メタルマックス 未来への砲口   作:ショウマ

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書き忘れた前回の問いについて:バイオニック

バイオ(生物)+メカニック(機械)
 
 



その5 クライングハウル

 

 

 操者の巧みな操縦捌きによって、土煙を巻き上げながら相手の側面へと回り込むと……白銀と言うよりは灰色に塗装されたティーガーの副砲として搭載しているガトリングガンが、荒野を行く商人殺しの名を冠した小型戦車へと放たれる。

 

 大半の“タンク”と分類されるモンスターの例に漏れず、無人操縦で動いているトレーダー殺しの装甲に、真横から飛んできた機銃弾が細かい穴を幾つも穿つ。

 

 機銃の攻撃に曝されながらも、無人機故のダメージをまるで気にしていない動きで主砲をティーガーへと向けると、トレーダー殺しは即座に発砲を行う。

 

 砲弾はティーガーを捉えるが、その身を覆う鎧――装甲タイルを数枚剥がしただけだった。

 

 命中した際に生じた爆発や振動をものともせず、お返しとばかりにティーガーの主砲である八八ミリ砲が咆哮を上げる。

 

 撃ち出された砲弾は、小型戦車の無数の小穴が穴が開いた装甲に突き刺さり、簡単に貫通――内部で弾けた。

 

 やがて、小型戦車内にあった砲弾を次々と誘爆させながら、内側から弾け飛び爆発する。

 

 そこへ、別方向から飛来した二発の砲弾がさらに、ティーガーの装甲タイルを何枚か削っていく。

 

 ティーガーはゆっくりとした動きで主砲をそちらへと向けると、一発……位置をずらしてさらに一発と発射する。

 

 それぞれの砲弾は狙い過たず、駆動部を破壊されて動きを止めていた小型戦車二台の前面装甲を――まるでそこに吸い込まれる様に、やや薄くなっていた部分を撃ち貫いた。

 

 先の一台同様に、順に爆発四散していく。

 

「アクア、ナイスよ!」

 

 相手が移動不可の為に、早い段階からスムーズにロックオンシステムが作動し、狙いを定めた反撃に転ずる事が出来た。

 

 ティーガーの内部では、iゴーグルに搭載された通信機能越しに声をかけた“太陽”のエティアが、ティーガーの頭脳であるCユニット――ウォズニアクSIに指を走らせていた。

 

 自動装填装置の作動、主砲や副砲の残弾数と装甲タイルの剥がれ具合、それらの確認を手早く済ませる。

 

『エティア。南西に更にタンクが二、バイオニック五。タンクの駆動部は破壊してある。バズーカは弾切れ』

 

 “海”の少女からの通信が入り、ティーガー内のモニターが位置情報を受信する。

 

「すぐ行くわ。後、弾はいくつかナヴィとウィンにも持たせてあるから、受け取りやすい人から貰って」

 

『了解。この近くのは、それらとウィンが相手にしている群れで終わりみたい。手早く終えて、街に――バーイショ行きを提案』

 

「そうね。ナヴィも疲れてるでしょうし……!」

 

 エティアは力強くアクセルを踏み込むと、ティーガーを指定ポイントに向けて走らせた。

 

 

「しつこい」

 

 単純な見た目と違って、改良され防御力が高められたメイド服をはためかせて、アクアは大地を駆ける。

 

 小型戦車の機動力を奪いウィンの支援に向かったアクアの後を、地上を高速で駆ける鳥型モンスターの群れが……かなり遅れて、『報告しなかった』種々様々なバイオニックモンスターが追いかける。

 

 鳥の口――突き出た銃口から放たれた弾が、直撃こそないものの、いくつも少女をかすめていく。

 

 不意に、足を止めたアクアは弾切れのバズーカを横殴りに振るうと、砲身に伝わる金属同士がぶつかる手応えと共に、加速して飛びかかってきたモンスターの顔面に叩き付けられ、それは背後の群れの数体を巻き込みつつ吹っ飛ばされていく。

 

 巻き込まれた個体は倒れたままだが、殴られた個体は尚も起き上がろうとしている。

 

「ロードガンナーじゃない? 識別……上位種のかけこみキャノンと照合一致。この辺りは生息圏じゃない、ということは遠方から流れてきた個体」

 

