魔法少女リリカルなのはStrikers~風のエースストライカー~   作:strike

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管理局地上本部襲撃事件、完結です。
偶然にも丁度30話ですね。
…ここまで来るのに長かったなとw
しかし、最終話まではまだあります。
これからも気を抜かずに物語を進めて行きたいと思いますので
改めましてよろしくお願いします。

それでは第30話スタートです。


第30話 運命の行方

「はぁぁぁ!!!」

 

ガンッ!!という鈍い音と共に強い衝撃その手に感じる。しかし、それでも負けじと鍔迫り合いの状態で押し返そうと腕に力を入れながら襲ってくる敵に声を掛ける。

 

「ゼストって言ったか?何企んでんだか目的を言えよ。…納得できる内容なら管理局はちゃんと話を聞く!!」

「若いな…。」

 

そこで向かい合っていたのは互いにユニゾンしたヴィータとゼストだった。そして、ゼストは一言つぶやくと周囲に火炎を待機させて照準を目の前のヴィータに向ける。それに気付いたヴィータは少し遅れて氷結の刃を展開させ火炎に照準を向けると同時に、ともにゼロ距離で魔法を放った。しかし、魔法は互いに相殺され、ヴィータとゼストは爆煙に包まれる。しかし、お互い無傷で距離を取ると再度武器を構えて様子を伺う。4人の戦いはまだまだ続きそうな気配を醸し出していた。

 

そして、時は少しだけ遡り、翔馬の病室。

いきなり現れたヴィヴィオ達に翔馬はどうしたものかと頭を悩ませていた。実際にはこのまま返した方が良いのだろう。ここではヴィヴィオを守る人間は存在しないし、向こうに居ればフェイトが駆けつけてくれる。だから、早めに返そうとしたのだが、その決断をするのが少しだけ遅かった。

 

「…こちら……ロングアーチ。」

「っ!?」

 

ゼフィロスに備わっている通信機能をONの状態にしていたままだった翔馬は信じられない事態を耳にすることになった。

 

「只今、ガジェットとアウンノウンの襲撃を受けています…。まだ、何とか持ちこたえていますが、もう…。」

「そ、そんな…。」

「くっそ…。」

「ん?」

 

グリフィスの途切れ途切れの音声にアイナを口元を押さえ、翔馬は唇を噛みしめながら拳を強く握った。1人状況を理解していないヴィヴィオはただ首を傾げるだけで今は翔馬の膝の上に笑顔で乗っていた。

 

「遅かった…。この状況じゃ、どうやったって6課の内部には入れてやれない…。」

「っ!!…申し訳ありません!!私の身勝手な行動のせいでっ!!」

 

翔馬の言葉にアイナは顔を真っ青に染めると勢いよく頭を下げて翔馬に謝罪を続ける。しかし、翔馬はそれを気にした様子も無くただ、微笑んでアイナの肩に手を置いた。

 

「大丈夫ですから。…顔を上げて下さい。俺が何とかして見せます。…こうなった以上騒ぎが収まるまでここでヴィヴィオを守りきるしかありません。協力、して頂けますね?」

「…はい!!」

 

翔馬の言葉にアイナは涙流しながら頷いた。そして翔馬は通信が絶えず入って来るゼフィロスの通信機能をOFFにしてヴィヴィオの首にかけてやった。するとヴィヴィオは少し重いデバイスを鬱陶しそうにするがいつも翔馬が首からぶら下げていた物に興味があるのか手に持って少し弄り始め、翔馬の顔を見上げて不思議そうにした。

 

「?なぁに?」

「…少し重いかもしれないが、それを持っててくれ。…俺の大事な物なんだ。俺が帰って来るまでそれをしっかり持っていてくれるか?」

「わぁぁ。うん!!」

「そうか。ありがとうな、ヴィヴィオ。」

 

