――時間は少しばかり遡る。
その男には後が無かった。
失敗すれば当然、成果を得られなくても待っているのは……死。
自分達のグループ……否! 自分の命のために、男は探した。
作戦を実行したメンバーから話を聞き、それらしい者に言いがかりをつけ、逆に因縁をつけられて土下座をし、そいつだと言った部下を足蹴にしながら、ついに見つけた。
青い髪のメイドの格好をした少女と、変な白くて長い物を背負ったハンター風の少年。
そいつらの横を通った時に軽くなったような気がする! という報告をほぼ全員から受けた時は、「そんなのいるわけないでやんす!」と罵倒したが、目の前に現れたとあっては見過ごすわけにはいかない。
「やっちまいやしょうぜ!!」
南東部に向かう二人を見て、自分達も命がかかっているためにいきり立つ部下達を、男は止める。
「まあ、待つでやんす。『変な格好をしている奴ほど強い』とも言うでやんすからね。ここは必勝法でいくでやんすよ!」
男の言葉にざわめく部下達。
その中の一人がくってかかる。
「ということはアレを!? 前の時も無断で、今回もまだ許可を得ておりやせんぜ!?」
「今使わずしていつ使うでやんす! 責任はあっし……は嫌でやんすから、お前が取ってすぐに連れてくるでやんす!」
「そ、そんな殺生な!?」
部下の顔に、絶望の色が広がった。
「いいから、つべこべ言わず早く行くでやんす!」
「へ、へい!」
慌てて駆け出していった部下から標的の二人へと視線を移した男は、ニヤリとほくそ笑む。
「途中で何があっても、生きて最後まで立っていた者が勝ちでやんす。そして、この
――そして時は現在へ。
赤い光が一閃する度に、床や柱が、まるで熱したナイフでバターを切るかのように斬り裂かれていく。
「く……」
障害物を盾にされ、鞭を引き戻しながら青い少女は相手を睨み付ける。
路地裏から建物――空きビルへと戦場を移しながら、アクアと黒服の二人組との戦いは続いていた。
散乱する柱や机……だったものを挟んで、十メートル程の距離で向き合う三人。
「通信もいつの間にか封鎖されてる。基本だけど、鬱陶しい」
柱や机の残骸を一踏みで砕きつつも、黒服達は未だに素手だった。
そして、三人は同時に前へと駆け出す。
間の距離など関係とばかりに一瞬で距離を詰めると、三人は格闘戦を始める。
拳と拳がぶつかりあい、足と足が重く音を響かせあう。
断続的なソレは五分、十分と続き、不意に鳴り止んだ。
焼き斬られ、宙を舞う黒服の腕が一本。
腹を蹴られた少女は凄まじい勢いで壁に叩き付けられる。
壁には、鉄球でも叩き付けたの如く円形に亀裂が入り、そのままくりぬいた形で少女は隣の部屋へと倒れていく。
長年使われていなかったのだろう。倒れた衝撃で、穴からはもうもうと黒い埃が舞い上がっている。
黒服の男は腕を失っても何の反応も見せずに、それどころか残る腕を指を真っ直ぐ伸ばした状態で、丸い穴へと向ける。
もう一人の男も同様に両の指先を向けていた。
標的が現れるのをじっと待ち続ける。
一方、その穴の向こう側では――。
「(まさかノア・エージェント――人類抹殺のために動くサイボーグが出てくるとは思わなかった)」
伝説の大破壊を引き起こしたと言われる超コンピュータ“ノア”。
その記録の多くは既に失われ、かろうじて生き残りこの時代で細々とした暮らしを営む人類で、その事実を知る者はごくごく僅かでしかなかった。
しかし、そのノアはどんなに優れた力を持っていても自らがその場を動く出来ない。
その代わりが、人類抹殺部隊である機械軍団であり、その中には人間と変わらぬ姿の者もいた。
人と機械を組み合わせたサイボーグと呼ばれる者達が。
歯向かう者達の中に潜り込み、内部から崩壊を導く。
大破壊末期、人類最後の抵抗戦線の中でも彼らの暗躍があったという。
目的はただ一つ、ノアの意思を示すことである。
アクアは倒れたままの状態で、勝つための手段を模索していた。
「(勝つだけなら出来るけど、あの三下男と多分部下がいる。アレの後で動けないのは不味い……けど、このままだと負ける。ウィンが居れば良かったけど、きちんとナヴィと合流出来たかな)」
