェイトも。…こんなところでどうしたんだい?お仕事はお休み?」

「うん。そうなの。みんなに働きすぎだって怒られちゃって。」

「ユーノも今日はお休み?」

「そうだよ。やっと休みが取れたから、欲しい本だけ買ってヴィヴィオのところに行こうと思ってたんだ。」

 

そんな話をしているとなのはに抱き付いていたヴィヴィオが身動ぎしてユーノにくっ付きたがる様な仕草をした。それを見てなのはは優しげな表情を浮かべるとヴィヴィオをユーノに差出し任せることにした。

 

「ユーノパパ!!」

「ああ、こんにちはヴィヴィオ。」

 

そう。ヴィヴィオはユーノの事を父親として認めていたのだった。それには翔馬が負傷した事件中に起きたヴィヴィオ捜索部隊の行動と結果について話をする必要がある。

あの時、なのはとユーノはヴィヴィオの捜索に出ていた。そこにはフォワード陣も参加してなるべく四方に散りながら広範囲を探し、ついにヴィヴィオを見つけることができた。しかし、その場所は岩礁が多くある足場の悪い海辺でヴィヴィオは予想通り危なっかしい足取りで歩いているところだった。そんなところを発見したためユーノは思わず大きな声を出してしまった。

 

「ヴィヴィオ!そっちはダメだよ!!…こっちに。」

「っ!?」

 

するとヴィヴィオは肩を大きく震わせてユーノに振り向いたが、何を思ったのかユーノから逃げ出す方向へと走ってしまった。そうなれば当然先にあるのは…

 

「ヴィヴィオ…ダメ!!」

「そっちはダメだ!ヴィヴィオ!!」

 

なのはは思わず叫びながら駆け出すがそれよりも速くユーノが走り出し声を上げながらこちらに引き戻そうとする。しかし、ヴィヴィオの歩みは止まらずついに足場が無くなってしまう。何の変哲もない平地なら足場のないことに直ぐ気が付いただろう。しかし、ここは岩場で背の小さいヴィヴィオからは奥の様子が見えなかったためなんの躊躇いもなくそのまま足を踏み出してしまった。

 

「くそっ!!」

 

ヴィヴィオが視界から消えた瞬間、ユーノは海へと飛び込み何とかヴィヴィオを救出した。ヴィヴィオが消えた直後で波も荒くない状態だったため、直ぐにヴィヴィオを見つけることができたが、条件が悪ければ泳ぎのできないヴィヴィオは直ぐにでも溺れてしまっていただろう。急須つされた後のヴィヴィオはユーノにしがみ付きながら大声で泣いたのであった。

と、こんな経緯があり、その後から少しずつではあったがヴィヴィオはユーノに対して近づくようになって、今ではすっかり懐かれていた。しかし、ユーノにとって少しだけ厄介なことがあった。実は困ったことになのは達と同じ様にパパが1人ではないという事。ヴィヴィオは未だにユーノだけではなく翔馬の事もパパと呼ぶ時がある。そのため、事情を知っている人たちからはからかわれ、事情を知らない人達からはとても奇異な目で見られることが多い。あの事件から少し経ちユーノも幾らか頭を冷やす時間が出来た。しかし、当の本人と直接話さない事にはユーノの気が済まず今でも翔馬には任せられないという思いが強い。だからこそユーノは時間が空けば昼夜問わずヴィヴィオの相手をしてあげるようになり、それがヴィヴィオにとってもいい影響を与えているようで最近は良く自分から話すようになっていた。

その証拠にたった今ユーノに会ったばかりのヴィヴィオは楽しげにユーノに対して今まで歩いてきた道で見つけたものやなのはとフェイトがとても仲が良いことを自慢げに話していた。それを微笑みながらなのはとフェイトは眺めていたが、いつまでも道の真ん中を占拠しいている訳にもいかなかったため、なのははユーノに近づいて一緒に昼食を取ることを提案し、場所を移すことにした。

 

「ヴィヴィオは何が食べたい?」

「う~ん。オムライス!」

「そっか。最近はヴィヴィオのお気に入りだもんね。」

「うん!」

 

なのは達は昼食を取るため飲食店を探しながら道を歩き、ユーノはヴィヴィオの回答に対して微笑みながら頷くとヴィヴィオもまた花が咲いたような笑顔で頷き返し、4人仲良く歩みを進めていた。

しかし、何の前触れもなくそんな雰囲気をぶち壊すかのような殺気を一瞬だけ感じ取ったヴィヴィオを除く3人は思わず後ろを振り返った。

 

『今のは…。』

『まさか、敵?』

『ユーノ君とフェイトちゃんはヴィヴィオと一緒に先に隊舎に帰ってて。私が様子を確認してくる。』

 

いきなりの事になのは達は動きを止めて念話で話し合い役割を別けて行動しようとなのはが動き出した瞬間ユーノからストップがかかる。

 

