これからも、その結び目は綻ばない。
月影の 涼し今宵は 浴衣着て 夕涼みせむ 君と二人で
ふと何かで読んだ短歌が頭に浮かぶ。まさに今の俺たちにぴったりなのではないだろうか。まあこの場合、君と二人で、というより、君に見惚れる、が正しい表現だろう。......自分で考えてて恥ずかしくなってきたな。
「八幡!花火、綺麗だね!」
「......おう、そうだな」
季節は夏。世間では夏休みシーズンと呼ばれる期間に突入して間もないくらいである。
そんな夏はイベントが目白押しだ。
今日はいつかと同じように、花火大会に足を運び、花火を見ているところだ。
「むー、そこは『お前の方が綺麗だよ』みたいなこと言うとこでしょ」
「俺がそんなこと言う性格じゃないのは知ってるだろ......まあ綺麗だけど」
「まあ八幡だもんねー......って、え!?いま言ったよね!?ほ、ホントに捻デレてるな~」
頬を赤く染めながら、結衣はお団子髪を右手で触る。それを見ていると、やはり昔から変わっていないと、つくづく思う。
そう、あの時と同じだ。
高校時代、結衣に誘われて一緒に来た花火大会。あの時は小町の要望に答えるためという名目があったが、今は違う。嫌々でも無く、知り合いと遭遇することも無く、最愛の
「あ、比企谷先生だ!」
―――と思ってた時期が俺にもありました。
一番変わってて欲しいところが変わってなかったよ。ちょうど良い雰囲気になってきたところだったのに。お前を殺すよ?ここで、今。
俺は話しかけてきた自分の生徒に、怨念の籠った眼差しを向けた。それに合わせて、隣に座っていた結衣も同じ方向に顔を向ける。
「え、先生って......もしかして八幡の生徒さん?」
「そうですそうです!いかにも私が比企谷先生の一番弟子、渋谷栞と申します!先生、この人が奥さんですか?凄い綺麗な人じゃないですか~」
「おい、勝手に会話を進めるな。あと俺は弟子は取っていない」
由比ヶ浜の問いかけに、怒涛の勢いで捲し立てる渋谷。やはりこいつは放っておくと危険だ。なりふり構わず会話の主導権を握りにいくところとか、やっぱりあの魔王にどこか近い雰囲気を感じる。
「いやー、意外だったなー。先生が花火大会に来てるの」
「あー、やっぱ学校でもそんなイメージなんだね」
おい、そんなイメージってなんだよ。まるで俺が外に出たくない引きこもりみたいじゃねぇか事実ですかそうですか。まあ休日は休むためにあるから、わざわざ外に出るのでは意味がないしな。
「あ、でも生徒からの人気は高いですよ?イケメンだし、なんだかんだ言って優しいですし」
「む、そうなんだ。それって女の子も?」
「むしろ女子生徒からの人気の方が高いくらいですよー」
「へ、へぇ。そうなんだ......」
二人の会話を黙って聞いていると、結衣の顔がいきなり曇りだす。それに相対して、渋谷の表情は何か面白いものを見つけたと言わんばかりのにやけ面になっていた。
嫌な予感がする。こいつがにやけ面を浮かべた時は、決まって何かよからぬ事を思い付き、実行するための予備動作なのだ。
満を持して、渋谷が口を開いた。
「もしかして、嫉妬してるんですかぁ?」
こいつ、煽りやがった!お前これでも目上の人間だぞ!
そんな渋谷の挑発に、結衣は反論する。
「んなっ!ち、違うし!ただ、八幡は凄いなーって思っただけだしっ!」
「ホントですかねぇ?」
「いや、だってほら、八幡は高校からの、関係だし......」
結衣は頬を赤らめながら、俺の顔をチラチラと見てくる。こっちまで恥ずかしくなっちゃうじゃないか...♡
てか今の渋谷にその話はまずいのでは......
「え!?高校からなんですか!?私、馴れ初めとか気になっちゃうなー」
予想通り、渋谷はその話を掘り下げようとしてくる。このままでは、こいつに新しい玩具を与えることになってしまう。っべー。マジっべーわ、こいつ。ということで結衣さん、頼みますよ!
しかし、結衣の口から放たれたのは、俺の期待を裏切る意外な言葉だった。
「...―――まあ、八幡の生徒さんなら仕方ないか」
「やった!」
おいおいおい、マジかよ......このままだと恥ずか死するぞ俺。
「じゃあ、最初に会ったのは高校一年の―――」
そんなこんなで、高校の思い出紹介のコーナーが幕を開けたのだった。
× × ×
「―――したんだ!」
「先生、今とあんま変わんないですね」
「もうやめてくれ......」
高校の思い出紹介は、気付いたら当時の俺の黒歴史暴露コーナーに変貌していた。もうやめて!八幡のライフはとっくに0よ!
ただ、羞恥で死にかけている俺とはうってかわって、結衣はまるであの時に戻ったかのように、終始楽しそうに語っていた。そんな結衣の表情を見ていると、見ているこちらも笑顔が溢れてくる。やはり、あの時から俺たちは彼女のこの表情に支えられてきたのだろう。それが伝わったのか、渋谷も満足そうな笑みを浮かべ、楽しそうに話を聞いていた。
「で、先生、何が泣くほど欲しかったんでしたっけ?」
前言撤回。楽しそうに聞いてたのは、あくまで新しいネタが見つかったからだったようだ。
―――まあやられっぱなしも癪だし、少しからかうかな。
俺は、結衣の頭に手を乗せ、自信満々の表情を浮かべて答えた。
「そりゃ、結衣に決まってんだろ」
「......へ?」
「......ふーん」
あれ?何か思ってたのと違うぞ?
× × ×
「じゃあ、さようなら~」
「ばいばい渋谷ちゃん」
あの後、微妙な空気になったところを無理矢理俺が話題を変えることに成功し、他愛もない話をしてから解散に至った。マジで何だったんだあの空気。
「八幡、今日はありがとう」
二人で手を繋ぎ、家に向かって歩いていると、結衣が唐突に感謝を伝えてきた。何か感謝されるようなことしたか?
「何か感謝されるようなことしたか?」
思わず考えていたことがそのまま出てしまった。
すると結衣は、ふふっと笑うと俺の前に向かい合うように立った。
「私を、欲しがってくれたこと」
満面の笑みを浮かべながら答える結衣は、さっき見たばかりの花火よりも綺麗で、明るくて、それなのに手の届く場所にある。だから、手を伸ばした。
彼女は昔から変わらない。照らし、結び、繋ぎ止める。そんな役割を今も昔も担っている。だから―――
「こちらこそ、ありがとう」
―――感謝すんのは、こっちの方だよ。
気付いたら評価バーが少しオレンジになっていて口角が天元突破してグレンラガンになりました。ありがとうございます!
ということで今回はガハマさんでした。タイトルが難しかったです。次回はあざと可愛い後輩を予定してます。(確定ではないですが......)それと、見返したらHUNTER×HUNTERネタが多くてびっくりしました。無意識に繰り出されるネタ、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね(見逃した)
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