ゆっくりと少女は上半身を起こす。
「(ノアの人形が、力を加減してまであの三下男の指示を聞いているのは不可解だけど、本気で動かれて犠牲者を出すわけにもいかない。ここで、止める)」
そう結論付けるとメイド服の内側に手を入れる。
「ナヴィ、借りるね」
ズゥン……! と、隣の部屋の天井辺りから破砕音が伝わってきた。
黒服達は間髪置かずに指先から機関銃のように弾を放ちながら、穴に向かっていく。
隣の部屋に飛び込むと、天井に開いた穴に向けて指先を向けて……。
立て続けに二度、天井部で爆発が起きる。
少し離れた位置と……自分達の真上。
僅かに早く発生した奥の方に反応してしまったために、真上から降ってきたものへの対応が遅れる。
が、そこはサイボーグらしく、超反応で顔と手を動かし銃撃。
三つの機関銃が、火線を引いてメイド服をズタズタにする。
服『だけ』を。
そこから凄まじい閃光が視界を奪い、常人には聴こえない音が破壊音波となって荒れ狂う。
『うっぎゃあああ!? 耳が、眼が、眼がぁーーっ!? ぁああああっ!?』
どこかで様子を確認していた者達も、黒服達も、完全に視界と聴覚を奪われていた。
「時限式に閃光と音響手榴弾。ナヴィが作るのはどれも性能が良い」
黒服達の背後、最初に空いた穴の横に立っている、これをもたらした一人の人物以外は。
閃光の中、胸元では丸く緑の、眼は黄色く鋭い光を放っていた。
「――…………03 SYSTEM-……RIUS startup completion……」
少女からの声は誰にも聞き取られることはなく。
それでも指先を向けようとする黒服達に、少女の眼光は鋭さを増す。
「The virus of system glitches is passed at a targets」
アクアが冷たく言い放つと、黒服達の動きが止まり……やがてぎこちなく、人には出来ない角度で関節を曲げるなどのおかしな動きを始めた。
「ノアに与する
左手には、先程まで持っていたのとは別の物があった。
ふちが鋭い刃になっている、赤い板状の金属を組み合わせて作られた連結刃と呼ばれる剣の一種。
その最大の特徴は――。
アクアが腕を横に一閃……!
剣はその勢いで振るわれると板と板の連結部がどんどん伸びていき、燃えているが如く真っ赤に染まる鞭へと変貌する。
その鞭が斜めに黒服達をまとめて斬り裂いていく。
振り抜かれ、ズバン! と派手に床も砕きながら、元の剣に戻っていく。
――ここまで、各手榴弾が効果を発揮している僅か数秒の出来事である。
黒服達は斜めに上半分が横にずれ落ち、遅れて下半分が崩れ落ちる。
それを確認することなく身を翻すと、顔を覆っていた白い仮面状のフェイスガードをオープンにしたアクア。
額から両耳に沿って頬下辺りまでと、後頭部全体をカバーするヘルムやヘッドギアといった頭部装甲。
フェイスガードの目以外を覆っていた部分に関しては、中央部から左右に分かれて横に、目部分は上にそれぞれ収納されていく。
機関銃で撃たれてボロボロになったメイド服を拾い上げると、その身を包んでいた背中がいかつい青い外装を解除する。
同時に左耳にはハンタースカウターが現れ、服の破損を気にせず袖を通し……ぐらついて倒れる。
腕に何とか力を込めて身を起こし、何度か足をもつれさせながらも壁に手をついて立ち上がった。
「いくら久し振りの使用とはいえ、能力を制限した上で介入レベルも下げていたのにこれとは。やはり一人では……」
自虐的に呟きながら、外を目指す。
こちらの状況を視ていた敵はまだ目と耳をやられているだろうが、全員ではない。
外で待ち伏せされている可能性も考えて、先程の剣は解除した武装の中に含まれていたため、普段から持ち歩いている金属鞭を手に下げている。
「今の暮らしに慣れすぎてしまった。ソルジャーとしての勤めも果たせなければ、本当にわたしは……」
――あの時、倒した後に確認しておけば。
――見られることを気にして、外装を解除していなければ。
――違うことに気を取られていなければ。
