魔法少女リリカルなのはStrikers~風のエースストライカー~   作:strike

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今回はそこまで時間を空けずに投稿できたかなと…w
クライマックスまでもう少しなので気合入れて頑張って行きたいです。

ご意見、感想お待ちしております。

それでは、第35話スタートです





第35話 決戦(中編)

無限の欲望(アンリミデッド・デザイア)内部。そこでは湧き上って来るガジェットをヴィータが一心不乱に破壊しまくっていた。そして何度目かの迎撃を成功させるとヴィータは流石に疲れが出てきたのか地面に降りると上がった息を整えるため、その場に少しだけ屈んだ。そんなヴィータの様子になのはは思わず近寄って声を掛ける。

 

「ヴィータちゃん流石に飛ばし過ぎじゃない?」

「うるせぇよ…。センターや後衛の魔力温存も前衛の仕事の内なんだよ。」

 

なのはの言葉に振り向くことも無くヴィータは息を整えると立ち上がろうとして足に力を込めた。その時、なのはとヴィータの近くにモニターが浮き上がりオペレーターが映し出される。そのオペレーターの話によると調査部隊の尽力により3つの動力源の位置を割り出すことに成功したとのことだった。しかし、その位置に少々問題があり、なのはとヴィータは険しい表情でそのモニターを見つめる。なのは達の現在位置は球体を横に3分割すると中層部の上の方に当たる。そして、赤・黄・緑の光点が動力源を示しているのだがその位置は見事に3つの層に別れていた。

 

「全部バラバラじゃねぇか。最上層と中層部、最下層…か。」

「突入部隊の人達も少しは集まったけど…この人数じゃ、分散は得策じゃない。」

 

なのはとヴィータは少し悩む仕草を見せ、それに対して突入部隊は申し訳なさそうに頭を下げた。それに対してはなのはもヴィータも気にしていないようで軽く微笑んでみせるとオペレーターに他の突入部隊の招集時間がどれくらいかかるかと問いかけた。しかし、回答は芳しくないものでなのは達の表情が晴れることは無かった。

 

「40分…。仕方ねぇ。スターズ1、スターズ2、あと、今集まっている突入部隊それぞれ別行動で行く。」

「ヴィータちゃん!?」

 

なのはの声に聞く耳を持たないと言わんばかりになのは達に付いてきた突入部隊へ視線を向ける。

 

「お前達は中層部の魔力貯蔵炉をやれ。3つの中では一番破壊しやすい筈だ。あたし達は援護に回れないが…やれるな?」

 

ヴィータの言葉に突入部隊の隊員達は力強く頷いて見せ、ヴィータはその様子を見て満足げに頷き返した。しかし、その様子をなのはは心配そうに見つめており、ヴィータはそんななのはを横目で見ると1つ大きなため息をついてからアイゼンをなのはに向けた。

 

「今は他に方法が無いんだ。3つの動力を同時に壊さなきゃいけない以上、あたし達も3部隊に別れる必要がある。そんなことはわかってんだろ?…それにこうしてる今にも外は大変なことになってんだ。」

「そうだけど、ヴィータちゃん、これまでの消耗が!!」

 

ヴィータの言う事は尤もなのだが、なのははヴィータのこれまでの消耗が気がかりとなってしまい1人で行かせるのがとてつもなく不安だった。そして、本気で心配しているなのはの表情にヴィータも少しだけ勢いが削がれてしまう。しかし、ここで言い合っていても仕方の無い事だとヴィータはそう思い、なのはの言葉に少しだけ笑みを浮かべるとアイゼンを肩に担いで歩き出した。

 

「だから、あたしは最下層の動力炉を壊しに行く。なのはは最上層だ。さっさと翔馬の目ぇ覚まさせてやって来い。…それに、鉄槌の騎士ヴィータと(くろがね)の伯爵グラーフアイゼンに壊せねぇものなんぞこの世にねぇ。時間になったら一瞬でぶっ壊してやる。それで、表のはやてと合流だ。」

