魔法少女リリカルなのはStrikers~風のエースストライカー~   作:strike

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お久しぶりです。

今回はサブタイ通りですが、原作とはまた違った意味を持ちます。
これから最終局面に突入していきますが、物語はどう進んでいくのか
楽しみにしてもらえると嬉しいです。

ご意見ご感想は相変わらずいつでも募集中です。

それでは第33話スタートです。


第33話 無限の欲望

なのはとの戦闘を終えた翔馬はシエルと約束した場所へ向かうため暗い海の上を滑走していた。

その瞳には既に涙の痕は消え去り、今は自分の行く先をしっかりと見据えてる。しかし、その表情は曇ったままだった。

 

「また、この場所に来る事になるとはな…。」

 

翔馬はシエルと約束した地を目にするとそう呟いた。その場所は、翔馬がかつて大怪我を負わされた港にある倉庫街。翔馬は複雑な思いを抱えながらその港に降り立つと、数ある倉庫のうち一ヶ所だけ不自然に扉が開けられている倉庫を見つけ、足をそちらに向ける。翔馬は倉庫の入り口に立つと中を覗き込み様子を伺うが、夜の所為もあるのか倉庫の中は真っ暗で視界には深い闇が広がるだけだった。そして、その光景はこれから翔馬が進む道を現しているかのようにも思われ、翔馬は無意識のうちに後退りしそうになる。しかし、その無意識の行動に気付くと軽く笑みを浮かべ、覚悟を決めたのか一歩一歩踏みしめるかのように暗い闇に目を向けて足を踏み出して行った。

 

 

 

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夜が明けて朝。今日は機動六課の隊舎を離れ隊員達は新たな拠点に移動をする日となっていた。

そして、ボロボロになった隊舎を見つめながらそこには既に身支度を整えた機動六課の隊員達が揃い、後は部隊長の指示を待つだけとなっていた。しかし、隊員達は全員が揃っているにも拘らず何時まで経っても出発の指示が無い事に首を傾げる。そんな中、隊長達の方を見ていた隊員の1人が翔馬の姿が見えないことに気付き、そのことを口に出すとその違和感は伝播し、果てには全員が話を始めてしまった。1人事情を知っているなのははそんな様子を少し寂しそうに見つめていると、部隊長から全員に向けて声が掛けられる。

 

「全員静かに!!…これから機動六課のお引っ越しや。どっかのお馬鹿さんが遅れてるみたいやけど、全員揃い次第、直ぐに移動を開始します!!…皆は移動の指示があったら直ぐに動けるよう準備をしといてな。」

 

はやての声に隊員達は空気を震わせるかのような声で返事を返すとそこは軍人たちと言った所か。直ぐに移動できるよう纏められる荷物は纏め、それらの荷物を担いで声が掛けられればいつでも動けるように支度を始めた。その中でも、今日久々に病院から帰って来たスバルは支度を進めながらはやての言葉に引っかかるものを感じ、隣のティアナに向かって念話を飛ばしていた。

 

『ねぇ。ティア?』

『何よ?…口動かしてる暇あったら手を先に動かしなさい。』

『ちゃんと、手を動かしながら口も動かしてるよ?って、そんな事より!!』

 

スバルの呼びかけに対して鬱陶しそうにティアナが返事を返すとスバルは生真面目にティアナに向かって準備を進めているアピールをするが、元の用件を思い出してハッとした表情でティアナを見つめる。するとティアナは大きなため息をついてスバルに目を向けた。

 

『だから何よ?』

『うん。今、はやて部隊長が言っていた人って翔馬さんだよね?翔馬さんが遅刻って珍しくない?もしかして何かあったんじゃ…。』

 

スバルの言葉にティアナは呆れた様に頭に手を当ててスバルを横目で見据える。

 

『だから、今フェイトさん達、ライトニング隊が翔馬さんの様子を見に行っているんじゃない。向こうで調べていることをこっちがそわそわして気にしてても仕方ないでしょ。さっさと支度!!』

『…は~い。』

 

ティアナの剣幕に怯えながら返事を返すとティアナの案の定、止まってしまっていた手を動かし始め支度を整えて行った。一方で、翔馬の事を気にしていたはやては全員の支度が整ったことを確認すると一度肺から空気を大きく吐き出して宿舎を見つめる。

 

(こんな大事な時に何やっとるんや…。翔馬君、変なことに巻き込まれてへんやろな?)

