魔法少女リリカルなのはStrikers~風のエースストライカー~   作:strike

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サブタイトルからも分かる様にこれから最終決戦へと突入です。
敵に回ってしまった翔馬がどうなるのか今後の展開を楽しみにして頂けたら
嬉しいです。

相変わらずご意見ご感想お待ちしてます。

それでは第34話スタートです。



第34話 決戦(前編)

ここは出撃用降下ハッチの待機室。先程ここからフォワード隊を乗せたアルトが操縦するヘリ、そしてシグナム、リィンが飛び立って行った。彼女達を見送ってから僅か数分が経つと今度は第2グループの降下ポイントに到着した事を艦内アナウンスにて通達される。それを聞いたはやてはフェイト、なのは、ヴィータに目を向けると笑みを浮かべながら声を掛けた。

 

「ほんなら、隊長陣も出動や!!」

「「うん。」」

「おう。」

 

はやての言葉に頷い各隊長達は降下用ハッチが開くと同時にその身を空へと投げ出し、はやてもそれに続く。その様子を聖王協会から見守っていた騎士カリムは各隊長達に掛けられたリミッターを外す前にはやて達へと通信を開く。

 

「翔馬隊長を除く各隊長及び副隊長全ての能力限定を完全解除。はやて、シグナム、ヴィータ、なのはさん、フェイトさん。みなさん、どうかお願いします。」

 

カリムの真剣な言葉に全員は頼もしい笑みを浮かべるとはやて、フェイト、なのははそれぞれに返事を返した。

 

「しっかりやるよ!!」

「迅速に解決します。」

「お任せ下さい!!」

 

その言葉を聞き、少しだけ安心したかのように頷いたカリムは限定解除の魔力スイッチへと手を伸ばし、迷うことなくそのスイッチを押した。

 

「リミット・リリース!!」

 

カリムの声と共にそれぞれの隊長に掛けられた枷が解き放たれていくのを感じ、4人は頷き合うとデバイスを掲げた。

 

「「「「セーット・アーップ!!!」」」」

 

その4人の掛け声と共に4色の光が空に輝き、それぞれのバリアジャケットを身に纏い空を駆ける。そして、なのはは空で急制動を掛けるとレイジングハートを天高く掲げた。

 

「エクシード・ドライブ!!」

 

なのはの声にレイジングハートが輝きだすと全身がその光に包まれ、なのはとレイジングハートはエクシードモードへと姿を変え、先を飛ぶ3人の元へと飛び出した。そして、暫く目的地に向って空を飛んでいると唐突にフェイトがなのはの近くまでやってきて声を掛ける。

 

「なのは、…翔馬のことどう思う?」

 

フェイトの問いかけになのはは思わず身構えてしまうが、翔馬の姿が全員に晒された今、もう隠していても仕方がないことに気付き、少し俯きながらも口を開いた。

 

「…分からない。どういう経緯で翔馬君があそこにいるのか。目的は聞いてたんだ。翔馬君がいなくなる深夜に。シエルちゃんと一緒にジェイルスカリエッティの目的を内部から阻止するんだって。…そう言ってた。」

「それならどうして、言ってくれなかったんや?」

 

なのは達の会話を遠巻きに聞いていたはやても内容が内容なだけに参加せずにはいられずなのはの近くにやって来て問いかけた。その問いに対してなのはは2人を見てから申し訳なさそうにして再度俯く。

 

「ゴメンね。みんなを疑っていたわけじゃないんだ。…ただ、翔馬君は目的を教えてくれたけどその方法までは教えてくれなかったの。だから、どんな形で翔馬君が動くかわからない以上、それを伝えることで翔馬君が動きづらくなったら嫌だったし、この事を皆に伝えても動揺が広げるだけだろうって思って…。まさか、こんなことになるなんて思ってもいなかったけれどね…。」

「なのは…。なのはは、本当にそれでよかったの? だって、翔馬はなのはにとって…」

「ふぇ、フェイトちゃん!?」

 