 キャノンの名のごとく、ガンナーを遥かに上回る弾丸をアクアは身を捻りながら避ける。

 

 避けながらバズーカを背中に回し、代わりに背負っていた銃身が二層に分かれた狙撃銃と持ち換える。

 

 そんなアクアを執拗に、特徴である足を止めてまで、体内の弾丸を口から発射する陸走鳥。

 

 数回発砲を繰り返し、再び走り始める――前に、その喉元を青白い光が貫通していく。

 

 数歩前に進んだ所で倒れて、僅かに痙攣した後に完全に動きを止める。

 

 かけこみキャノンを仕止めると、手元で操作……たった今レーザーを放ったのとは別の銃口から実弾が飛び出した。

 

 乾いた音と共に、空になった薬莢が排莢される。

 

 後続の、荒廃した世界で異形な姿に進化した虫を、生物を着実に撃ち抜いていく。

 

「ティーガーの補給に、きっと湯水のように使っているウィンと、私の弾薬代。そして――」

 

 キャノンの攻撃を避けた際に、かすめた弾丸でサイドが裂けて、スカートからむき出しになった金属製の鞭を構える。

 

「何だかんだでナヴィも気に入っていたこの服の修理と、それにより増える私の手間……」

 

 何体か倒れても、雲霞の如く押し寄せるモンスター達を見据えて、アクアは地に向けて鞭を一振りする。

 

 大地が裂け、砕けた石の破片が舞い上がる。

 

「お し お き」

 

 妖しく笑うアクアの言葉に合わせて、熱せられたかの様に鞭がうっすらと赤く染まっていく――。

 

 

「ボクに敵うと思うな!」

 

 パラボラットをふみつけながら、景気よくSMGで周りのモンスター達を掃射する。軽快な音を立てて吐き出された無数の弾丸が、次々とモンスター達の生命活動を停止させていく。

 

「――よい……しょっ! お大尽、持ってけドロボー!」

 

 付属されていたグレネードを空に放つと、ジッとそこで停止していた円盤状の機械に直撃。ひしゃげるとそのまま制御を失ったのか、地面の上へと堕ちてくる。

 

 不時着してからも、空へ戻ろうもがく円盤に……徐々に迫る黒い影――。

 

「チラリは無いよキ--ック!」

 

 叫びながら宙を舞い、蹴りを放つウィン。その蹴りは、破損していた円盤を破壊しながら着地した際には、衝撃で砂や小石を撒き散らし地面に小さな穴を作る。

 

『――ウィン? そっちは大丈夫なの?』

 

 iゴーグルから聞こえてきたエティアからの通信。

 

「あ、えてぃ。うん、ボクは大丈夫だよ!」

 

 残弾を確認しながら、笑って返事をする。そして、そのまま固まる笑顔。

 

「あちゃー……」と声を漏らすと、四四マグナムに続けて弾切れとなっていたSMGグレネードを背中に戻す。

 

『あちゃーって何よ……? まぁ、良いわ。終わったならこっちに合流して。ナヴィとアクアにティーガーの足回りを点検してもらったら、バーイショの街に向かうわ』

 

 腰に下げていた刀の柄に手を当てながら、聞かれたことには「何でもないよー!」と笑いながら答えて、そのまま楽しそうに続ける。

 

「オッケー、すぐ行くよ! 街に着いたら、冷たい物でキュッといきたいね!」

 

『あなたね……父様や、シオンおじ様みたいな事を言わないで下さる?』

 

 溜め息混じりにエティアがそう言うと、ウィンのゴーグルに送られてきた合流ポイントが表示される。

 

「美味しいと思うんだけどな~。あ、きたきた、じゃ後でね!」

 

 送信機能だけを切ると、無造作に腕を背後に振るう。

 

 その手から放たれた半ばから折れた魚太刀が、生き残っていたネズミの額に突き刺さる。

 

 続けて、逆の手から弾丸――預かっていたバズーカの弾が、気配を殺して近寄って来ていたボムポポ――綿帽子が爆弾となった人間サイズのタンポポにぶつけられる。

 

 両者の爆発物は互いに刺激を与えあい、結果ボムポポが抱えていた爆弾全てが主へとその役目を果たす。

 

 爆発炎上するモンスターに背を向けて、合流場所に向かってウィンは駆け出した。

 

