魔法少女リリカルなのはStrikers~風のエースストライカー~ 作:strike
と言ってもいつまで続く事やら…
そしてやっと、ヒロイン決定です。
もうみなさん感付いていたかもわかりませんが…
うまく感情が表わせていたらいいなと
久々の不安になりながらの投稿です。
ご意見ご感想、お待ちしておりますのでぜひお願いします。
それでは第29話スタートです。
翔馬は相変わらず病室から窓越しに空を見上げていた。
以前と変わっているのは青空ではなく夜空だという事だけ。あの後、なのはとフェイトを見送ってから翔馬は考えることが多くあった。この病室に入って、翔馬は自分の怪我を直すことに専念し、意見陳述会に関してはなのは達に任せておけば大丈夫だと今までずっと言い聞かせてきた。しかし、今日の話を聞いて翔馬は不安を抱えることになってしまう。考えないようにしてきたシエルの思惑、ジェイル・スカリエッティの動向、そしてなのはの保護児童で尚且つ聖王の器と呼ばれる少女、ヴィヴィオの事。なのは達には任せると言いつつも、心の何処かでやはり手が足りないという事実を認めてしまっていたのかもしれない。だからこそ、翔馬にとって今の状況は歯痒い思いで一杯だった。あの時、怪我など負わなければ今回の意見陳述会にも警備に当たれる。流石に自分1人が居れば事態が好転すると胸を張って言えるほど自惚れてはいないが、それでも今回に限って言えば確実に翔馬という1つの駒があるだけで対処の方法は何通りも増え、安全度も高まることは間違いないだろう。しかし、現状はこのような状態だ。翔馬は後悔と悔しさで拳を握りしめるとベッドの端を殴りつけた。
「っ…!!…何が俺の心配するのはまだ早いだ。何が必ず帰ってこいだ…。俺は結局…大事な時に何もできやしないのに!!」
確かに翔馬は優秀な上官だとは言い切れないだろう。大きな力を持ちながら、出動の度に多少の無茶をやってのけ、その結果、多少の怪我を負うこともある。そんな戦闘スタイルの翔馬を上官に持てば部下達はその身の安全は保障されて安心できるだろうが、翔馬が無茶をすることを知っているのだ。翔馬の事を気に掛けず事件に取り掛かる事などできないだろう。…そしてその内、翔馬が任に就く時には部下は我が身は必ず自分で守ることが暗黙の了解となったのだ。そんなことで知られている翔馬の戦闘スタイルは、過去になのはが咎めたこともある。そんな事をしていたら翔馬君の体が持たないよ…と。だが、翔馬にもこの戦闘スタイルには事情があるし、これでも一応、昔よりはマシになったのだ。…それから暫くして、スターズ隊のスバル、ティアナとの模擬戦を行うことになった時。まさに昔の自分を見ているよう、いや、むしろ今の自分の戦闘スタイルに似た戦闘スタイルに憤りを感じずにはいられなかった。絶対に今の自分のようになってはならない。そう伝えるために翔馬は剣を振り結果的にそれを伝えることに成功した。しかし、その一件の後、今の自分が彼女達に教導をする資格があるのかと、ずいぶん悩んだこともあった。そんな翔馬だが、決して上官に向いていないという訳では無い。確かに彼は優秀な上官かと聞かれれば頷く者は極端に少ないだろうが、彼は信頼できる上官かと聞かれれば10人が10人共、迷わず頷くだろう。部下の身を最優先で案じ、いざという時は最前線で先陣を切る。翔馬と共に出撃した部下の撃墜率はここ5年間にて0%。確かに無茶の多い上官だが、同じ戦場に立ってこれほど安心感を得られる上官は少ないだろうと、そう聞く事が多い。そして何より、彼が無茶を起こす時は何時だって何かを守るためだった。それは人であったり、想いであったり、その形は様々だが大小問わず、守るためには出来る限りの本気で守ってきた。そんな翔馬だからこそ、共に戦場に立った者は翔馬の手助けを惜しまず、そして少しでも彼の支えになろうと必死に付いて行くのだ。そして、それはこの機動6課でも同じことだ。スバル達は翔馬への謝罪の代わりに今よりもさらに強くなる決意を固め、なのは達は翔馬の想いを繋ぐため、必ず無事に誰1人欠かさずに帰って来る決意を灯したのだ。
---だから、自分を責める必要なんてないんだよ?
