魔法少女リリカルなのはStrikers~風のエースストライカー~ 作:strike
ちょっとよくわからないところもあるかもしれませんが、感想とか意見を頂けると…。
それでは、第3話です。
その日の夜は全員が大忙しだった。
まずしなくてはいけないのが荷物の整理。今日入寮した人が多く、これから生活していくために身辺整理は必須であろう。また、機動6課始動に向けて自分たちがしなければいけない事をまとめ、始動後の運用案を頭に入れ、そしてさらには明日に行われる模擬戦の準備もしなくてはいけない。しかし、さすがは隊長クラスのメンバーといったところか全員が要領良く今日やるべきことを片付けていき日を回って暫くした頃には寝床の中に入ることができていた。1人を除いては…。
「取り敢えず、日課位は済まさせておかないと。さすがに、航空武装隊じゃないからってサボるわけにいかないよな。」
独り言を言いながら隊舎から木刀を2本持って出て来たのは翔馬だった。翔馬は隊舎の裏手で広い空間に立つと一呼吸して2本の木刀を左右の腰に当てる。そして、息を止めると左腰に当てていた木刀を右手で抜き放ち、一閃。そして、左手に持った木刀を下から振り上げ、上体が反れる勢いを利用して右手の木刀を返す刀で真横に振る。そうしながら、そこに本物の相手が居るかのように剣を振り抜いては移動し、そしてまた剣を振り下ろす。それを何度も何度も繰り返していく。その姿は風と戯れているかのような綺麗な動きだった。そして、どれほどの時間が経ったのだろうか、翔馬は動きを止めて少しだけ上った息を落ち着けようと深呼吸をする。
「…ふぅ。これで日課は終了だな。」
そう呟くと一度2本の木刀を近くに立てかけてタオルで汗を拭い、水で喉を潤す。そして、一息つくと持ってきた荷物を抱えて自分の部屋へと向かうのであった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
翌日。
空は快晴で雲一つない絶好の天気だった。翔馬は訓練用の服装に着替えるとゼフィロスを首から下げて今日の集合場所である訓練場へと足を運ぶ。すると、そこには先客がいた。
「おはよう、なのは。早いな。」
「ん?…あ、おはよう。翔馬君。…私はやることがあるからね。皆よりほんの少し早く来ただけだよ。」
なのはは笑って見せると目線を手元のコンソールに移し叩き始める。翔馬はそれが何か気になり近寄ってなのはの手元を覗き込む。
「…何してんだ?」
「ひゃっ!?…しょ、翔馬君!?いきなり近くで声出さないでよ。」
「おっと、悪い。…つい気になって。」
なのはは、翔馬の顔の近さに少しだけ顔を赤らめて距離を取り、翔馬は慌ててなのはから離れた。その時2人の後ろから
「何、イチャついとるんや?…お2人さん?」
「お邪魔…かな?」
「邪魔なはずないだろ。これから模擬戦だって時にイチャついてるなのはが悪い。」
と、先に来たはやて、フェイト、ヴィータが2人をからかい、後から来たシグナム、シャマル、リィンフォースⅡは苦笑いを浮かべていた。ちなみにザフィーラはどこ吹く風と言わんばかりに丸くなっていた。
「別にイチャついてなんかいないよ!?」
「俺はただなのはが何してるのか気になってだな。」
からかわれた2人は懸命に弁解を続け、全員が納得したのは模擬戦開始10分前の事だった。
「それじゃ、模擬戦闘訓練を行うに当たってそれぞれのポジションとチームを決めます。…と言っても丁度メンバーがいい感じに分かれてくれてるからこのままでいいかな。」
はやては現状の配置を見て全員に声をかける。訓練場から見て右側がはやてチーム。メンバーは、はやて、シグナム、フェイト、ザフィーラの4人。そして左側がなのはチーム。メンバーは、なのは、ヴィータ、翔馬、シャマルの4人。
「ええ~。何であたしがはやてと一緒じゃないんだよ。シグナム代われ。」
「いや、決まったものを覆すのは…。」
シグナムはヴィータに押され戸惑うが、はやてが割って入ると