『ダメだ!なのは。…遠くからこの町に照準を向けてる魔導士?みたいなのがいる。下手に分散したらここに攻撃を仕掛けるつもりだ。』

『そんな!?…従うしかないってこと?』

『しょうがないよ。一応本部には連絡入れたよ。助けは来るだろうけど…それまでは私達2人でどうにか凌がないと。』

 

2人はフェイトの言葉に頷いて4人で殺気の感じた方向へ歩き出し、その道中ヴィヴィオは首を傾げながら後を付いて行った。そして路地裏に入ったところで、なのははヴィヴィオに声を掛ける。

 

「ヴィヴィオ?…これから少しだけ危ない所に行くけど、ユーノパパから離れなければ絶対に大丈夫だから。その手を離しちゃダメだよ?」

「…怖いところ?」

「ううん。少しお話をするだけだよ。ただ、ユーノパパからは手を離しちゃダメだよって言いたかったの。大丈夫だからそんな顔しなくても。…すぐ終わるからね?」

 

なのはとフェイトは屈んだ腰を上げると真っ直ぐに歩き出し、誰もいない少し空いた広場のような場所に足を踏み入れた。その後をユーノはヴィヴィオを抱きかかえ直して付いて行く。

 

「お久しぶりですね。…と言っても、後ろの方は初めましてでしょうか?」

「シエル・アウローラ…。」

 

その場所に佇んでいたのは、今まで数度斬り合ったシエルだった。他の戦闘機人達は居ないようだが、いざというときのために後ろで待機しているのだろうと考え、3人は警戒しながらシエルの動向を伺っていた。しかし、シエルは苦笑いを浮かべたかと思うと背中に背負っていた大太刀を地面に降ろしてしまい、3人は呆気にとられた様に固まってしまった。

 

「ああ、勘違いしないで下さい。投降しますって意味じゃありませんよ?…ただ、今日は本当にお話がしたかっただけなので。」

「そんな言葉を信用してもいいのかな?」

「信じる信じないは勝手ですが、私との話の機会なんてそうないと思いますよ?」

 

そう話している間もユーノは周囲の状況に神経を張り巡らせなのは達もシエルの挙動を身のが採用に観察していたがあまりの無防備さに舌を巻くほどだった。調べてみれば本当に周囲には魔力反応が無く、動こうと思えば即座に彼女を捕獲する自身は2人にはあった。しかし、それは今の状況ではできない。時間をできるだけ稼いで向こうにいる戦闘機人をどうにかしなくてはならないと3人は考えシエルの提案に乗ることを決めた。

 

「決まったようですね。…私からのお話は単純です。その殿方が抱えている聖王の器をこちらに渡して頂けないでしょうかというご相談です。」

「…話だけって言ってなかった?」

 

フェイトはシエルの言葉に反応すると3人はそれぞれヴィヴィオを守る様に身構えた。それを見てシエルはまたもや苦笑いを浮かべて今度は大太刀となのは達から離れるように1歩後ずさった。

 

「今の所私の意思としては、皆さんとお話がしたいだけですので約束は反故にしませんよ。まぁ、そう取られても仕方の無い立場にいるのですから警戒を解いてくれとは言いませんがお話しするくらいならいいのでは?」

 

シエルの様子を見てますます目的がわからなくなったなのは達は訝しげな表情を浮かべる。

 

「何が目的なんですか?」

「今のこの状況。あなたにとって何のメリットもないように思える。」

「うん。むしろ僕達が有利な状況に持ち込んでくれている。あなたはそれを理解してるんですか?」

「分かっていますよ。…しかし、こうしてでもあなた方に伝えなくてはいけない事がありましたので。」

「「「伝えたいこと?」」」

 

シエルの言葉に3人は驚きを隠せないでいた。その表情は真剣で何か重要な情報を持っているのだと3人は確信した。しかし、その情報がどのような物かはわからない。それはこれからきっと目の前の少女、シエルが明かしてくれることとなるのだろう。そして…シエルの口から発せられた言葉は想像の斜め上を行くものだった。

 

「その子がこちらに渡らなければ、それよりもさらに大きな被害がこの世界を襲うことになります。私はそれを阻止するため、そして聖王の器がジェイル・スカリエッティの元に渡った時、それを破壊するために彼の元へ下りました。」

「「「なっ!?」」」

 

