魔法少女リリカルなのはStrikers~風のエースストライカー~ 作:strike
さて、もうそろそろこのお話も大詰めです。
最終話まであと秒読み!!
最後までお付き合いお願いします。
それでは第38話スタートです。
ヴィヴィオとの戦闘を終えた翔馬はその体を優しく抱きしめヴィヴィオが落ち着くまでそっと胸を貸していた。
やがて、ヴィヴィオも落ち着いてきたのか啜り泣きに変わっていた声も聞こえなくなりヴィヴィオが顔を上げると恥ずかしそうにはにかんで、翔馬の胸からそっと離れる。
「落ち着いたか?」
「うん。……ありがと、パパ」
翔馬はヴィヴィオの言葉に首を横に振ると微笑んで見せ、ヴィヴィオは照れながら少し苦笑いを浮かべた。翔馬はヴィヴィオの様子を見てこれなら問題ないかと判断し、表情を引き締めて声を掛ける。
「それなら、落ち着いたところ直ぐで悪いんが早くここから脱出しなくちゃならない。そろそろはやてが動力炉に辿り着いて破壊してくれる頃だ。……急がないと、ここから出られなくなる」
「っ!! ……うん。そうだね」
ヴィヴィオは翔馬の言葉に一瞬体を震わせると、寂しそうな表情を浮かべて頷いた。翔馬はヴィヴィオのその様子に違和感を感じ、まさかと思いながらも目の前で辛そうにしているヴィヴィオに声を掛けずにはいられなかった。
「どうした? ……まさか、今更まだ一緒に行けないとか言うんじゃないだろうな?」
「……」
翔馬の言葉にヴィヴィオは少し顔を逸らすと表情を歪めて唇を噛みしめる。そんな態度を見てしまっては流石の翔馬でもそれが何を意味しているのかは理解できる。翔馬はどう説得しようかと頭を巡らせるが原因がわかず、また、時間が無い事への焦りもあり、取り敢えずこの場から離脱しようと考え、ヴィヴィオに手を伸ばした。しかし、その手はヴィヴィオに避けられてしまい空を切る。
「……ダメだよ。パパ。ここから脱出するのはパパ達だけ。私は行けないんだよ」
「何を言って……」
未だに辛そうな表情のヴィヴィオの言葉に翔馬は構わず手を再度伸ばそうとするがそれは彼女から発せられる言葉によって遮られた。
「この聖王のゆりかごは制御系を完全に失うと時空の狭間へと飛んでその身を隠し、また王があの玉座に座るのを待ち続ける。……そして、その副作用かはわからないけど制御系を失った瞬間、ゆりかご内部の魔力結合が解除されて、内部にいる全員が身動きすることの無いよう、各通路の封鎖を自動で開始してしまうの。ここでの魔法は一切使えない状態で通路まで塞がって……そんなことになったらパパ達はどうやってここから脱出するの?」
翔馬はヴィヴィオの言葉に驚き、理解するのに数秒を要した。実際、ここで魔法が使えなくなるという事は移動手段も徒歩に限られてしまう。更に移動する通路すら塞がってしまったらここから脱出する手立ては皆無だ。そんなことになってしまってははやてが動力炉を破壊してから外に出るまでに時間がいくらあったって足りない。下手をすれば翔馬達はこの要塞ごとアルカンシェルにて消し去られてしまうだろう。しかし、それでは疑問が残る。今はクアットロを倒し制御系はヴィヴィオに一任されている筈。そのヴィヴィオを説得することができたのだから制御系は生きていないはずだった。そこまで考えて翔馬は一つの結論に辿り着く。
「……。っ!? まさか、お前!?」
ヴィヴィオは一層寂しそうな表情を浮かべるとそれを何とか無理矢理笑みへと変えて頷くと翔馬の事を見つめる。
「そう。……今は私がコントロールを失わないように細工しているの。だから、私がここに居る限りゆりかごの制御が失われることは無い。パパ達が脱出するまでの間だけ、私がここの制御系をコントロールして、脱出の後に接続を切れば、艦隊の到着も間に合うだろうし、パパ達だって……」