「まぁまぁ。ヴィータ。これからなのはちゃんと一緒に行動する機会が増えるわけだし、逆にシグナムはフェイトちゃんとな。だから、このチーム別けは結構いいと思うんよ。聞き分けてくれへんか?」
「う~。…はやてがそういうなら…。」
「ふふ。ありがとな。」
はやては嫌そうな顔をしながらも頷くヴィータを見て微笑みながら頭を撫でる。
「それならポジションも必然的に決まるな。俺達のチームは、ヴィータがフロントアタッカー、なのはがセンターガード、俺がウィングアタッカー、シャマルがフルバッカー」
「私達のチームは、シグナムがフロントアタッカー、ザフィーラがフロントガード、私がウィングアタッカー、そして、はやてがフルバッカーだね。」
それぞれに役割分担を確認すると、リィンフォースⅡが2つのチームの間に浮かび上る
「それでは、ルールの説明は私からさせてもらいます。まず、事前に行って頂いたと思いますがデバイス及び皆さんの体にはリミッターが掛けられています。無いとは思いますがこれを外すことは禁止です。また、ブレイカー級の魔法の使用も禁止です。そして危険行為。相手に怪我をさせるのは禁止ですよ。あくまでも、これは模擬戦闘訓練なんですからね。勝敗の決定方法は各チームにリーダーを決めて頂きます。そのリーダーに有効打を一撃を入れることができればそのチームの勝利となります。以上、簡単ですがルール説明を終わります。何か質問はありますか?」
リィンフォースⅡが各チームの顔を見渡すと満足げな表情で、
「…無いようですね。それでは皆さん頑張って下さい。私はここで応援してますよ~。」
そう言って、訓練場の端っこに移動するとちょこんと座って皆を見ている。
「それじゃ、移動して作戦を立てようか。」
「そうですね。相手は、はやてちゃん達ですから作戦も無しに突っ込んだら一撃で沈んでしまいますよ。」
「なのはと翔馬、あたしの邪魔はするなよ。」
「しないように気を付けるよ。」
「…あはは。」
なのはが作戦を立てるためにはやてチームから離れた場所まで移動を始めると、シャマルはなのはの言葉に頷きヴィータが忠告と言わんばかりに睨み付ける。そのヴィータに対して2人は苦笑いを浮かべるのであった。一方はやてチームも移動を開始し作戦会議を開いていた。
「注意せなあかんのは、やっぱりなのはちゃんの砲撃とヴィータの打撃やな。」
「あれが通ると一気に形勢が引っ繰り返されるからね。」
はやてチーム全員が苦笑いを浮かべると
「なら、ヴィータは私が引き受けよう。あいつとの手合わせも久しぶりだ。」
「なのはの砲撃は私が受け止める。全力の彼女なら荷が重いがランクダウンをしている今なら軌道を逸らすくらいのことはできるだろう。」
シグナムとザフィーラが進んで相手役を買って出た。その様子にはやては難しい表情を浮かべるが
「わかった、2人とも少しきつい戦いになると思うけど、よろしくな。私は状況を見ながら支援魔法で皆をサポート。そして、状況が傾いたら広域魔法で一気に相手を仕留める。」
「そうなると、私が積極的に動いて相手を撹乱。はやてを目標にさせないように状況応じて相手を変えていく。そんなところかな」
シグナムとザフィーラに相手を任せ自分がすることを伝え、フェイトが自分の役割を確認する。すると、
「一応、翔馬にも目を配っておけ。テスタロッサ。あいつの今の実力は知らないが『風のエースストライカー』の異名を持つ意味はお前にもわかるだろう?」
「うん。…わかってる。翔馬の動きには目を離さないようにして動くよ。」
シグナムから忠告を受け、素直に頷くとチーム内でのサインやタイミングなど細かい作戦を立てていくのであった。場所はなのはチームに戻り、彼女たちも作戦会議を順調に進めていた。
「それじゃ、最終確認するよ。今回のリーダーは私が勤めます。そして、私は状況を見ながら砲撃と魔法弾で皆を支援。ヴィータちゃんは前衛で相手のリーダーに一撃を入れる勢いで動いて。」
「わかった。任せろ。」
「うん。よろしくね」