「ヴィータちゃんっ!!」

 

なのはは聞く耳を持たないヴィータに強く訴えかけるが、それでも行くと言い張るヴィータに表情を歪めながらも最終的には頷いた。なのはも武装隊の1人。ヴィータの言葉が正しいことはわかっていた。しかし、あまりにも魔力の消耗が激しかったはずのヴィータを心配せずに見送るなど優しい彼女には出来なかったのだ。だから、最後になのははヴィータへと不安に揺れる声で話掛けた。

 

「…わかったよ。だけど、絶対に無茶はしないでね? 絶対にすぐ外で合流だよ?」

「わーってらぁ。さっさと終わらせてはやてのとこに帰ってやんねぇとな。」

 

ヴィータの言葉になのはは少しだけ心配で表情を歪ませるが渋々頷くと、全員が各自デバイスにタイマーを設定し、目的地に向かって走り出す。セットされたタイマーが0を指すまで…つまり3部隊が動力炉の一斉破壊を行うまで、残り1時間。

 

 

 

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場所が変わりここはミッド中央。戦闘機人を相手するティアナ達の作戦はこうだった。4人1組(フォーマンセル)のチーム戦で戦闘機人達の注意を引きながら時間稼ぎを行い、隙を見てギンガを救出する。単純ながらも今のティアナ達が無理せず後方の部隊を守るにはこの方法が一番だった。また、各個撃破ではなくチーム戦なら向こうの隙を付いて1人づつ戦闘不能にするのも今の彼女達なら問題なく遂行できるだろう。しかし、そんな考えは戦闘機人達には通用しなかった。現に今、キャロとエリオはルーテシアを追って上空で、ティアナは結界を張られたビルの中で、スバルは市街地の中央にある、かつては高速道路として使われていたであろう大きな道でそれぞれの敵と対峙していた。考えていた中でも最悪の状況になってしまったことにティアナは唇を噛みしめ、ビルの物陰に隠れながら頭を働かせてスバル達へと指示を出す。

 

『取り敢えず無理して目の前の敵を倒さなくても構わない。今は目の前の敵を削りながら時間稼ぎさえできればそれで十分、後方を守れる。』

「ばっかじゃねぇの?そんな時間かかんねぇよ。」

「あんたは捕獲対象じゃないっすから。殺しても怒られねぇっすからね。」

(っ!? 念話が聞かれてる!?)

 

ティアナは背後から聞こえた声に驚くが、一息ついて頭をクールダウンさせると全員に再度声を掛ける。

 

『通信は以上!!…全員、目の前の戦いに集中!!』

 

そう言ったティアナは通信を切ると予想外の個人戦に戸惑いながらも覚悟を決め、後ろから迫って来る戦闘機人2人に意識を向ける。そして、タイミングを見計らいながら移動する準備を整えると、心の中でカウントを始めそれがゼロになった瞬間その場から飛び出してウェンディとノーヴェに向かってクロスミラージュを向ける。

 

「クロスファイヤー…シュート!!」

 

それぞれに向けられた2丁のクロスミラージュから、2つの魔法弾が放たれウェンディとノーヴェに襲い掛かる。しかし、ノーヴェはエアライナーで空中へ飛び出し、ウェンディは地面を転げるとそれぞれ自分の武器を掲げ、無数の魔法弾をティアナに向かって打ち放った。ティアナは迫り来る魔法弾を確認すると表情を苦しげに歪めながら体を捩って物陰へと回避し、周囲を固められる前に移動するためクロスミラージュを2階上の通路へ向けアンカーショットを放ちその場から移動する。しかし、それをノーヴェが見送る筈も無く空中でエアライナーをティアナの進行方向へ伸ばすと正面からティアナに向かって蹴りを放つ。

 

「させるかよ!!…なっ!? フェイクか!? ウェンディ!!そっちだ。」

「任せるっすよ。エリアルキャノン!!」

「くっ…。」

 