 走りながら厚めの赤いジャンパーを脱いで肩にかけ、この荒野では正気を疑われる様な危険で身軽過ぎる白いシャツにショートパンツ姿という軽装になり、空を仰ぐ。

 

「はぁ~……暑いな……アツい……」

 

 深く、深く……息を吐き出した。

 

「そういえば、ナヴィはどうしてるんだろう? えてぃの近くでじっとしている筈だけど」

 

 

 

「うおおおぉっ!」

 

 ナヴィの雄叫びと共に、高く……高く跳ぶガイアウォーカー。

 

 その先にいるのは、ロードガンナーとは違い空から狙ってくる鉄砲鳥。その名の通りの銃弾は、ナヴィの迷彩服に覆われた腕をかすめて浅い傷を作るも、少年は怯まなかった。

 

 ――身近な少女達にだけ任せない。自分も負けられない!

 

「葬らん!」

 

 その勢いと思い、全てをぶつけるかの如く振るわれたバットは、そのまま鉄砲鳥へと叩き付けられ――地面に墜落した後、鉄砲鳥は絶命する。

 

「俺だけ何か地味な気がする……」

 

 背に乗る主に応えたのか、ナヴィの嘆きにウォーカーは四本の内の二本の足を、器用に空に向けるのだった。

 

 

 

「ナヴィ、ティーガーの調子はどう? はい、水筒」

 

 作業服に着替えて戦車の下に潜り込んでいたナヴィが這い出てくると、そこで待っていたエティアが彼用の水筒を手渡した。

 

「お、サンキュ! こっちは大丈夫かな」

 

 体を起こして受け取った水筒の蓋を外すと、直接口を付ける。喉を鳴らして二口程飲むと、口の中に少し含んだ状態で蓋を締めてエティアに渡し、口の中をよく湿らせてから、飲み干す。

 

「アクア~、そっちはどうだった?」

 

「履帯含む走行系に異常無し。――弾薬がこれだけで、装甲タイルが……」

 

 足回りの確認をしていたアクアは、戦車の甲板横に座って報告する。裂けたスカートからは、例の金属鞭が覗いていた。

 

 その間も手に持った手帳に赤いペンで書き付けながら、時々小声でブツブツと呟いている。

 

 ちなみに、彼女が赤いペン以外を使っている姿を、ナヴィは見たことが無い。

 

「ねぇ~、たい がーの確認まだ終わらないの~?」

 

「たいがーじゃなくてティーガーよ。後、がーに変なアクセントを付けないで下さる?」

 

「言っていれば、いつかは飛び道具が使えるようになるかもしれない!」

 

「ならないからやめておきなさい。それはそうと、ナヴィ? ウォーカーの方は良いの?」

 

「いや、それ以前にあれはどう点検すりゃ良いんだ。戦利品の回収に向かったウィンは戻ってるよな? おーい、ウィン……って、お前何やってんだ? 頭の上にバケツを一つ乗せたまま、バケツ五つのお手玉って」

 

 ティーガーの脇で、おかしなことをしているウィンを見て呆れるナヴィ。

 

 

「アクアから言われた罰ゲーム。でも、何か楽しくなってきたかも」

 

「弾薬を使いすぎた罰……だけど、罰にはバケツを使うとどこかで聞いただけで、どう使うか分からなかった。とりあえず、こうしてみた」

 

 珍しく自信無さそうに告げるアクア。手は相変わらず筆記中だが。

 

「ふーん。良く知らんが、本当なら変わった罰だな。しかも、ゲームって罰になるのかね?」

 

「どうでも良いけど、ソルジャーの腕を酷使する罰を与えても、私達自身の戦闘力の低下を招いているのではなくて?」

 

 珍しいよな~と言っているナヴィと並んで、エティアが淡々と問題点を指摘する。

 

 暫し、アクアの筆記音とウィンの小刻みな息遣い、そして重そうな何かが詰まったバケツの風切り音が辺りを支配する。

 

 そして――。

 

「あっはっは、ちょっと腕が痛いかも!」

 

「今すぐやめろーーーっ!」

 

 気楽そうなウィンの笑い声と、ナヴィの絶叫が響き渡った。

 

 エティアは溜め息を吐きながら、額に手を当てて頭を左右に振っていた。

 