なのはが作戦行動についてヴィータに確認を取ると、真剣な顔もちで了承する。それを見てなのはは笑みを浮かべる。
「そして、シャマル先生は後方で皆を補助魔法にて援護。あと、シャマル先生はこの作戦のカギなので…荷が重いかもしれませんがよろしくお願いします。」
「大丈夫ですよ。ちゃんと成功させて見せます。」
気合十分の返事が返ってきたことになのははニッコリと微笑んで最後に翔馬を見ると
「翔馬君はフェイトちゃんを担当してくれるかな。多分機動性のあるフェイトちゃんが戦場を駆け巡る状況は私達にとっては都合が良くない…。」
「わかった。足止めだけなら俺でどうにかしよう。」
苦笑いで答える翔馬を確認するとなのはは全員の顔を見渡して、
「それじゃあ、皆。辛い戦いになると思うけど、頑張っていこう!」
「「「おう。」」」
掛け声を合わせると、
「レイジングハート。」
「グラーフアイゼン。」
「ゼフィロス。」
「クラールヴィント。」
「「「「セット・アップ」」」」
4つの光が溢れるとその中から4人の魔導師が空へと飛び立つ。
「私達も行くで!」
「「「おう!」」」
「シュベルト・クロイツ。」
「レヴァンティン。」
「バルディッシュ。」
「「「セット・アップ」」」
反対方向からは3つの光からが放たれ3人と1匹の魔導師が宙に向かって飛び立つ。
各チームがバリアジャケットを身に纏い、宙で相対すと自らの武器を構える。
「それでは、皆さん準備はよろしいですか?今回の模擬戦闘は障害物なしの空中戦です。広い海の上で思いっきり戦っちゃって下さい。それでは、……レディーーーーゴーー!!」
リィンフォースⅡの掛け声とともに一斉に魔導師達が動き出す。その中でも行動が早かったのは2人。
「ハーケンセイバー!!」
「エアリアルサイス!」
フェイトと翔馬は前衛を超えてチームの前に出るとお互いに魔力刃を生成してぶつけ合う。しかし、自分の攻撃が相殺されたのを確認すると翔馬は一度下がり、代わりにヴィータが前へ躍り出る。すると、向こうのチームからシグナムが突撃して来てヴィータと剣を交える。
「はぁぁ!」
「オラァァ!!」
ヴィータとシグナムは鍔迫り合いになり、お互いに顔を近づけると
「お前との勝負楽しみにしていたぞ。ヴィータ。」
「…ふん。ぶちのめしてやるから覚悟しろよ!…アイゼン!!」
ヴィータがアイゼンに声をかけるとカートリッジを一度掃き出し、シグナムを吹き飛ばす。しかし、空中で体勢を立て直すとまた直ぐに斬りにかかった。その様子を確認しながらまた翔馬が動き出す。フェイトのいる位置を確認すると一気に距離を詰め、剣を振り下ろす。フェイトは剣をプロテクションで受け止めると翔馬は一旦フェイトから離れ、おどけた様子でフェイトに話しかける。
「お相手願えるかな?」
「…私で良ければいくらでも。」
お互いに顔を見て、真剣な表情になると2人は飛び出し
「「はぁぁ。」」
気合の掛け声と共に2人はぶつかり合う。すると、それを確認したなのはは自分の周りに魔法弾を展開させ
「援護射撃行きます。アクセルシューター。シュート!」
なのはの放ったアクセルシューターは8つ。ヴィータの背中で8方向に分断すると4方向からはやてへ、2方向からそれぞれフェイトとザフィーラへ放たれた。しかし、
「鋼の軛!!」
突然現れた白い軛によってアクセルシューターの幾つかが落とされ…
「はぁぁぁ。…はっ!!」
気合の掛け声とともにフェイトも翔馬をいなしてアクセルシューターを撃ち落とす。
「ありがとな、2人とも。そろそろ私も行くで。…クラウ・ソラス!!」
はやてから砲撃魔法がなのはに向かって放たれるが、今度は翔馬がそこに割り込み
「「…え!?翔馬君?」」
砲撃魔法の前に立ち塞がる翔馬に思わず、なのはとはやてが驚く。
「まぁ、任せとけ。…はぁぁぁ。」
剣を一度鞘に納めると腰を低くして構えを取ると足元に魔法陣が描かれ、砲撃に向かって全速力で飛び出す。そして、はやての放った砲撃魔法に衝突する瞬間、一気に剣を抜き放つ!