翔馬はきっと今までで一番父親らしい笑みを浮かべるとヴィヴィオの頭に手を置いて撫でてやった。すると、ヴィヴィオは目を輝かせて頷き翔馬のデバイスをまた触り出した。それを見た翔馬は一度ヴィヴィオをベッドから降ろしてアイナの耳元で舌打ちする。

 

「あのデバイスに固定術式を組み込みました。あれをヴィヴィオがぶら下げている限り敵に発見されることは無いでしょう。…アイナさんにして頂きたいことはヴィヴィオがあれを外さないように見守ってもらう事。そして万が一の時はヴィヴィオを連れてここで無い何処かに身を隠してください。…やってもらえますか?」

 

翔馬の言葉にアイナは言葉を発することもできずにただ頷いた。そして、アイナは少しだけ落ち着いたのか自分のやるべきことを今度こそ違えないようにと頭に入れた。その最中、ベッドから起き上がりどこかへ向かおうとしている翔馬を見て尋ねずにはいられなかった。

 

「藤田隊長は…どちらへ?」

「少しだけ散歩に出てきます。…大丈夫ですよ。今日の朝も少しだけ歩かせてもらったんです。これくらいなら大したことありませんから。…それじゃ、後の事を頼みます。」

 

そう言った翔馬の表情は穏やかで、ホントに軽い散歩に出かけるような雰囲気だった。そして、翔馬は最後にヴィヴィオの方を振り向くと腰をかがめる。

 

「…ヴィヴィオ。俺は少しだけ出掛けることになったから。ここでアイナさんを待っててくれるか?…ちゃんと直ぐに帰って来るから、それまではそれを絶対に外すなよ?約束してくれるか?」

「うん!約束。」

 

翔馬の表情はそう言ったヴィヴィオは小指を翔馬に突き出し、翔馬は軽く笑ってから自分の小指を小さな小指に絡めて約束を誓い合った。そしてヴィヴィオに最後に声を掛けて立ち上がり、病室の外に出るとそこにいたのは、ユーノ・スクライアだった。

 

「翔馬…。」

「っ!?…ユーノ?」

 

突然の来客に翔馬は驚きを隠せない様子だったが、彼が何か言いたげに考え込んでる姿を見ると、翔馬は少し気分を落ち着けて目の前の少年に話しかける。

 

「俺が前に言った事と違って、お怒りか?」

「えっ?…あはは。そうじゃないよ。むしろ、今の状態を僕は元々望んでいたんだから。」

 

翔馬の問いにユーノは苦笑いを浮かべてそう答えると、少しバツが悪いような表情を浮かべながら外に誘った。

 

「少し外の空気を吸いにいかないかい?」

「今の状況…知らないはずないだろ?そんなことをしている暇は……はぁ。わかった。長くは取れないぞ。」

「分かってる。」

 

ユーノの言葉に翔馬は一蹴しようとしたが、以前にも見たユーノが本気の想いを伝えるときの表情を見てしまい、断ることが出来なくなってしまった。翔馬はユーノの後を付いて行く形で病院の中庭に出る。

 

「ゴメン。こんな非常時にこんなことをするなんて…おかしいってことはわかってるんだけど、今伝えなきゃ、意味がない気がして…。」

「…。」

 

翔馬はユーノが切り出すまで待ち続け、そしてやっと、ユーノが口を開く。

 

「この前は、すまなかった。…僕の早とちりで、翔馬にもなのはにも迷惑をかけてしまった。」

「その件は、俺が意図的に仕組んだんだ。ユーノが気にする事じゃない。失敗だったのはヴィヴィオを突き放さなかったことだ。…まさか、母親と父親が2人だなんて考えもしなかったからな。」

「あはは。確かにね。…でも、本当の母親と父親はヴィヴィオの中でもう決まってたんじゃないかな?…だからこそ、僕は君の態度が許せなかった。君がホントの父親として、なのはを支えるパートナーとして受け入れてくれればそれが皆にとっていいことだと思ったんだ。実際、僕が何をしなくてもそうなってたみたいだけどね…。」

 

