僕自身がウマ娘になることだ   作:バロックス(駄犬

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レオ杯決勝は今から見るの辛い……
スタミナ因子2が周回で出てこないから永遠とイベスズカSSR回収できないんだけど。
イベミッション初日からずっとスタミナ因子出ないんですけど!


本日、夏休み最後の投稿。
明日から更新遅れるかもです。


15.グラスワンダーと耳掻き

 耳掻き。

 文字通り、耳の中を耳掻き棒で内側を擦って掃除する行為の事を言う。

 日本古来からも奈良時代あたりには既に木の耳掻き棒が見つかっていたこともあり、当時から盛んだったようだ。

 江戸時代にしても、「耳垢取」という職業があったらしい。

 

 

 耳掃除して金が貰えるなんて、なんて素敵なんだ江戸時代。

 対象が花魁とか美少女なら最高だけど、武士のオッサンオンリーだったら即営業停止にしてやるけどな。

 

 

 まぁ、僕が独自に調べて得た耳掻きヒストリーを語るのはこれくらいにして。

 僕は未だにぽかんとした表情で状況を掴めないでいるグラスワンダーに再度言い放つ。

 

 

「耳掻きをしてあげよう」

 

「え、えっと……」

 

「耳掻きをしてあげ―――」

 

「そ、それは分かってます!で、でもその……トレーナーさんに、してもらうなんて……」

 

 よほど抵抗があるのだろうか、グラスワンダーは珍しく目線を動かしている。

 冷静沈着な彼女にはこれまでに他人に耳搔きをされたという事が無いのかもしれない。

 

「だがグラス……耳のバッドコンディションは放っておけば悪化して頭痛や咳、難聴という症状を併発する可能性だってあるんだ。

 安心しろ、僕はあの耳掻きマザー、スーパークリークの下で修業を積んだ生粋の耳掻きヤーだ」

 

「み、耳掻きヤーってなんですか……そ、それなら保健室に……」

 

「保健室の先生なら今日は休みだよ」

 

 今日は土曜日だ。

 施設を運営するスタッフは数名いるものの、保健室などの部屋は平日しか機能していない。

 故に、土日にトレーニングをする生徒たちは怪我などをした場合は自己責任で対処しなければならない。

 

 トレーナーからすれば、非常時の為に医療スタッフは最低限一人は常駐していて欲しいんだけどな。これも人件費の都合かもしれない。

 僕はあの手この手で逃げようとするグラスワンダーの一手を悉く潰していく。逃げウマ娘から逃げようったってそうはいかないぜ。

 

 

「うぅ……しかし、耳掻きをしたくらいでこの苦しみから解放されるとは到底思えません……」

 

「ほう、グラスは僕の事を信頼していないのか……」

 

「そういう訳ではありませんが……」

 

 そこまで頑なに拒まれると、こちらも気が引けるというもの。

 だが、これは今の彼女には必要な物であり、それを実行するのは間違いなくこの僕なのだと断言できる。

 

 しかし、どうしたものだろう。

 今のグラスワンダーに無理に抵抗させることなく、僕の耳搔きを受けてもらうために、ここは一つ手を打たなければならない。

 

 考えよう、山々田山能。

 お経の音を皮切りに名案を思い付いた一休さんのように。

 ヘンダーランドでマカオとジョマのババ抜き勝負で右か左のカードを選択する為に夜を明かした野原ひろしのように。

 

 

 その時、ふと思いついた。

 

 

「ならグラス、僕と勝負をしよう」

 

「勝、負……ですか」

 

 食いついた。

 彼女は不撓不屈のウマ娘、グラスワンダーだ。

 勝利を求める執念、レースに懸ける情熱は全てのウマ娘より常軌を逸している。

 

 戦う事こそが誉と信条とする彼女に「勝負」という単語をチラつかせるのはこの上なく効果的だという事だ。

 

 

「グラスの両耳を綺麗に掃除し終えるまで、僕はお前を寝かせて見せる……もしそれが出来なかったら、僕はグラスのいう事を〝なんでも〟聞いてあげよう」

 

「なん、でも……今、トレーナーさん間違いなく仰りましたか?〝なんでも〟、と……」

 

「あぁ、漢ブラックサンダーに二言は無いぜ」

 

 正確に言うと、今の僕は立派な女なんだけどな。

 

 しかし、耳がレーダーの如くピンと立っている辺り、途轍もなく興味を示しているのは言うまでもないだろう。

 

 僕に一体どんな命令をさせようって言うんだ。

 そんなにご飯が食べたいのか?

 3杯?3杯もお代わりしたいのか?かーっ!みんね、ミーク!卑しか女ばい!

 

 

「悪い話じゃないと思うぜ?

