→かりー広告第??号
Nさんのお話。
「いや~、あの味は凄かったとしか言えないですね。記憶が飛ぶほどに。まるで、舌に噛みついてくるような食感のサラダ。使われていた食材が余程新鮮だったのか、噛みごたえもばっちりで、葉物で歯が折れそうな気すらしました。もちろん、本命のカレーも口が痺れる程の……そう、美味さで口の中が爆発するような。ああいうのを、“天にも昇るような味”って言うのでしょうね。惜しむらくは、美味さの余り記憶も飛んだことでしょうか?」
Wさんのお話。
「とても、美味しかったです! サラダはサクサクシャキシャキで、野菜の瑞々しさが良く出ていました。カレーの方は、もう言うことはありません! 口に入れる度に溢れる美味さ。何度でも、何杯でも食べたくなります! もちろん、また見かけたら絶対に食べます! ご馳走さまでした!」
EさんとAさんのお話。
「トマトとかカレーは苦手なので……。でも、見た目は本当にとても美味しそうで、食べられないことが本当に残念です。苦手を克服したら、いつかそのうち挑戦してみようかなと思います」
店主より。
「今回は、旅のモンスターハンターパーティーという四人の方のコメントを掲載致しました。
店主冥利に尽きるコメントと、苦手と語ったお二人は本当に残念そうでした。
『かりーまん号』、次はどこに向かうのか?
もしかしたら、あなたの街を訪れているかも知れません!
見かけたら、ぜひともご賞味下さいませ!
あなたが感じたことがない食の未知を、これまで食べたことがない味を!
必ずやご提供させていただきます。
味覚の向こうに何かが見える!
※なお、当店では食材の買い取りをしております。
供給が難しく使用頻度が高い品や、珍しい食材の場合は高く買い取らせていただきます。
売りたい時に酒場が無い……そんな時に当店を見かけた際は是非ご利用下さい!
ただ、買い取りは食材のみとさせていただきます。
まことに勝手とは思いますが、移動かれー販売店というご理解のほどをお願い致します」
新商品のご案内
「モンスターハンターの皆様に快適な狩りをしていただくため、特にご要望の多かった日保ちする特製弁当をご用意致しました。
これまでのハンターカレー各種同様、レベルで分けられておりますので皆様のレベルに応じてお求め下さい!
他にも、かーりーパンやかりー
なお、現在ご愛顧キャンペーンに伴い、お買い求め頂いたお客様には期間限定! ライスかりーをサービス致します!
さらに抽選で、大破壊前にあったというかりーウドンも!
食べて良いんですよ? 懐かしのあの味を!
食べ過ぎて下さっても、良いですとも!」
欄外に小さい字で、「カレーマンではありません」と書かれている。
【はらはら平原】
『何回見ても良いものだよねー! 自分の名前が載ってるのを見ると、こう、ニヤニヤというかニマニマするというか』
エティアの操縦するティーガーの中。彼女と同乗者のナヴィ、二人のiゴーグルからそんなウィンのにやついた声が聞こえてくる。
それを聞いた二人は(おそらくはアクアも)、沈痛な表情で頭を左右に振った。
同じ台詞は、この一週間で既に二桁を余裕で越えている。
おかげで話していない時でも、決して広くないティーガーの操縦室の中には、彼女の声が反響しているかのような錯覚すらあった。
「あいつ、確か十枚くらいあのチラシを貰ってたんだよな。それで家の方にも送ってたはずだ」
「気持ちは分からなくもないけど。変に頭を働かせて私の家の宛名にしていたら、父様達も読まれるでしょうね」
iゴーグルの送話機能を切って話すナヴィに、同じようにしながら肩越しに後部シートの彼をチラリと見たエティアは、どこか優雅な仕草で肩を竦めてみせる。
時おりCユニット……バーイショで購入したばかりのラクターに触れては、周辺の索敵モードを切り換えている。
前まで使用していたウォズニアクSIも、その持ち前の軽量さからエンジンの負担にはならないからと、売却せずに予備としてそのまま積んであった。
「ナヴィ。何か私達に良さそうな獲物はいないかしら?」
「そう言われてもな……。ハンター稼業はエティア達の方が長いだろ?」
問われて、そう答えるナヴィ。
しかし口ではそう言いながらも、iゴーグルをいじり検索をかけていた。
「オフィスに納める金額は確保してあるけど、少し稼がないとまずいわね」
「だよな……」
バーイショで当面必要になりそうな物を買い込んだ結果、パーティーの資金は大きく減少していた。
自分達自身に加えてティーガーの武装も、ショップや店を出していたトレーダー(例のファミリーでは無い)から身繕い厳選したものばかりだが、当然値段も相応である。