ユーノはそう言って大切な誰かを思い出すかのように遠い目をした。それを見て、翔馬はやはり目の前の彼はきっと自分と同じ女性のことを想っているのだろうと、直ぐに分かった。翔馬自身、今まで彼女達を嫌っていた事などないしむしろ、好意すらあっただろう。…気が付いたのは最近の事だが。しかし、それでも翔馬は自分の役割と大切なものを天秤にかけた時、やはり自分の役割を優先することしか頭になかった。そのため、彼女達から身を引き、その代りの人物が現れてくれればそれで良いのだと。そう考え行動したが、最近になってその考えは徐々に変わって行った。彼女達と触れ合うたびにこの手で守りたいと、そして、その想いは大きくなりいつの間にかいつまでも傍で見守っていきたいと願うようになってしまった。だから謝らなくてはならないのはこちらの方だと翔馬はユーノに目を向けた。しかし、ユーノはそんな翔馬の考えを見抜いたのか軽く笑った。

 

「あ、翔馬が謝る必要はないよ?…翔馬は翔馬なりに彼女達の事を考えてくれてたんでしょ?僕も同じだ。」

「だったら、なおさら謝らないとだ。すまなかったユーノ。俺の身勝手でお前を振り回してしまった。」

「…律儀だな。…やっぱり翔馬には敵いそうもないや。…なんて。時間もないしこれで最後。」

 

ユーノは翔馬の謝罪に軽く頷くと、こちらが本題と言わんばかりに表情を硬くする。

 

「なのは達を泣かすようなことだけは絶対にしないって、誓ってくれ。…それが僕の、彼女達に対する想いだ。」

 

ユーノは翔馬に対して今までで一番厳しいめで見据え、その想いを告げた。それを受けた翔馬は同じく真剣にユーノの目を見つめ返す。

 

「…わかった。辛い思いで泣かせるようなことはしない。…だから、今は行かせてくれ。絶対に無事で帰って来る。」

 

翔馬はユーノの言葉を聞いてやっと何故このタイミングで自分を呼び止めたのかを理解した。

 

「約束できるんだね。」

「ああ。男同士の約束に二言は無い。」

 

それを聞いたユーノはやっと肩の力を抜いて翔馬を見た瞬間、少しだけ身震いをさせ、軽く笑みを浮かべた。なぜなら、ここは戦場で無いと言うのに目の前にいる男はもう既に空戦魔導師のエースストライカー藤田翔馬一等空尉の姿だったからだ。

 

 

そんなやり取りが繰り広げられていた頃、スターズ隊と別れて機動6課へと向かっていたライトニング隊は途中何者かに襲われ、フェイトはそれをいち早く感知するとソニックムーブで移動し、その攻撃を防ぐ。

 

「戦闘機人…か。…シグナム副隊長、エリオと、キャロを連れて先に行って下さい。直ぐに追いかけます。」

 

攻撃を受けた方向を見上げればそこには戦闘機人が2人。その2人を観察したフェイトは相手の戦闘スタイルを一瞬で見抜き、シグナムに相手をしてもらうよりも自分で対応した方が良いと考え、フェイトがこの場を引き受けることにして、他の3人に機動6課へ向かうよう指示を出す。

 

「フェイトさん!?」

「了解した。行くぞ。エリオ、キャロ。着いて来い。」

 

そう言って、キャロの言葉を無視してシグナムはフェイトの言葉に頷き先行すると、エリオがフリードに指示を出してシグナムの後を全力で追う。

 

「エリオ君!?」

 

フェイトの言葉に納得していなかったキャロは構わずフリードでシグナムを追わせたエリオに顔を向けた。すると、エリオは真剣な表情を浮かべてキャロに答える。

 

「空戦で、アウトレンジで打てる相手が居るんだ。僕達がここに居たらフェイトさんが全力で戦えない。」

「あ…。…うん。わかった。」

 