その一言を伝えたくて…そして、自分の想いを伝えたくて彼女はここへと戻って来たのだった。
「…どうして。戻ったんじゃ、なかったのか?」
翔馬は打ち付けた拳を隠すこともせずにいきなり開けられたドアに立つ女性に顔を向ける。
「…なのは。」
「ゴメンね。盗み聞きするつもりは無かったんだけど…。少し伝え忘れてたことがあったから。…これじゃ、フェイトちゃんの事何にも言えないね。」
なのはは、バツが悪そうにあははと笑ってから中に入ると先程まで座っていた椅子ではなく、翔馬の寝ているベッドに腰かけると翔馬の顔を覗き込んだ。しかし、翔馬は先程の言葉や様子を見られ、気まずくなったのかなのはから目を逸らして窓の外を見つめる。それでもなのはは、そのまま翔馬に語り掛けるようにして口を開いた。
「翔馬君。あのね、翔馬君が思ってるほど翔馬君はダメなんかじゃないんだよ?機動6課の人達はみんな翔馬君の事、信頼してるし私やフェイトちゃん、はやてちゃんだってすごく頼りにしてる。スバル達の教導だって私の思想に合った訓練をしてくれてるし、実際にスバル達、今ではちゃんと基礎が固まってきて、多少の揺れ位じゃ動じないようになった。そして私達が出動する時、初出動の時もホテルアグスタでの事件、ヴィヴィオを見つけた時、そして私達がシエルちゃんにやられそうになった時も翔馬君はずっと私達を守ってくれてた。ちゃんと、翔馬君は大事な時に…助けて欲しいときに居てくれる。それはとても大事な事だけど、できる人って少ないと思うんだ。だから…。」
「ああ。それで守れたものはあったのかもしれない。でも、今、守りたいものが目の前にあるのにそれに手を伸ばすことすらできない…!!そんな状況で、何が機動6課の隊長だ!!全員が地上本部を守るために必死に動いている。そんな状況で俺はただ1人ベッドの上で皆を見守ることしかできない!!たった一度のミスだ。それだけで俺は…!!…っ!?」
翔馬は自分の本当の思いをなのはに知られてしまったことで夕方、なのは達を見送った時の様に取り繕うような事はせず、自分への怒りを自分に向かってぶつけるかのように言葉を捲し立てた。それをすることで何が変わるでもない。そんな姿をなのはに見せれば余計な心配を掛けることになってしまう。そんなことはわかっている。しかし、それでも、翔馬は自分を責めずにはいられなかった。…この大事な場面で何もできない自分自身を、誰かの、何かのために戦ってきた翔馬が許せるはずも無かった。しかし、そんな自傷の思いはなのはの行動によって遮断させられてしまった。翔馬の自分を責める言葉になのはは優しい笑みを浮かべて、優しく翔馬の頭を抱えて自分の胸に引き寄せた。
「なの…は?」
「辛いよね。みんなが必死に戦ってるのに自分は何にもできない。守りたいものを守るためにいるははずの自分がどこか遠い所に行っちゃった気がして…悔しくて、苦しくて、何もできない自分が許せなくて。」
その言葉を聞いた瞬間、翔馬は後悔することになる。その言葉通り、なのはは身を持って知っているのだ。何もできない自分に対する思いを。抜け殻となっていた翔馬にはそんな感情は無かったが今になってやっとわかった気がした。いや、きっとそれでも何百分の1程度なのだろう。なのはの思いに比べたら自分など大したことも無い。たかが数週間動けないだけなのだから。
「…すまない。なのは。」
「私は大丈夫だよ。…『今』辛いのは翔馬君でしょ?…でもね、翔馬君は自分を責める必要なんて無いんだよ?ホントに私達、感謝してるんだから。だから、今回は今まで守られていた私達が守るよ。翔馬君の分まで。だから、意見陳述会の間は、何も気にせずゆっくり休んで。…ね?」