先程上空を移動しようとしていたのはティアナのフェイクシルエット、本当のティアナはその場に待機してノーヴェに銃口を向けていた。しかし、ノーヴェに指示を出されたウェンディはその意図に直ぐ気付きティアナが撃つ前に砲撃を放ってそれを阻止する。ティアナは作戦がいきなり破られたことに表情を歪めながら銃口をノーヴェから外すとその場で回避し、通路を駆ける。が、その先にいたのは先程よりも鬼気迫るような表情をしたノーヴェだった。

 

「今度こそ喰らえぇぇ!!!」

「きゃぁぁぁ!!」

 

ティアナはウェンディの砲撃に気を取られてしまいノーヴェの重い一撃は今度こそ確実にティアナを捉え、向かいの壁まで吹き飛ばした。ティアナはノーヴェの一撃と壁に衝突した勢いで息を詰まらせその場に崩れ落ちてしまい、それを確認したウェンディは止めと言わんばかりに銃口をティアナに向けると魔力弾を何発も打ち込み、攻撃が終わるとウェンディの激しい攻撃による爆煙が上がっていた。ノーヴェとウェンディはティアナの居る筈の場所を仕留めたかどうか判断するために厳しい表情で見据える。すると、急に爆煙の中からオレンジ色の魔法弾が5発現れノーヴェを襲う。急な攻撃に反応できなかったノーヴェは魔法弾を見続けることしかできなかったが、先に動いていたウェンディがライディングボードを盾にしてノーヴェを構う。その隙を見て躊躇せずにティアナは一旦距離を取るためアンカーガンを最上階まで打ち込むと移動を開始した。そして、それを余裕の表情で2人は見送る。

 

「以前より弾丸が鋭いっすね…。」

「あんな豆鉄砲、1発や2発喰らったってどうってことねぇ!!」

「まぁ、そうっすけどね。」

 

ノーヴェの言葉にウェンディは笑みを浮かべて応えると立ち上がって最上階まで逃げて行ったティアナを追うための準備を開始しようとした。しかし、その直後に大きな爆発音が上の階で起こり、2人は顔を見合わると直ぐに爆発音のした上の階へと向かう。すると、そこには両手に持った剣の片方を血で濡らしたディードがいた。

 

「ディード!?あんたも来たんっすか?」

「オットーの指示。あの幻術使いはここで仕留めないと厄介だから」

 

ウェンディはディードの姿を見ると驚きで声を上げるが、それに対してディードの対応はドライだった。ただ目的のためと言わんばかりに返事を返すと逃がしてしまった敵を探し始める。そして、その様子をティアナは1つ上の階から身を隠しながら伺っていた。ティアナが身を隠す理由はディードから攻撃を受けてしまった血に濡れた足にあった。足をやられてしまったことにより移動速度は格段に落ち、回避行動もままならないだろう。この状態で3人とガジェットを相手するのは明らかに不利。いや、それすらも通り越して不可能と思われる程だった。この状況にティアナは思わず顔を俯かせてしまう。

 

(よりにもよって足…。それに戦闘機人が3人、ガジェットも増えた…。 流石にこれは…ヤバい、かな…。)

 

ティアナはそう思った瞬間、背筋が凍るような感覚を感じ思わず戦闘機人達に目を向ける。しかし、まだ彼女達には見つかっていないようで思わず深く息を吐いた。そして、自分の感じた感覚に戸惑いながらもティアナは自分の居場所が見つかってしまう前に重い足を引き摺りながらその場から移動していくのだった。

場所は移りミッド中央上空。そこでは竜とガジェットが飛び交い、黄色と紫の閃光が交錯し激しくぶつかり合っていた。

 

「シューティング・レイ!!」

 

