メタルマックス 未来への砲口   作:ショウマ

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※ 前投稿より、お待たせしてしまって申し訳ありません。
 
 色々とアレな回。
 
 



その17 正しい戦闘――レッスン1 地形

 

 

 【森林管理局跡三階】

 

 

「まあ、予想しておくべきことだったよな」

 

「そうね……」

 

 呻くように言うナヴィと並んで、こちらもげんなりとした様子のエティア。

 

 これでもう何体目だろうか?

 

 二人の周囲には、一行によって破壊されたセキュリティシステムの残骸が幾つも転がっていた。

 

 現在ナヴィとエティアの二人(と後からついてきたガイアウォーカー)は、この場の安全を確保した後、軽めの昼食休憩を取っている。

 

 もちろん一人ずつで、食べていない方は見張りだ。

 

 中に入ってすでに二時間が経過しており、パーティがグロアプの森に入ってから五時間は経過している。

 

 辿り着いた建物の中に足を踏み入れた一行であったが、そこも決して安全というわけではなかったのだ。

 

 入り口の電子ロックが生きていたように、中を警護していたと思しきソレらも稼働しており、マシーン系モンスターとして襲いかかってきたのである。

 

 朝早い時間に出たおかげで陽はまだ高い位置にあるが、建物の外を覆い繁る植物のせいで窓(といってもほぼ全て割れているが)は塞がれているため、内部は薄暗い。

 

 ……かと思われたが、電気系統も一部が生き残っているようで、今のところ暗くて見えないということはなかった。

 

 もっともハンターゴーグルには、こういった事態に備えていくつも機能が搭載されているのであるが。

 

 そしてここには、外から侵入したモンスターも住み着いていた。

 

 そういったモンスター達を排除しつつ、一部屋ずつ丁寧に中を確かめながら進むナヴィ達。

 

 部屋では時おりボロボロな衣服を着た白骨を見つけはするものの、目的の人物は見当たらない。

 

 今ナヴィとエティアがいる部屋にも、ほとんど原型を留めていない白衣を着た骸骨が散乱していた。白衣といっても変色して、元の色は非常に分かり難くなっているが。

 

 部屋の中はいわゆる会議室然とした様相を呈していた。もっとも、机や椅子を始めとして、室内にあった全ての物が破壊されてしまっている。

 

 よく見れば、壁に叩きつけられてグシャグシャに潰れているものも。

 

 どんな力でやればあんな風になるのか? そんなことを考えながら、ナヴィはサンドイッチの残りをまとめて口の中に放り込む。

 

 ゆっくりしっかり咀嚼しながら、宿で調達したサンドイッチの包みを丸めてポケットに押し込んだ。

 

 ベルトに差していたハンター仕様の水筒を取り出して、一口。

 

 容量もさることながらちょっとした戦闘にも耐えられるコレは、モンスターハンター御用達の品である。

 

 その時、部屋の入り口の扉が開いた。

 

「ダメだ~。こっちも外れだったよ」

 

 そう言いながら、別の部屋を探索していたウィンが戻ってきた。

 

 その後ろにはアクアとシーザーの姿もある。

 

 後ろ足で扉を閉めながら自分に視線を向けてくるシーザーに頷き、ナヴィは持っていた水筒を戻すと、背負っていたリュックを下ろして手を突っ込む。

 

「いくぞー?」

 

「うん」

 

 そこからバイオニックドッグ用の哺乳瓶によく似た形の水筒を取り出すと、アクアに向かって投げた。

 

 いつもと変わらぬメイド服姿の少女は飛んできたソレを片手で受け止めると、行儀よく座って待っているシーザーに飲ませ始める。

 

「そっちも手がかり無しだったのね」

 

 困りましたわねと呟きながら、時計とレーザーライフルのエネルギー残量を確認するエティア。リーダーである彼女は、退くか進むかも考えなければならない。

 

「でもさ、外から見た感じだと、もうそろそろ最上階じゃねえか?」

 

「ええ。目測だとそんな感じでしたわね」

 

 ナヴィに頷きながら、エティアはアクアの方に顔を向ける。

 