なのはの言葉に翔馬はなのはの胸の中で軽く頷くとその体を離した。しかし、その表情は未だ振り切れていないのか、まだぼんやりとして時折表情が歪でいた。それを見たなのはは顔を俯かせてからある決意をすると、少し上気して赤くなった顔を上げ、もう一度翔馬の頭を優しく包んだ。その感覚に翔馬は少しだけ驚くが落ち着くと真正面にあるなのは顔に焦点を合わせる。しかし、その表情は暗くてよく見えなかった。だから、翔馬はなのはに心配を掛けさせまいと、自分を責める様な事を考えるのはもうやめようと。そう思いながら口を開いた。
「なのは。…もう大丈夫だ。もう気にしないようにする。俺が今やらなきゃいけないのは、この体を…。」
「そんな建前いらないよ…!!辛いんでしょ?悔しいんでしょ?…それなのに、私にまで気を使わないでよ…。」
「…。」
翔馬はなのはの言葉にどうしたものかと頭を悩ませた。なのはは自分を責めるなというのに、もう責めることを止めると言ったら、無理をするなと。…しかし、次のなのはの言葉で翔馬はその意味を知る。
「本当に納得してその言葉を口にするなら、私は何も言わないよ?…でも、翔馬君は無理矢理自分の感情を殺そうとしてる。私は翔馬君に本当の意味で納得して、そして自分を許してあげて欲しいの。」
「…俺は。」
翔馬は自分の胸に問いかける。本当に自分を許すことができるのか。その上で今後の行動を本当の自分の意志で決めることができるのか。…しかし、そんな答えは既に決まっているようなものだ。なぜなら、先程口にした言葉はなのはに心配を掛けさせ無いようにと思って口にした言葉なのだから。そのため、翔馬は1秒も経たないうちに俯きそうになる。しかし、それはなのはが許さなかった。なのはの温かい手は翔馬を俯かせないように固定されていたからだ。そして、翔馬を包むその手は僅かに震えていた。それにやっと気付いた翔馬は声を掛けようとするがそれよりも早くなのはの方が動いた。
「まだ、許せないよね?……でもね、」
「…なの、は?」
途中で区切られた言葉に翔馬はなのはの様子を伺おうと声を出すが、そんな考えも一瞬だった。翔馬が口を開いたのと同時になのはが翔馬の顔を引き寄せ…。
「…ちゅっ。んっ…。」
何をする気かと思った瞬間には翔馬の目の前になのはの顔が一杯に映り、唇には柔らかい何かが当たっていた。その状況を理解するまでに数秒掛かり、理解し終える頃にはなのはの顔はいつも通りの位置に戻っていた。そして、今までに見たことのないとても綺麗な微笑みを向けると
「私は翔馬君の事、許してあげるから…。」
そう言ってなのはな立ち上がると窓際に向かって夜空を見上げた。翔馬は放心状態から意識を取り戻すと、目線だけなのはを追って、この行動の真意を問うようになのはを見つめる。しかし、振り向いて翔馬の事を見つめるなのはは、少し恥ずかしそうにして頬を赤く染めながらもしっかりと翔馬の事を見つめていた。
「これは…どういう……。」
「翔馬君が夕方に私に言った言葉。」
「え…?」
突然呟いたなのはの言葉に翔馬は首を傾げた。しかし、なのはは軽く笑って
「…口にしなきゃ理解できないし、口にしても理解してもらえない時だってある。そんな時、私はいつでも思いを伝えるために私の精一杯をぶつけてきた。……だから、翔馬君が自分の事を許せなくても、他の誰かが翔馬君の事を許せなくても、…私だけは貴方を許してあげられるんだよって。伝えたかったんだ。」
「なのは…。」