フリードに跨るキャロの言葉に反応したケリュケイオンから2つの魔法弾が高速で放たれ、ガジェットに乗るルーテシアに向かって飛んで行く。しかし、ルーテシアはそれに素早く反応すると片手を振りかざし目の前に紫色の魔法陣を描いた。すると、紫色のクナイの様な物体が無数に浮き上がりそれを撃ち放つとシューティング・レイを撃ち落とすだけではなく術者のキャロにも襲い掛かった。フリードはルーテシアの攻撃からキャロを守るため為、急上昇するとルーテシアの正面に回り、キャロはケリュケイオンを構えながらルーテシアに声を掛ける。

 

「貴方はどうして、なんでこんなことをするの!?」

「…。」

 

キャロはこれ以上の争いを避けるために戦闘が始まってからずっとルーテシアに声を掛け続けていた。しかし、ルーテシアがキャロに対して返事を返すことは無く、返されるのは無慈悲な攻撃のみだった。それを見ていたエリオは堪らず目の前のルーテシアの召喚虫であるガリューと刃を交えながらも訴えかけるように叫んだ。

 

「こんなところで、こんな戦いをする理由は何なんだ!!」

「目的を教えて!! 悪い事じゃないなら私達機動六課が手伝えるかもしれないんだよ?」

「くっ…!!」

 

ルーテシアはエリオとキャロの言葉に唇を噛みしめると目の前のキャロを睨み付けて再度トーデス・ドルヒを放つ。それを見たキャロは慌ててフリードの手綱を引くと声を掛ける。

 

「フリード!!」

 

フリードはキャロの声に呼応するかのように羽ばたくと攻撃から逃げるように飛び立ち回避行動を続ける。その様子を地上で戦闘を繰り広げていたエリオが気付くとキャロの援護に行くためガリューの攻撃を躱してからビルに足を掛け、ストラーダのブーストを点火させると上空へと舞い上がった。そして、キャロの目の前まで移動するとルーテシアの攻撃を撃ち落としフリードの背に着地する。そして、2人は身構えるようにルーテシアに武器を向けるがルーテシアの表情に違和感を感じ、思わず武器を降ろして様子を伺った。すると、ルーテシアはガジェットから飛び降りてビルの屋上に降り立つとぽつりとつぶやきを漏らした。

 

「ドクターのお願いだから…。それに、ドクターは私の探し物、レリックの11番を探すのを手伝ってくれる。だから、私もドクターの手伝いをする。」

「そんな、そんなことのために…」

「そんなこと?」

 

ルーテシアを追ってフリードの背から降りたキャロはビルの屋上に着地してルーテシアの言葉に反応するが、ルーテシアはキャロの言葉に目の色を変え、容赦なく魔法弾を無数に放つ。それをキャロは慌ててプロテクションで防御するが、キャロは魔法弾が起こす大きな爆発に巻き込まれてしまった。しかし、キャロは咄嗟の防御で体力を使ったのか息を荒くしながらもそれを無傷で防御することに成功する。そんなキャロを見てルーテシアは更に表情を歪めると、辺りに魔法弾を展開させ狙いを目の前のキャロに定め直した。

 

「貴方にとってはそんな事でも、私にとっては大事な事。」

「違う違う!! 探し物の事じゃなくて…。」

 

キャロはルーテシアに勘違いさせてしまったことに慌てながら説得しようとするが、ルーテシアは聞く耳を持たないと言わんばかりに話を続ける。

 

「ゼストももうすぐいなくなっちゃう。…きっとアギトも。でも、このお祭りが終わればドクターはレリックの11番を探すのを手伝ってくれる。そうすれば、お母さんが帰って来る。そしたら私は、不幸じゃなくなるかもしれない…。」

「違う!!…それ違うよ!!」

 