 耳掃除でグラスのコンディションが解決すれば良し、仮に解決出来なければ今度こそ病院に行けばいい。

 だけど、今の機会を逃せば、僕を好きに命令できる権利を永遠に手放す事になる……どうする?少なくとも、グラスの方にデメリットは無い筈だ」

 

「……」

 

 グラスワンダーの顔から笑みが消えた。

 これは確かにレース前の真剣な表情……マルゼンスキーの再来と呼ばれた怪物2世、グラスワンダーの気迫が伝わってくる。

 彼女はゆっくり僕と向き合うとその瞳で僕を見つめ、

 

「分かりました……その勝負、お受け致します」

 

 僕との耳搔き勝負を受ける事を承諾したのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それでは料理を始めよう。

 それにはまず、下ごしらえが必要だ。

 

 僕は手慣れた手つきでベッド周辺を綺麗にするとベッド上部の直ぐ横に設置しているサイドテーブルにお湯を張った桶とにタオルを浸す。

 今は2月、ということもあって外は寒く部屋も暖房を使用している状態だ。当然、部屋の湿度を管理する為に加湿器を設置しているので加湿器を部屋の真ん中にあるテーブルの上に置いた。

 

 僕は加湿器の電源を入れる前に、

 

「なぁグラス、好きな香りとか……そういうお気に入りの香りってあったりするか?」

 

「好きな香りですか?特に決めているものはありませんが、強いて言うならばラベンダーかと」

 

「ラベンダー、ラベンダー……ん、おお、あったあった。流石ダイワスカーレット、定番のアロマオイルだけどしっかり押さえてたな」

 

「それはもしかして、ダイワスカーレットさんから借りたものですか?」

 

 グラスの問いに僕は「ああ」と答えて、

 

「前にアイツのトレーナーが不眠症になった時、〝スカーレットの貸してくれたアロマオイル焚いて寝たら朝までぐっすりだったわ!〟って、トレーナー本人から自慢された事を思い出してな……あいつがそういうアロマ系の道具色々とこさえてるの知ってたから今だけちょっと借りたんだよ」

 

 正確には、そのダイワスカーレットのトレーナーが見たがっていた映画の先行上映チケット2枚を交換条件に、だが。

 

 加湿器上部を開き、貯水部分に直接アロマオイルを適量垂らす。

 アロマオイルに対応した加湿器なので問題はない、蓋を閉めてコンセントを差してからスイッチを押すと加湿の上の穴からゆっくりとスチームが溢れてくる。

 

 

「あ、いい匂い……」

 

「アロマオイルって身体の緊張とかストレスを緩和する効果があるんだってさ。

 中でもラベンダーは女性に人気で、リラックス効果が高いらしい」

 

 

 アロマと検索するだけでも色々とあるものだと、僕はあとで知ることになる。

 アロマ、つまり精油には種類が200種類以上あるらしく、それらの香りを楽しむことは勿論だが、マッサージや蚊の忌避にも用途は様々だ。 

 ちなみにダイワスカーレットから借り入れたアロマオイルは彼女によって厳選された10種類である。その他にも部屋にはちゃんとアロマオイルが中サイズの箱で幾つか保存されていた。

 

 僕は彼女のトレーナーではないので一個人に対する詮索は不要だが、彼女のお財布事情が少し心配である。

 

 

 さて、準備は整った。

 獲物を調理場へ誘導しよう。

 

 

「さ、グラス。ここにおいで」

 

 自分のベッドに乗り込んだ僕は膝を折り、大腿部の上をぽんぽん、と叩くことでグラスワンダーを(いざな)う。

 最初こそ、戸惑いを隠せていなかった彼女だが意を決したかのように拳を握ると険しい顔で、

 

「では、失礼しますね」

 

 靴を脱ぐと僕の座るベッドの上に乗り始めた。

 ぎし、とスプリングが軋む音とともに右足、左足と順次に移していく。

 今の身体の沈み具合からして去年より体重に変化があったことが分かる。直に触れてみれば、更に事細かな変化が分かるだろう。

 

 言い忘れていたが、僕はウマ娘の肉体に触れるだけで彼女たちの体重を0.0kgまで正確に測定できるという、変態じみた特技がある。

 

「よい、しょっと……」

 

 沈むベッドの不安定さを補うために両手、両足、両膝を設置させてバランスを取ると赤子が這うようにグラスが僕の膝元に近づいていく。

 目の前にまでグラスの顔が近づいてきたところで、彼女の方から身体を反転させて栗毛の長髪を気に掛けるように後頭部を、静かに僕の膝の上に乗せた。

 

 

 ぽふ、と何とも言えない軽い重量が膝の上に乗っている感じがする。

 長袖長ズボンのジャージ姿だから肌面積の接触はまったくと言っていい程無いために特にこそばゆい感じはしない。

 

 

 視線を下に向けると、すぐそこにはグラスワンダーの顔がある。

 人とは違って、ウマ娘には頭頂部に耳がある為、耳の手入れを誰かが行う場合は自然と互いの顔を直視する状況になるのだ。

 