 その視線を受け取ったアクアはシーザーが満足したのを確認し、彼の口元から水筒を離した。

 

 そして、

 

「二人の推測通り、昔の資料のままならここは五階建て。さすがに、見取り図といったものはないけど」

 

 会話を聞きながら片手間でハンタースカウターを操作して、事前に読み込んでおいたデータを確認していた少女はそう答えると、ナヴィに水筒を投げ返す。

 

「じゃあ、とりあえず上までは確認しましょう。残り時間によっては、無理に出ずに建物のどこかで一晩明かす……でいいかしら?」

 

 それに異論なく、エティアのその方針を受けた一行は部屋を出ようとしたのだが……。

 

「ちょっと、ウィン? あなた、何してるの?」

 

 一人動かないことに気が付き、エティアが振り返って声をかける。

 

 ウィンが倒れている骸骨の近くにしゃがんで、なにやらしているらしかった。

 

「あ、うん……ちょっと気になってね」

 

 珍しい歯切れが悪い彼女の様子に、一同は再び部屋の中へと。

 

 朽ち果てた元はファイルだったモノを手に取って、中身を見ようとしているようだった。

 

 ナヴィとアクアが、ファイルの表表紙を見ようと揃って首を傾ける。

 

 長い年月の間放置されていたせいで、ファイル自体もすっかり劣化してしまっていた。そのせいで、表紙の文字も一部分がかろうじて読める程度。

 

「ええっと……『――話とコーポ――マイ、スプロ、ジェクト』かな?」

 

「話……コーポ……? もしかすると、神話コーポレーション?」

 

 拾い読みするナヴィの横で、アクアはそれらの単語からある企業を連想していた。

 

 神話コーポレーション。

 

 大破壊が起きる前の企業名であり、かのブラド・コーポレーションと双璧を成していたほどの大企業である。

 

 軍産複合体で、今でもクルマ用品店で見ることが出来る『――神話』シリーズの兵器などがソレだ。

 

 一撃必殺神話みたいな特徴的で独特なモノや、強力労働神話というモンスターの関係からも、ハンター達がその名を耳にする機会は多いだろう。

 

「なんで、そんなものがここにあるんだ?」

 

「……いくつか可能性は思い付くけど、少なくともここがただのビルじゃないのは確か」

 

 口元に指を当てて考えていた様子のアクアは、それだけを言うとスカートを翻して出口に向かう。

 

「ウィン。行きましょ」

 

 くっついて開かないらしいファイルに指をかけているウィンに、エティアが出発を促す。

 

 座り込んでうんうん唸っている少女からは、あと少しだけという声が。

 

 

「待って、えてぃ。もうちょっとで……開き……ヨイショオッ!」

 

 指に力を込め、そのまま勢いに任せて無理矢理に開く。

 

 瞬間――部屋に響き渡る“ベリィッ!”という音。

 

「あ」

 

「「「あ」」」

 

「ウォフ」

 

 これまでかろうじて形を保っていたファイルが完全に裂けて、そのまま砕けてしまう。

 

「壊れるのは世の常……だよね」

 

 そう呟くウィンに、三人と一匹は一斉に首を横に振った。

 

「残念……って、あれ?」

 

 中の紙も読める状態では無かったが、そこにカードキーが一枚落ちているのに気が付く。

 

 どうやらファイルの中に入っていたソレだけが劣化せず、無事だったようだ。

 

「ウィンー、行くぞー?」

 

「あ、うん! 今行くよ」

 

 ケブラーチャイナのポケットにカードキーを押し込むと、部屋を飛び出していった。

 

 

 

   【四‐五階】

 

 

「危ないっ!」

 

 階段の踊り場に足をかけたウィンが、咄嗟にすぐ後ろを歩くエティアを押し止めた。

 

 そのウィンの鼻先を二条の光が走って、壁を穿つ。

 

「な、なんだ!?」

 

 階段の半ばにいたナヴィだが、上から続いて発射された光が誘導されるが如く曲がってきたために、慌てて階段を駆け下りて身を隠す。

 

「上がってすぐの所に何かいる」

 

 アクアとシーザーは小さく頷き合うと、一足跳びに階段を駆け上る。

 