キャロは自分の不幸だった時期、誰にも認めてもらえずただ知らない大人達に言われた場所に向かい、そしてまた別の場所へと転々としていた時期を思い出す。各地を転々としていたキャロには居場所が無く、自由すら与えられず、自分の存在する理由すら見失っていた。しかし、そんな自分にも手を差し伸べてくれた温かい光をキャロは知っている。幼いながらもそんな経験をしていたからこそキャロはルーテシアに対して今している事の間違いに気付いて欲しかった。その一心でキャロはルーテシアに向かって声を張り上げる。しかし、キャロの言葉にルーテシアは嫌悪感を抱くのかキャロを睨み付けると一言、言い放つ。

 

「貴方と話をするの、嫌い。」

 

ルーテシアがそう言った直後にキャロの背後にガリューが現れ、腕から伸びた武装で斬りかかろうとする。その攻撃にキャロが気付いた時には既に遅く、プロテクションも張れず直撃を免れない状態だった。もうダメかと、キャロはきつく目を閉じた瞬間、聞き馴染んだ声が耳に届きその方向に目を向ける。

 

「キャロー!!」

「エリオ君!!」

 

叫び声を上げながら高速でキャロとガリューの間に割って入ったエリオはストラーダを振るい攻撃を防ぐとガリューを弾き飛ばして距離を取る。しかし、吹き飛ばされたガリューは受け身を取ると即座に手をエリオ達に向け、容赦なく近距離からの砲撃を放ち反撃した。近距離の砲撃に対してエリオ達は身構える余裕も無くまともに攻撃を喰らってしまい、砲撃による爆煙が晴れる頃には片膝を付いてボロボロになりながらもルーテシアとガリューを荒い息を整えながら見つめるのだった。

更に場所は変わり、ミッド中央の市街地。ここではスバルとギンガが互いの拳による攻防を続けていた。しかし、傷だらけのスバルに対してギンガはほぼ無傷の状態でその優劣は誰が見ても明らかだった。しかし、それでもスバルは大事な姉を助け出すために折れそうな足に鞭打って再度突撃を仕掛ける。

 

「はぁ!!」

 

スバルは気合の一声と共にカートリッジを一発使うと右拳をギンガに向けて撃ち放つ。しかし、その拳はギンガに届く前にプロテクションによって受け止められ、ギンガのカウンターを貰ってしまい体勢を崩した。それでもスバルは負けじとカウンターを喰らった勢いで体を捻ると右回し蹴りをギンガの横腹にお見舞いし、その勢いで距離を取り、相手を見据える。お互いに一撃ずつ入れると仕切り直しと言わんばかりに、拳を直ぐに構えて敵の動きに集中し始める。そして、互いにウィングロードで上空に道を作るとカートリッジを2発使用し、魔力を高め始めた。

 

「うおぉぉぉぉ!!!」

 

スバルは雄叫びを上げながら魔力を引き上げ、右拳を引いて構えるとギンガを見据える。そして、スバルの様子を観察していたギンガも同じく構え、お互いに魔力が安定すると全く同じタイミングでマッハキャリバーとブリッツキャリバーが唸りを上げて急加速し、お互いの距離が急激に縮まった。

 

「リボルバーキャノン!!」

 

そして、スバルはギンガとの距離がゼロになった瞬間、魔力を込めた拳を全力で叩きつける。ギンガは余裕の表情でプロテクションを張るが、流石にスバルの全力は重く徐々にだがギンガを押していた。

 

(ここなら決められる!!…魔力ダメージでのノックアウト!!)

 

スバルが狙っていたのは打撃や振動破砕による外部的ダメージでは無く、魔力ダメージによる内部的ダメージ。外的ダメージでは大きな傷や最悪、後遺症も考えられるためだ。そして、この状況なら押し切れると確信したスバルはその拳でプロテクションを破壊しようと再度力を込めた。しかしその瞬間、支えが無くなったかのような感覚と共に宙に放り投げられる。

 

「え?…ぐっ!?」

 