 眼下、グラスワンダーの顔をじっくりと見る。

 モデルのような整った顔だち、穏やかな海のような、空がそこにあるかのような碧の瞳に吸い込まれそうになる。

 寝不足のクマが無ければ、素敵だなと呟いてしまうところだった。

 

 しばらくグラスワンダーを見つめていると、彼女は何も言わずに横を向いた。

 これでは耳が真横を向いてしまうので耳掻きを実行できない。

 やむを得ず、顔を背ける理由を問うことにした。

 

「グラス、顔を横に向けていると耳掻き出来ないよ」

 

 僕がグラスに聞くと、彼女はたどたどしく顔を正面に戻すが、視線は泳いだままだ。

 

「わ、分かってはいますが……やはりというか、ち、近いのですね……」

 

「そうだな。グラスの顔をこんなに間近で見たのは多分初めてだ」

 

 やはり、綺麗だな、と率直にそう思う。

 強くて、カッコよくて、しかも綺麗とか、僕の担当ウマ娘は最高かよ、とSNSに書き込みたいくらいだ。

 #グラスワンダーってタグをつけて投稿すればカレンチャンあたりなら、イイネ押してくれる気がする。

 この迸る感情のままに文章を書きまくってたら恐らく、原稿用紙30枚分の怪文書が生まれる事はまず間違いない。

 

 

 ふふ、しかし顔を直視しするのが嫌だというならば、その両目今すぐ塞いでやろう。

 

 僕はお湯を張った桶に浸していたタオルを一度絞ると綺麗に長方形に畳んでグラスワンダーの両目が覆われるくらいに被せた。

 

 

「ふぁ……」

 

 

 両目を塞ぐと同時にグラスの口から言葉が漏れる。

 タオルは熱すぎたりしないだろうかと心配はしたが、今の反応を見るに湯加減の調整は必要ないようだ。

 

「トレーナーさん、これは……?」

 

「ん?ああ、下準備みたいなものさ。

 美容室とか行くと、顔の髭剃ったりする際にこうやって目に温めたタオルを被せるんだけど、これが気持ちよくてさ。

 調べたら疲れ目とかによく効くらしい。

 目付近の血の巡りも良くなるから、頭痛にも効果があるんだとさ」

 

「へぇ……ひゃっ!?え、な、なんですか……!?」

 

 突如として身体をびくっ、と震わせる。

 目をタオルで覆っているので、自分に何が起きたのか分からないらしい。

 驚くのも当然だ。せっかくリラックスしているのに一々驚かせていては効果も薄まるというもの、これからは行程に入る前に必ず告知してあげよう。

 

「すまんすまん、耳にもホットタオルを巻かせてもらう。

 さっき耳の中を見たら浅い部分には大きな垢が見当たらなかったから、奥にこびりついている垢を取る為に耳全体を蒸して取りやすくしてるんだよ。

 今度はちゃんと、次の作業に入る前は必ず教えるようにするから」

 

 右の耳を蒸しタオルで巻いたら、今度は反対の耳も巻いていく。

 目も耳も塞がれたグラスだが、事前に告知していたこともあり僕の動作に驚くことなく受け入れてくれた。

 

 

「どうだグラス」

 

「はい……ぽかぽかして、気持ちいです……」

 

 不快な気分を感じるどころか、心地良い息を吐いているグラスワンダー。

 両肩も竦めることなく下がっているのはリラックスできている証だろう。

 

「よし、少しばかりこのままだ」

 

 メジロライアン直伝、疲労した肉体をほぐすなら、まず温めよう!を実行していく。

 と言っても、時間にしても数分程度だが、ただ待つというのもアレなので。

 

「あの……トレーナーさん、どうして頭を撫でてるんですか」

 

「ん~?いや、綺麗な髪だったからね、つい」

 

 艶のある栗毛は、見る者全てをレースで魅了した。

 実際、僕が彼女の担当になったきっかけもグラスワンダーのレースに懸ける情熱だけでなく、彼女のこの髪に惹かれたというのもあるかもしれない。

 

「嫌だったか?それならやめるけど……」

 

「いえ……もう少し、このまま……」

 

 グラスの承諾を得たので、僕は彼女の頭部を撫で事を継続した。

 滑らかな髪に爪を立てないよう指の腹を使い、髪の毛を梳くように。

 出鱈目にわしゃわしゃ、ではなく、最大限の優しさを込めて、ゆっくり。

 

「グラスはいつも頑張ってるから、もっとよしよししてやろう」

 

「どうしたんです、急に……」

 

「復帰トレーニング、結構キツイだろ?最近熱心に身体追い込んでるの知ってたからさ。

 だから労わってやろうと思って…・・・フフ、グラスワンダーよ、褒めて遣わすぞ」

 

「ふふ、ありがとうございます……私の事、そんなに見ていてくれたんですね」

 

「当たり前だろ。僕はお前のトレーナーだからな……ずっと見ていてやるよ」

 

 時間の頃合いを見て、頭をかるくポンと叩いて合図すると、僕はグラスに告げた。

 