3人はその言葉を聞いた瞬間、時間が止まったかのような衝撃を受けた。まず、敵であるはずのシエルがなぜこんな情報を此方に寄越したのかがわからない。シエルの言葉通り信じるなら、頷くこともできただろう。しかし、今現在進行形で彼女は敵なのだ。その前提が覆らない限りこの言葉を「はい。そうですか」と頷くことなど到底できる筈もない。さらに、聖王の器を超える脅威の存在。そんなものは今まで一度も情報が上がってきたことが無い。そんなものがあるのかどうかも怪しい情報だ。そして最後、ジェイル・スカリエッティに作られた存在であるはずの彼女が彼を敵に回すと言っている事。3人の頭はパンクも寸前だった。しかし、管理局の魔導士として果たさなければならない仕事には変わりはない。敵意が無いのであればこちら側に保護することだ。だからこそなのは達はこんな言葉しか発することはできない。

 

「なら、詳しい事情を聴きたいので管理局まで…。」

「それは無理です。お話だけという約束をそちらが破るつもりですか?」

「ですが!!」

「今こうしてあなた方と私が話していることを彼は知りません。…私の信頼できる方がお手伝いして下さっていますので。しかし、その時間にも限度があります。そろそろ私は戻らなくてはなりません。今日はその子を連れて帰るつもりは到底ありませんが、次に会うとき、快く引き渡して頂けますでしょうか?…しっかりとお考え下さい。それと最後に、聖王の器を此方に渡すにせよ渡さないにせよこの事は機動6課の主要メンバーのみの極秘情報扱いとしてください。他の方に漏れて彼に私が潜り込んでいるだけの害虫と認識されたら厄介ですから。」

 

そう言ってシエルは大太刀を背中に担ぐと背中を向けてそのまま立ち去ろうとする。その背中を見て思わずなのはは呼び止めようと声を上げる。

 

「ちょっと待っ…」

「っ…。はい。承知致しました。」

 

しかし、なのはが呼び止める前にシエルはその足を止めて耳元に手を当てる仕草をした。そして言葉を発して振り向いたときには先程の表情とはかけ離れた…いや、いつも見ていた戦闘中のシエルの表情に戻っていた。

 

「事情が変わりました。…上からのご命令ですのでご容赦ください。」

「「「くっ!!」」」

 

3人は先程までとは違うシエルの雰囲気に飲まれそうになるが各自戦闘準備に取り掛かるためデバイスを取り出そうとした時、ありえない事態が起こった。

 

「IS発動。エキスポイテーション」

「「「ぐっ!!」」」

 

3人は体から一気に力が抜けその場に足を付いてしまう。

 

「な、何を…したの?」

「体に、力が…入らない。」

「すみません。あなた方3人を同時に敵に回すと厄介でしたので擬似的な魔力欠乏症を起こしてみました。実際にはさほど活動に影響はないでしょうが暫くは指一本動かくのも辛いはずです。…と、あまり時間は持たないのでそちらの聖王の器は頂いて行きますね。」

「…いや。こっち来ないで…。」

 

唯一自由に動けるヴィヴィオは恐怖のあまり動けずにいた。ママ達の言いつけ通りユーノにしがみ付いているが、ユーノは完全に力が抜けきっていてヴィヴィオを抱きしめてやることすらできていなかった。そんな状況で、なのは達は必死にヴィヴィオに向かって手を伸ばしていた。

 

「その子に…近づかないで!!」

「ヴィヴィオ…逃げて…。」

「くっそ!!動け…動いてくれ…。」

 

3人はヴィヴィオを守るために必死にもがいていた。特にユーノは傍にいるヴィヴィオを抱きしめて守ってやればいいだけだ。しかしそれすらもできない状況に3人は唇を噛みしめ、なのは涙を浮かべながらヴィヴィオの名前を何度も読んだ。しかし、無情にもシエルの歩みは止まらずユーノの目の前にまでやってきてしまった。

 

「ひっ…。」

「こちらに来てもらいますよ?聖王の器。」

 

シエルが手を伸ばすとヴィヴィオはガタガタと体を震わせて短い悲鳴を上げ…そして、絶対に来るはずのない助けを求めるのであった。

 

「…す…て。」

「ん?」

「助けて…。」

「はぁ、誰も助けになんか来ませんよ?仮に来れたとしてもそれは私が貴方を連れ去った後です。」

 

シエルは余裕に満ちた表情でヴィヴィオの腕を掴みその場から離れるためヴィヴィオ引っ張ろうとした時ヴィヴィオの叫び声が響いた。

 

「助けて!!翔馬パパァァァ!!」

「こんなところで大声…っ!?」

 

そして、ヴィヴィオが叫び声を上げたと同時にシエルは思わずヴィヴィオから手を離して後ろに飛び、その直後にシエルの元いた場所を薙ぎ払う風が通り過ぎた。

 

「驚きましたね。…まさか貴方がもう復帰してるなんて。」

「早い復帰で悪かったな。…それとヴィヴィオ。俺はお前の父親になったつもりはないぞ?」

「パパ!!」

「「「翔馬(君)!?」」」

 

そこに現れたのはいつもと同じ様に緑と黒を基調としたバリアジャケットに身を包む藤田翔馬の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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