この後の事態を避けられたのかもしれない。
「……え?」
少女の胸元を背後から赤い光が貫き、壁に新たな穴を穿った。
アクアは信じられないといったニュアンスの、呆然とした声を上げる。
その手から金属鞭が滑り落ちて、穴を潜ろうとした少女はその目前で膝から前のめりに倒れた。
床に広がっていく、“赤い液体”。
「そんな、確実に……倒したはず。いったい……何が?」
何とか振り返って背後を確認したアクアが見たものは、起き上がっている二体の“機械人形”。
分かたれた半身はコードで繋がっており、元の位置へとせり上がっていくところだった。
片方の右腕はアクアに向けられており、先程まで機関銃だったそこはライフルとなって、その銃口から赤い光の粒子が霧散していくところだった。
「まさか、コピードール……?」
コピードール。目の前に現れた相手に変身する力を持ったマシン系モンスターで、相手の武装や技術をそっくりそのまま再現……文字通り“コピーする”力を持った機械人形。
変身継続時間はそう長くはないが、団体で動くことも多いため、ハンター達にとっては危険な相手の一つとして警戒されていた。
対処法は、コピーされる前に
しかし……。
「その場にいない者への変身は……容易では、ないはず。それを行った例もある……けど、頭脳に変調を来すと。通常の……個体じゃない」
その言葉を裏付けるかのように、『コピードール』達は全身からコード……いや、身体そのものがほどけていく。
サイズが合わなくなったセーターをほどいて新たに編み直すが如く、二体の機械人形は一体へと変わっていく。
「データに無い……モンスター」
目の前に現れた自身の知識に無い個体を、ハンタースカウターのデータに照らし合わせてみたが、結果は『unknown』の文字。
赤い字でNのイニシャルが刻まれたカウボーイハットに似た頭部と、機械剥き出しのフェイス。
ウエスタンジャケットを模したらしい外見の胴部には左右にAとPの文字が刻まれ、両手はタイプの違う銃器になっていた。
首とウエスト辺りは連なったリング状で、そこを軸に回転させれば即座に背後などへ対応出来ることを思わせる。
『えーい、眼が見えないでやんす! プロトボーグ! まだ生きているなら、やっちまうでやんす!』
男の声に反応して、ロボット――プロトボーグと呼ばれたソレのフェイス、丸いツインアイにオレンジ色の灯が点る。
「ハジメマシテ、コンニチハ。ソシテ、サヨウナラ!」
「く……一か八か、もう一度使うしか!」
プロトボーグはアクアに向けて右手のライフルを構える。
アクアも無理矢理身体に力を入れ、朱に染まりながらも片膝立ちの状態になって起死回生を狙う。
ライフルの銃口には、先程少女を撃ち抜いたものと同じ赤い光が集束していき――。
「やめろぉーーーっ!!」
――逃がしたはずの少年の怒声が響き渡ったのはこの時だった。
「……っ!? ナヴィ?」
アクアの背後にあった壁の一部が粉砕され、そこから何かが飛び出す。
最初に空いた穴から飛んできた白いレーザーがプロトボーグが持っていたビームライフルに命中する。
外部から加わった破壊する力に圧迫され、発射寸前だった銃身が膨れ上がり、そこに溜まっていたエネルギーが暴発して爆発する。
至近距離で起きた爆発にたたらを踏んだロボットの顔面に、高速回転するスパナが命中。
続く衝撃に、のけ反って後ろへ倒れるプロトボーグを尻目に、スパナは大きく弧を描いて投げた主の元へ。
「よくも、アクアを!! ボクが相手だ!」
壁を粉砕しながら飛び込んで来たチャイナ服を着た人物――ウィンは、落ちていた金属鞭を拾い上げると一気に赤熱化、倒れたプロトボーグに叩き付ける。
「アクア、大丈夫!?」
「アクア、無事か!?」
レーザーライフルを構えたエティアと、戻ってきたスパナを片手で受け止めたナヴィが駆け寄ってきた。
アクアをナヴィに任せ、エティアは二人をカバーしながらウィンを支援するために、レーザーライフルを家族を傷付けたロボットに向けて発射する。
「もうボク達には仲間はいない……絶対に許すもんか!」