 

はやては唇を噛みしめて胸の内にある不安を膨らませていた。…そして、暫くの時間が経つとはやての不安は翔馬の様子を見に行ったライトニング隊の言葉によって的中したことが告げられる。

 

『はやて。こちらライトニング1。…今、翔馬の部屋の前について声を掛けてみたんだけど、返事が無くて。』

『失礼かとも思ったんですけど、今は急ぐ必要があると思ってマスターキーで扉を開けてみたんです。…けれど、部屋の中に翔馬さんの姿が見えなくて。』

『なんやって!?』

 

フェイトとキャロの報告にはやては驚きを隠せなかった。しかし、はやては咄嗟に頭を働かし翔馬の身に何があったのかを推測する。しかし、その途中で再度エリオから連絡が入ったため、一旦その考えを中断しエリオの言葉に耳を傾ける。

 

『部屋の中に争った形跡は無く、布団も冷たくなっていました。窓は開け放たれている形になっているのですが…。それ以上の情報は何も…。』

『そっか、お疲れさん。ライトニング隊は直ぐにこちらと合流し、出発の準備を。…翔馬君の事は取り敢えず後回しや。こんなバタバタしてる時に時間を無駄には使えない…。みんなもそれでええか?』

 

はやては翔馬の行方よりも先に隊員達を新たな拠点へ移動させていつでも事件に対応できるようにする方が先決と考え、全員にその確認を取るとなのは以外の隊長達は全員が頷き、はやてとフェイトは返事のないなのはの様子を伺うかのように声を掛けようとした瞬間。

 

『私も異存ありません。行こう。私達の新たな拠点へ。』

 

なのはの真剣な表情とその言葉に隊長達全員が何も言えなくなってしまい、なのはの言葉に頷いて、翔馬を除いた機動六課メンバー全員は新しい拠点である、アースラへと移動を開始した。その様子を後ろから見つめていたはやては心配げな表情を浮かべながら1人呟く。

 

「なんか嫌な胸騒ぎがする…。こっからが正念場やで。八神はやて。」

 

そう言ってはやては表情を切り替えると凛とした瞳で戦友であり、幼いころからの親友でもある彼女達の待つ場所へと足を踏み出した。様々な思いを胸の内に秘めながら。

 

 

 

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更に1日が経ちここは、アースラのブリーフィングルーム。

昨日は全員荷物の搬入や整理、機材のメンテナンスチェックにアースラの航行準備等やることがたくさん有り、殆ど通常業務を行えなかった。そのため、今日の早朝、つまり今、これからの機動六課の方針を決めるために機動六課の隊長及びフォワード部隊で会議が開かれていた。そして、今の状況をグリフィスとはやてがそれぞれ説明を行い、説明が終わると、はやては一呼吸置いて全員を見渡し今後の方針を伝え始めた。

 

「…と、まぁ。地上本部からの情報支援は無いにしても、うちらの基本方針は今までと変わらず。レリック捜索をメインとして、その延長線上にたまたまジェイルスカリエッティとその一味が絡んでいた。そして、今回の捜査線上で攫われたスバルのお姉さんであるギンガ・ナカジマ陸曹の救出を行う。そういう線でこちらは動いて行く。…3…両隊長、なんか質問とかあれば。」

 

はやては一瞬、翔馬を含めて問いかけそうになったが、途中で言い直すと2人に顔を向ける。その言葉になのはは少し俯くが直ぐに顔を上げてフェイトと共に少しだけ心配げな表情を浮かべた。

 

「理想の状況だけど…はやてちゃん。また、無理してない?」 

「ちゃんと後見人の皆さんにはこの件について了承の上、黙認してくれとる。協力は取り付けてあるよ。…それに何よりここで動けな、機動六課設立の意味があらへん。」

「…そういう事なら、私に異存はないよ。」

「うん。私も。」

 

そう言って立ち上がったフェイトとなのはは微笑んで頷いた。しかし、全員が中々口に出せなかった言葉を一番幼い筈のキャロが恐る恐る手を上げてはやてに発言の許可を求める。それを見たはやては、微笑みながらキャロに質問を促す様に話しかけた。