下手に妥協するよりは良いという判断ではあるが、おかげでアクアが管理するノートも赤一歩手前であった。
もっとも支出以上に稼げるのも、モンスターハンターという職業なのだが。
襲ってくるモンスターを蹴散らしながら、パーティーは南西を目指していた――
「――……フォレストビレッジ? そこに女の子のお父さんがいるかもしれないんですか?」
「候補の一つってところね」
お昼を少し回ったヌッカの酒場。
食後、未知の世界から帰還してきたナヴィの前にドーパミンソーダを置きながら、ヌッカがそう教える。
「私も行ったことないわね。どんな所なのかしら」
ボムポポ酒とカレーを抱き込んで食べるウィンの方を見ないようにしながら、エティアはステロイドサワーに少しずつ口を付ける。
カウンターで横並びのため、ウィンにはほぼ背中を見せる形となっている。
時おり胸を押さえているのは酒のせいか、隣で食べている人物のせいか。
「フォレストビレッジはここから南西。グロアプの森に隣接している、ムーセムの街よりも少し規模が小さい規模。だいたい、二~三週間くらい」
触れて傷の回復具合を確かめながらアクアはそう言うと、ナヴィを挟んで反対側に座っているエティアへと白い物が乗った皿をテーブルの上を滑らせる。
アクアが注文したギョライさしだが、回復するまでは食べないらしい。
同じく注文したパイルドライバーもそのままである。
ウィンを気にせず何かを食べろ、ということのようだ。
一行の足下では、シーザーもいびつな形の唐揚げを平らげていた。
「そ。ちょっと遠いから、行くならしっかり準備しておきなさいな」
サシミに手を伸ばすナヴィの手をはたき、彼の前には山盛りのモジョポテトが乗った皿を置くヌッカ。
「もう一つの候補も距離自体は、同じくらいなんだけどね」
ゴソゴソと、ヌッカはカウンターの下からこの近辺の地図を取り出す。
それはここから西方が描かれた地図であり、カウンターの空いている所に広げると、指で示しながら説明を始めた。
右端の方にバーイショがあり、そこから北にはムーセムの名前もある。
「まず、バーイショがここね。ここから……」
まずバーイショを示すと、そこから南西に指を動かしていく。
「はらはら平原を経由して」
弓なりに徐々に北西に、やがて南北に大きく広がる森の横にある街の所で指を止めた。
「ここがフォレストビレッジ」
「うわ! この森、バーイショの何倍あるんだろ」
地図の上でも大部分を占めている森部分を見て、ナヴィが思わずポテトを摘まんでいた手を止める。
「三倍……いえ、もっとかしら?」
エティアもその大きさに驚きを隠せないようだ。
「ここが、さっきアクアちゃんが言っていた西方最大のエリア。グロアプの森よ。森林監理局もあるけど、奥には余り入らない方がいいかもしれないわ。エティアちゃんとナヴィ君にはまだ危険と思うから」
「げ、エティアもかよ……あ、じゃあこの上の方にあるのが」
自分よりハンターレベルが上のエティアですら危ない。
そのことにナヴィの口からは声が漏れるも、森に沿ってフォレストの北に街らしき表示があるのを見付けた。
彼が示したそこを見て、ヌッカも頷く。
「ええ。そこが候補地その二のタウン・ザ・フォレストよ」
「え? さっきと変わらないんじゃ、その名前」
「どっちが先に出来たとか上とか、そんな感じの街よ。街同士の中は悪いけど、他の人に対してはそうでもないから、あなた達は気にしなくてもいいわ」
肩を竦めて話した後、ヌッカはチラリと視線を向ける。
その視線を受けて、頷いたアクアが口を開く。
「問題はここからの道中。タウンの方に行くなら、途中にカリカリ砂漠を抜けることになる。凶暴なスナザメ種や、マシン系のモンスターが多い。他にも高空から狙ってくるモンスターもいるから、ちょっと……かなり危険度が高い」
「お前が言い直したせいで、俺の中ではより危険度が高まった」
「私も……。ちょっと遠慮したいわね。それに、砂漠ってだけでも」
ふるふるとシンクロして首を振るナヴィとエティア。
「あたしもお勧めはしないわね。エティアちゃんのお肌はもちろんだけど、最近変なのも居るらしいのよ。ハンターオフィスでも聞いたかもしれないけど」
カウンターの下から一枚のポスターを取り出すと、四人……三人に見せた。
「ハゲワシヤーボ。どこからかやって来て、そのままいついちゃってるのよ。街にはまだ行ってないらしいけど、それもいつまでやら」
ヌッカは憂鬱そうにフゥッ……とため息を吐くと、シーザーの前に水が入った皿を置いた。
「三万……てか、空?」