 シーザーは踊り場の壁を蹴り、そのままポチバリアを起動しながらアクアの前に出た。

 

「スネークホール、インサイト」

 

 その名の通り、床から生えた蛇のような見た目の攻撃用セキュリティシステムが二基。

 

 機械らしく飛び出してきた一人と一匹に驚くようなこともなく、それぞれの口のような銃口からは五条のビームが放たれる。

 

 一部はシーザーの纏うバリアに阻まれ、残りは弧を描いて階下へと。

 

 仲間を信じて、アクア達はそれには目もくれない。

 

 流れる動作で、駆け上がりながら肩から下ろしていた狙撃銃を目視した敵に構え――引き金を引く。

 

 縦二層の銃口の内、下側からの青白い光線が片方のスネークホールの口に飛びこみ、そのまま貫いて粉砕する。

 

 残るもう一基も、シーザーの突進を受けて破壊された。

 

 突進の勢いのまま、正面の壁まで進んだシーザー。バリアを解除した彼を、

 

「ギャウ!」

 

 突如、真横からの機関銃による銃撃が襲う。

 

「シーザー!」

 

「大丈夫(か)!?」

 

 口々に叫びながらやってくる仲間達に先んじて駆け寄ろうとしたアクアだが、通路に顔を出したところですぐに引っ込める。

 

 目の前を擦過する人の頭ほどのグレネード弾。

 

 外れた弾丸はそのまま飛び去り、向こうの壁へと着弾した。

 

 それに構わず、アクアはコソッと顔を出して曲がり角の向こうを確認する。

 

 そこにあったのは、壁だった。

 

 否。銃撃・火炎・電撃の攻撃を行う壁型のセキュリティシステムの一種で、三つのモードを切り替えながら攻撃を仕掛けてくる。

 

 監視カメラやスネークホール、ガンホールといった他のセキュリティシステム同様に、こういった施設では時おり見かけることがあった。

 

 シンデレラウォール。

 

 他のセキュリティシステムのように壁タイプにもいくつかの種類があるが、その中では比較的弱い部類に入る。

 

「なるほど、さっきのスネークホールとセットで不意を突くための配置」

 

 幸い、シーザーへのダメージはたいしたことがないらしく、さっきの声も驚いただけのようだ。

 

 今は一行の所に戻ってきているが、戦意も失っておらず逆に高まっている。

 

「なあ、あんなのとはどうやって戦うんだ?」

 

 リモコンスパナを構えながら訊ねてきたナヴィに、レーザーライフルをチャージしながらエティアが「私も初めてでしてよ」と答えた。

 

「んー、確かに“正面から壊す”が一般的かな? 手っ取り早い非常識手段もあるけど」

 

 と、ウィンは意味ありげな視線をアクアに向ける。

 

 それには少し考える素振りを見せるが、

 

「強制停止させてもいいけど、奥に何かあれば連続使用は出来ない」

 

「ああ、そっか。ボクたちのシステムは本調子じゃないしね」

 

 アクアの返事に、うっかりしてたと頭を掻く。

 

 自分達のことを隠す間は極力使わなかったということもあるが、アクアのソレはウィンのよりも制限がきつい。同じようでも、全く異なる代物だった。

 

「他にも、メカニック――つまりナヴィが分解するという手もあるけど」

 

「ま、待て待て! 俺にはまだ、そこまでの技量はねえぞ!?」

 

 サラッと無茶振りをしてきた少女に、慌てて少年が反論する。

 

「じゃあ、次の手」

 

 しかし拒否されるのは分かっていたらしく、ウィンは淡々と話を続けた。

 

「あの壁は、獲物を認識してからの攻撃までに時間がかかる。つまり……」

 

 

 

 ガイアウォーカーからの一撃がトドメとなった。

 

 攻撃に堪えきれず、シンデレラウォールが閃光と共に小爆発を起こす。

 

「――と、隠れながら戦えば被害は最低限に」

 

「ちょっと待てえぇっ!? 良いのか、これ!?」

 

 服の埃を落としながら言うアクアに、“壁”があった場所を指しながら思わず声を上げてしまうナヴィ。

 