フェイトは心配そうに見つめながらそう言うと、なのははフェイトの言葉に一瞬、頬を染めて驚いた後にフェイトに顔を向けるがその表情がとても真剣なものだったため、頭が覚めるのに対して時間は掛からなかった。

 

「…そうだね。大切な人だよ。だから、正直に言えば翔馬君がいなくなってからはすごく寂しかったし、翔馬君がシエルちゃんとあれを守ろうとしてるのを見た時は色んな感情がごちゃまぜになって、…辛かった。でも、今は私が翔馬君を引き留めに行ける。……それにね?」

 

なのはは一旦口を閉ざして2人の親友の様子を伺うと2人は微笑んでなのはを見つめていた。なのはその視線とこれから言おうとしている事への恥ずかしさを感じながらも口元にかすかな笑みを浮かべて視線を2人に向けた。

 

「多分、これも翔馬君の作戦の内なんじゃないかって思ってるんだ。きっと、今、この不利な戦況を引っ繰り返すためにわざとスカリエッティの味方をしてて、いざって時には私達の元に帰って来てくれる!

……なんて、こんなのは私の願望というか、…そうなってくれたらいいなって程度の話だけど。だけど、翔馬君は絶対に私達を裏切ったりしない。私はそう信じてるから。」

 

最後に照れ笑いを浮かべて誤魔化すように顔を背けるとフェイトとはやては少し驚いた表情で顔を見合わせた。その瞬間に堪えられなくなったのかいきなり2人が同時に笑い出す。そして、いきなり笑い出す2人になのはは戸惑った表情を浮かべるが次の瞬間には2人が何故こんなにも笑ってるのかを理解し、顔を赤くして抗議を始める。

 

「もう!!どうして、2人ともそんなに笑うのかな!? 少し恥ずかしいこと言っちゃったかもだけど……。そこまで笑わなくたっていいじゃない!!」

「だって、なのはちゃん…。めっちゃ乙女やな?」

「翔馬は愛されてるなって。…そう思っただけだよ。少し妬けちゃうくらいにね。」

 

その2人の言葉になのはは更に顔を真っ赤にしてて慌てるように弁解を始めるが、そのなのはの様子が更にツボにはまったのか2人は聞く耳を持たず3人は場違いな程に楽しそうな表情で笑い合うのだった。そして、戦闘空域に近づくまでにそんな出来事もあり全員の表情が引き締まったところでなのはは2人に声を掛ける。

 

「まぁ、さっきのは冗談にしても、ちゃんと翔馬君の目的も果たして無事に2人で元気に帰って来る。最後には全員が笑って平和に暮らせる未来を、私達全員で守ろう!!」

「「うん。」」

 

3人の話が何とか綺麗に纏まった?事を確認した騎士が上空からフェイトに向かって声を掛けた。

 

「フェイト隊長。…そろそろ。」

「え?あ、うん。…それじゃあ、私は行くね。」

 

ヴィータに声を掛けられたフェイトはバツが悪そうに苦笑いで頷くと、隣のなのはに声を掛けてその場を離れようとする。すると、なのはは笑みを浮かべながらも真剣な表情で拳をフェイトに向かって掲げた。

 

「頑張ろうね。」

「…うん。頑張ろう。」

 

フェイトは一瞬驚いた表情を作るがそれも一瞬でなのはと同じように笑みを浮かべると拳を打ち合わせてフェイトは1人スカリエッティのアジトへと向かって行った。そしてそれを見送ったなのは達はさらにスピードを上げて空に浮かぶ要塞に向けて飛び立つのだった。

 

 

 

----------------------------------------------

 

 

 

「航空魔導師部隊、陣形展開!! 小型機と射出口を叩いて!!」

 