「ウィン、もういいから。中身をこぼさないように止めて」

 

「面白くなってきたのになぁ。腕関節が痛いけど」

 

「だから! とっとと「ほい、ナヴィ、パス!」やめ――ぶっ!?」

 

 少年の顔の辺りから、重いものが詰められたバケツが、ジャストミートでぶつかったような音が聞こえた。

 

 音通りの物を顔に張り付かせたまま、少年が背後へとゆっくり倒れていく。

 

「あっ……」

 

 咄嗟に倒れるナヴィを支えようと手を伸ばしたエティアだったが、掴めたのはバケツ。せめてこれだけでもどけてあげようとするものの……。

 

「お……重い……」

 

 エティアの筋力では片手では支えきれず、両手で持つ。結局、少年はそのまま大地をベッドにして倒れることに。

 

「アクアー、パース!」

 

「うん」

 

 ウィンから投げられてくるバケツ二個を、手帳とペンを事前にエプロンポケットに片付けたアクアは、片手ずつで難なく受け止める。

 

「でも、エティアに持たせるのは良くない」

 

 投げ渡されたバケツ二個をゴトリゴトリと甲板上に置くと、アクアはそこから飛び下りて二人の救援へ。

 

「いや~、ナヴィなら大丈夫かなって? えてぃ、ごめん!」

 

「まず、俺に謝れよ!?」

 

 弾みをつけて勢い良く起き上がるや否や、当然の抗議を行うナヴィに、器用に頭の上にバケツを乗せたままエティアに頭を下げていたウィンは、ゴメンゴメンと軽く返した。

 

「俺にはえらく軽いな!」

 

「ナヴィだから!」

 

「理由になってねぇーーっ!? 後、親指立てんな! って、叫びすぎて喉いてぇ……」

 

 アクアにバケツを手渡したエティアが、体型を隠すために良く着ているロングコートのポケットから缶を取り出した。

 

 

「はい、ナヴィ。のど飴あげるわ」

 

「あ~……すまん、貰うわ。ありがとな、エティア」

 

 缶を数回振って、口の中に直接一粒放り込む。

 

「どういたしまして。それよりも、倒れた時に頭とか打っていない? 大丈夫?」

 

 ナヴィの後頭部に髪を掻き分けながら触れて、コブ等が出来ていないのを確認すると手を離す。

 

「大丈夫そうね」

 

 そう言うと、バケツをティーガーのトランクに入れていた二人の元へ。

 

「二人とも、入れ終わったら出発しましょう」

 

 一瞬意識が飛んでいたナヴィも、慌てて追いかけていく。

 

「あ、えてぃ。予備の弾薬貰って良い? SMGの有ったよね?」

 

「ええ、良いわよ。でも、剣は無くてよ?」

 

「元々あの剣はウィンが拾った剣だから、予備は無い。ナヴィ、街まではその作業服で良い」

 

「へ? いや、あっちの方が防御力あるだろ? また戦闘あるかもしれないし。てか、脱いだ服どこいった?」

 

「心配ならエティアの戦車に一緒に乗って。ガイアウォーカーはティーガーに搭載するか、ウィンが預かれば良い」

 

「何でだ? それより俺の迷彩服は?」

 

「ナヴィ、さっき投げたバケツ位は、後方七回宙返り四回捻りして受け止めてくれないと!」

 

「出来るか! 普通の宙返りも危ういってのに。いや、俺の服だってば」

 

「ナヴィ」

 

「何だ、アクア?」

 

「ハンター達の中には、酒場のマスターにあるモノを持っていく者がいる。何故なら、他の店では買い叩かれるそれらを、酒場ではそれなりの値段で買い取ってくれるから」

 

「それで?」

 

「それらの多くは、モンスターを倒して解体し、必要な部分を取り出す事で得られる」

 

「ああ……何となく分かった気が。バケツの中はそれらだったってんだろ? お前と一緒に酒場でバイトしてた時に、調理して使ってるの見たぞ。で、解体の時に汚れちまったのか。それならそうと言えばいいのに」

 

「二点違う。一つナヴィはお金貰っていないからアルバイトですらない。二つ」

 

 アクアが戦車の死角から取り出した棒の先に、※何故か描写出来ない があった。

 

「手を拭くのに使った」

 

 

「もっとひでぇええぇーーーーっ!!」

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