そんななのはの言葉を聞いて翔馬は思わず視界がぼやけてしまった。翔馬はそれに遅れて気付くと一度目線を外してから軽く目を擦り、一つ溜息をついた。
「…はぁ。全く。ホントになのはには敵わないな。……でも、少しだけ俺自身を許してやれるような気がした。…ありがとな。」
「ううん。…伝わってくれて良かった。……えっと、それじゃ私は行くね?フェイトちゃん、きっと待ってるから。」
そう言ったなのはは少しだけ慌てた様に身支度を整えて帰る準備を終わらせた。それを見ながら翔馬は笑みを浮かべると、少し顔を俯かせて彼女の名前を呼ぶ。
「…なのは。少しだけ、…こっちに来てくれないか?」
「ん?…翔馬、君?」
先程まで解決したかのように笑みを浮かべていた翔馬が振り向いたときには顔を俯かせており何事かと、なのはは手荷物を椅子に置くと翔馬の顔を覗き込むようにベッドに乗り出した。その瞬間、翔馬に顎を支えられて訳も分からず少しだけ上を向くと…。
「んんっ!?!?」
いきなり翔馬に唇を奪われたため驚きのあまり体を一度ビクッと震わせ、塞がれた口で大声を上げる。さらに後ろに逃げようとするが、翔馬はそれよりも早く片手を背中に回してなのはが逃げられないようにするとより強くその唇を押し付けた。そして、なのはは短かった抵抗を諦めると、強張っていた体の力を抜いて翔馬に体を預けるようにしてゆっくりと目を閉じた。
そして、翔馬はなのはの温もりを感じながら今までの想いに加えて新たな決意が生まれた。それは、大切なことを思い出させてくれた自分にとって大事になった女性を守り通すこと。そして、不甲斐ない自分を許すと言ってくれた女性のためにも自分自身を守り通すことだった。そんな決意を胸に翔馬は大切なそして大事な人の事を抱きしめ続けた。
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いよいよ今日は意見陳述会当日。
フォワード部隊のスバル達4人となのは、ヴィータ、リィンの計7名は昨日の夜から現地入りをし、警備に当たっていた。ヴィヴィオに関しては方針を変えずにアイナに面倒を見て貰う事にして出動前になのははヴィヴィオと一つの約束をする。必ず明日の夜には帰って来るからねと、指切りを交わすと、なのはは少しだけ後ろ髪を引かれる思いを抱きながらもヘリに搭乗し、現地へと向かった。その後、なのは達が現地に入った時には既に警備体制は厳重になっており、ピリピリとした空気が体中に纏わりつくかのような緊張感に溢れた現場になっていた。そんな中でなのは達は警備を行いながら一夜を明かし、その日には何事も起きる事無く、無事今日という日を迎えることができた。そして、日が昇った頃になるとはやて、フェイト、シグナムの3人は時空管理局地上本部に向かいなのは達と合流を果たす。軽いミーティングを機動6課の面々で行うと再度外周警備に当たり、意見陳述会の開催を待った。そして、時空管理局の重役達が集まり出すとはやて、フェイト、なのは、シグナムの4人はスバル達に自分のデバイスを預けて内部の警護に当たり、ヴィータ、リィン、ギンガ、スバル達4人は引き続き外周警備に当たる。その巡回中、なのはは全員に念話で話しかけた。
『皆。警備中にゴメンね。少しだけいいかな?』
『なんだよ?』
『なのは…。もしかして、あのこと?』
なのはから発せられた念話にヴィータが鬱陶しそうに答え、事情を知っているフェイトはなのはの様子を伺うように返事する。
『うん。昨日も少しだけ話したけど、緊急時時の移動ルートと配備を変えて欲しいんだ。私達の集合場所は地下メインホールに変更。非常事態の配備に関してはシグナム副隊長もライトニング隊に合流して下さい。シスターシャッハやはやて部隊長には無理を強いることになるけど…。』