そう叫ぶのは、機動六課部隊長の八神はやてだった。現在、|無限の欲望≪アンリミテッド・デザイア≫の近くまで来たはいいものの、その周囲には今までに見たことも無い数のガジェットが徘徊しており、中々近づく事ができない状態だった。そのため、はやては魔導師部隊を集結させ中に突入するための隙を少しでも作るために周囲を飛び回る敵の数を削り取ることを選択し、行動へと移していた。そして、はやては素早く通信回線を開くと他の魔導師部隊にも指示を出し、応援要請をするとその言葉を聞いた管理局員の魔導師達は直ぐに陣形を指示通り変えて各グループ毎に確実に小型機と射出口の破壊を進めて行く。そんな中、スターズ隊の隊長、副隊長であるなのはと、ヴィータはそんな魔導師達を率いて突入口を探しながら小型機の撃破を行っていた。

 

「要塞内部への突入口を探せ!! 突入部隊位置報告!!」

 

ヴィータは現在、自分達と同じように突入口を探している部隊へと通信を行い現在の状況を確認する。そしてなのはは、そんなヴィータの後方に現れたガジェットに気付くと直ぐに砲撃体勢に入り10機以上のガジェットを一瞬にして破壊して見せた。

 

「第7密集点撃破!! 次!!」

 

なのはは辺りのガジェットを一掃した事を確認するとその場から飛び立ちヴィータと合流。そして、要塞の外観を眺めるようにして飛んでいた。

 

「突入部隊もまだ突入口が探し出せてないみたいだな…。」

「みたいだね。これだけ大きいと魔導師が何人集まって外から攻撃しても意味がない。やっぱり中から壊さないと…。」

 

ヴィータの言葉に頷いたなのはは改めて要塞の大きさを痛感する。先程から遠距離砲撃を何度か当てているがやはり、傷を付けることはできてもこの要塞自体のダメージとすれば無いに等しい。それを理解してからは他の魔導師部隊の援護を行いつつ突入口を探しているが、周囲が射出口や砲台で覆われているばかりの球体に中から外に出て行く口はあっても入る場所が全く見当たらない。翔馬やシエルが中にいることから、どこかに入り口はある筈なのだが…。なのははそう頭を働かせながら飛んでいると進行方向からガジェットが数機こちらに迫ってくるのが見えた。

 

「とにかく今は、出てくる奴を片っ端からぶっ壊す!!」

「うん!!」

 

ヴィータがアイゼンを担ぎ上げるとなのはは考えることを一時中断して頷き、レイジングハートを敵に向ける。すると、やってきたガジェットの後ろから更に、増援が数十機迫って来るのが見えた。それに対して、なのはは臆する様子など微塵も無く、むしろ不敵な笑みを一瞬だけだが浮かべると表情を引き締めて目標へと砲撃を撃ち放った。そして、管理局魔導師との合流を果たしてから後方にて援護と指示を行っているはやては目の前の要塞に違和感を感じ始めていた。

 

(何かおかしい。…この要塞は確か、魔法と質量兵器を操る砲台の様な物の筈や。それなのに、起動してから今まで一度たりとも攻撃をしてこない。むしろガジェットを大量に飛ばして私達を警戒してるような……。)

「…もしかして。まだ完全に起動したわけじゃ、ない?」

 

はやてはそれに直感ながらもそれに気が付くと、目の前一杯に広がる巨大な要塞を改めて見つめる。

 

(どちらにせよあっちの攻撃が始まればうちらに多大な犠牲が出るのは間違いない。だったら…。)

「突入部隊は全員突入口を探し出して!!…第8部隊から11部隊までは突入部隊に付いて警護!!…向こうが攻撃を仕掛けてくる前に探し出すよ!!」

 

はやての声に魔導師部隊は威勢の良い返事を返すとはやての指示通りに動き始め、今まで以上に突入口の捜索に熱を入れる。そして、この現場と同じように忙しく動いている舞台があった。それは時空管理局の本局。ミッドチルダの地上に巨大な要塞が現れた報告を受けた本局はその脅威性や性質などを確かめるために、大量の文献を漁っていた。しかし、ジェイルスカリエッティの生み出したそれは過去に文献が残っている事は無く、対応を決めかねている最中だった。しかし、協議の結果、万が一の事があっても何とか対応できるよう艦隊をミッドチルダに向ける事が決定された。しかし、その相手が聞いたことも無いロストロギア級の兵器であるため、今後の動きについては現在も模索中とういうのが現状だ。そんな曖昧な状況で艦隊を動かしては対応が後手に回ってしまうのは仕方の無い事だろう。そんな状況下でも、クロノは少しでも情報を集めるため無限書庫に、似たような事例が無いかユーノへと連絡を取っていた。