急に背後から衝撃を受け思わず息を詰まらせて呼吸を戻そうと息を一瞬で吐き出した。その瞬間、止まっていた呼吸が再開し、大きく荒い呼吸を繰り返していると、今度は正面からギンガの拳が迫って来ていてスバルは咄嗟にプロテクションで防御した。しかし、咄嗟の防御で脆くなっていたのか衝撃を受けたプロテクションには既にひびが入り始めていたが、それにもかかわらずギンガは容赦なくそんなスバルを攻め立てる。

 

「リボルバー…ギムレット。」

 

ギンガは攻撃している左拳を開いたかと思うとナックルスピナーが回転を始め、ドリルの様な高速回転でスバルのプロテクションを簡単に打ち破った。プロテクションが紙のように破られたことにスバルは驚きながらも、回避しようとするが体が言う事を聞かず攻撃が直撃してしまう。防御をしきれなかったスバルはその攻撃を緩和したもののまともに受けてしまったことで体には傷が増え立ち上がるのも困難な程になっていた。地面に伏せるようにして倒れていたスバルはそれでも力を込めて体を持ち上げようとするが、降り立って来たギンガの容赦ない追撃にその場から大きく吹き飛ばされると、流石に立ち上がることもままならない状態となり地面に伏せたままギンガを悲しそうな目で見つめた。

 

「ギン姉ぇ…。ギン姉ぇぇぇ!!!」

 

スバルの悲鳴にも似た大声はこれ以上大切な人と争いたくない、傷つけたくないという思いで溢れていた。しかし、今のギンガにその声が届く筈も無く、ただ敵を見据える目をスバルに向けながら近づいて来た。そして、何の躊躇いも無くスバルの首を片手で締め上げながら宙へと浮かせると、スバルは目に涙を溜めて苦しそうにしながらギンガを見下ろす。

 

「ぐっぅぅ…」

 

スバルは届かない思いに涙を零すが、ギンガを助けるために自分が戦わなければと覚悟を決めると涙を振り払い声にならない苦しげな声を漏らしながらも真っ直ぐな瞳でギンガを見据えた。そして、スバルは動かない体を無理矢理に動かしてギンガの右手と胸元に手を伸ばして掴み上げると背負い投げの要領で体を捻ってギンガを投げ飛ばそうとした。しかし、力を入れても動かない体にスバルはハッとした表情を浮かべると背後からギンガの無機質な声が耳に届く。

 

「作業内容変更…。行動不能段階まで破壊、その後確保します。」

「え?…きゃぁぁぁ!!」

 

ギンガの声が信じられないとばかりにスバルが振り向いた瞬間、スバルのの襟が掴まれ宙に持ち上げられたかと思うと体に一瞬大きな重力を感じ、その直後、地面に叩きつけられる。その衝撃で完全に力の入らなくなったスバルは震える体を押さえながら姉を取り戻すために立ち上がろうと必死に言う事の聞かない体に力を入れ、自分を確保しようとして近づいてくる姉を見つめていた。

 

機動六課フォワード部隊はそれぞれ窮地に陥り、現在の状況は最悪ともいえるものだった。

 

 

 

----------------------------------------------

 

 

 

無限の欲望内部でヴィータ達と別れたなのはは既に最上層へと突入しシエル及び翔馬の待つ台座の間へと向かっていた。道中、ガジェットの大群が押し寄せて来て無茶を通したところもあったが、ブラスターモードを使用していない今は比較的順調と言えるだろう。そんな大量のガジェットにも物怖じしない彼女を直ぐ近くからモニターする姿があった。

 

「彼女に恨みはない…だけど、ここで消えてもらうよ。」

 

そう呟いたのは戦闘機人の1人、ディエチ。大きな大砲イノーメスカノンを通路に掲げながら魔力を溜め、なのはが通路に姿を現す一瞬を狙って心の中でカウントを始めた。そして、そのカウントがゼロになった瞬間、予想通りなのはが通路に現れ引き金を容赦なく引いた。しかし、なのはは驚いた表情を浮かべたものの行動に移すのは速く、ディエチから砲撃が放たれる前には既にレイジングハートを構えていた。