エリオの言葉にキャロは頷くと先に行くシグナムに追いつこうとフリードに指示を出した。それを見てシグナムは少しだけ笑みを浮かべると6課で盾となっている仲間の元へと急いだ。

そしてその頃、襲撃を受けている機動6課ではシャマルとザフィーラが前線で何とか壁を作っていた。しかし、背後にある機動6課の隊舎は既に炎が上がり、ガジェットにも浸食され、崩壊寸前と言っても過言ではなかった。さらに、2人の目の前には戦闘機人のオットーが攻撃を放とうとしていた。

 

「良く二人で守ったね。…でも僕のISレイストームの前で抵抗は無意味。」

「っ!?…クラールヴィント。防いで!!」

 

オットーの掲げた手から放たれる5本の砲撃をシャマルは5つの大きな盾で防ぐ。その隙にザフィーラがオットーへと仕掛けようとするが…。

 

「…ディード。」

 

オットーはつまらないものを見ているような冷めた目でやってくるザフィーラを見つめながら、待機していたもう1人の戦闘機人に声を掛ける。

 

「なっ!?」

「IS…ツインブレイズ。」

「ぐぁぁぁぁ!!!」

 

無機質な声と共に振り降ろされた双剣を真面に喰らいザフィーラは地面へと思いっきり叩きつけられ、砲撃を防いでいたシャマルの盾も限界を迎えついに破壊されてしまった。2人は成す術もなく、宙に浮かぶ戦闘機人を見つめるとオットーは一言つぶやいてさらなる攻撃を放とうとしていた。

 

「…さような」

「させん!!…レヴァンティン!!…飛龍・一閃!!!」

 

しかし攻撃が放たれる前に、6課へと向かっていたライトニング隊が到着し、シグナムは敵に急接近すると背後から炎を纏ったレヴァンティンを振るう。しかし、間一髪それに気が付いたディードがオットーを回収してその場から一度、距離を取った。そして、シグナムは疲弊しきった2人の前に立ち塞がると横目で2人の生存を確認する。

 

「シグナム…。」

「…すまない。」

「いや、間に合って良かった。…エリオとキャロは隊舎内部のバックヤード陣の保護を優先!ガジェットは全て潰して来い!!」

「「了解!!」」

 

後からやってきた2人と1匹の竜は地上に降り立つとフリードは体を小さくしてキャロの肩へ飛び乗り、2人はそのまま隊舎の中へと入って行った。それを見送ったシグナムは今度こそ目の前の敵に剣を向ける。

 

「貴様らを公務執行妨害、暴行罪、その他罪状により逮捕する!!」

「くっ!!」

 

シグナムはそう言うとレヴァンティンを振りかぶりディードに打ち付け、それを合図に戦闘の第2ラウンドが始まった。

そして、隊舎の中へと入ったエリオとキャロはシグナムの指示を受けて、バックヤード陣が待機しているであろう奥の方へと道中遭遇したガジェットを潰しながら足を進めていた。

 

「こんな…。酷い。」

「うん。…でも、今はみんなを助けなくちゃ。」

「そうだね。」

 

2人は昨日出発した隊舎とは思えないほどの荒れざまに気を落としそうになるがそれよりも先にやるべきことを見つけそのために足を動かす。そして、暫く行くと大きな音を立てて誰かのうめき声が聞こえた。

 

「今のは!?…エリオ君!!」

「行こう!!」

 

エリオを先頭にキャロがその後を付いて行く。そして、角を曲がるとそこにはヴァイスが横たわっていた。しかもその怪我は酷く、見ただけで重傷だという事がわかった。

 

「ヴァイス陸曹!!…しっかりして下さい。一体何が…。」

 

そう言ってエリオはヴァイスの近くに寄ると、ヴァイスは目を開けて2人の姿を辛うじて確認することができた。

 

「すまねぇ。…この先に、まだ、あいつらが……。俺がもっとしっかりしてりゃ…ぐっ!!頼む。他の奴らを…助けてやって、くれ…。」

「「ヴァイス陸曹!!」」

 