 

「ユーノ。情報は何か見つかったか?」

「聖王のゆりかごに関する情報は流石に少ないけど発掘完了。でも、今動いている無限の欲望に関しては過去の文献も手あたり次第探してるけど、全く見当たらない。…スカリエッティの事だから過去の情報を元にしている可能性があると思ったんだけど。」

 

ユーノの言葉にクロノは『そうか』と一言だけ呟くと、聖王のゆりかごについての説明を求めその情報を全艦隊にインプットすることに決めた。理由はとても単純なものだった。1つはスカリエッティの本来の目的が聖王のゆりかごの起動だったということ。2つ目はあの要塞を自身の手で作り上げてしまう程のマッドサイエンティストであるという事。この情報だけなら、可能性はかなり低いと考えられるが、もし、万が一にでも聖王のゆりかごが起動した時、対応が遅れて間に合わなかったという事になれば本当の意味で世界がスカリエッティの手に渡ってしまうからだ。ユーノの話によれば、聖王のゆりかごは軌道上、つまり、2つの月の魔力が受けられる位置を取ることで防御性能の大幅な上昇と地上に対する精密魔力爆撃が出来てしまう。さらに、恐ろしいのは時限跳躍攻撃や次元空間での戦闘すら可能になり、次元航行隊の艦隊とでも正面から戦えるほどの性能を誇ると言う。そんなものが軌道上に乗ってしまえば結果は言わずとも明確だろう。そのため、クロノはすぐに他の艦隊と連絡を取りミッドチルダへと航行を始めた。しかし、今、目の前にある問題、無限の欲望の所為で手間取った時間が大きかったのは確かな事実としてあった。そのため、管理局本部の頭の中からは聖王のゆりかごの存在が消えているようだがもし、起動してしまった場合は今のままでは確実に間に合わない結果となってしまう。そんな状況に唇を噛みしめながら状況を打破するための策を巡らせていると、ユーノとの通信を開いていたモニター越しに何かの音が響き渡った。

 

「うん?っな!?…こ、これは!!」

 

そんなユーノの声尾を聞くとクロノは否応なくモニターに目を向ける。するとそこには、ユーノがモニター越しに何か真剣な表情でメールを確認していた。モニター越しに聞こえたのは何かのメールが届いた音だったらしい。そして、クロノはユーノの様子から何かあったことを悟ると自分の手を一旦止めてユーノに改めて向き直る。

 

「何か、あったのか?」

 

神妙な表情でクロノはユーノに問いかけるとユーノは手を掲げてメールの内容に素早く目を通しながら中身を理解しようとしていた。この状態のユーノには何を話しかけても無駄な事を知っているクロノは一旦、ユーノの事を置いておき指示を再開する。そして、さほど時間が掛かっていないというのにモニター越しにユーノの情報処理が終えたことを感じ取ると再度モニターに目を向ける。すると、ユーノの口から出た言葉はクロノも驚愕する情報だった。

 

「…無限の欲望の、情報が出てきた。」

「なんだと!?…一体どこから!?」

 

クロノの問いにユーノはただ、首を横に振るだけだった。しかし、真剣な表情でクロノを見つめるとその内容を事細かく伝えて行き、それが終わる頃にはクロノはモニターに映る要塞を険しい表情で見つめていた。そして、頭の中で煩いほどに警報が鳴り響く。それ程までに今起動している兵器は厄介なものだった。

 