「そう。しかも高高度。普通の武器では届きもしないから、一方的にやられる」
「うげ……」
「私のティーガーの武装では届かないわね。SーEの穴は空いているから、何かあれば買っておこうかしら」
アクアの説明にナヴィは呻き、エティアは口許に手を当てて考え込む。
SーEとは特殊砲のことで、メインとなる主砲や機銃が多い副砲とは違って、特殊用途のモノがたくさんある。
特殊な砲弾を使うモノも数多いが、主砲よりも強力なモノもまた数多い。
補給の値段も高めのため、虎の子的な使い方をするハンターも比例して多いという代物である。
「砂漠には夢やロマンが埋まってるんだよ!」
「今の俺達だと、夢とロマンを追いかけてそのまま死出の旅に出てしまうわ!」
空になった器を片付けて、キリッとした顔で言うウィン。
そんな彼女にポテトを一本投げながら、ナヴィがツッコむ。
それを口で受け止めたウィンは、ボムポポ酒を一気に飲み干す。
「ぷはぁー!」
「親父かお前は」
ダン! と器をカウンターに置くウィンに、ナヴィはジト目で呆れていた。
「それは放っといて。高高度は備えが必要。ウィンが一応戦えるけど、今のわたし達は長時間の戦闘は無理」
言葉通りウィンを無視しながら、アクアが話を続ける。
「南のはらはら平原から行くのが良い。こっちはバイオニック系のモンスターが多いから、まだわたし達でも戦える……はず」
と、アクアも地図の南側をなぞりながらフォレストビレッジを指し示した。
「じゃ、そのルートで行こうぜ」
「そうね。私はちょっと表のトレーダーショップを見てくるわね。掘り出し物があるかもしれないから」
「大丈夫か? コレデモカファミリーがいるかもしれないんだろ?」
「コレデ……でしてよ。それに、表の大通りだけだから手は出さないと思うわ。むしろ、あなた達の方が危ないでしょ」
心配そうなナヴィだが、逆にエティアにそう返されると言葉が無い。
ウィンも席から立ち上がると、エティアの後ろで大きく伸びをしていた。
一緒に行くらしい。
「あら、二人はここにいたら良いわ。アクアちゃん。服はあたしが貸してあげるから、後で着替えなさいな。シーザーも、街の方についていってあげなさい」
「ウォン!」
くねくねと動きながらもテキパキと指示を出すヌッカ。
シーザーも立ち上がると、ハタハタと白い尾を振りながら了解の一声。
「カレーも買おうよ」というウィンにエティアが何かを言いながら、二人と一匹が酒場を出ていく。
その背を見送っていたアクアが、ふとカウンターに振り返った。
「むしろ、ヌッカ。わたしに合うサイズの服を、どうしてあなたが?」
「あらん。今度、ここでバイトしてもらおうと思って用意しておいたのよん」
「気持ち悪いからウインクはやめて」
「もう、本当に口が悪いんだから。そこが可愛いんだ・け・ど」
「からかわれてると分かっていても、言い返す気力も湧かない」
「普通に対応してるように見えてたけど、実は苦手なタイプだったのか」
肩を落として個室に向かうアクアを見て、午前中のヌッカとのやりとりをした時の光景を思い出しながら、意外そうにナヴィが呟いた。
「あ、ヌッカさん。色々とお世話になっちゃってありがとうございます」
深々とお辞儀する彼に、ヌッカは良いの良いのとクネクネしながら返した。
「あたしがやりたくてやってることだから。あなた達こそ、これから大変と思うけど頑張りなさい」
「はい!」
その返事に満足そうに頷くヌッカは片付けを始める。
「じゃ残ってたポテトを……って、無い? 大皿いっぱいにあったのに」
「あら、もう空っぽだったわよ?」
空になった皿と、パイルドライバーのジョッキを片付けながら。
「……――その後、ヌッカさんからはらはら平原の由来を聞いたんだけど、エティアは知ってるか?」
「いいえ? ナヴィ、教えて下さる?」
二人はメインモニターから目を離さずに、言葉を交わしていた。
「昔はこの辺りは荒野だったらしいんだ。それが、草花が西の方から少しずつ少しずつ広がってきて、今の形になり。それが原っぱみたいだから、言いやすく“原々”にしたらしいぜ」
「へー。そんな由来があるのね」
モニターの一点……レーダーが示している、高高度からこちらに迫る“何か”の反応を見ながら。
『ハラハラだと思ってたよ!』
「「黙って(ろ・なさい)!」」
(data)その1
バーイショ変更部分
ティーガー→たい がー
シャシー:ティーガー
Cユニット:ウォズニアクSI→ラクター
エンジン:ギガブル→トルネード→トルネードⅡ(改造)
主砲:八八ミリ砲→一○五ミリキャノン
副砲:ガトリングガン→十一ミリバルカン
SーE:なし→CIWS(メタルサーガより)