「ふざけるな!!」
ヴィヴィオは泣きそうになる自分の感情を殺して翔馬の説得を試みるが、最後まで言い終わることなく翔馬の大声に遮られて体を竦める。そして驚いた表情で翔馬の様子を伺うとそこにはヴィヴィオ以上にとても辛そうな表情を浮かべた男がいた。それを見てヴィヴィオは何故か苦笑いを浮かべる。
「どうしてパパがそんな顔してるの? ……消えるのは私なのに」
「だからだ。どうしてお前がそこまで背負わなきゃならない!?勝手に創られ最後の時すら選ぶことのできないお前が、なんでこんな……!! お前はもっと自由に生きていいんだ!! これから、もっと長生きできるような方法探して、そして、アースラで待っているヴィヴィオとも仲良くなって、俺達と一緒にやることがまだ沢山あるんだ!! だから!! お前も一緒じゃなきゃダメなんだ!! ヴィヴィオ!!!」
翔馬の言葉にヴィヴィオは驚いた表情のまま固まったように動けなかった。想像するのは2人のヴィヴィオが恥ずかしそうにたどたどしい挨拶を躱す姿。なのはと翔馬に笑顔を向ける2人。ちょっとしたことで喧嘩をして涙を流しなのはと翔馬にあやされる2人。そんな未来を密かに思ってしまっていたのかもしれない。想像した光景が頭の中を流れ、先程よりも強く生きたいと願ってしまっていた。そんな細やかな幸せが自分にも訪れるのではないかと。そして、気が付けばヴィヴィオはまた静かに涙を流していた。……やがて体は震えこれから訪れるだろう死への恐怖が身を包む。生きたい。もっとこの人と一緒にいろんな世界を見てみたい。そんな思いが溢れて来る。
しかし、それは絶対に敵わない夢。現実は残酷だった。どれだけ願っても、どれだけ考えてもこのゆりかごに乗る人間が全員助かる方法などありはしなかった。一番生存率が高い方法は、自分がこのゆりかごと共に沈むこと。それを再度理解したヴィヴィオは顔を伏せて唇を強く噛みしめる。そして考えるのは今救うべき目の前の人の事。まだ会って1時間程しか経っていない相手にここまで感情をぶつけ、そして、必死に思ってくれる藤田翔馬と言う1人の男にヴィヴィオは本当にこの人が父親としていてくれて嬉しく、そして誇らしく思え、そして何よりも、ここでサヨナラをしなければならないという事実がとても悔しかった。ヴィヴィオはそんなごちゃまぜの感情に思わず大粒の涙が零れ、声を上げそうになるが、それでもくしゃくしゃの顔で笑ってから顔を上げ、ぼやける視界の中で翔馬を見つめた。
「…それでも、ね? 私は、…ひっく。多分、パパ、たちを、助けるために…生まれてきたの。…ぐすっ。だから、私は何にも後悔しないよ。パパはっ…。
「ヴィヴィ、オ?……何を言って」
ヴィヴィオは今までの中で最高の笑みを浮かべると、翔馬は嫌な予感を感じながら呟きを漏らす。しかし、今のヴィヴィオが翔馬の言葉に耳を貸す筈もなくその姿を消した。翔馬は目の前からいなくなったヴィヴィオを探そうと首を動かそうとした瞬間、背中に凄まじい衝撃が走り体が軽く宙に浮くのを感じた。そして、首をやっとの事で動かした翔馬の視界に映ったのは翔馬の背に左拳を放った後のヴィヴィオの姿だった。そしてその体勢は引いた右拳の全力を叩き込む構えでもあった。
「……パパ。ずっと、大好きだよ」
「ヴィヴィオ、止めろぉぉ!!」
宙に軽く浮いて身動きのできない翔馬に対して一言だけ呟くと玉座の後ろの扉をヴィヴィオの力によって開いた。そこに見える光景は青い空と海。扉一杯に広がる青は綺麗な場所だった。しかし今の翔馬にとっては最悪の光景つまり完全にゆりかごの外へとつながる扉だった。一度あの扉を潜ってしまっては二度とこの場所に戻れないと感じた翔馬は必死に抵抗を試み、ヴィヴィオへと声を掛けるがもう既に遅かった。
