僕自身がウマ娘になることだ   作:バロックス(駄犬

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とあることからウマ娘になってしまったトレーナーのお話。


僕自身がウマ娘になる事だ

 もしこの世界に『タイムマシン』があるならば、僕は迷い無くソレに乗り込んで2日前の僕がいる過去へと戻り、人生のやり直しを選択する。

 

 

 全国から有力なウマ娘が一同に会する教育機関、『トレセン学園』。その上空は文句なしの快晴だ。

 ぽかぽかの陽の光を浴びた芝は健康的な緑が艶を帯びて輝いて見える。

 ウマ娘たちが練習の為に駆け抜ける芝コースは高温多湿な日本の気候に合わせられた『エクイターフ』。クッション性にも優れ、ウマ娘の過激な走行によっても抉れにくい。

 

 それでもパワー型のウマ娘が齎す『芝生禿散らかし豪脚』の前では如何に抉れにくい特性を持つトレセン学園の優秀な芝コースも円形脱毛症を発症した40代後半の情けない頭皮の如く、荒れ地へとなり果ててしまう。

 しかし、どんなに芝が抉れても次にウマ娘たちが練習でコースを走る頃には元通りになっているのはコース整備員による働きが大きいに違いない。

 

 

「あっ!蝶々さんだ~!待て~!」

 

 

 見てほしい。

 コースを一望出来る芝の斜面では練習なんてなんのその、毎日が日曜日だと言わんばかりの陽気さでハルウララが蝶々を追いかけ回しているではないか。

 きっとこのまま誰も止めなければ、彼女は日が暮れるまで蝶々を追いかけ回すだけで一日が終わり、同部屋のキングヘイローが『別に心配していた訳ではないわ!このキングのルームメイトに万が一の事があったら困るからよ!』とかもはや固有スキルLv5までに成長を遂げたであろうツンデレを炸裂させながら保護しに行く姿を想像することは容易である。

 

 

 しかし、いつ見てもハルウララが芝を駆ける姿は美しい。

 見ているだけで徹夜明けの疲れが吹っ飛んでいくようだ。

 良いモノを見れた、という意味でも彼女にはニンジンをプレゼントしなければいけないな、もちろんケースで。

 

『それではこれより、選抜レースを開始する。指定された出走グループは事前に渡されたゼッケンを着用の上、ゲート前に集合せよ』

 

 

 拡声器による呼び掛けを聞いて、レースに向けて準備していたであろうジャージにゼッケン姿のウマ娘たちがぞろぞろとゲート前に集合してくる。

 これから行われるであろう『選抜レース』はウマ娘が自身の実力をトレーナーに示し、スカウトされることを目指すという、トレセン学園で1年に4回の開催される一大行事だ。

 

 

 この選抜レースを経て、トレーナーにスカウトされたウマ娘がURA(Umamusume Racing Assosiation)が運営する大人気スポーツエンターテイメント、『トゥインクル・シリーズ』への出走(エントリー)が可能となる。逆に言えば、この選抜レースをクリアしなければ、どんな実力を持ったウマ娘であろうともトゥインクルシリーズにおけるG1、G2、G3等の重賞レースに出場することは叶わない。

 言わば、これはウマ娘が己の夢を実現させるための『登竜門』なのだ。

 

 

 蹄鉄が芝を踏みしめる音。

 陽射しを受けた芝特有の香りが鼻を刺激する。

 思わずクシャミが出かけたが、そんな僕の事などお構いなしにレース参加者であるウマ娘たちがスターティングゲートへと足を踏み入れて枠入りを完了させていく。

 レースは突然始まるわけではなく、全てのウマ娘が枠入りを完了させてから始まるのだ。

 

 

「くくく、つ、潰す……皆、肉団子に…!」

 

 

 あとは心して出走を待つのみとなるウマ娘達の中には当然、今日の選抜レースを行う前よりもトレセン学園編入前に入学していた地方のレースで実績を積んだ成り上がり系のウマ娘たちもいる。

 そう言ったある種の有名なウマ娘には事前にメディアやトレーナー達に業務連絡で情報が回ってくる事が多い。

 だからこの選抜レース時は一般生徒だけでなくメディアや他の未契約のトレーナーで客席が埋まることになる。

 内枠3番に入っているこの明らかに出る作品を間違えた、ゴリラ型のウマ娘もその一人なのだろう。

 

 トレーナーの皆が食い入るようにターフに立つウマ娘たちを見ている。

 そこには『最初の担当ウマ娘を見出したい』という新人トレーナーの期待と、『一度勝ち得た栄光をもう一度』、『己の実績を更に上げたい』というベテラントレーナー達の私欲が少なからずとも見て取れる。

 

 

 

 さて、問題はここからだ。

 言っていなかったかもしれないが、僕の専業は一応()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()である。立派な成人男性だ。 

 今日も本来ならば、担当ウマ娘の次の出走プランを練ったり、練習に必要な器材の調達の要望を学園側に挙げたり、チームでもはや研究と称してラボからほぼ出ることが無くなってニート兼マッドなサイエンティストウマ娘のお世話をしなければいけないのだ。

 

 

 なのに、何故僕は自然とターフの上に立ち、何の疑いも無く4番ゲートの中に枠入りを完了させてしまっているだろうか。

 トレーナーで、ちゃんと担当ウマ娘のいる僕が、一体何故。

 

 

 否、僕はトレーナーではない。少なくとも、()()()()では。

 だが二日前……正確には46時間と32分前まで僕は確かに、トレセン学園のトレーナーだった。

 それがどうして、どのような過程を経て、このような姿になってしまったのか。

 

 

 頭部に耳を、自在に動くしなやかな尻尾を持つ()()()()()()()姿()を僕はしているのだろうか。

 

 

 真実である。

 金色の瞳に漆黒の長髪を靡かせる、すらりとした体躯を持つウマ娘の姿が、今の僕の姿だ。

 二日前、僕はとある事件に巻き込まれ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()悲劇の元トレーナーなのだ。

 

 

 語らなければならない。この奇々怪々な現象に巻き込まれた僕の人生最大の不幸を。

 問題はない、ゲートが開くまでまだ時間はまだある。文章で羅列された情報は展開の速さを超越するから、ここまでの経緯を説明しきるのに恐らく10秒も掛からないだろう。

 読者が理解をする頃に、やっとゲートが開き、物語の幕が上がる、それが僕のシナリオだ。

 

 

 

――――ガチャン!

 

 

 そんな事を言っていた先ほどの思考から僅か3秒以内でゲートが開いた。ふざけるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お初にお目にかかります。
遥々海の向こうから船でやってきたモンゴルウマ娘と申す。
この国独自の文化である誉を学び、不定期に更新していきたいと思います。

この作品であなたが気になるウマ娘は?(略、今あの娘どうしてるの?

  • スペシャルウィーク
  • セイウンスカイ
  • キングヘイロー
  • キタサンブラック(ロリ
  • サトノダイヤモンド(ロリ
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