2年F組 八幡先生   作:陽陰 隠

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息抜きも必要なんやなって


それでも、彼は変わっていない。

こんな言葉を知っているだろうか。

 

『青春とは嘘であり、悪である。』

 

かつて、捻くれていた少年のさまざまな感情が込められた文だ。

 

それは、才能の無い自分への僻みや自己欺瞞。

 

または、才能ある者たちへの嫉妬や渇望。

 

または、青春という戦場における負け犬の遠吠え。

 

はたまた、憧れに対する一種の諦めだったのかもしれない。

 

ただ、今になってそんな問をされても、答えなんて出てこない。

 

なぜなら、曲がりなりにも俺たちの青春は、まちがっていながら―――

 

 

 

―――正解だと言い合えるものになったからだ。

 

× × ×

 

段々と暑さが感じられ、家に帰ってアイス食いたいなーとか思いながら、職員室で一人パソコンとにらめっこをしている今日この頃。

あー、早く帰りたーい。仕事とか無くなれば良いのにな、マジで。でもそうも言ってられないのが現実である。なんたって妻帯者なのだ。妻だけに負担をかける訳にはいかない。あ、今の八幡的にポイント高い!でも社畜はやだ!

 

でも、今思えばあの頃から社畜の兆候が見られていたのだと思う。部活動だとしても、明らかに一介の高校生が扱う内容では無いものもあった。あの、川......川なんとかさんのやつとかな。そんなめんどくさい依頼をこなしてきたのだ。我ながら献身的すぎる。まあ、そのめんどくさい依頼たちのお陰で今の俺が構成されていると言っても過言ではない。それなりに平和で安定してますしね。

 

―――でも、そんな俺の真面目な安寧をぶち殺す俺特効型の上○当麻みたいな奴がいる。

 

「失礼しまーす。比企谷せんせーい!」

 

......来たか。俺の受け持つクラスで、いや、学校内で一番の問題児。それが渋谷栞だ。

 

「はぁ......何の用だ、渋谷」

「何だと思いますか~?」

「質問を質問で返すな!俺は疑問文には疑問文で答えろなんて教えた覚えはない」

「やだな~、わかってるくせに~♪」

 

本当にコイツと会話すると調子が狂う。コイツにはどっかの魔王みたいな雰囲気があるのだ。あの強化外骨格とまではいかないものの、仮面で表情を隠しているように感じてしまう。さしずめ魔王の幹部みたいな感じだ。あ、だから問題児なのか。八幡、完全に理解した。

 

「まあまあ、仕事に追われて可哀想な先生を栞ちゃんが慰めに来てあげたんですよ~?」

「やめろ、いらん、帰れ」

「酷い!?」

 

問題児には三段構えの攻撃が効くと、恩師に教わっているのでな。俺は男女平等のフェミニストなのだよ。

渋谷はそんな俺の口撃に多少うろたえるも、諦めずに続ける。

 

「そ、そんなこと言わずに、お話ししましょ?」

「うっ......」

 

既視感のある上目遣いで、渋谷が俺を見つめてくる。俺が昔から年下の上目遣いに弱いのを知っているというのか!?

てか、あいつの入れ知恵じゃねぇだろうな?

 

「......その技は誰から継承したんだ?」

 

頭にこの学校のOGで時々校内に出没する小悪魔を思い浮かべながら、恐る恐る聞いてみる。

 

「継承もなにも、私の初期装備ですよ?」

 

思い浮かべていた名前が出なかったことに少し安堵する。あいつの名前が出てきたら、俺はあいつを指導しなきゃならんからな。手間が省けたぜ。

俺が一人仕事が増えなかったことに安堵していると、渋谷がニヤニヤとこちらを見ているのに気がついた。

 

「なんだよ」

「いやー、いま先生が考えてた人ってあの写真のどの人なのかなーって。で、どうなんですか?ついでに奥さんも教えてくれても良いんですよ?」

 

こいつはまだその話すんのかよ。こいつのことだから、いつか誘導尋問とかやってきそうで恐い。俺に話すメリット無いしな。

沈黙は肯定と捉えられかねないので、取り敢えず法律にあやかることにする。

 

「黙秘権を行使する」

「えー、先生に人権とかあるんですか~?」

 

くっ、このガキ......とか言ったら「ザ~コ♡子供相手になに法律なんて持ち出しちゃってるんですかぁ?先生きもーい♡」とか言われそう。いや言われねぇよ!なに考えてんだ俺!

 

「なに気持ち悪い顔してるんですか?」

「いやキモくねぇよ。なんなら顔は良い方だ。奥さんはもっと綺麗だが」

 

そうそう、我が妻は俺には勿体ないくらい綺麗―――はっ!?言ってから気付いたが、こいつにこの話題はまずい気が......

ふと恐くなってきたので、ゆっくり渋谷の方を窺い見ると、やはり、先程と同じようにニヤニヤとした顔で、こちらを見ていた。

 

「ふーん、そうなんですねー。でも聞いただけじゃわかんないなー」

「おい、渋谷」

「いやー、百聞は一見にしかずって言いますしねー」

「おい」

「じゃあ、来週あたりに逆・家庭訪問に決定ですね!」

 

瞬間、力が抜けたように机に突っ伏す。こいつにはやると言ったらやる『スゴ味』があるのだ。例えばこの前、「休日に先生を見かけたら、デートしてあげます!」とかワケわからんことを言っていたのだが、運悪くららぽーとで遭遇し、そのあと家まで付いてきたのだ。だからこいつは、絶対に来る。俺はこいつにしたくもない信頼のようなものをしている。

 

はぁ......やっぱ専業主夫になった方が良かったな。

 




オリンピックで水谷・伊藤ペアが金メダル取ってて、嬉しくなりました。どうも元卓球部の部長です。
息抜きに更新しました。プロットも何もないのでぐちゃぐちゃかもしれませんが、続き書いてくかも。なので、評価とか感想とか欲しいなー。お気に入りとかして欲しいなー。てかしてください。褒められて伸びるタイプなので。
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