気炎を吐くウィンだが、それに反してプロトボーグに振るわれた金属鞭は左肩を打ち据えたものの、今までのように焼き切ることは出来なかった。
衝撃は与えたようだが相手は気にした様子もなく、倒れた状態から他動作無しで直接起き上がる。
エティアからの白いレーザーが胴部に命中するものの、僅かに焦げ目を付けるに止まる。
プロトボーグは壊れた右腕はそのままにして、左腕の縦二層の回転式機関銃――ダブルガトリングガンとでも名称が付きそうなソレをウィンに向けた。
「ダンタイサマ、イラッシャイマセ。ジゴクリョコウヘ、ゴアンナイ! ゴートゥーヘール!」
二つの機関銃は同時に回転して、雨か
巨大な羽虫の羽ばたきにも似た重低音が唸りを上げる。
「くっ、これくらい!」
ウィンは床や壁を驚異的な速さで駆けながら、決して足を止めない。
いや、止めることは出来ない。
視界の端に、アクアをこの部屋から連れ出そうと抱え上げるナヴィと、それを庇いながらレーザーライフルを構えるエティアが写る。
敵の注意を自分に引き付けるために、一番の脅威であり続けなければならなかった。
足を固定したまま上半身だけを回してウィンの機動に対応するロボットに、ウィンは懐に飛び込むと金属鞭を焦げ目がついている胴部に突き立てる。
が、やはり高い防御力に阻まれて決定打にはならないようだ。
逆に、相手の右腕が再生を終えてそれをウィンに向けている。
銃身が無い内臓型の武器のように、手があるべき場所には小さな長方形の空洞。
空洞……暗い闇の中に赤が見えた。
――瞬間、ウィンの両足が跳ね上がる。
「でやあああっ!」
両手を床についての両足蹴りが、プロトボーグの右腕を弾いた。
その右腕から天井に向けて吹き上がる炎。
真上へと伸びた燃え盛る炎の長剣が、天井の一部を砕いてしまう。
剣による攻撃は失敗したものの、それで終わるプロトボーグでは無い。
蹴り上げた姿勢のままのウィンを、下半身を後ろへと半転させながらそのがっしりした足を使い、回し蹴りの要領で蹴り飛ばす。
「ぅぐぅっ!?」
続いて首から上だけを回して、その丸い眼から光弾を放つ。
「っ! 危ない!!」
今まさに丸い穴を潜ろうとした二人ごと、ロボットを警戒していたエティアが横に飛ぶ。
「うわっ」
ちょうど二人の頭の高さの位置を、二発の光弾は通過していく。
ロボットを挟んで反対側の壁では、蹴られたウィンが派手な音を上げていた。
「ちょっと……洒落にならないわね。強いわ、このロボット」
自分やナヴィよりも、白兵戦では格段に強いアクアやウィンが圧倒される相手に、二人を押し倒した姿勢のエティアの背中を冷たい汗が流れる。
アクアは負傷し、ウィンは壁にめり込んでいた身体を引き剥がしてプロトボーグに向かおうとしているが、装備がほとんどと言って良いほど無かった。
一方のプロトボーグは顔をエティア達三人の方に向け、身体そのものはウィンとの戦いに備えている。
しかし炎の剣こそ構えてはいるものの、ダブルガトリングガン等を向けたままで発砲をしてくる様子は無い。
抹殺するという口調とは逆に、ウィンが準備を終えるのを待っているようにも見えた。
「まずい。わたし達を逃がさないことで、ウィンの枷にするつもり」
アクアにはプロトボーグの狙いが読めた。
アレは四人の中で一番強い者を正確に認識し、その思考パターンを推察する力を持っている。
コレデファミリーと一緒にいる理由だけは不明だが、プロトボーグの狙いはおそらく……。
――ノアは、『あの時』のことを忘れてはいない。
「アクア、やっちゃっても……良いかな?」
ウィンもまた、気が付いたのだろう。
相手の目的に。
「(出来ることなら使わせたくない。わたしよりは格段に負担は小さいけど、ゼロじゃない。それに万全では無い今、使用すれば思わぬ副作用があるかもしれない。旅に出る前に二人とも試しておけばよかった……! どうすれば、一番良いかたちで切り抜けられる?)」
パターン毎に、傷付いた身体でシミュレーションを繰り返すアクアの隣では――。