「よし、じゃあ耳周りのマッサージをこのままやっていくぞ」

 

「?耳掻きはまだしないんですか?」

 

「このマッサージも固まった耳垢を剝がしやすくするためのものさ。

 これが終わればお待ちかね、本格的に耳掃除に入っていくよ」

 

 一流シェフの料理も入念な下準備によって成り立つように、耳掻きもまたそれと同じだ。

 

 僕はグラスワンダーの耳を片方ずつ、タオル越しに手に収めるとぐりぐり、と全体をこねくり回す。

 

 

 ぐっ、ぐっ、ぐっ、とスポンジを握るように軽く。

 決して力を入れ過ぎてはいけない、そう心掛けながらグラスの耳を揉み解していく。

 

「ぁ……ふ」

 

 耳の頂点から輪郭をなぞる様に。

 表だけでなく、その裏側も入念なマッサージを行っていく。

 ウマ娘の耳は非常に興味深い。

 肉厚な筋肉が内包されているわけでもないのに、脳の動きや感情によって垂れたり、立ったりと実に豊かな表現力を持っている。

 

 耳の根元に触れながら確かめていると、グラスワンダーがピク、と身体を動かした。

 頃合いか、と僕は彼女の耳に巻かれているタオルを一つずつ取っていく。

 

「それじゃあ耳もだいぶ温まって来たみたいだし、そろそろ本格的な耳掻きに入っていくけど大丈夫か……ん?グラス、グラス…?」

 

「はぅっ! あ、はい、だ、だいじょうぶですよ!」

 

「もしかしてグラス……もう寝てない?」

 

「ね、寝てません……!私は寝てませんので…むしろ、寝ませんので!」

 

 口がだらしなく開いていたのだが、気のせいか。

 では、お互いに準備が整ったみたいなので本題の耳掻きを行っていこうと思う。

 

 

 蒸したタオルで湿った耳を一度乾いたタオルで拭いて、綺麗にした後に程よく熱を持った耳全体はこの上なく耳かきをするうえでベストな状態だ。

 

 

 僕はサイドテーブルに置いていたスーパークリークの耳掻き棒を取り出す。

 この耳かきはスーパークリークがストック用に保管していた耳掻きでまだ未使用だとのこと。

 貸してほしいと頼んだら、「そのまま差しあげちゃいますよ~、大切に使ってくださいね」と笑顔で言ってくれた。

 

 

 ありがとう、スーパークリーク。

 後でお礼をしなければならないな。

 具体的なお礼の内容も1オギャ、2ヨシヨシされることで手を打ってもらおうか。

 

 

 手に持ったのは竹製の匙だ。

 匙には大、中、小のサイズがあり、僕が選んだのは中の方。

 これからの耳掃除で必要に応じてサイズを変更していくつもりだ。

 

 片手で耳を支え、匙を近づけて耳と触れる直前でぴたりと止める。

 僕は、未だに目だけをタオルで覆っているグラスワンダーに言うのだ。

 

「グラス」

 

「はい……?」

 

「ギブアップしたかったらいつでもいいぞ。強制的に負けになるけど」

 

「ふふ、ご冗談を。心の中に抱く不退転に背きますゆえ」

 

「分かった。後で後悔するなよ?」

 

 

 かかったな、アホが!

 

 

 

 ディオに即席で作った必殺技サンダークロススプリットアタックを見舞ったダイアーさんのように不敵な笑みを浮かべて見せる。

 

 言質は取った。

 グラスワンダーは、どうやら耳掻きというものを舐め切っているようだ。

 ただ単に耳から異物を取り出す行為など、自分の冷静な思考と鋼の意思でどうとでもなると思っている。

 

 

 分かっていない。

 この耳掻きというものが、どれほど恐ろしいものなのか。

 固定観念に囚われているグラスワンダーに新たな境地を見せてあげるためにも、僕にこの任務の失敗は許されない。

 

 

 トレーナーとしての誇りに懸けて、僕はグラスのその身に「わからせる」しかないのだ。

 

 

「じゃあ、始めるぞ」

 

「……」

 

 やる事は同じだ。

 力を無理に入れずに、緩やかに。

 匙の裏側を用いてしっかり優しく押すように。

 直接、耳垢があるであろう奥側を攻めるのではなく、入り口の、しかも耳の溝部分から丁寧に。

 すぐに終わらせてしまっては意味が無い。

 

 

 手前手前、溝溝溝。

 引っ搔いていく必要は無く、少しでも押してあげればこびりついている耳垢がぽろぽろと落ちていくのである。

 これも、温タオルで耳全体を温めたことによって得られる効果だ。

 

 

「ん、ふ……ふ…っ…ぅ」

 

 匙が少しずつ奥へ進んでいく毎にグラスの身体が小さく反応を見せる。

 耳垢が乾いたタイプだったから、耳壁から剝がされていくのが気持ちいのだろう。

 

「痛くない?」

 