 

「IS発動。ヘヴィバレル」

「っ!? エクセリオン…バスター!!」

 

後手に回っている筈のなのはの砲撃もディエチの砲撃とほぼ同時に放たれ、砲撃同士がぶつかり合う。しかし、威力は若干ディエチの方が有利なのか段々となのはの砲撃が押し返され始め、なのはは苦い表情を浮かべる。しかし、それも一瞬で何かを決意したかのような表情を浮かべるとレイジングハートに向かって指示を飛ばす。

 

「ブラスターシステム、リミット1リリース!!」

 

なのはの声に呼応してレイジングハートが光り出すとなのは自身の魔力が跳ね上がる。そして、砲撃の先にいる戦闘機人を見つめると手に持ったレイジングハートに力を込めめ、砲撃の威力を上げるために魔力を一気に解き放つ。

 

「ブラスト…シュート!!!」

 

なのはの掛け声と共にエクセリオンバスターは倍以上の大きさに膨れ上がり一瞬でディエチの砲撃を飲み込んでしまった。そして、その砲撃はディエチをも飲み込み煙が晴れるとそこには地面に力なく横たわるディエチの姿が見えるだけだった。なのははひとまず安心したかのように一息を付くと、ディエチとイノーメスカノンにシーリングロックを掛け、直ぐに台座の間へと飛び立って行った。そして、その姿を見送ったディエチは抜き撃ちで自分に競り勝った彼女を「人間か?」と呟きその場に倒れるのだった。そして、障害物の無くなった道をなのは急いで駆けるが、その左手はブラスターモードの解除によって負傷し、血を流していた。しかし、なのははレイジングハートに現状維持を指示すると翔馬との約束を思い出しながら飛び、一刻も早く翔馬を連れ戻すためにさらに速度を上げた。誰かのために無茶を押し通し、誰かを守るために傷付いていた彼を今度こそは自分の手で守り抜くためになのはは決意を今一度決めると、目の前に見えた大きな扉を見付けた。そして、再度レイジングハートを構えるとその扉を打ち抜いて大きなホールのような場所に侵入する。そして大きな会場のような場所で見たのは、ここに来る前、アースラのモニターで見たシエルを守る様にして立つ翔馬の姿だった。

 

「翔馬…君。 翔馬君!!」

「無駄ですよ? 今の彼には貴方の声なんて届かない。」

「っ!?」

 

なのはの声に反応したのは目の前の翔馬でも背後にいるシエルでも無くモニターに映ったクアットロだった。その声に思わずなのはは身構えるようにレイジングハートを構えるがモニターの向こうにいる相手を撃つこともできず唇を噛んで睨み付ける。

 

「あら、怖い怖い。…藤田さん? 目の前の敵、排除お願いしますね?」

「分かっている。あいつは殺しても構わないんだろう?…それよりも、お前はさっさとそっちの準備をしろ。」

「翔馬君!?」

 

クアットロは翔馬の返事に笑みを浮かべると、最後に「よろしくお願いしますね?」と付け加えてからモニターの回線を切った。それを合図に翔馬は剣先をなのはに定め腰を落とす。そんな行動を取る翔馬を見て、なのはもレイジングハートを構えるがその表情は未だに戸惑いを隠せていなかった。モニターで一度見ているとはいえ、流石に大切な人との本気の勝負をなのはが望んでいるはずも無かった。しかし、この現状では翔馬とまともに話をすることもできないと理解したなのはは一旦思考を外に追い遣り、戦闘の準備を整えて行く。夜の海上で向き合った時を軽く思い出すが、あの時は決してお互いに本気では無かった。翔馬との本気の勝負でどう転ぶかわからない状況に不安を募らせるが、絶対に正面にいる翔馬とシエルを助け出すと心に誓い、いつでも戦闘が開始できる準備を終えたのだった。

こうして、2度目でありながら、最初で最後のなのはと翔馬の真剣勝負が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

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