「セイクリッド・スマッシャー!!!」
翔馬が動こうとすると同時にヴィヴィオは辛そうな笑顔のままその引いた拳を突き出し、大きな魔力を翔馬へと確実にぶつけ翔馬の意思とは関係なしにゆりかごの外へと吹き飛ばした。そして翔馬は放り出された空の中で玉座の間へと戻ろうと空中で体勢を立て直そうとするがヴィヴィオの攻撃の勢いが止まらず相当離されてしまい、その距離から玉座の間を見つめる。すると、そこには扉の淵に立ったヴィヴィオの姿が見え手を伸ばす。しかし、その手が届く筈も無く扉はゆっくりと閉まって行く。そして、最後にヴィヴィオの口元が微かに動き、何かを翔馬に伝えてその姿を完全に扉の中に隠してしまった。
「……っ!!」
翔馬が体制を立て直して扉を見つめた時にはもう既に遠く離れ、首を上げずともゆりかごを見渡せる位の距離となってしまっていた。翔馬は様々な感情に心を埋め尽くされ呆然とした様子で今までいたはずのゆりかごを見つめ、拳を震わせる。
「ヴィヴィオ…ヴィヴィオォォォォ!!!!」
翔馬はこの感情の行き場を見つけられず、その場で涙と共に雄叫びを上げ自分の拳を膝に叩きつけた。助けるつもりが助けられ、守るべきものを手放してしまった。確かにこれで聖王のゆりかご破壊と言う翔馬の本来の目的は果たせるだろう。しかし、それ以上に大切なものを失ってしまうと言う事実に翔馬は自分自身を責めずにはいられなかった。
それから僅か数分後、巨大な爆発音と共に翔馬は現実へと引き戻される。歪んだ表情のまま顔を上げると聖王のゆりかごの後方から大きな煙が上がり、上昇速度も落ちていることは見て明らかだった。それを確認すると同時にはやてがうまくやってくれたのだと理解したが、今の翔馬にはゆりかごを墜とすことができるという達成感よりもヴィヴィオを失った喪失感の方が強く、その光景から目を逸らして時空管理局本部の方へと目を向けた。そこには至る所から火と煙が上がりっており街の惨状は酷いものだった。しかし、その光景すら翔馬には感情を植え付けることなく、翔馬の目に映っていたのはただの色褪せた世界だった。そして、翔馬が思い出したのはシエルを失った時の赤く染まった大地と周囲に散乱しているガジェットの残骸。その光景がふと頭をよぎると翔馬はきつく握った拳に更に力を籠め、血が滴るほどに唇を噛みしめて行き場のない感情に堪えていた。そんな時遠くから自分を呼ぶ声が聞こえ、力を込めていた体から力を抜くとその声に背を向けた。
「翔馬君!! 無事やったんやな!? はぁ……。いきなり通信が切れるから何かあったんかと……翔馬君?」
はやては無事に脱出することに成功したのか体には大した傷も無くユニゾンしたままの状態で翔馬の元に近づくと翔馬が無事であることに安心しながら声を掛けた。しかし、無事にしてはその様子がおかしく、さらにさっきから返事が返ってこない事にはやては不安を感じて恐る恐る翔馬の正面に回ってその肩に手を置いた。
「……っ!? ……何か、あったんやな?」
翔馬の肩に触れたはやてはその瞬間に驚いた表情を浮かべた。なぜなら、ただ姿を見るだけではわからなかったが触れてみるとその体はガタガタと震え、表情もとても生きた人間のものとは思えない位に蒼白だった。そして、なによりその表情は明らかに悲しみで歪んで、辛そうに唇を噛みしめていた。はやてはこんな表情の翔馬を見たことが無く、どんなふうに声を掛けていいのか悩んでいると、翔馬ははやての手を退け、ゆっくりとだがゆりかごの中で起きていた事を報告した。はやては翔馬の言葉にただ頷いて聞き役に徹し、これで少しでも翔馬の負担が楽になればいいと願いながら話を聞いた。