「は、ぃ……その、なん、というか……くすぐったくて……ぁ」

 

 

 ぺり……ぺり…ぺり、と垢をこそぎ落としていくと片方の耳がピクピクと震えている。効果は覿面のようだ。

 

 

「お」

 

 入口から大分進んだところで、匙の動きが止まった。

 何か、大きな硬い部分に進行を妨げられている。恐らく、より硬質になった耳垢が奥に潜んでいるらしい。大本命というところか。

 

 

 だがグラス、ここからが地獄だぞ。

 いや、地獄ならぬ、極楽、言い換えて獄楽だ。

 

 地獄の業火など生ぬるい、永遠に抜け出せない悦楽の沼に叩き落としてやろう。

 

 僕は手に持つ匙をくの字……つまり、本来の使用用途で持ち換えると爪のようになった先端を耳の内側に蔓延っている固形物の一部に引っ掛ける。

 

 

「ぁ―――っ!!」

 

 そこからのグラスワンダーの変化は劇的であった。

 一瞬だけ、一瞬だけであったが甲高い声を出した口をグラスは慌てて自らの手で塞いでいた。

 今の声が、自分の口から発せられたのかと疑うかのように。

 

「大丈夫?」

 

「え、ええ……たぶん、これが不調の根源なのですね……どうぞ、続けてください」

 

「分かった」

 

 

 ニチャアァ……というタオルで視界を塞いでるのをいいことに歪んだ笑みを浮かべる僕。

 ここにナイスネイチャがいたら、僕は迷わず先ほどの擬音をネイチャァ……していた。どうでもいい。

 

 

 ふふ、グラス。

 「声を出す」という事はお前にとって失態と思っているようだな。

 常に大和撫子で在れ、心に抱く不動の誓いである不退転は立派だ。

 それを守り続けるお前の事を美しく思うよ。

 

 

 だけど、それがお前の敗北する原因だ。

 

 

 今が本当の戦の時だ。

 いわゆる桶狭間、グラスという敵大将を討ち取る為に、いざ開戦の狼煙をあげよう。

 僕は脳内で法螺貝を吹いた。今こそ、スーパークリークの下で修業を積んだあの日々の事を思い出せ。

 

 

 カリ……カリ、カリ、石のように固くなった垢を端っこから引っ掻いていく。勿論、最低限の力で。

 

「ん―――っ……!」

 

 コリ、コリ、コリ……ザクッ、と引っ掻きによって生じた隙間に匙の先端が入り込む。その状態から、

 

「ぁ……く……ぅ…」

 

 グッ、グッ、ゴリ、ゴリ……パリッ、じんわりとした優しい力加減で匙を引くと、垢が剥がれるような乾いた感触が伝わる。

 今のでも相当大きな物だろう、だが、今のだけでほんの一部だ。

 

 

 もうグラスは気付いているかもしれないが、既に遅い。

 

 

 耳というのは、繊細な器官だ。人もウマ娘もそれは変わらない。

 耳道、耳の中には迷走神経というものが通っている。これは脳と末梢器官の間で神経を介して情報伝達を行う神経である。

 この迷走神経は上行性と下行性に分類され、一つは脳から末梢器官へ伝達する神経と身体活動を鎮静化する副交感神経によって構成されているらしい。

 

 

 これらの神経は活動が活発化することによって、食欲や血圧の低下にも関わってくる。

 しかし、ここまで聞いても、この神経が耳掻きとどう密接に関係しているのか、まだ理解できないだろう。

 

 

 迷走神経というのは刺激を加える事によって活動が活発になる。

 僕がさっきやったように、痛みを与えない強さで優しくだ。

 

 そうすると、一体どういう反応が出てくるのか。

 簡単に説明すると、人は迷走神経を刺激されると気持ちよくなる……つまり、快感が生じてしまうのだ。

 

 上手い人による耳かきが「あぁ~気持ちい」となるのもこれが要因なのである。

 迷走神経は精神疾患症状を改善する鍵となる神経だ。

 

 

 

 グラスワンダーが感じている快楽は恐らく、僕の想像を絶するものだろう。

 見てほしい、既に肩で息をしているかのように体力は削られ、小さな悦楽に染まった声が漏れてきている。

 僕が匙を動かして耳垢が剥がされていく度に身体が一々反応しているのだ。

 

 

「ほぅら」

 

「んぅ……っ!」

 

 ぺりっ、とまた大きな物が取れた。

 望みの物を取り出しているだけなのにグラスの脚が震えるように内股になり、息も荒くなっていく。

 

 

 グラス、お前は声を出す事に抵抗があるのだろう。

 立てば武士、座れば大和撫子、歩く姿は不退転を体現した少女。

 いっその事、声を出せればどれだけ楽だろうか。

 だが、心の内に持つその不滅の覚悟が自身を縛る呪いとなっていることに彼女は気付いていない。

 

 