 

「何かわからへん所でもあったかな?キャロ。」

「い、いえ。六課の方針については理解しました。ただ…」

 

はやての言葉にキャロは慌てながらも答えるが質問を口に出そうとすると、俯くようにして言いにくそうに口を開いては閉じてを繰り返していた。それを見かねたエリオはキャロの代わりに覚悟を決めるとその場に立ち上がってはやてに質問をぶつける。

 

「すみません。こんな質問をするのも…どうかと思うんですが、…翔馬さんの対応についてはどうなるんでしょうか?」

「エリオ君…。」

 

エリオの言葉にキャロは少し申し訳なさそうに見上げ、スバルとティアナは元々自分から聞くつもりだったのかはやての方に顔を向けて真剣なまなざしを向けていた。一方でフェイト、はやては困った表情を浮かべ、なのはに至っては顔を俯かせその表情を読み取ることはできなかった。

 

「…その話は、あんまり皆に心配を掛けさせるといけないと思って黙ってたんやけど…。昨日機動六課の魔力センサが1機生き残っとったことが判明してな。もしかしたらこのセンサに何か引っかかっているかもと調べてみたら、藤田翔馬一等空尉は一昨日の深夜にどこかに向かって1人で飛んで行ったみたいなんや。」

「そんな!?」

「何で!!」

「一体どこに向かって行ったんですか!!」

「…。」

 

エリオ、ティアナ、キャロはぞれぞれ席を立ちあがってはやてに問い詰めるように言葉を投げかけ、スバルは席に座って息を飲み、焦点が合わない瞳ではやてを見つめていた。それに対しはやては3人の勢いは元々予想していたのかさほど驚いた様子も無く静かに目を閉じる。その様子を見た3人は少し冷静になったのか一言謝ると席に座り直してはやての言葉を待つ。

 

「まぁ、皆が驚くのも無理はあらへんし、気にせんでええよ。ただ、何が目的で、どこへ向かったのかはわからないのが現状や。偶々残っていた魔力センサ1機の測定範囲は半径2km。それの端っこに僅か0.3秒しか映らへんかったからな。」

 

はやては無理して作った様な笑みを向けると、その言葉を聞いた皆は落胆したかの様に『そうですか』と一言呟くと目を伏せるようにした。フォワードメンバーの反応を見たフェイトは少しなのはを気遣いながら、皆を見渡すとはやての言葉を捕捉するように口を開く。

 

「もちろん、分からないからって、翔馬の捜索をしない訳じゃない。…ただ、今回の件に関与している場合のみって言う限定的なものになってしまうけれど。でも、きっと翔馬が動いたのは今回のレリック、もしくはジェイルスカリエッティに関することだと思うから。何か情報が掴め次第皆にも伝えるから、それまで待っていてくれる?」

 

スバル達はフェイトの言葉に頷くとそれを見たはやてが立ち上り、出口に向かって歩き出した。それと同時にはやては皆の方を振り向くと最後にこれからの予定を伝える。

 

「ほんなら、出動は本日中の予定や。万全の状態で待機しとってな。」

「「「「「「了解。」」」」」」

 

全員がはやての言葉に頷くとはやてとフェイト、なのはは司令部と向かい、スバル達は来るべき戦闘に備えるためトレーニングルームへと向かった。そして、はやて達は無言で歩き続け、誰にも声が届かなくなったと確認できたところでフェイトがはやてに問いかける。

 

「はやて。…いいの?翔馬の行き先を伝えなくて。」

「只の推測や。本当の事かどうかも分からない不確定で、しかも悪い方向に捉えられる情報を今のあの子たちに知らせるのは早すぎる。」

 

フェイトの心配げな表情に対してはやては真面目な表情でそう言うと、フェイトは少し納得がいかないように俯く。

 

「でも、情報を共有しておけば何かあった時の策も考えておけるし、翔馬が向かう先とするなら多分あそこしか…」

「フェイトちゃん。」

 

なのははフェイトに呼びかけると静かに首を振り、フェイトもそれで諦めたのかそれ以上は何も言わずにはやての後ろを歩く。そして、はやてもなのはに対して何か思うところがあるのか少し戸惑いながらも顔は正面を見据えたまま口を開いた。

 