「あれが起動してから2時間後にはミッドチルダ全域に対する殺戮行為が行われるという解釈で間違いないな?」

「うん。だけど、それだけじゃない。…そこまで時間が経ってしまえば魔導師は一切、無限の欲望の半径5km圏内に入ることはできなくなる。あの4つのアンテナは周囲に拡散された魔力や魔導師のリンカーコアから魔力を収集するためにあるようだね。そして、収集した魔力を使用して本来超長距離には使用できない質量兵器を地球の裏側まで正確に持って行くことができる。まさに、魔力兵器と質量兵器のハイブリッドってことだ。」

「…打開策は?」

 

ユーノはクロノの問いに対して険しい表情を浮かべながら打開策を伝える。

 

「1つは2時間以内にシエルさんを捉えている台座、動力炉、そして魔力貯蔵炉の3つを破壊すること。…ただしその3つの破壊はほぼ同時でなくちゃならない。…資料によるとそれぞれがリンクされてるから1つ、もしくは2つ壊したとしても残った1つがそれを修復してしまう。それぞれ、修復が完了するまでにかかる時間は破壊後から30秒。つまり、どれか1つを破壊したら30秒以内に2つを破壊しなくちゃならない。…もう1つは今展開しようとしている艦隊の一斉射撃でその存在ごと消し去ってしまうか。」

「艦隊での総攻撃には無理があるだろう。今向かっている最中ではあるが後、4時間半は確実に掛かることが決定している。もしそれを待っていれば2時間半の間にどれだけの犠牲が出るか計り知れたものではない。今取れる対策としては前者の方だろう。つまり、最低でも3部隊が内部に突入し時間をきっかり合わせて破壊しなくてはならないという事か…。いや、こちらが悩んでいる時間すら惜しいな。現場の各部隊長に繋ぎ打開策を伝える。通信回線開け。」

 

ユーノはクロノの言葉に頷くと忙しく動き出したクロノとの回線を切り情報を送信する。そして、見つめるのはメールの差出人。そこには、【zephyros】とあった。

 

「翔馬…。変な無茶だけはしないでよ。」

 

ユーノはそう呟くと資料をさらに細かく読解し始め、あの要塞を止めるための有力な情報の洗い出しに努めるのだった。そして、現場で指揮を執っていたはやてはクロノからの指示を受けると自分の嫌な感が当たっていた事に対する嫌悪感と、目の前にある兵器に対する脅威を改めて感じ、少々焦りが出ていた。未だに突破口は見つけることができず、無尽蔵にも思われるガジェットを叩き潰しているが何時まで経ってもキリが無かった。そして、既に無限の欲望が起動テストを終えてから20分が経とうとしていた。

 

「くっ…。このままじゃ埒があかん。どうすれば…。」

「はやてちゃん。こちらスターズ1。このままじゃ時間が無い。だから、ヴィータちゃんと話したんだけど、出口があるならそれは確実に内部に繋がってるってことだよね。…だからガジェットの射出口を潰してそこから突入する。」

 

はやてが頭を悩ませているとなのはからの通信が入りその内容に驚くが、今は少しでも時間が惜しいと考え、危険な目に合わせてしまう自分に情けなさを感じつつもその考えを了承することに決める。

 

「…わかった。お願いできるかな?2人共。」

「了解!!これから突入部隊と一緒に内部へと突入します!!」

 

はやての承認を貰ったなのはは笑みを浮かべると直ぐに進路を変えて要塞に向かって飛び立つ。そして、それと同時に隣のヴィータが各隊員達に通信を入れる。

 

「突入部隊、聞いたな?今から、あたしとなのは隊長で突入口を開く!!…全員C16地点へ集合。遅れた奴は置いて行くぞ!!」

 

ヴィータの言葉に突入部隊は頷くと急いでなのはたちの元へと集まっていく。そして、その数分後、なのは達が指示した区画で大きな爆発音と共に突入が成功の知らせが入り、はやてはその爆煙を見つめながら心の中で隊員達の無事を祈りながらガジェットを堕としていくのだった。その頃、先に地上へと飛び立って行ったスバル達はヘリの中でミッションの最終確認を行っていた。

 