「……これがゆりかご内部で俺が見てきたことの全てだ。……後の事は頼む。これ以上は魔力の無い俺がここに居ても役に立たないだろう。先に戻って補給を受ける。」
翔馬は感情の無い声でそう言うとはやての横をすり抜けてこの場を去ろうとする。しかし、はやての横を通り過ぎる寸前で自分が何かに引っ張られそれ以上先に進むことが出来なくなっていた。翔馬は原因が1つしか思いつかず後ろを振り返った。
「ダメや。藤田一等空尉の戦域離脱は許可できへん。」
「……はやて、俺の話を」
「聞いとったよ。翔馬君が見てきたもの、翔馬君の辛さ。今ここで宙に浮いてるのすら厳しい位の魔力消耗。だけどそれを無視してでもやらなあかんことがあるって翔馬君は自分で言っとったやろ。それに気が付いてへんのにアースラには返せへん。」
はやては翔馬の腕を掴んで引き留めると真面目な表情で翔馬にそう言い放つ。しかし、当の本人である翔馬はそのことに心当たりが無く、ただこの場から去りたい一心ではやての手を乱暴に振り払った。
「俺の役割はあのゆりかごを堕とす事だ。……まだ、堕ちてはいないがここまでやれば後は時間の問題。それが達成された以上俺がここに留まる理由は無い筈だ。」
「……確かに、翔馬君のおかげでゆりかごによる被害は最小限に済んだし、後は艦隊が来れば確実に堕としてくれるやろ。翔馬君は今回の戦闘で十分過ぎるくらい頑張ってくれた。ここにこれ以上留まる必要はあらへんやろな。……でも、翔馬君の戦ってきた意味は何やった?何のためにこんな危険な事をしてまでゆりかごを破壊しようとしてたんや?」
はやては自分の意思を伝える為、そして翔馬が秘めている本当の思いに気付いて欲しいと願い、辛い筈の翔馬を引き留めて話を続ける。しかし、その想いは今の翔馬に届かないのか、鬱陶しそうな表情ではやてを睨む。
「……その問いに何の意味がある? 悪いがこれ以上お前に構っていられない。 こっちもそろそろ魔力切れを起こす。」
翔馬ははやてにそう告げるとこの場から去ろうと背を向けてアースラへ進路を向ける。しかし、またしてもはやての声がそれを引き留めた。
「……私が言ったのはここに居る必要はあらへんけど、そんな状態でアースラに返すわけにはいかへんと言ったんや。別の場所に向かうならまだしもアースラに戻ると言われていいですよとは答えられへん。私の質問にちゃんと答えたら休憩でも補給でもなんでもすればええよ。ただ一言言えばそれで済むことやろ? ……それとも自分が戦う意味すら見失ったんか?」
「……なんだと?」
翔馬は身体の疲労に加えて先程の出来事によって精神的にも疲労がたまっていた。そんな状況ではやてのなぞ解きに付き合うのが馬鹿らしくなり声を荒げて敵意を向ける。冷静に考えれば普段の翔馬なら絶対にこんなことはしないだろう人に八つ当たりし、しかもそれが戦場でなんて考えられるはずもない。しかし、今の翔馬はやり場のない感情を抑えるのに必死で少し外部から力を加えてやればそれは簡単に溢れ出してしまう。そんな理由もあり翔馬はあからさまに不機嫌となっていた。しかし、はやてそれに構うことなく続ける。
「それとも、人には言えん様な思惑があったんか? ゆりかごを乗っ取って街を破壊したり、管理局本部の崩壊を確実にしたり? それとも今まで一緒に戦ってきた仲間を裏切って管理局員の殺…」
「ふざけるのも大概にしろ!!! 俺が戦うのは何時だって誰かを守るためだ!! そんな馬鹿げた事のために俺が剣を振るう訳が無い!! 今回だってヴィヴィオを……っ!?」