「なのはちゃん。…何度も疑うようで悪いんやけど、本当に翔馬君の行き先とか目的は…」

 

そうはやてがなのはに問いかけようとした瞬間、なのはの表情がこわばると同時にアースラ艦内全体にレッドアラートが鳴り響いた。

 

「ごめん。なのはちゃん。今のは聞かんかった事にしといて。私はブリッジに上がる。なのはちゃん達はフォワードメンバーを集めて出動の準備!!」

「「了解!!」」

 

はやての言葉に頷いた2人は直ぐに踵を返して再度ブリーフィングルームへと向かう。そしてその頃、シグナム、ヴィータの訓練を受けていたフォワードメンバーも異常事態を認識すると、副隊長達に目を向けた。

 

「訓練はここまでだ。」

「お前達は直ぐに休憩に入れ。10分やる」

 

ヴィータの言葉にスバル達は立ち上がって姿勢を正すと真剣な目を向け、上がった息を整える。

 

「私達大丈夫です!!」

「はい。このまま行きます。」

「キャロ、大丈夫?」

「うん。全然。私も問題ありません!!」

 

フォワードメンバーの言葉にシグナムとヴィータは一瞬驚いた表情を浮かべるが苦笑いを浮かべるとシグナムがレヴァンティンを待機状態にしながらスバル達に目を向ける。

 

「この出動が出されれば休憩はしたくてもできん。今は体を休めておけ。」

「そう言うこった。そんな息上がった状態で出動直後にトレーニングの所為で動けませんでしたじゃ、洒落にならねぇしな。今の状態よりはマシにしておけ。あたし達も取り敢えず体を休めてから動く。いいな?」

 

シグナム達の言葉にスバル達はしっかりと頷くと、副隊長達と共にほんの少しの休憩とクールダウンを行い、服を着替えてから艦内のブリーフィングルームへと向かい、出動命令を待つのだった。そして同じ時間。シグナムとヴィータはブリッジへと向かい、はやてやバックヤードメンバーと共に状況確認を行っていた。

 

「現在の状況は?」

「現在、アインへリアル1号機、2号機が破壊され、戦闘機人達の移動が始まっています。」

 

シャーリーの言葉にはやてはモニターへと視線を動かし光点を追う。するとその複数ある光点はどれもバラバラに動いてるのがわかり、それを見て悔しげに唇を噛みしめる。

 

「早めに叩かんと、取り返しのつかんことになるけど…嫌な感じに拡散してる。隊長達の投入はしづらいな…。」

 

そうはやてが呟くと、突然ヴェロッサからの直通連絡がアースラに届き、はやては通信を受け取るとモニターには焦りが感じられる表情が映っていた。

 

「はやて。こちらヴェロッサ。スカリエッティのアジトを突き止めた。今アジトから出てきたガジェットをシャッハが叩き潰している。…教会騎士団から応援を呼び寄せているが、機動六課からも制圧戦力を送れるかい?」

「それはもちろんやけど…」

 

はやてとヴェロッサがそのような話を進めている内に戦闘機人達はアインへリアルからの撤収が完了し、地上本部へと移動が開始されたことを告げられる。そしてさらに、モニターには新たに光点が2つ浮かび上がり、その新たな光点の地点映像を見たものは全員が驚愕することとなる。まず1つ目はアギトを連れたゼストの姿。

 

「…。」

 

ブリッジに上がっていたシグナムはその騎士を見つめ何か思うところがあるのか無言で、しかし鋭い眼差しをその騎士に向けていた。2つ目の光点は廃棄都市から急に現れ、これ以上魔力を隠す必要が無いと言わんばかりに徐々に魔力反応を濃くしていく。その相手は、

 

「あっ!!」

 

声を出したのは移動中のスバルだった。モニターはアースラ内に浮かび上がる様にして表示されるため誰が何処にいても確認できるようになっている。そして歩みを止めたスバルに釣られてティアナ達もモニターに目を向けると、そこに映っていたのはスバルの姉であるギンガだった。

 

「ギン、姉…。」

 

