Hunter×tale   作:カルカルパッチョ

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バトルシーンは筆が進むけど難しい...




8話 ※

「ふむ、それを避けますか...」

 

開幕からずっと“絶”の状態でいた老年の執事、ニシオは眉をひそめ呟く。

 

すでに避けた後ではあるがさっきまで居た位置には矢が刺さっており、ニシオは弓を構え、矢を放ったようなしぐさで片ひざ立ちだった。

 

キャラのパーカーには鋭利なもので切り裂かれたような跡が残っていて、緑色を傷からたれる液体が一部を赤く染めていた。

 

「あーあ、結構お気に入りの服だったのに...」

 

怪我をしたことよりもあくまで服が汚れたことに落胆を示す。その不気味さに背筋を撫でられるような感覚を覚えるが、身を硬直させる暇もない。

 

数分ほどの間、戦っていたが目に見えるダメージはこれが初めてだ。

 

この時まで当たった感触はあっても傷は見えなかった。それこそマトンが何度も放っていたオーラによる傷もだ。

 

マトンの能力では『切り傷』を媒体としている。だからこそ傷が見えずに焦り、やられたのだと推測できる。

 

当たっているのに服にすら傷ができない。なのに今回は傷ができた...何らかの念能力か...?どんな能力か考えよう──としてキャラが飛び出した。

 

またも二発。今度は一発はマンダラの牽制、二発目はキャラと同時にカミラに向かっていく。

 

「何度も通じると思うなよ!」

(この位置から避けるとニシオさんに当たる...さっきの威力はそうでもなかった。“纏”で十分事足りる!)

 

先程キャラがカミラの真下から急に出てきたようにみえたのは、こういうことだ。

 

銃をうった硬直を狙い、マンダラが炎を放つ。その瞬間に足を“硬”で強化、炎が当たる寸前で通り抜ける。その後、“絶”で炎のオーラに隠れ、銃弾を避けてきたカミラの懐に飛び込む。

 

それをもう一度やるというのだからなめられているとしか考えられない。

 

しかしまたも予想は裏切られる。攻撃に備えて身を固めたカミラの開いた股下をスライディングで通り抜けたのだ。

 

すぐに背後を振り返るもすでにニシオに向かっている後だ。飛び道具を持たないカミラにとって致命的な距離。

 

フォローとしてゴトーがコインを弾いて、時間差で放っているが、カミラか追いつくことはできないだろう。

 

愕然とする暇もなく背中にオーラを移動させる。自分を無視したということは銃一発で倒せると思った可能性があるからだ。

 

カミラの能力は『相対した敵の性別が女なら強化、男なら弱体化』するものだ。果たしていまこの状況が相対しているといえるだろうか?

 

答えは否。つまりは強化倍率が下がる。その分“纏”の防御力も下がる故にオーラ量をプラスしなければ防げない可能性もある。

 

そして強化してすぐに背中に衝撃が───こない。その代わりに見えたのは()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

衝撃的な光景に銃弾の軌道をみる、前に“周”でオーラがふんだんに込められた黄色の弾丸がひたいを射ぬく。

 

相対しているとは言えない状況で防御力が減り、意識が外れた瞬間を狙った一撃。その衝撃の強さにカミラが倒れる。

 

一方、青い弾丸はゴトーのコインとぶつかり合い、はじかれた弾とと時間差で打ち出されたコインがあたり、軌道がずれる。

 

体はすり抜けてコインには当たる。

 

その念能力を考察する間もなくニシオにキャラが詰め寄る。冷静にニシオがオーラの矢を3本、弓につがえる。

 

ニシオは放出系と操作系からなる複合型の能力をつかう。もとから弓の名手であり、ハンター試験にてキャラがプレートを奪ったポックルの師匠でもある。

 

その念能力は『追尾弾』『操作弾』『直進弾』etc...と多岐にわたり、高い汎用性と速度を兼ね備えたものだ。ちなみにキャラに傷を付けたのは隠密性にすぐれた『隠密弾』である。

 

それを3本。今回は『炸裂弾』『直進弾』『操作弾』である。

 

『炸裂弾』は威力がゼロの代わりにスピードが高く、任意のタイミングで発光が可能。

『直進弾』は何もないが速度と威力に優れたもの。

『操作弾』はオーラが続く限り術者が操作できる。ほとんど意識せずに行える点も良い。

 