 僕の前で耳かき程度で「声を出す事は醜態」と考えているグラスだからこそ、必死になって声を抑えようとする。

 声を抑えようとすればするほど、快感の度合いは更に強くなっていく。

 視界だってタオルで塞いでいるのだ。何も分からない分、あらゆる器官が敏感になるぜ。

 

 

 

 だけどグラス、知っているか。

 人間ってのは「痛み」に耐えることが出来ても、「快楽」に耐える事は出来ないんだぜ。どっかの同人誌で言ってた。

 

 

 人間、快楽には勝てないんです。

 最初は我慢できても、いずれは負けちゃうんです。

 僕だってスーパークリークに耳かきをしてもらった時は「ふ、こんなのに僕は屈しない!」という鋼の意思で耐えようとしたさ。

 けど5分後、鋼の意思程度の金スキルじゃクリークの耳かきには勝てない事を思い知ったよ。

 

 

 

 人間同様、ウマ娘も快楽には決して抗えない事を、僕は徹底的に彼女に教え込む……そう、徹底的にだ。

 

 

「ひ……ん、あ……っ!」

 

「どうしたグラス。声が上ずってるけど……ギブアップする?」

 

「ぃ、いえ……にゃ、んの、これしき…ぃ」

 

「ギブする……?グラス、ギブアップ?」

 

「の、のぅ…んぅ…です…」

 

 

 『世界で一番強くなりたい』。

 

 今のグラスワンダーはプロレスで逆エビ固めを掛けられて65連敗という不滅の連敗記録を打ち立てた萩原さくらのように直ぐに降参することはしないだろう。

 そんな鋼鉄の意志と鋼のような強さを感じる。

 

 

 だが、その我慢も時間の問題だろう。

 僕はここぞとばかりに、今もなお絶賛耳垢を採掘している匙の引っ掻く速度を上げた。

 

 カリ、カリ、という速度からカリカリカリ、と絶え間なく異物を引っ掻き続けている感触が伝わる。

 

 

「~~~~っ!!?」

 

 脳内が焼き切れてしまったとでもいうのか、一瞬呼吸が止まったグラスの背中がしなる様に逸れて、大きく喉元を晒す。

 相当の刺激が走ったようだが、これでもグラスは眠りにもつかないし、負けを認めるつもりもないらしい。

 

 

 意地を張り続け、必死に僕の魔の手に耐え続ける彼女はまるで悪の将軍に捕えられた姫武将の構図がしっくりくる。

 

 

『僕たちの手で辱めてやろうよ!!!』

 

 

 僕の中でカブトボーグのカツジが悪魔の囁きをしてくる。

 ただ耳掻きしているのに、耳掻きをしてる側の僕でさえ、なんかイケナイ気分になってきてしまった。

 これ以上長続きさせるのはお互いの精神にも肉体的にもよろしくない筈なので、そろそろトドメに入るとしよう。

 

 

 今こそ、快楽を知らない無垢なウマ娘を、地獄の沼に引きずり込もう。

 そう思い、匙を動かそうとしたその時だった。

 

 

『コンコンコン!ブラックサンダー、いるんデスかー?いたら返事してくだサーイ!』

 

「……!?」

 

「……!?」

 

 なんと、エルコンドルパサーが扉の向こうでドアのノック音を実況していた。

 幸い、グラスの名誉のためにカギは掛けていたので中を覗かれることはないが、エルコンドルパサーがここにやってきた理由は不明だ。

 

 不明だけど……エルコンドルパサーよ、実に良いタイミングだ。

 

「どうしたエルコンドルパサー」

 

 コリ……。

 

「――ひぁ!!」

 

 扉越しにエルコンドルパサーがいるにも関わらず、僕の匙を持つ手はグラスの耳掃除の為に再行動した。

 不意の耳かき動作に反応が遅れたグラスは突如として快楽に襲われて今日で恐らく一番大きな声を出してしまう。

 

『ン?今何か聞こえませんでしたか?』

 

「……いや、気のせいだと思うけど。それで、どうしたんだ?」

 

「~~~~っ」

 

 扉側が恐らく感じた違和感に動じることなく、僕は耳掻きを続けていく。

 

 

『えっと、こっちにグラスが来なかったデスか?最近寝不足で体調が悪かったみたいデスから、心配で探してたんデース』

 

 どうやら、グラスの同居人もグラスの異変には気付いていたようだ。

 こうして心配して、探してくれている。実に良い友人関係だ。

 

 だが、今の状況をコイツに見られるわけにはいかない。

 一応治療目的だけど、この場面を見られたらきっと皆があらぬ誤解を抱いて僕に批難を浴びせてくるのは目に見えている。

 

 だから白を切ることにした。

 その間も、匙は動きを止めずに徹底して耳掃除に勤しんでいる。

 友人が扉1枚越しに立っていて、自らに課されている修羅場のような状況だ。

 こんな姿、決してエルコンドルパサーに見せられない。

 

 その羞恥心を僕は最大限に利用する。

 

 

 