スバルは自分の姉が戦闘機人達と共に地上本部へと向かっている姿を見ると立ち尽くしたかのようにモニターを見続けていた。そして、手に握っていたマッハキャリバーに力が入り始め、微かにその手が震える。まさか自分の姉が次に会う時には敵となって現れるとは思っても見なかったのだろう。その表情は驚きに染まり、それは機動六課全員に言えることでもあった。仲間が敵に回ったことを知ったメンバーはそのモニターに釘づけになる。しかし、これだけの事があったにも関わらず、報告はそれだけで終わらせてはくれなかった。声を震わせながら、艦内にシャーリーの声が響く。

 

「魔力反応…新たに、もう1つ…。嘘、でしょ…。」

「シャーリー?」

 

シャーリーの様子がおかしいことに気付いたヴィータはシャーリーの手元を覗き込む。その瞬間、ヴィータの表情も驚きに染まり様子を見ていたはやては尋常では無い事を覚悟しながらシャーリーに指示を出そうとした。その瞬間、全員の前に表示されている魔力反応が確認できるモニターに異変が突然起きた。そして、シャーリーとヴィータの驚きの意味を理解することになる。

 

「なんやこれは…!!」

「魔力反応…更に増大。まだ増えます!!」

 

はやては現在表示されている魔力量に驚くが、シャリーはさらに魔力が膨れるという。そのとてつもない魔力反応に機動六課の全員はその光景から目を離せなかった。次いでモニターに現れたのはジェイルスカリエッティ本人。そこで語られる言葉はこれから始まる戦いの合図でもあった。

 

「さぁ、いよいよ復活の時だ。私のスポンサー諸氏。そして、こんな世界を作り出した管理局の諸君。偽善の平和を歌う聖王教会の諸君。シナリオは私の描いていたものとは少しずれてしまったようだが、それは些細な事。そして、またこれも君達が忌避しながらも求めていた絶対の力であることには変わりはない…。魔法と質量兵器の融合が見せる無限の破壊。そして、破壊と言う欲望を満たすために開発された魔力収集技術。古代ベルカの叡智を独自に研究開発し作り上げた大量殺戮破壊兵器。」

 

ジェイルスカリエッティは自分に酔ったかのように語り、一区切りつくと映像は外に出たのかとてつもなく大きな何かが空に浮かんでいた。その形は異様で言葉にしづらい程不格好なものだった。形状は球体に近く感じられるが飛び出した大きな2門の砲台や、所々にちりばめられた短い砲台、無数の棘の様に飛び出すガジェットの射出台。球体の4方にはアンテナの様な物が付いている。形状は全く異なるがPT事件で見たことのある要塞の雰囲気にも感じられたそれは動作確認の様に一度生き物のように全体の棘と砲門、アンテナが動き始めると元の形に戻り、そして、大量のガジェットを吐き出し始めた。そして、それを見つめていたなのははその名を呟く。

 

無限の欲望(アンリミテッド・デザイア)…。」

「水色の鍵と扉の守護者はここに揃い、今、無限の欲望の扉が開け放たれ、その力を発揮する。」

 

その言葉と共に映し出されたのは更に驚愕する映像。遠目では何が映し出されたのか理解できなかったが、少しずつカメラが近づいて行くにしたがって映し出された者を理解する。そしてそれと同時に機動六課全員がその場に張り付けられたかのように動けなくなる。そこに映し出されていたのは十字架の様な台に磔にされ、呻き声を上げているシエルとその正面にシエルを守るようにして立つ翔馬の姿だった。

 

「さぁ、ここから夢の始まりだ!!」

 

翔馬の姿を見たなのははスカリエッティの言葉も耳に入ることなくその場から動けなくなると同時にその目は翔馬の姿に釘付けとなっていた。その姿は以前の翔馬の姿とは異なり上半身は黒いタンクトップのみで左肩の傷を見せることを渋っていた翔馬がそれを堂々と晒していた。そして下半身は深い緑のズボンをベルトで止めている。そのベルトには、黒いホルダーが右腰と左腰に付いており、きっと、マガジンが入っているのだろう。そして、翔馬の武器にして相棒であるゼフィロスはその身に着けてはいなかった。代わりに翔馬の身に着けていた武器は翔馬の身長程の刃渡りに刃幅は30cm程の、大きな大剣が2対翔馬の背中に背負われ、翔馬は目を閉じ腕を組んでそこに只佇んでいた。しかし、なのははそんな翔馬の姿をしっかりと目に焼き付けると一度目を閉じてモニターから目を外し、体の向きを変えてから目を見開く。