それだけを言うとヴァイスは意識を失い、エリオ達はその姿を見てもう一度ヴァイスの名前を呼ぶが完全に意識を手放したようで、目を覚ますことは無かった。そのため、ヴァイスの言っていた残りの仲間を守るためにも取り敢えず安全な場所まで移動させ、ヴァイスの指さした方向に向かって走り出した。そしてそこで見たのは今にも戦闘が始まりそうなルーテシアとガリュー、そしてバックヤードスタッフの姿だった。

 

「ダメェェェ!!」

「っ!?…ガリュー。」

 

キャロの大声に振り向いたルーテシアは既に飛び上がってストラーダを振り降ろそうとしているエリオを一瞥し、隣のガリューに声を掛けた。その瞬間ガリューもエリオに向かって飛び上りお互いに武器を振り降ろす。

 

「うぉぉぉぉ!!サンダー……レイジ!!!」

 

そして、ガリューの腕にストラーダがぶつかった瞬間バチバチと電気がガリューの体に流れガリューは着地と同時に膝を付いてしまう。そしてルーテシアを飛び越えてバックヤードスタッフの前に立ちはだかったエリオはストラーダを構えて戦闘準備を整え、そしてルーテシアの背後ではキャロがケリュケイオンを構えて、その横をフリードが威嚇するように、唸り声を上げていた。この状況に少しだけルーテシアは危機を感じガリューに指示を出す。

 

「ガリュー。…行こう。」

「…。」

 

ガリューは痺れを振り切るかのように腕を一振りすると、ルーテシアの近くに歩み寄った。

 

「っ!?…待って!!あなたなどうしてこんなことをするの!?…理由があるなら教えて!!」

「…関係ない。」

 

ルーテシアはそれだけ言うとガリューに抱きかかえられた。それを見たエリオはストラーダの加速を使って突進を掛ける。

 

「させない!!……ぐっ!!」

 

しかし、その攻撃はガリューに躱され、横から蹴りを入れられるとエリオは瓦礫の中に突っ込んで起き上がるのに時間が掛かってしまう。

 

「エリオ君!!…きゃぁぁ!!」

 

そしてエリオが攻撃を受けたことに気を取られたキャロはルーテシアの魔法を受けて吹き飛ばされ、立ち上がった時には横の壁に穴が開いて既に逃げられた後だった。

 

「逃げられた…。」

「うん。だけど、今は皆を…。」

「そうだね…。」

 

そう言って、2人は協力してバックヤード陣の安否を確認しながら安全な場所までの誘導と、動ける人は負傷者の移動をお願いしながら、エリオとキャロは残りのガジェットを破壊して行った。ただ、1つ気になったのは、避難した人の中に居る筈のヴィヴィオとアイナの姿が見当たらない事だった。

 

そして、場所は再度地上本部上空に戻りそこでは既に何十合と打合ったヴィータとゼストが向かい合っていた。お互いに少しだけ息を切らしながら間合いを詰めてまた、打合う。しかし、ゼストは何か気配を感じたのか地上本部やそれ以外の場所で管理局が動いていることを察知する。

 

「もう、向こうの守りは復活したか…。ここまでか。撤退するとしよう。」

 

そう呟くとゼストはユニゾンを解除して撤退の準備を始める。それを見たヴィータは少しだけ肩の力を抜いてゼストがどのように動いても捕縛できるように目を光らせていた。そして、ヴィータが動こうとした時、急にリィンの警告が頭に響く。

 

「ヴィータちゃん!上!!」

「何!?」

 

ヴィータはリィンの声に上空を見上げるとそこには巨大な火炎の球が浮かんでいた。それが落とされる前に排除しようと、ヴィータは再度アイゼンを構え直してその火炎の球に向かって飛び出す。

 

「こっのぉぉぉ!!!」

「ふん!!!」

 