 そんな少年に、彼の妹分二人は不思議そうに顔を見合わせる。

 

「交互に攻撃するようなゲームではないし、あちらのルールに従う必要もないから」

 

「見えてるうえに敵と分かってて、それで攻撃しないのも変な話だよね。認識前に主砲を撃ち込んだらいいのに。まあ、そのせいで設置型じゃなくて、どこかの塔みたいな落下型になるんだろうけど」

 

「何の話だ!?」

 

「は、話についていけませんわ……。でも、認識前に砲撃って誰かやりそうですわね」

 

     ※ ※ ※

 

「クシュン! また誰かがあたしの噂でもしてるのかな?」

 

「ははっ! 見た目と違って中身は残念な砲撃魔……って、撃つなっ!!」

 

     ※ ※ ※

 

 シンデレラウォールの先は、他の場所より大きな扉が一つあるだけだった。

 

「いかにも、何かありますって感じだよな」

 

 両手にリモコンスパナとSMGグレネードを持ったナヴィが、ゴクリと唾を飲み込む。

 

「そうね。私とナヴィは十分に気を付けましょう」

 

 この中では、自分達二人の力量が劣っている。ナヴィよりはエティアの方が上だが、そこまで大きな差ではないだろう。

 

「そうだな。なんなら、中に閃光手榴弾でも投げ込むか?」

 

「良い考えだけど、余計なトラブルになる可能性もあるから、投げるのは少し待って」

 

「分かった」

 

「それじゃ、開けるよ」

 

「ウォン」

 

 片手にカマキリ刀を持ったウィンが、そろそろと扉に近寄っていく。

 

 アクアは少し離れてライフルを構え、シーザーとガイアウォーカーもそれぞれに待機している。

 

 そしてウィンの手が取っ手に触れ、

 

「助かったぜえっ!」

 

「ぶっ!」

 

 勢いよく内側から外に開かれたドアが、ウィンを直撃した。

 

「いたたた……これも、見てる分には楽しいのにな」

 

 顔を押さえて、そんなことを愚痴るウィン。

 

「大丈夫か、ウィン?」

 

「大丈夫だけど、ボクの鼻にはクリティカル」

 

「おっと! すまんな、姉ちゃん。事故っちゅうことで許してくれ!」

 

 中から飛び出してきた黄色いズボンにスキンヘッドな男が、悪びれた様子もなく屈託のない笑い声を上げる。

 

「お、あのクソッタレな壁をぶち壊したのか!?」

 

 中からは、他にもソルジャーらしき男が二人出てきた。

 

「皆さんはモンスターハンターなのですか?」

 

 誰もいないからと露出していた顔の下半分を慌てていつも通りに隠しながら、エティアが最初に出てきた男に訊ねる。

 

「おう、そうだ! 森でいきなりモンスターの大群に襲われてな、ここに逃げ込んだのは良いが、今度は出られなくなってな」

 

 男はエティアの行動を別段気にした風もなく、気さくな態度で答える。

 

「出られなくなった、というのは?」

 

「いやな? 分かると思うが、最初はあの壁はいなかったんだよ。俺たちと一緒にきた学者先生が中で適当にいじったら、明かりは点くわ、あんなのが出てくるわで散々だったぜ」

 

 弾薬も尽きかけ、食糧も無くなる寸前。やけくそで特攻するかという時に、ナヴィ達が到着したらしい。

 

「あの、学者先生ってザフレという名前ですか?」

 

「ん? ああ、そうだ。なんだ、あの先生。結構有名人なのか? 先生ー」

 

 ナヴィの質問に不思議そうにしながらも、男は部屋の中に向かって呼びかける。

 

「どうれ」

 

 中から出てきたのは、やや筋肉質ではあるものの眼鏡をかけた中性的な顔立ちをした男だった。

 

 旅慣れた感じで重そうなリュックを背負い、好きなことにはいくらでも没頭出来るという感じを受ける。

 

 何か言いたそうなウィンをエティアとウィンに任せて、代わってナヴィが前に進み出た。

 

「あの、植物学者のザフレさんでしょうか?」

 