はやての言葉を遮って叫んだ翔馬は最後の単語を口にした瞬間に今までの険相が嘘のように驚きに変わり、目の前のはやては翔馬のその表情を見て安心した様な笑みを浮かべていた。そして翔馬はここに来てやっとはやての思惑に気が付き先程のキツイ眼差しとは打って変わったものの、不満げな視線をはやてにぶつけていた。大切な事を思い出させてくれたことに対する感謝の気持ちと同時にはやての筋書き通りに自分が動いてしまった事に対する苛立ちが混ざった様な複雑な気分で目の前のはやてを軽く睨んだ。
「……そういう、事か。 まんまと踊らされてたって訳か。」
「さぁて? 何の事かはわから辺けど、まぁ、気付いてくれたみたいで何よりや。」
翔馬は一度だけ溜息を吐くとはやてに向かって先程とは打って変わり穏やかな表情でそう言った。その言葉にはやては恍け顔で笑いながら頷くと視線を翔馬からアースラへと向けた。はやての言わんとしていた事はこうだった。翔馬が傷付き俯いてしまうのはゆりかごでの出来事を聞いてしまえば誰でも頷くだろうし仕方の無い事だ。それが悪いと言っている訳では決してない。しかし、翔馬がアースラに戻るなら翔馬は普段通りでなければならない。なぜならそこには翔馬が本来守りたいと願い、危険を冒してまで手にしたいと願った未来があるのだから。その守りたかった本人に今の翔馬の姿を見せる訳にはいかない。それをしてしまえばきっと誰も得をすることは無いのだから。
「それはそうと、翔馬君の問題はこれで解決した訳やし、アースラまで魔力持ちそうにないなら私が肩貸そうか?」
はやてはアースラに向けていた視線を翔馬に戻すと先程の対応が嘘かのように翔馬に接し、流石の翔馬も呆気にとられたが、翔馬は気を取り直してから首を横に振るとその場から顔を
「いや。 飛ぶだけの魔力は残っているし、それに俺の役割はまだ終わっちゃいない。……あれが落ちるところくらいはこの目で見て帰るさ。もうじき決着がつく頃だろうしな。」
「……そうやね。」
翔馬の言葉にはやては微笑みながら頷くと翔馬に倣って無限の欲望へと視線を向けた。そんな時、はやてと翔馬の目の前にモニターが現れ、通信回線が開かれる。そこにはフェイト、エリオ、キャロの姿があった。
『こちらライトニング隊。スカリエッティのアジトを制圧。全員無事に逮捕したよ。』
「フェイトちゃん!! 良かった。 無事みたいやね?」
モニターに映されているフェイトはエリオに肩を預け少し辛そうに見えるが目立った外傷も無く無事に帰って来ることができたようだった。それを見てはやては安心したように肩から力を抜くと笑みを浮かべながら、状況について尋ね、後処理も聖王教会が当たってくれていることを確認していた。
「それじゃ、後は聖王教会に任せてライトニング隊はアースラに帰還。補給が終わったらフェイトちゃんは巨大戦艦の周囲をうろついているガジェットの掃除、手伝ってくれるか?」
『了解。エリオ達はミッド中央に戻ってティアナ達と合流。……動かなくなったガジェットの回収をしながら地上本部の方の指示に従って動いてね。』
『『了解です!!』』
はやて達はこれからの動きについて軽く打ち合わせると頷き合いそれぞれの持ち場に戻ろうとしていた。しかし、翔馬の存在に気が付いたフェイトはエリオ達を先に行かせるとその場に留まってモニター越しに翔馬を睨み付けた。それに気が付いた翔馬は何を言われても仕方の無い事だとフェイトの視線をしっかりと受け止めて見つめる。
『無事……だったんだね? 良かった。』
「フェイト……。」