「いや、こっちには来てないよ。それより済まないが、今は新作ゲームの〝ゴースト・オブ・府中〟のプレイ真っ最中なんだ。

 ゲームの邪魔はしないでくれると有難い。」

 

 コリコリコリ……。

 カリカリカリ……。

 

「むぅ~~~くぅ……っ!!」

 

 肩がせわしなく左右に揺れて、身体がガクガクと痙攣する。

 両足のつま先は曲がり、両の手はシーツを握り占めて、口は必死に紡いで声を抑えている。

 だが、抑えているようで、抑えきれていない。次の刺激には恐らく耐え切れないだろう。

 

 限界か。

 それを察した僕は震えるグラスの口元に自身の手、掌根の部分を寄せるとエルコンドルパサーには聞こえないように耳元で小さく囁く。

 

「辛かったら、思いっきり噛め」

 

 グラスが頷いたのを見て、僕は奥の方で引っ掛かっている大きな違和感の塊を匙で引き寄せ、

 

 

「―――ッッ!!」

 

「んぎぃっ!?」

 

 ゴボッ、という異物が取れた感触と共に。

 ガブッ、と強烈な痛みが襲ってきた。

 

 

 

『なんと!あの話題のゲーム、〝ゴースト・オブ・府中〟ですか!?エルもやりたいデース!開けてくだサーイ!』

 

「駄目。今季のレースで決着をつけてから」

 

『ガッデム!頭の固い奴デース!』

 

 そう吐き捨ててエルコンドルパサーの足音が遠のいていく。

 どうやら危機は去ったようだ。

 やれやれと言った表情でため息をつくが、僕の右手にはいまだに痛みが走り続けている。

 

 

「ぐ、グラス、もう行ったぞ……行ったから、行ったぞー、おーい」

 

「ふーっ!ふーっ!」

 

 グラスワンダーは未だに僕の手に噛みつき続けていたのだ。

 荒い息を吐いている彼女に、もう大丈夫になった事を教えるべく声を掛けるが届いていなかったようで、空いてる手で肩をとんとん、と叩いてあげると漸く口を離した。

 

 

「はぁ、はぁ……」

 

 

 口が離れたのはいいものの、僕の手には見事な噛みつき跡が残っていた。

 ウマ娘の強靭な顎の力で噛まれたのだ、ただでは済まない。暫く跡が消えないだろう。

 

 そして真下を見て、グラスワンダーの顔を見るとその目元からは覆っていたタオルがずれ落ちていた。

 

 涙で潤ませた2つの瞳は僕を真っすぐ見つめて、まるで親の仇のように睨んできている。

 上気した肌、部屋の温度と湿度が上がっていたので首筋には玉の汗が浮かんでいた。

 

「すまん」

 

 咄嗟に僕が謝ると、グラスはやや間を置いてから消え入るような声で、

 

「………いじわる」

 

 自らの頬を朱に染めながら、そう呟いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 右耳の耳掻きも終盤に入る。

 粗方大物は仕留めたので匙で掻き出した後は梵天に切り替えて細かい耳垢を掃除している最中だ。

 

 

「……」

 

 グラスワンダーは口を聞いてくれない。

 というか、目を閉じたまま見向きもしてくれない。

 

 

 やり過ぎたか。

 

 思えば、友人にバレるかバレないかの羞恥プレイで散々虐めていたのだ。

 いつもなら薙刀を構えて襲い掛かってくるというのに、今回はそれすらもないのだ。

 

 遂に愛想を尽かされたのだろうか。

 

 怖いような、辛いような、上手く言い表せない不安が僕を襲う。

 言うが早いか、僕は己の罪を自覚し、意を決してグラスに謝ることにした。

 

 

「グラス、怒ってるか……怒ってるよな……。

 すまん、謝らせてくれ……調子に乗り過ぎた…僕もお前を苦しめるためにやってたわけじゃ―――って寝てるんかいッ」

 

 

 僕のシリアス上等の謝罪会見は、グラスの快眠によって即刻中止となった。

 というか、寝てるのかよグラス。あれだけ寝れないって言ってたのに。

 

 

「すー……すー…」

 

 

 静かに寝息を立てるグラスワンダーは穏やかな寝顔を浮かべていた。

 耳から異物感が無くなって負担が軽くなったからだろうか。

 部屋の温度も汗を掻いた彼女の為に少しだけ下げたのを思い出す。

 

 

 形はどうであれ、僕の当初の作戦は成功したようだ。

 ついでに、グラスとの勝負にも勝った。やったぜ。

 

 両耳の手入れを終わらせて、彼女が寝ているのであればこのままベッドの上を明け渡す事も考えた。

 借りていた道具ともいくつか返さなくてはならないし、別に僕は椅子やら床で雑魚寝をかますことだってできる。

 グラスの安眠を出来るだけ長いものに、最適なものにしたいと考えて僕は膝上のグラスの頭を静かにどかそうとした。

 すると、

 

「ん……」

 

 