「(チクショウ。どうすれば良い? どうすれば、アイツから四人でこの場を切り抜けられる? 母さんみたいに分解か? いや、俺の腕じゃ無理だ。腕一本もぎ取るにも時間がかかる。後はスパナとコサイゴンの角か。考えろ。諦めずに考えろ。こんな所で終わってたまるかよ!)」
ナヴィもまた必死に考えていた。
魔カニック――魔改造メカニックの二つ名も持つ母親から受け継いだ頭脳を、ハンターとして初めて活用する。
「(ウィンにはアイツに通用する何かがある。しかし、アクアに聞いていることから何か不安な要素があるんだな。じゃなけりゃ、とっくに使ってるはず。それにアクアは枷と言った。俺達をそうすることで、ウィンにソレをさせようとしてる?)」
それなら、ソレを使わせては駄目だ。
横でそのことを悩む少女のことは知らず、ナヴィは即断する。
「(戦車があれば楽だろうが、ここはクルマ進入禁止エリアだ。エティアのティーガーでは入ってこれない。そもそも補給の後はまた宿の近くに停めているはずだしな)」
秒単位でナヴィは考えをまとめていく。あくまでも、四人で生き抜く道を見つけるために。
「(逃げるのは……無理か。倒すのも無理。鞭もレーザーライフルも、アイツにまともに通用する武器がない。俺が背負っている角でも使えば貫けるかもしれないが、手段がない。くそっ! 何か……何か一手)」
「コナイノカ? デハ――」
――それは静かに起動した。
――主の危機。主が求めた。
――ならば、行かねばならない。
――跳ぶ。跳ぶ。走る。跳ぶ!
――かの場所を目指して……。
「――デハ、ゴートゥーヘ……」
「「「一か八か!」」」
眼を光らせてダブルガトリングガンを構えたプロトボーグを前に、ウィンとエティア、立ち上がりながらアクアが吼える。
「これ以上、ボクの大事なものを奪わせない!」
「ノア。わたし達は……最期まで抗う」
「『モンスターハンター』は、この世界に生きる人達の希望の刃。 こんな所で負けられなくてよ!」
ウィンやアクアとは、ナヴィと同様にエティアもずっと一緒に暮らしていたも同然だった。
とあることがきっかけで、ナヴィよりも早く二人とはチームを組んで活動していた分、生活を共にする彼よりも付き合いは長いかもしれない。
だからこそ、二人の考えも分かるのだ。
「(助けて、助けられて……チームなら当たり前のことを、父様だけではなく私は二人に教わったわ。今度は私がみんなの力になる番!)」
エティアはレーザーライフルの出力調整のリミッターに指をかける。
「GWーX01 SYSTEM――」
「GW-X03 SYSTEM――」
奇しくも、三人が同時に行動に移ろうとしたその時。
「ウオォーーーン!」
戦場に力強い雄叫びが響き渡った。
それと共に、穴から飛び込んでくる真っ白い影。
近くにいる三人を身軽なステップで迂回すると、まるで流星のように橙の光に包まれながら、プロトボーグへと突っ込んでいった。
それは一匹の大型のイヌ……真っ白い毛並みのシェパード。
しかし、バリアを纏っての体当たりを可能とする『ポチバリア』と呼ばれる兵器を使うことからも、見た目通りの普通のイヌではないことが分かる。
バイオニックドッグ。ノアと戦うために研究して生み出された、軍事用に改良された犬達。
戦車にも匹敵する戦闘力と、高い知能を誇る軍用犬である。
しかし人類がノアとの戦いに破れた後に、一部は野生化してバイオニックモンスターとして人々を襲うようにもなってしまったが……。
イヌは、プロトボーグからの二条のアイビームをバリアで受け止めながら体当たりを敢行する。
「ヌッカのシーザー?」
思わぬ援軍が見覚えのある姿であることに気付き、思わず中断したアクアが小さくその正体を告げる。
そして、援軍はイヌ――シーザーだけでは無かった。
「お、お前は……!?」
主の想いに応えて馳せ参じたのは、大小二つの大砲を昆虫のような六脚で支える“現”ミニ戦車。
「ガイアウォーカー!? どうしてここに……いや、来てくれたのか?」
イヌの突進を背中に受けたプロトボーグの顔面に、極太の白いレーザーが突き刺さり目の一つを破壊していた。
「はぁあああっ! 受けろっ、見よう見まね錬気! 破甲脚!」
ウィンは、バランスを崩したプロトボーグに一気に接近!