しかし、それは叶わずさらに速いスピードでゼストが迎撃し振りかぶったアイゼンを止められた。鍔迫り合いになったかと思ったが実際はそうではなかった。見る見るうちにアイゼンにひびが入り、徐々に押し戻されていく。そして、ゼストはさらに体重を乗せると思いっきり薙刀を振るった。

 

「はぁぁぁ!!!!」

「ぐわぁぁぁ!!」

 

その力に押し負けたヴィータはアイゼンの砕ける音と共に地上まで吹き飛ばされ墜落した。

 

「この…や、ろ。…あっ。」

 

ヴィータはふらつく体を支えながら立ち上がろうとするといきなりユニゾンが解けハッとした表情を浮かべる。

 

「リィン?…おい!リィン!!」

 

ヴィータはリィンの名前を叫ぶが何の反応も無くただ無言が続くだけだった。それを遥か上空から一瞥したゼストはアギトを抱えて戦域を離脱するのであった。

 

そして、ここは地上本部の地下。そこにはローラーが転がり走る音が響き渡っていた。そして、そんな中、先行する1人の少女を咎める声が響く。

 

「スバル!!先行しすぎ!!」

「ゴメン!でも、大丈夫だから!!」

 

しかし、スバルは速度を落とすどころかさらにスピードを上げてその距離をさらに離していく。

 

「仕方ないね。こういう場所だと、スバルの方が速い。」

 

ティアナを抱えながら通路を飛ぶなのははスバルの先行を見ながら、どうしようもない状態に少しだけ顔を歪める。しかし、それも一瞬の事だった。

 

「でも、大丈夫。こっちが急げばいい。」

 

そう言って、なのはも速度を上げてスバルを追う。そんな中スバルの頭の中はギンガの事で一杯だった。もしかしたら、戦闘機人との戦闘を行っているかもしれない。いや、もしかしたら既に…。そんな考えが頭から離れず、必死に先を急いでいた。思い出すのはギンガの笑顔。いつでも笑顔で抱きしめてくれた。そんな優しいお姉ちゃん。それが今は手の届かない所に行ってしまうかもしれない。それが怖くて苦しくて。そんなことを考えて速度を上げているうちに広い場所へと出た。そして……そこには一番見たくない光景が広がっていた。

 

「えっ!?」

 

戦闘機人が3人その内の1人に掴まれてグッタリとした1人の女性。信じたくなかった。認めたくなかった。でも血を流してケースに入れられようとしている女性は、紛れも無く、ギンガ・ナカジマ。スバルの姉だった。それを認めてしまった瞬間。何かが切れて沸騰するような熱い感情が溢れ出て来る。

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

声にならない叫び声を上げ、溢れる魔力を解放し、流れ出る涙すら拭う事もせず、ただ無我夢中で愛する姉を取り戻すために…。

 

「返せよ…。ギン姉を…返せよぉぉぉぉ!!!!」

「ちっ!!」

 

そう叫び声をあげて飛び出したスバルに反応したノーヴェはエネルギー弾を乱射したがそれでもスバルは躊躇うことなく進み、拳をノーヴェへと叩き込んだ。

 

「うおぉぉぉぉぉ!!!!…ど、けぇぇぇぇ!!!」

「うわぁぁぁぁ!!」

 

そして、ノーヴェのシールドを破壊し蹴りを交わすと、お互いの威力を相殺しきれず吹き飛ばされ、それぞれ壁にクレータを刻み立ち上がった。その威力を見てチンクは自分が相手することを2人に伝えると起爆型のナイフをスバルに向かって投げ、2人の脱出をサポートする。それを睨み付けたスバルは再度雄叫びを上げて魔法陣を展開させる。

 

「邪魔…するなぁぁぁぁ!!!」

 

しかし、どんなに叫んでもその想いは届かない。クロスレンジのスバルがミドルレンジのチンクに辿り着く頃にはその体はボロボロになっていた。それでも、姉を取り戻すため、スバルは覚束ない足取りでチンクに向かって手を伸ばす。しかし、それすらも届きはしなかった。向こうにとっては間一髪。セインが到着するとその姿は地面に消えスバルはその場に膝をつくしかなかった。そしてそれと同時に過負荷を与え続けていたマッハキャリバーも全損。その機能を停止させてしまった。そしてスバルも、ギンガを失った悲しみで涙が溢れ、泣き声を上げるしか出来なかできずその悲しみはホール全体に響き渡った。