『それは気にせんでええよ。なのは隊長。それに、藤田隊長の考えが当たってもうたら手数が足りないのは確かや。少しでも遊撃隊は多い方がええ。』
なのはの言葉にはやては頷くとシグナムもそれに倣って頷いて念話を終了させた。しかし、ヴィータだけは少し納得がいかなかったのか続けてなのはに問いかけた。
『それにしてもだ、いまいち分からねぇ。予言通りに事が起きるとして考えられる線は外部からのテロだろ?だとしたら、目的は何だよ?…レリック集めてる連中、スカリエッティ一味ならさらに目的が分からねぇ。』
『ん。…可能性としてあげられるのは自分の兵器の威力証明。地上本部を壊滅させることが出来ればそれを欲しがる人はいくらでもいるだろうし。…後は、ヴィヴィオを攫うための陽動、かな。』
『それにしたって、リスクが高すぎる。他にもっと場所はあるだろ?』
『そうだよね…。』
なのはは今まで考え続けていた回答を並べるが自分自身、納得が行かないようでヴィータの言葉に頷く。
『でも、私達が考えていても仕方がない。今は信頼できる上司が指示をくれる。私達はその通りに動こう。』
『…そうだな。』
そんな会話が繰り広げられている間に意見陳述会は始まり、機動6課の面々は何が起きても対応できるように警備を続けた。
その頃翔馬はベッドから少しだけ起き上がり、その手にゼフィロスを乗せながら既に現地にて警備をしているだろうなのは達の事を考えていた。しかし、あの時のように自分を責めている訳では無い。ただ、無事に帰って来て欲しいと、そして一刻も早く自分の体を治るようにと柄にもなく祈りながら手に乗る相棒を見つめていた。
「…大丈夫。あいつ等なら。きっと。」
翔馬は誰もいない病室で呟くと、苦笑いを浮かべてゼフィロスを机の上に置く。そして、少し横になろうと体を倒そうとした時、突然病室のドアが開き驚いた表情でその方向に顔を向けると、思いもよらぬ人物達がそこにいた。
「パパ!!」
「ヴィヴィオ!?…どうしてここに!」
思わず翔馬は横に倒そうとした体を持ち上げて入ってきたヴィヴィオと申し訳なさそうにしているアイナを見つめながら固まってしまった。しかし、ヴィヴィオは構う事無く翔馬の顔を見ると笑顔を咲かせて駆け寄り翔馬の腰に飛びついた。それを翔馬は呆然としながら受け止めるとヴィヴィオと共に顔を出したアイナに目を向ける。すると、アイナは申し訳ないような表情を浮かべて一度頭を下げた。
「藤田隊長。申し訳ありません。…ここに連れて来てはいけないと6課の皆さんからも言われていたのに…。ですが、ヴィヴィオちゃんも暫く外に出られなくて…。なのは隊長とも会えない状態は辛かったようでしたので…。少しの間だけならと勝手ながらこちらにお連れしてしまいました。」
「…アイナさん。」
翔馬は困った様な表情を浮かべながら未だに腰に抱き付いて離れないヴィヴィオを見て、軽く頭を撫でてやることしかできなかった。
そして、場所は戻り管理局地上本部。そんな事情を知る由もない彼女達は順調に警備を続け、4時間にも渡る意見陳述会も終わりに差し掛かっていた。
「最後まで気を抜かずに頑張ろう!!」
「ええ。」
「「はい!!」」