「いい?私達の役割はミッド中央、市街地方面。敵戦力の迎撃ラインに参加する。地上部隊と協力して戦闘機人や召喚師を最前線で止めること。」

「他の魔導師達はAMF戦や戦闘機人との戦闘経験がほとんどない。だから、私達がトップでぶつかって向こうの戦力を削る。」

 

ティアナとスバルの言葉にエリオとキャロは頷き、モニターに目を向けると気付いたことがあったのか険しい表情でスバル達に目を向けた。

 

「ガジェットも戦闘機人も防衛ラインを突破されてしまえば市街地までは一直線です。」

「市民の安全を守るためにも絶対に止めないと、ですね。」

 

キャロとエリオにスバルとティアナは頷き返すと、それを踏まえたうえでティアナが最後にと口を開く。

 

「それと、ギンガさんが出てきた場合は優先的に対処。安全無事に確保するわよ!!」

「「はい!!」」

 

エリオとキャロは真剣な表情で声を出すと、スバルはティアナを見つめて頷き返した。そして、全ての確認が終わったところでティアナは声を張り上げて全員に出動を促し、全員でヘリから飛び降り自分達の持ち場へと移動を開始した。そして、それを見つめていた影が一つ。

 

「ノーヴェ、ディード、ウェンディ、例の4人がそっちに向かってる。今度は真正面から戦う気で来てる。」

 

モニターに対してそう言ったのは周囲の監視を行っていた戦闘機人のオットーだった。オットーに呼ばれた3人は意に介する様子も無く纏めて排除するつもりのようでそのままの進路を進んでいた。しかし、スカリエッティからは無限の欲望の起動、そして聖王のゆりかごが浮上するまでには中央本部を制圧、そして、司令部を押さえろとの命令が下っている。それを考えると4人をまとめて倒すことはできなくないが、一番早くそして確実な方法を取ることに決めたオットーは各個撃破を指示し、その指示を聞いた3人は渋々、そしてもう1人の戦闘機人はただ、無言で頷くと速度を上げてそれぞれ配置につくのだった。そして、ここからフォワード陣の今までで一番辛く、熾烈な戦闘が始まろうとしていた。場所は変わり、スカリエッティが潜伏しているというアジトの中、そこではガジェットとの戦闘が幾度となく繰り返されていた。しかし、それは時が経つにつれて確実にスカリエッティの元へと近づいていた。

 

「烈風一迅!!切り裂け、ヴィンデルシャフト!!」

「はぁぁぁ!!!」

 

アジトに潜入したフェイトとシャッハはガジェットの残骸を越えて広い廊下の様な所に出ると左右に何人もの人が素体培養器に入っている光景に言葉を失う。そして、思わずそれをしばらく眺めてしまっていたシャッハは未だに驚きでうまく声が出せないのをわかりながらも呟きを漏らした。

 

「これは…人体実験の素体?」

「だと、思います。人の命を弄び只の実験材料として扱う。あの男がしてきたのはこういう研究なんです…。」

 

スカリエッティを今まで追ってきたフェイトの言葉は重く、シャッハも顔を俯かせてスカリエッティの非人道的な行いに怒りを覚えていた。そんな時、大きな揺れが発生し同時に上空から球体状の大きなガジェットが2人の元へ落ちて来た。それを2人は、即座に感知すると急いで回避行動を取ろうとそれぞれ足に力を込めて跳躍を試みる。しかし、フェイトは離脱に成功したもののシャッハは足を何者かに掴まれその場から動けなくなってしまう。

 

「シスター!! はっ!?…っく。」

 

フェイトは急いでシャッハを助けに行こうとするが横から何かが迫ってくる気配を感じたため即座にバルディッシュでそれを防ぐ。そして、このままではガジェットに潰されると考えたシャッハは地下から生えてきている腕に向かってヴィンデルシャフトを打ち付け、その地面を破壊した。そして間一髪で地下に逃げ込むことでガジェットに押し潰されることは無かったもののガジェットがシャッハの開けた穴を埋めてしまったためフェイトとは分断されることになる。

 

「フェイト執務官。此方は無事です。戦闘機人を1人補足しました。この子を確保し次第、そちらに合流します。」

 