 僕のちょっとした動作にグラスが身をよじった。

 身体を半身にして、自身の側頭部を僕の膝に擦りつける。

 これでは僕の身動きが出来ない。

 かといって、無理に引き剝がそうとしてはせっかく眠ってくれたグラスの安眠を妨げるというもの。

 

 

 仕方がない、これもグラスのためだ。

 ちょっとやりすぎたというのもあるし、これくらいの役、甘んじて受けよう。

 

 

 僕はグラスが目覚めるまで彼女の膝枕を続ける事にした。

 

 

「トレー、ナーさん……ど、こ……」

 

 寝言、だろうか。

 グラスワンダーが僕の名前を口にしていたのでよく見ると、僕の膝に彼女が手を乗せている。

 何かを探し求めるように、その手は彷徨っていた。

 

 眠りについた夢の世界で、どうやら僕の事を探しているらしい。

 

「夢の中まで僕はお前の面倒は見れないぞ」

 

 

 ふと、こんな事を考えた。

 グラスワンダーはどっちの僕を探しているのだろうか。

 トレーナーである山々田山能か、それともウマ娘ブラックサンダーか。

 

 グラスワンダーは人前で「トレーナーさん」とは言わない。

 彼女が僕をそう呼ぶのはいつも二人が一緒にいる時だけだ。

 僕の本当の姿など、暫く見せる事が出来ていないから。

 もしかしたら本当にグラスワンダーの前から居なくなってしまったと思い、夢の中で探し続けているのだろう。

 

 

 僕はどうしようもないトレーナーだ。

 実力あるグラスワンダーのトレーナーの管理を碌にできず、怪我をさせてばかりでシーズンの大切な時期でレースに出すことが出来なかった。

 

 

 〝ウマ娘の力を出し切れない、三流トレーナーだ〟ってマスコミには言われた。

 〝数年に一度の怪物という逸材を殺す気か〟、と同期に殴られたこともある。

 

 

 一度、僕にトレーナーという職は向いていないんだと辞表を考えたこともある。

  

 自信なんて、殆どあって無いようなもので。

 お前と見合う立派なトレーナーになろうと思って必死だった。

 小さくて、みみっちい男なのさ、僕は。

 でも、グラスはどうしてこんな僕と一緒に最初のトゥインクルシリーズを歩んでくれたのだろうか。

 

 

 それだけが、今の僕の頭の片隅に抱く小さな疑問だ。

 

 

 自分に自信を持てない、臆病で、どうしようもない僕、それが山々田山能。

 だけど、こんな僕でもグラスが求めてくれるのなら、どんな小さな事にも応えて見せたい。

 

「僕はここにいるぞ、グラス」

 

 僕が自身の左手をグラスの手に乗せると、彼女が僕の手を握って来た。

 それだけでグラスは安心しきった表情で眠り続ける。

 

 僕の方から時折手を握るとグラスの方から握り返してくれる。

 そんな幸せな夢を見ている彼女を見守り続けながら、僕達の時間は静かに流れていった。

 

 

 

 

 

 

 しかし、睡眠不足だったグラスが軽い睡眠で起きる筈がなく。

 彼女が目覚める頃、東から登った外の陽は西の方へと完全に落ちきっていた。

 

 

 時間にして6時間。

 当然、僕の膝は長時間の膝枕の姿勢によって筋肉が固まってしまい、酷い痺れによる形象崩壊を起こした。

 

 

 

 

「トレーナーさん、勝負の事なんですが……まだ()()()()()()()()が終わっただけですよね?」

 

「え?」

 

「私は一度も一回勝負と言っていなかったので。

 それに、これは私の精神の鍛錬にもなりそうなのです。

 ぜひ今後ともトレーナーさんにお願いしたいのですが……」

 

「……」

 

「ダメ、でしょうか」

 

「う、うん!そうだな!ああ、3回勝負なら仕方がないな!それにメンタルのトレーニングになるのだったらやっておいて損はないよな!」

 

「で、ですよ!そうですよ!鍛錬ならば仕方がありません!はい!」

 

 僕たちはお互いに示し合わせたかのように次の耳掻きの予定を決める事にした。

 耳にちょっと異常があっても、なくても、その日のグラスワンダーの気分でこの耳掻きは今後行われていく事になったのである。

 

 

 すっかり調子も良くなり、頭に付けた蒲公英のヘアピンをしたグラスワンダーは、とてもご機嫌のようだ。

 

 次の日から、僕達はいつもよりちょっとだけ仲良くなった。

 

 

 

 




迸る思いを文章にしたら凄まじい文字数になりました。
クッ、担当ウマ娘に耳掻きしてもらうシチュエーションを、何故今まで思いつかなかったんだ!

この作品であなたが気になるウマ娘は?(略、今あの娘どうしてるの?

  • スペシャルウィーク
  • セイウンスカイ
  • キングヘイロー
  • キタサンブラック(ロリ
  • サトノダイヤモンド(ロリ
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