 

「なのは!!…大丈夫?」

「…大丈夫だよ。ギンガや翔馬君が敵になるのなら私達はそれを止めて連れ戻すだけ。」

「なの…ううん。そうだね。取り戻そう、あの2人を。」

 

なのはの目には迷いは無く、それを見たフェイトは自分の感じた動揺も忘れてなのはが動揺しないことに対する違和感で一杯になる。翔馬が敵にまわっているのにも拘らず落ち着いた様子。…それは決して無理をして隠しているものではなかった。多少の不安は感じていても、そこにあるのは信頼。そんななのはの様子にフェイトは口を開こうとするが…寸前でやめることにした。きっとなのはは翔馬の行き先を元々知っていた上で、翔馬の事を信じたなのははそれを見送った。そうであるならばこの反応も頷ける。確かな確証は無いにしても、なのはがここで話さないのならばそれは必要な事なのだろう。言葉を交わすことの大事さを自分に教えてくれた本人なのだから。と、フェイトはそこまで考えて口をつぐむと、これから始まる戦闘に向けて準備を進める為になのはと共にブリーフィングルームへと向かうのだった。ブリーフィングルームにははやてを除く隊長及び副隊長全員とフォワード隊、リィンフォースⅡが集まっていた。そして、カリム、クロノ、伝説の3提督が1人。ミゼット・クローベルが現状及び事件の経緯を話し伝える。そしてそれらの話を聞いたはやては自分の意思を伝えるように全員に向かって話始めた。

 

「みんな、今の話を聞いたと思うけど、どこから何処までが誰の計画で何が誰の思惑なのかは分からへん。そやけど今は、巨大要塞が空を飛び、町中にガジェットと戦闘機人が現れて民間人の安全を脅かしている。これは事実や。それを私達は止めなあかん。」

 

はやての言葉に隊長達とフォワードの4人は頷き返し、それを確認するとフェイトとなのはから現状報告とこれからの機動六課の対応について説明が行われ隊長の指示に従って自分の役割を確認していく。そして、なのは達の采配の結果、機動六課は大きく分けて3グループに別れる。1グループ目は町を脅かすガジェットと戦闘機人を管理局本部に近づけないように最前線で相手をする、スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、シグナムの5人。2グループ目は無限の欲望内部にあるレリックの確保、そしてシエル及び翔馬の捕獲を目的としたなのは、ヴィータ、はやての3人。そして、現場にいるヴェロッサ及びシスターシャッハと合流しアジトに潜伏しているスカリエッティの逮捕を目的としたフェイト。それぞれに思うところはあるにしても役割を果たすために機動六課が動き出す。

 

「第1グループ降下ポイントまであと3分です。繰り返します…」

 

アースラの館内放送を出撃用ハッチ内部にて聞いていたスバル、ティアナ、エリオ、キャロ。そして少し厳しい表情を浮かべながらなのはとヴィータはフォワードの全員の様子を伺っていたが、放送が鳴りやむと目線を教え子達に向ける。

 

「今回の出動は今までで一番ハードになると思う。」

「それに、今回はお前らがピンチでもあたしもなのはも助けに行けねぇ。」

 

その言葉を聞いた途端にスバル達は緊張感が増したのか肩に力が入り真剣な表情をなのは達に向けた。そんな教え子たちの反応を見たなのはは少し苦笑いしてから表情を引き締めて指示を出す。

 

「でも、ちょっと目を瞑って今までの訓練の事を思い出して。」

 

なのはの言葉にスバル達は顔を見合わせるが言われた通りに目を閉じて訓練の事を記憶から呼び起こそうとした。そのタイミングで、静かになのはの口が開かれる。

 

「ずっと繰り返してきた基礎スキル。磨きに磨いたそれぞれの得意技。痛い思いをした防御練習。全身筋肉痛になりながらも繰り返したフォーメーション。いつもボロボロになるまで繰り返した私達との模擬戦。」

「「「「ううっ…。」」」」

 

それぞれ、良い記憶を掘り返そうとしていたところになのはから声が掛かり、嫌でも身に染み付いてしまっているそれぞれの映像や感覚が思い起こされ、スバル達は全員揃って呻き声を上げてしまう。それを見たなのははくすっと笑ってから目を開けるように指示を出した。