よろけて“こちらに突き出される形となった”ロボットの胸の傷に、先程のお返しとばかりに強烈な回し蹴りを浴びせた。
ガアンッという硬い物同士が激しくぶつかり合う音が建物内に木霊すると、同時に何かが小さく碎け倒れる。
「ウィン、ワンコ、巻き込まれるなよ! 狙い撃つぞ!」
「大丈夫! やっちゃえ、ナヴィ!」
「ウォン!」
ウィンとシーザーがロボットの近くから離れた。
ナヴィを乗せて、天井すれすれを跳ぶガイアウォーカーが、一五〇ミリキャノンにも勝る主砲を真下に向ける。
しかし、そこに籠められているのは砲弾ではなく、白く長い角。
「普通と違ってどこにでも入れることが、こいつの強み! いっけぇーーっ!」
放たれた角は正確に、プロトボーグのヒビの入った装甲を貫いた。
「ギ……ギギ、ガガ」
床も軽々と貫き、大きな杭となってロボットを縫い止める。
「やったか!?」
「やった!?」
四人と一匹が見つめる中、動きを止めた強敵にナヴィとウィンが互いに顔を見合わせていた。
誰も何も言わない中で、廃ビルの一階で行われていた戦闘は終わりを迎えた。――床の崩落と共に。
「げっ!?」
「ウソッ!?」
「ちょっと!?」
「……っ」
「ウウォン?」
元々老朽化は進んでいたのだろうが、戦闘でさらに劣化が進んだようだ。
すぐ近くの穴から逃げることも出来ないくらい、もの凄い早さで崩落していく床もろともに四人と一匹は闇の中に投げ出される。
――床部分が無くなった部屋の天井には、ロープが一本ぶら下がっていた……。
※ ※ ※
「――ということでしてぇ、今からこのビルの工事を始めるのです。はは、そう古い建物ですし、一部は壊す部分もありますのでこうして自警団の皆さんからも人手を借りて、このエリアには入らないようにしてもらっているのです。なぁに、優秀なメンバーが多いしトレーダーとして臨時の店を作ることもありますからねぇ、この手の工事は慣れていますしすぐに終わりますよぉ。はい、これからもあたしども『コレデファミリー』が立ち寄った際はご贔屓に! 『よし、初めな! ゴミもキレーイに片付けるんだよぉ? 失敗は許さないからねぇ』」
『ウィーキャーンへール。ゴミタチ、ゴアンナイ!』
※
味方側の主要キャラが揃ったところで、イメージ職業紹介を。
ナヴィ……ハンター+メカニック。
エティア……ハンター+ソルジャー。
ウィン……ソルジャー+舞闘家。
アクア……ソルジャー+アーティスト。
シーザー……ポチ+ポチ。ホワイト・スイス・シェパード・ドッグ。
(注)職業はあくまでもキャライメージであり、メタルマックス4のようにスキルの入れ換えはあります。