 

「ギン姉…。う、うわぁぁぁぁぁ!!!!」

「スバル!!」

 

遅れて到着したなのはとティアナはスバルの姿を見て駆け寄るが、既にその戦闘は終わっており、2人にできることはスバルを病院へ搬送しその場の現場検証しかなかった。

 

そして、場所は機動6課隊舎前。エリオとキャロの攻撃から逃げ切ったルーテシアはその成果を司令塔のウーノへと連絡を入れた。

 

「ウーノ。ここには目当ての子、居ないみたいだけど。」

「それは、本当ですか?ルーテシアお嬢様。」

「うん。…レリックは何個か見つけたけど…。」

 

ルーテシアの報告に驚いた様子のウーノは再度、検討を始めるがそこにいないのでは心当たりがあるはずも無くルーテシアに帰投の指示を出した。

 

「了解しました。そちらの方は、別のものに当たらせますので、ルーテシアお嬢様は御帰投下さい。」

「うん。」

 

それだけ言うと、ルーテシアは近くにいたガジェットを使って空へと飛び立った。それを合図にオットーとディードは撤退の準備を始める。

 

「行かせん!!…紫電…っ!?」

「いや、行かせてもらうよ。レイストーム。」

「くっ!!…一閃!!!」

 

シグナムは放とうとした紫電一閃の対象を対処を目掛けた放たれたレイストームに切り替えるとその技を放ち、爆煙が舞う。しかし、直ぐに剣でそれを薙ぎ払うと2人の姿を探すが、既に2人の姿は見当たらなかった。

 

「逃がしたか…。エリオ、キャロ。そちらは大丈夫か?」

 

シグナムは一度地上に降り立つと隊舎の中に入って行ったエリオ達の安否確認を行い、いまだに残っているガジェットの殲滅行動に移行した。

 

「そろそろ、向こうは片付いたか…。」

 

翔馬は病院の屋上から燃え盛る地上本部とその視界の端に映る機動6課の隊舎を見つめていた。その瞳は既に軍人のものだった。なぜなら…。

 

「そうでしょうね。しかし、まだこちらにはやるべきことが残っています。聖王の器の在処を教えて下さい。翔馬さん。」

「俺が最後に聞いたのは機動6課の隊舎だったな。俺が知っているのはそれくらいだが?」

 

翔馬は燃え盛る炎から目を逸らさずに答えると背後に少女が現れ、翔馬に向かって大太刀を構える。するとやっと翔馬は振り向いてその少女の姿を視界に入れた。

 

「いつまでこんなことを続けるつもりだ?…シエル。」

「聖王の器が手に入れば終わります。…私だってこんな事を続けたいだなんて思っていません。…終わらせるために必要なのです。彼女の魂が。」

 

そう言って翔馬を見据えるシエルの眼は本気だった。流石の翔馬でも今の様な丸腰状態で対峙できる相手ではないことは以前の戦闘でわかっていたが、順調に回復に向かっている翔馬から見たシエルは確実に全快の状態でないと相手にならないことが直ぐに分かった。しかし、ここで不審な様子を見せれば確実に攻められると感じた翔馬は内心焦りながらも、表面では冷静に対処することを絶対としてシエルを見据える。するとシエルが一歩踏み出すと再度問いが投げかけられる。

 

「もう一度お聞きします。聖王の器は何処ですか?翔馬さんが細工をされていることはわかっています。貴方の首にデバイスがぶら下がっていないことが何よりの証拠でしょう。」

「デバイスはどこかの誰かさんの所為で俺と一緒に調整中だ。まず無いが、もし俺が細工をしている事がわかっているならその場所も分かるはずだろう?…ま、それでもそこにヴィヴィオが居るかどうかは知らないがな。」