 

「まぁ、私が言うのもなんだけどきつかったよね?」

「「「「あはは…。」」」」

 

なのはの言葉に頷くのも躊躇われたため曖昧に全員が苦笑いで返すと、ヴィータが少し笑みを浮かべてスバル達を眺める。

 

「それでも4人とも良くついてきた。」

「「「「え…。」」」」

 

ヴィータの予想外の言葉にスバル達は思わず耳を疑うようにヴィータを見つめる。そして、それに乗っかるかのようになのはもスバル達に声を掛けた。

 

「4人とも誰よりも強くなった…」

「「「「わあ…。」」」」

「とはまだちょっと言えないけど。」

 

一度上げられて落とされたためその衝撃にがっくりと肩を落としもう苦笑いすらできなくなってしまうスバル達だったが、なのはの表情が真剣なものに変わったのを見て4人も表情を引き締めた。

 

「でも皆にはどんな状況でも誰が来たって絶対に負けない様に教えてきた。守るべきものを守れる力、救うべき者を救える力、絶望的な状況にも立ち向かって行ける力、ここまで頑張ってきた皆にはそれがしっかり身に付いている。夢見て憧れて必死に積み上げてきた時間、どんなに辛くても止めなかった努力の時間は絶対に自分を裏切らない。」

 

なのはは何かを掴み取ろうとする様にスバル達の方へ手を伸ばしてその手で何かを握り締めた。その仕草や言葉、表情から伝わってくるなのはの想いにスバル達はより一層真剣な表情へと変えた。なのははその表情を見て自分の意思が伝わったのだと感じると真剣な表情から一転し、笑顔で全員を見つめる。

 

「それだけは、忘れないでね。」

「きつい状況をビシッと決めてこそのストライカーだからな」

 

なのはの言葉に続いてヴィータも笑みを浮かべながらスバル達に発破を掛けるときっちりと4人は返事をして頷いた。そして、スバル達の表情からはつい先程までの表情や体の硬さ、緊張などは既に消えていた。それをしっかりと確認できたことに少しだけ安心したなのははフォワード隊の4人に出動命令を掛ける。

 

「それじゃ、機動六課フォワード隊出動!!」

「行って来い!!」

「「「「はい!!!」」」」

 

なのはとヴィータの見送りを受けて敬礼するとその足を返してアルトの待つヘリへと移動を開始した。その中でスバルだけはその場に留まり敬礼の体勢を崩さないまま少し俯いていた。

 

「あたしは先に行くぞ。」

 

なのはがその言葉に頷くとヴィータはそのまま背を向けて隊長達の待機している場所へと向かった。それを見届けてからなのははスバルに少しずつ近づいて行く。

 

「スバル…。ギンガの事もあるし、きっと…」

 

なのはが言葉を紡ぎ出そうとするとスバルはハッと顔を上げて首を横に振る。

 

「あの、違うんです。…私は大丈夫です。ギン姉の事は多分、大丈夫です。きっと私が助けます。今は、その、翔馬さんの事が…。」

「そっか、うん。大丈夫。翔馬君の事には私も驚いたけど、私が現場に行け無い事が一番怖かったんだ。でも、八神部隊長がそれをクリアしてくれた。現場に行って全量全開でやっていいんだったら、不安なんて何もない。翔馬君だって私がきっと助けて見せる。だから、何も心配ないよ。スバルが憧れてくれたなのはさんは誰にも負けない無敵のエースだから。」

「はい…。」

 

そう言って、なのはは涙が今にも零れそうなスバルの頭を撫でてやる。そしてなのははスバルの顔を覗き込むと、笑顔を浮かべて拳を作った。

 

「スバルだって、うちの自慢のフロントアタッカーなんだから相棒と一緒に負けないで頑張って来て。」

「はい!!」

 

スバルはなのはの作った拳に自分の拳をぶつけると今度こそヘリに向かって行った。それをなのはは優しい笑みを浮かべて見送り、ヘリに全員が乗ったことを確認してから出動を待つ隊長達の方へと足を向け表情を引き締めるのだった。これから始まる戦いと翔馬の真意を確かめに行くために。

 

 

 

 

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