シャッハはそうフェイトに報告したが流石に自分の足の近くへ打ち付けた攻撃は自身にも負担を掛けてしまうのは当然の事だった。足や、頭からは血が流れ体中に痛みが走る。しかし、それでも目の前の戦闘機人、セインを見据え彼女を捕獲するためにも戦闘の準備に移るのだった。そして、廊下に取り残されることとなったフェイトも同様の状況にあった。フェイトは攻撃を仕掛けてきた2人の戦闘機人に目を向ける。そこには地上本部襲撃事件にて相手をしたトーレとセッテがこちらに向かって来ていた。その表情からは何も伺うことはできないが、トーレの言葉を聞くとフェイトは直ぐに表情を歪めることになる。

 

「フェイトお嬢様。こちらにいらしたのは御帰還ですか?それとも反逆ですか?」

 

その言葉を聞いて表情を歪めたフェイトは一呼吸置くと表情を真剣な物へ変え、2人を見据えながらバルディッシュの剣先を向けた。

 

「どちらも違う。犯罪者の逮捕…それだけだ。」

 

そして、ここでも厳しい戦闘の火蓋が切って落とされようとしていたのだった。大きく分けると3ヶ所。それぞれが厳しい状況の中、ミッドチルダの平和を守るため、いや、彼女達にはそんな意識は殆どないのだろう。自分の守りたいものを守り通すため、譲れないものを付き通すため、取り戻したい人を取り戻すため。目的は違えど彼女達は自分の意志を貫くために戦っている。それを知りつつ、何もできない事を悔やむ者もいた。本来なら彼女達と肩を並べて戦い、守るべき者、大切な人を守るために剣を抜く筈だった彼は、すぐ外に聞こえる喧騒の中ただ、目を閉じてその時を待つ。直ぐにでも飛び出してこの戦いを終わらせるために剣を振るいたい。彼女の隣で背中を守りたい。そんな衝動と戦いながら、ただ、一瞬。しかし、全ての人が報われるはずの一瞬のために彼は必死に自我を殺す。

 

「藤田一等空尉殿?そちらに向かうネズミが一匹です。排除、お願いできますか?此方は調整の最終段階まで来てますのでそちらのお片付けが終わり次第こちらに合流して下さい。あなたの速さなら問題ありませんよね?」

「ああ。どちらも問題無い。…クアットロ、ちなみに聖王のゆりかご起動までの時間は?」

 

翔馬はクアットロの問いに普段では考えられない程の無機質な返答をし、それを満足げに聞いたクアットロは機嫌良くその時間を伝える。

 

「聖王のゆりかご起動まで、後1時間です。」

「そうか…。了解した。」

 

そう返答をした翔馬はやっと目を見開いて目の前の扉を見据えた。これから来るであろう自分の大切な女性と向き合わなければならない事を考えるとどうしても胸が痛むのを押さえられなかった。絶対に泣かさないと誓った筈の彼女はきっとあの別れから涙が枯れるまで泣いたのだろう。約束さえ破り、大事な時に傍にいられない自分に腹が立って仕方がない。しかし、それでも自分の想いを貫くためには仕方の無い事だった。その言い訳が偽善であると、自分を正当化する方便だと言われても自分のやり方を変えられるほど器用な男ではなかった。自分の想いを貫くためならばどんな罰だろうと受け入れる。彼は、彼女のように生真面目で正しく想いを貫く術を知らない。だから、彼は彼なりのやり方で守りたいものを守ろうとしていた。今までも同じような事はしてきた。今回も同じ事。だから今は心に蓋をしよう。自分の想いを貫き、そして、最終的に全員が笑顔になれるのなら、どんな道だって歩いて行ける。

 

「…。」

 

翔馬は無言ながらも、殺気の籠った瞳を扉へと向けながら背負った大剣を1刀ずつ片手で引き抜き、過去に失った筈の大切だった女性を背に付け、大切な女性を迎え撃つ。その覚悟を決めた翔馬は剣の切先を扉に向けてその時を待つのだった。

 

 

 

 

 

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