「いかにも。キミは?」

 

「俺はナヴィ、モンスターハンターです。それで唐突なんですが、ザフレさんにはもしかして、娘さんがいらっしゃいませんか? これくらいの」

 

 そう言って、エリーゼの背丈を示すナヴィ。

 

 ザフレの顔に驚きと、次いで喜色が広がる。

 

「おお、もしやキミはあの子に会ったのかね!?」

 

「はい! パパが帰ってこないって寂しそうでした。俺達は依頼……というわけでもないけど、話を聞いてここまで」

 

 ナヴィの話を聞いていたザフレだが、突然その顔がこの世の終わりみたいな顔になった。

 

「いかん! あの子と花見に行く約束をすっかり忘れてた!」

 

「こうしてはおれん!」と慌てふためき、ザフレは荷物の確認を始める。

 

「ナヴィ君、教えてくれて感謝するよ。これは私からの礼だ。受け取ってくれたまえ」

 

 ザフレはナヴィの手を取ると、一万Gを渡した。

 

「いっ!? こんなに受け取れませんって!」

 

「気にするな! よし、急いで戻らなくては」

 

 ザフレはそのまま、軽快な動きで階段を目指して走り出してしまった。

 

「おいおい、先生ー! 俺達を置いて先に行っちゃ駄目だってばよ! ったく、しゃあねえな。じゃあな、坊主に嬢ちゃん達。さっきのワビに、どこかで会ったら一杯おごってやるぜ!」

 

 そして残った男達も護衛対象を追いかけて行ってしまった。

 

 その一連の慌ただしい様子を呆然と見送ってしまうナヴィ達。

 

「なんだったんだ、今の」

 

「あ、アグレッシブなお人でしたわね」

 

 ゴーグルキャップのお陰で輝くような金髪は目立たなかったものの、これまで男性によるトラブルが多かったがために、荒くれみたいな男を見て咄嗟に顔を隠したエティアだったが。

 

 予想に反して全く反応しなかったこともあり、自分の不注意とはいえアレは失礼だったわねと、逆に心の中で反省していた。

 

「ボクは面白くて良いと思うよ! シオン父さんもノリの良い人だったしね」

 

「いやまあ、確かに父さんも暴走気味だったけどな」

 

「リスポラがそれを力づくで止めるか、より激しく暴走するか。どちらにしても変わらないけど」

 

 とりあえず終わったと言わんばかりに、アクアは部屋の中に入った。

 

 たくさんのコンピュータが置かれているが、その大半は機能していない。

 

 下の階で見たように、凄まじい力でズタズタに破壊されている。

 

 しかし、その中で一台だけが難を逃れて画面が光を放っていた。

 

 早速その前に立ち、キーボードに指を走らせる。

 

 “電源”や“セキュリティ”、“非常用ドア”といった項目。

 

「どうだ?」

 

「まだ使えそう」

 

 後ろから覗きこむナヴィと、アクアは入れ替わる。

 

 アクアに代わって操作し始めたナヴィ。

 

 その間、入口の扉を閉めたウィンはガイアウォーカーと見張りに立ち、エティアとシーザーは念のため室内を警戒する。

 

 非常用ドアはシンデレラウォールのことのようで、ロストの文字が表示されていた。

 

 セキュリティシステムはまだいくらか残っているらしく、ナヴィはそれのターゲットを人間とイヌ以外を狙うように設定。

 

 モンスターの項目が無かったせいだが、これでここに入り込んだ人間が狙われる可能性は下がったはずだ。

 

 しばらくはコンピュータを弄っていたナヴィだが、そうしている内にあるものを発見する。

 

「何だコレ? シークレット?」

 

 項目は出てきたが、その先に進むにはパスワードの入力が必要らしい。

 

 思い付いたものはあるものの、こういうのは入力ミスをすると大抵ロクな目に合わないものだ。

 

 どうするか迷ってアクアを振り返って見れば、彼女は小さく頷いている。

 

「あなたに任せますわ」

 

 分かっていると言わんばかりに、エティアからもそんな声が。

 

 それで覚悟が決まったのか、

 

「南無三」

 