最初に『炸裂弾』を顔の正面で発光させて目をくらます。これを防いだとしても『直進弾』が、それも回避したところを『操作弾』による横からの攻撃。

 

しかし、この想像よりも文字通り一歩先を行く事になる。

 

初撃の『炸裂弾』。これに対してキャラがとった行動が──前進だ。

 

普通は目の前に攻撃が飛んできた場合、反射的に避けようとしたり防御しようとしたりするものである。もしくは体が一瞬硬直するかだ。

 

その反射を無視して前に進むのにはどれだけの鍛錬が必要なのかは想像しがたい。

 

キャラの想定外の行動に『炸裂弾』の発動が少し遅れ、真後ろで発光する。

 

されどニシオもプロ。一瞬驚いたもののすぐに立ち直り、逆光によってハッキリとした輪郭の頭を狙い『直進弾』を放つ。

 

光が止まったときにあったのは、頭を撃たれ、倒れこんだキャラ...ではなく、矢を回避してまっすぐニシオを見据えるキャラだった。

 

本当のことをいうとキャラは矢を回避したわけではない。それどころか矢すら見えていない。

 

ではどうやったか。答えは()()()()だ。

たまたま、逆光で頭の位置がわかりずらかった。

たまたま、戦闘で弛んでいたフードが風で外れた。

たまたま、下から攻めるクセがあり、体勢を変えていた。

 

たかが運、されど運。戦場ではその運のあるなしが勝敗(生死)を決める。『運も実力のうち』というのは過言ではないのだ。故に──

 

全てを回避し、攻撃すべく一歩足を踏み出し、そこにあったコインに足を滑らせた。

 

──“不運”もまた、実力である

 

思わぬことにバランスを崩したキャラはそれでも頭を回し、体勢を戻そうとしながらも蹴りで攻撃する。

 

キャラが動揺した一瞬の隙にニシオが後ろに下がる。がキャラも逃がすまい、とナイフを投擲する。

 

ナイフはまっすぐに飛び、足を切り裂く。傷による痛みがニシオの足を重くさせた。その瞬間に距離をつめる。

 

しかし、ここは執事のなかでも上位の強さをもつニシオも全力で抵抗する。

 

さっきから2本持ってるように見せかけて“隠”で1本隠してたり、弓のほうのオーラを多くすることで“凝”で見破りにくくしたり戦いづらいことこの上ない。

 

2、3撃を回避したあたりから正気を取り戻した前衛が向かってきてる。ニシオを倒せなくなるのも時間の問題だろう。

 

残り少ない時間、ナイフの射程内に入っていて弓矢の有効射程から外れているのに寸でのところでかわされる。

 

対してニシオも焦っていた。

 

(ホホ...これはまた厄介な。後ろに目でもついているのですかな?)

 

あらゆる『弾』を使うもほとんどが見切られ回避、『操作弾』で後ろから攻撃しようにも悉く失敗。もはやほとんど打つ手無しという状況だった。

 

唯一、ニシオにできるのは迫り来るナイフを弾きながら広大な空間を逃げ回る事ぐらいだ。と想像よりも軽い攻撃を避けながらニシオは考える。

 

チラとキャラの後ろから来るマンダラをみた瞬間、胸ぐらを掴まれた感触をかんじた。

 

「ムッ、これはマズ──」

 

グッと引かれる感覚にとっさに体重を後ろにかけると、今度は逆に後ろにむかって押された。

 

重心が後ろになっていたこともあり、抗えないで後ろに足を動かす。が、何かにつっかえたように体が揺らぐ。

 

ぐるんと回る視界と突然の浮遊感。

 

ニシオが感じたそれはスローモーションで床が上に、天井が下に見え、さらには自分に向かう蹴りが飛んできていた。

 

走馬灯ってこんな感じか...死んだわコレ

 

と考えたところでアゴに衝撃が加わり、脳が揺れた。その結果、視界が暗転。意識が途絶える前に

 

「──あと2人」

 

という女性の声が聞こえた。

 




サラッと倒される強化系の女執事に何か強そうな雰囲気が出た老執事

名前は友達に考えてもらって本当に感謝。
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