翔馬はきっとフェイトから色々と説教を受けるものだと思い込み覚悟を決めていたがフェイトの口から出てきた言葉は翔馬の安否を心配する言葉だった。現にフェイトの表情は先程のキツイ眼差しから打って変わり心なしか瞳を潤ませながら安心しきった表情を浮かべていた。呆気にとられた翔馬だったが、周りの人達にこんなにも心配を掛けてしまったことに申し訳なさが膨らんで行った。
「フェイト、今回の事は」
「それは言う人が違うんじゃないかな? 翔馬が一番最初に謝らなきゃいけない人は他にいる筈だよ? そりゃ、私達にも謝ってもらいたいし、色々と言いたいことはあるけど……でも、きっと私達なんかよりもずっと我慢してた人がいるんだから。 ね?」
フェイトは微笑みながらそう言うと翔馬は真剣な表情で頷いた後に、笑みを浮かべる。
「ありがとな。 フェイト。 それにはやても。」
『どういたしまして。』
「私は別に大した事してへんしな。」
翔馬の言葉に2人はとびっきりの笑顔を見せると翔馬は本当のこの場所に来て、この人たちと再会できて良かったと心から思うのだった。そして、その後、フェイトとの通信を切ると、シグナムから連絡を受け戦闘機人の1人とゼスト、グレアム中将の死亡とアギトの保護が行われたと報告を受け取り、残りの戦場は目の前に広がる
「翔馬君。 行こか?」
「ああ。これが最後の戦いだ。」
はやては翔馬の言葉を聞いて頷くと先に戦闘空域に向かい始め、翔馬もその後を追おうとしたが不意に聖王のゆりかごの出口で何かを呟いたヴィヴィオの姿がよぎり途中で足を止めると後ろを振り返った。するとそこには先程よりも遠くに見える聖王のゆりかごが見え、そして、翔馬はその中にいる筈のヴィヴィオのことを思い、一度目を閉じる。僅かの間だったが翔馬が閉じた目を開けて最後にゆりかごを見るともう二度と振り向かない事を決め、今度こそはやての方へと向かおうとするが自分の視界の隅に何か違和感を感じて翔馬は視線を動かした。すると太陽の光に反射して何かが光っているのが見える。
「あれは……!!」
「翔馬君? どないしたん?」
はやては何時まで待ってもこちらに来ない翔馬を見かねて声を掛けるが翔馬は何かに気を取られてはやての声が耳に入っていないようだった。そして、はやても翔馬の目を向けている方向を見ると昼間にしては異常なほど光っているものが徐々に地上へと近づいて行く光景が視界に入り、その動きを止めた。
「あれは一体!? いや、……取り敢えず目視できる位置まで寄ってあの物体を確認することが」
「待て、はやて。その必要はないみたいだ。」
翔馬ははやての言葉を遮ると真剣な表情でその光を見つめ続けた。そうしている間にもその光は徐々に高度を下げて行きはやては翔馬の言葉をどう受け止めるべきか悩みながらも何が起こっても問題ないように身構え、翔馬は相変わらず無防備にただその光を見つめていた。そして、それから僅か数秒の内にその光は突然弾け飛び散った。
「なっ!? 一体どういう……」
「俺にも何が何だか……。 ただ一つだけ言えるのは、こいつが
そう言って翔馬は手を掲げるとその掌に軽い羽のように赤い石が舞い降り、翔馬の手に収まった。そしてその赤い石は一度だけ眩い光を発するとただの赤い石と化してしまった。その意思を翔馬は大事そうに握り締めると胸にあててゆりかごを真剣な表情で見つめると、背を向けた。
「今度こそ行こう。……この戦いを終わらせるために。」
「期待しとるで。『風のエースストライカー』さん。」
翔馬の言葉にはやては、からかい交じりの言葉を発すると翔馬は心地のいいくらいの笑みを浮かべ返した。
「俺にやれることがあるかはわからないが……任せておけ。」