スバルの言葉にティアナと、エリオ、キャロは最後までやり抜く意思を持って頷いた。そんな時、状況が動き始めた。まず、どこかの空で待機していたルーテシアの大きな魔力を検知すると同時に管理局地上本部の通信管制システムにハッキングを受ける。さらに管制室には麻痺毒を放たれ、地下のメインジェネレーターは原因不明の爆発を起こし、防壁システムに異常が発生。その直後に大量のガジェットが本部を囲むように出現し、そのガジェット達は自爆するかのごとく、防御壁に突っ込んで行ったが、それらのガジェットが持つAMFは地上本部の駆動系を確実にシャットダウンさせ、内部の人間を閉じ込めることに成功してしまった。あまりの手際の良さに地上本部の対応は遅れ、既に後手に回ってしまっていた。しかし、そんな状況でも機動6課の6人は直ぐに行動を開始していた。
「通信妨害が酷い…。ロングアーチ!!」
「現在、外からの攻撃は一先ず止まっていますが通信妨害が酷く内部の状況は不明です!!」
ヴィータは直ぐにロングアーチスタッフに現状の確認を行おうとするがロングアーチでも詳細を掴むことはできず、ヴィータは唇を噛むと後ろを付いて来ていたスバルが声を上げる。
「ヴィータ副隊長!!私達が中に入ってなのはさん達を助けに行きます!…この子達を届けてあげないと。」
「ん。」
ヴィータはスバルの言葉に立ち止まって振り返ると頷いた。その直後にロングアーチから再度連絡が入る。
「航空戦力接近!!…推定戦力……オーバーSランク!!」
「そっちにはあたしとリィンが上がる!!地上はこいつらがやる!!…こいつらの事も頼んだぞ!!」
「はい!!」
ヴィータははやてとシグナムから預かっていたデバイスをティアナに手渡すと速度を上げて航空戦力が向かって来ている方向へ速度を上げ、スバル達はなのは達の救出のため、地上本部へと足を踏み入れた。それを見送ったヴィータは隣を滑走するリィンに声を掛ける。
「リィン!!ユニゾン行くぞ!!」
「はいです!!」
「「ユニゾン・イン!!!」」
2人は空高く飛び上がるとユニゾンを果たし、いつもと違い白の服を身に纏ったヴィータは所属不明の航空戦力に向かって飛び立った。
その頃、なのはとフェイトは会議室への道も非常口への道も閉ざされ、今後の方針を決めかねている所だった。
「どの道も隔壁ロックされてる…。でも、ここでじっとしているわけにはいかない。…ちょっと荒業になるけど、フェイトちゃん。付き合ってくれる?」
「当然。」
そう言った2人の表情には笑みが浮かんでおりエレベーターのドアをこじ開けようとしている管理局の人を手伝ってそのドアを開け放った。そして、底の見えない闇に頼りなさそうな一本のロープを確認すると、フェイトは満足そうに頷いた。
「うん。これなら行ける。」
「行こう。フェイトちゃん!!」
そう言って2人はエレベーターの入り口から底なしの闇へと体を投げ、掌に魔力を集中させるとロープを握り締めてそのまま重力に従って下降を始める。
「合流地点は指示してある。地下メインホール。」
「うん。急ごう!!」
2人は、お互いに出来るだけスピードを上げながら下降していった。
そして場所は移り地上本部上空。そこでは既に戦闘が始まっていた。ヴィータは雲の下から目標を捉えると何の遠慮も無しにアイゼンを振るう。
「ギガント・ハンマー!!!!」
その直後に雲を吹き飛ばすほどの衝撃が走り、僅かながらも手応えを感じたヴィータは一度その場から距離を取る。しかし、リィンの声が頭に響き、忠告が走る。
『避けられたです!!』
「でも、ダメージは通した!続けてぶっ潰す!!!」
ヴィータはリィンの言葉を気にした様子も無くアイゼンを構えて敵を見据えると、いつの間にかその男の容姿は先程とは打って変わり、黒髪だったはずの髪は金色に変わり手に持つその薙刀には赤い炎が灯っていた。それを見てヴィータ達は少し驚いたが、それも次の瞬間には納得したかのように敵を見据え直した。