「ゲイル・スティング!!!!」
抜き放った剣先の軌跡から緑の魔法刃が形成されると砲撃魔法を切り裂き、はやてに向かってその魔法刃が走り出す。翔馬が放ったのは剣閃型の砲撃魔法だった。横から見ていたヴィータたちは空に巨大な緑色の帯ができた様に見えたであろう。
「…嘘やろ?…おっと!」
「大丈夫、はやて?」
翔馬の放った魔法刃が到着するまでに何とか間一髪で間に合ったフェイトは、はやてを抱えて場所を移動する。
「まさか、あんな芸当ができるなんて…。」
「さすが、風のエースストライカー…だね。」
そう。翔馬がやったのはただ魔力をぶつけただけではなかった。もしそんなことをしていれば良くて相殺。悪ければ魔力量の多さと魔法の接触面積の少なさで返り討ちになってしまう。しかし、翔馬ははやてが放った砲撃魔法の一番脆い箇所を瞬時に見極め、そこに向かって自分の魔法をぶつけた。そうすることによって自分が返り討ちに逢うことはなく更には、魔力量で劣っているはずの翔馬の魔法がはやてまで届くといった仕組みになっていた。
「…ふぅ。流石に当らないか。」
自分の魔法が躱された事を確認すると、なのはの方を振り向いて
「大丈夫だっただろ?…取り敢えず俺はもう一度フェイトの方に向かう。なのはは引き続き援護を頼む。シャマルは…。」
「うん。…わかったよ。それじゃあ、よろしくね。…シャマル先生はもう少し時間がかかりそう。因みにヴィータちゃんもシグナムさんと交戦中。どっちも引けを取らない位の熱戦だよ。」
なのはは、翔馬の先程の動きに驚きながらも相槌を返して作戦の状況を伝える。
「了解した。それじゃ、行ってくる。」
それだけ言うと、フェイトが移動した方向に向かって飛び立つ。一方はやて達は、
「多分、翔馬がこっちに向かってると思う。私は翔馬の相手をしてくるから、はやてはそろそろ広域魔法の準備を。」
「そやね。こっちも準備をはじめる。一気に逆転するよ。」
「ザフィーラはなのはの援護射撃を食い止めてくれる?」
「承知した。」
そう話しているうちに、翔馬は目標を視認していた。
「当たれっ!エアリアルシューター」
右手を前に出して魔法弾を3つ放つと、フェイトが即座に振り向き
「っく。プラズマランサー!」
苦し紛れに3つの魔法弾で迎撃した。そして、直ぐにバルディッシュをサイズフォームに変えると何もない自分の正面を横に薙ぎ払った。すると、ガンッという強い衝撃と共に翔馬が吹き飛ぶ。
「さすが閃光の異名を持つだけあって行動が早いな。」
「…そっちも流石だね。私じゃあんな芸当できないよ。」
2人はお互い顔に笑みを浮かべると再度ぶつかり合う。その様子を見て、ザフィーラははやてに声をかる
「主はやて。今の内に。」
「わかっとる。移動するよ。」
そう言って2人はその場を後にしザフィーラはなのはの妨害。はやては広域魔法の準備に取り掛かるのであった。
「シャマル先生。…準備はどうですか?」
なのはが砲撃魔法や魔法弾で味方の援護を行いながら、背後のシャマルに声を掛ける。
「うん。あと少しで出来そうよ。…でもゴメンね。私、戦闘に参加できなくて」
足元に魔法陣を張っているシャマルは苦笑いを浮かべながらそう言った。しかし、なのはは笑顔で
「シャマル先生は大事な最後の切り札ですよ。何も気にしないで下さい。これが成功すれば勝ったも同然なんですから」
「ありがとう。なのはちゃん。…うん、そうね。しっかり成功させて見せるわ」
気合を入れ直したシャマルは準備を一刻も早く終わらせようとさらに魔方陣を輝かせた。各チームが終盤に向けて準備を進め、模擬戦闘訓練は終盤に差し掛かろうとしていた。