 怒らせてしまって家を放り出された父が、覚悟を決めて家の中に入る時の言葉を口にして、ナヴィがキーを叩く。

 

『マイス』

 

“スリットにカードキーを入れて下さい”

 

 画面に新たな文字が表示されて、横のスロットにある青ランプが点滅し始めた。

 

「カードキー?」

 

「どこかにあるのかもしれない」

 

 顔を見合わせるナヴィとアクア。

 

 部屋の中にないか、二人が探しに行こうとした時、

 

「アクア、ナヴィ!」

 

 入り口のウィンが二人を呼び、自分の方に向くや否やポケットから取り出したソレを投げた。

 

 飛んできたのを受け取ったアクアが、指と指の間で挟んだソレとウィンの顔を不思議そうに見つめる。

 

「どこで拾ったの?」

 

「無駄じゃなかった行動の時に!」

 

「それは難しい」

 

「え……ボクの行動は無駄ばかりってこと?」

 

 ショックを受けているウィンを放置して、アクアはスロットにカードキーを挿し込む。

 

 カードキーがスリットの中に消えてしまうと、画面にはOKの文字が。

 

 画面上に続けて表示された“OPEN”と“CLOSE”から、開くを選択。

 

“十秒間開きます”という案内が出ると同時に、初期画面に戻ってスリットはカードキーを吐き出す。

 

「壁が開きましたわ!」

 

 室内を見渡していたエティアが一早く変化に気が付いた。

 

「十秒だけらしい! みんな、中へ!」

 

「ウォン!」

 

 カードキーを抜き取ったナヴィが、仲間を促しながらそちらに向かって駆け出す。

 

 最初にナヴィ、次にエティア。ガイアウォーカーとシーザーの次にウィンが入り、最後はアクア。

 

 彼女が入ると時間経過により扉が閉まり始めるが、そこで部屋を振り返る。

 

「不安要素は排除」

 

 そう呟くと、視界が完全に閉ざされる。

 

 元の静けさを取り戻した室内からは、全ての灯もまた消えていた。

 

 

 

 隠し扉の先は、折れ曲がりながらずっと下り階段が続いていた。

 

 狭い踊り場限定ではあるが、足元を仄かな明かりが薄暗く照らしている。

 

 どれくらい下りたのか分からなくなった頃、先頭を歩いていたシーザーが足を止めた。

 

 金属製の重厚な扉が塞いでいる。開けるための取っ手は無く、代わりにあるのは縦に入ったスリット。

 

「通すぞ?」

 

 彼の確認に、皆が首を縦に振る。

 

 そして、彼はスリットにカードキーをスライドさせた。

 

 ドアに緑のランプが点ると、少しだけ奥に開いて隙間が出来る。

 

 だが、完全に開くことはなくそこで止まってしまった。

 

 仕方なく、ナヴィは扉に両手をかける。

 

「フッ……グッ!」

 

 力いっぱい、押す!

 

 シーザーも四肢を踏ん張り、頭で押している。

 

 少しずつ、隙間が広がっていく。

 

「ナヴィー。ボクが代わろうか?」

 

「大……丈夫だ! たまには俺にも……活躍……させろーっ!」

 

 最後尾からの呑気そうな声に、彼は咆えるかのように応えた。

 

 それに押されるかのように、扉が完全に開き切る。

 

 部屋はちょっと広めの酒場のスペース程度。

 

 異臭と共に様々な物が散乱し、おびただしい数の白骨も転がっている。

 

 そして――

 

「おお、ようやく誰か来たか! 待ちかねたぞ」

 

 部屋の奥から、カシャンカシャン……と音を立てながら何かがやってくる。

 

「ここでは、神話コーポレーションが誇る自慢の戦車が開発されていた。それを誰かに自慢……託す日を楽しみにしていたが、ついに来たか! さあ、存分に堪能せよ!」

 

 現れたのは、パワードスーツのような物を身に付けてさわやかな笑みを浮かべる男……の、土気色を通り越して腐ったドブのような色の肌をした――ゾンビ。

 

 四人と一匹は無言で武器を構えた。

 

 

 

   ――続く――

 

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