『やはり融合騎…。』
「あたし達と同じか…。」
リィンの呟きに答えるようにしてヴィータが答えると、そのまま名乗りを上げてアイゼンを構える。そして目の前の男が名乗った名は、ゼストと言った。
そして、なのは達の救護に向かったスバル達は道中、戦闘機人との戦闘に巻き込まれるが4人の連携プレーにより何とか窮地を脱し、目的地である地下メインホールへと辿り着き、なのは、フェイトとの合流を果たした。
「ナイスタイミング。」
「お待たせしました。…お届けです!!」
なのはとフェイトが集合場所に辿り着いたとほぼ同時にスバル達が現れフェイトは思わず声を上げ、ティアナはそれに対して笑みを浮かべて応えると4人はそれぞれデバイスを隊長達に渡した。そして、それから少しだけ遅れて奥の通路から声が聞こえた。
「高町一尉!!」
「…すまない。遅れてしまった。」
そう言って駆け付けたのはシャッハとシグナムだった。
「シスターシャッハにシグナム副隊長。会議室に閉じ込められていたんじゃ…。」
「会議室については既に有志の手によって解放されている。主はやてと騎士カリムは現状の説明で残っていらっしゃる。…ここからは私も動く。どうする。高町一尉。」
そう言ってシグナムはキャロから自分のデバイスを受取り身に着け、シャッハはティアナからはやてのデバイスを受け取るとそれを届けるために再度会議室へと向かった。そしてそんな中、スバルは何か異変を感じたようで先程から何かを喋っていた。しかし、直ぐに険しい表情になると大声を上げる。
「ギン姉?…ギン姉!!」
「スバル?」
スバルの様子がおかしいことに気付いたなのははスバルに問いかける。すると、スバルは少しだけ焦ったようになのはに現状をそのまま伝えた。
「ギン姉と通信がつながらないんです。」
「先程、戦闘機人2名と交戦しました。…表にはもっといる筈ですから。」
「ギン姉…。まさか、あいつらと…。」
心配げな表情を浮かべるスバルは何度か連絡を繋ごうとするが、一向に繋がらないままだった。そして、フェイトもある場所に連絡を取っていた。
「ロングアーチ。こちらライトニング1。」
『…こちら……ロングアーチ。』
そして帰って来たのはノイズ交じりの聞き取りずらい音声だった。なのはとフェイトはまさかと思いながらも詳細を尋ねる。
「どうしたの!?通信が…。」
『只今、ガジェットとアウンノウンの襲撃を受けています…。まだ、何とか持ちこたえていますが、もう…。』
「「「「なっ!?」」」」
驚きを隠せない隊員達と起こって欲しくない出来事が起きてしまったと、少し険しい表情を浮かべる隊長陣。しかし、それぞれ気持ちを入れ替えると的確に指示を飛ばす。
「やはり、そう来たか…。翔馬の感も当てになるものだ。」
「当たって欲しくなかった感、ですけどね。…予定通り分散するよ。」
シグナムの言葉にフェイトは一度だけ苦笑いして表情を引き締める。
「うん。スターズ隊はギンガの安否確認と襲撃戦力の排除。ライトニング隊は機動6課に戻って状況確認と襲撃者の排除」
「「「「了解!!」」」」
なのはの言葉に隊長含め全員が返事を返すと直ぐ行動に移した。隊長陣は直ぐにバリアジャケットを身に纏い、スターズ隊は地下通路を通ってさらに地下のエントランスホールへ。ライトニング隊はシグナム含め機動六課に向かった。
---そしてこれから始まる。
運命の歯車は既にあの時からゆっくりと、だが確実に回り続けついにここまで来た。
僅かな誤差を生み出しながら進む物語は…………確実に違う結末へと進んでいた。