 

翔馬の物怖じしない言動にシエルは表情を険しくすると翔馬を睨み付けた。

 

「あくまでしらを切ると?」

「知らない事を話せと言われても、話せるはずもないだろう?」

 

シエルは翔馬の態度見て呆れた様に溜息をつくとその大太刀を降ろした。

 

「本当に貴方は相変わらずですね…。まぁ、少し安心しましたが。私があの日に言った言葉。…聞いてなかったなんてことはありませんよね?…わかっていてこんなことをするという事は、覚悟はおありなのですか?」

「…ああ。やってやるさ。何が来たって誰一人として欠けずにこの事件を解決して見せる。」

 

翔馬の言葉にシエルは軽く俯くと何かを呟いてから笑みを浮かべ、そうですかと言って翔馬から視線を外した。そして、シエルは暫く無言でいると唐突に翔馬の目の前まで詰め寄りその顔を覗き込んだ。

 

「それなら、聖王の器の代わりに…貴方が来てくれますか?…翔馬さん。」

「……どういうつもりだ?」

 

翔馬の問いに対してシエルは翔馬の肩を掴んで自分の目線まで下げさせると、その顔を近づけて行く。その突然の行動に呆気にとられた相馬は反応することがでずに目の前のシエルを見つめてしまう。そしてシエルはそのまま顔を近づけて行き…翔馬の額に自分の額をぶつけた。

 

「何をっ!?」

 

遅れて翔馬は腰を上げようとすると気を付けていなければ聞こえないような声でシエルが囁いたのを聞いて翔馬は再度自分の動きを止めた。

 

「…1つだけ。私が一番危惧しているのは魔導型質量兵器『無限の欲望』。ジェイル・スカリエッティのコードネームを持つその兵器は古代ロストロギア級の大量殺戮兵器。その威力は聖王のゆりかごには劣るもののそれでも十分管理局と渡り合える戦力です。そして、魔法の力を持った質量兵器を制御するためのキーが私です。ここまで言えば、どれだけのものかお分かりになりますか?」

「…なんだと……。」

 

翔馬はシエルの言葉に驚きを隠せずにいた。それもそのはずだろう。驚くべき点があまりにも多すぎる。想像はしていたがジェイル・スカリエッティが聖王のゆりかごに匹敵する兵器を持っている事。ただの質量兵器ではなく、魔法と質量兵器の融合に成功している事。魔力供給源が魔導師であるという事。そして、こちらは想像でしかないが、シエルをキーとするのであればIS『魔力収集』を兵器によって増幅できる可能性も考えられる。威力自体は聖王のゆりかごに劣るかもしれないが、性能と危険度で比べれば遥かに今上げた兵器の方が危険だろう。それを直ぐに理解した翔馬は顔を今度こそ上げ、話を戻す。

 

「それで、なんで俺が必要なんだ。俺はお前みたいに無尽蔵の魔力を持っているわけでもない。…何が目的だ。」

 

翔馬のその言葉を聞いてシエルは思わず笑い出し、その笑顔は翔馬が久々に見るシエルの本当の笑顔だった。しかし、同時にその笑顔はどこかで見たことのあるようなもので翔馬は思わずハッとする。

 

「翔馬さん。…本当はわかっているのでしょう?この状態で私が貴方に求める事など決まりきっている筈です。……ですが、まぁ、私から言い出したことですし…私がお願いする方が道理、ですね。」

「何を言ってるんだ。…シエル。お前は…!!」

 

翔馬は何かに焦る様にシエルに声を掛けると、その当人は翔馬がいつか見たような笑みを浮かべてこう言った。

 

 

 

 

「私は皆を守りたい。……私の願い、一緒に叶えてくれませんか?」

 

 

 

 

翔馬が聞いた言葉は2度と聞くことがないようにと願った最悪の言葉だった…。

 

 

 

 

 

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