私のアニバーサリー用に貯めていたジュエルはどうやら緑の悪魔に根こそぎ持ってかれたようです。
ちなみに全部使ってもターボしか凸れなかった!
もういいよ!ガチャ引くのやめる!!
『日本ダービー』。
それはクラシックレースの中でもっとも永く、歴史と伝統、そして栄誉のあるレース。
クラシックウマ娘だけがそのレースに参加する資格を持ち、一生に一度しか出走は叶わない。
数多のウマ娘が日本一の座を目指して、ある者は栄光を掴み、そしてある者は敗れてきた。
勝者に送られる『ダービーウマ娘』の称号は全てのウマ娘の夢だと言っても過言ではない。
そして、今日。
東京レース場で行われる日本ダービーも、その座を賭けてウマ娘達が争う日がやって来た。
『さぁ、府中の空を覆っていた雲のベールが少しずつ薄くなっていきます。
今年もやってきました、日本ダービー!出走ウマ娘18人の中で一筋のスポットライトを浴びる事はたった一人のみです。
誰が今年のダービーウマ娘に輝くのか解説は私、二宅正春と推しウマ娘を前にすると実況を放棄することで有名な、もうネットのおもちゃと化している芝内文屋さんでお送りします』
『えー、やたらと失礼な紹介をされました芝内です。どうぞ、よろしくお願いします』
『芝内さん、今日はダービーですが今この時のウマ娘達の気持ちというのはどういうものなんですかね?』
『そうですねぇ、ここでどうこう考えてもしょうがないですからねぇ……スタートの事だけ考えているんじゃないでしょうか』
『ほう、こういう時こそ開き直りですか』
『そうですねぇ、というかそういうのはここにダービーウマ娘でも呼んでから聞きなさいよ。なんでウマ娘じゃない私にウマ娘の事が分かるんですか』
『それもそうですがねぇ、さて。本日の東京レース場は快晴、バ場状態は良とのことですが』
『絶好のレース日和となりました!私のブラックサンダーちゃんも精一杯やってもらいたいものです!』
『おっと、今回は控えめな表現ですね芝内さん。いつもなら〝皐月賞も取ったから日本ダービーも狙えます!〟って断言しそうものですが……やはり、スタミナの問題でしょうか。
ファンや評論家たちの間でも、1800m以上の距離は不向きであるとの評価をされていますが』
『これはトゥインクルシリーズ。厳しい現実もあることもあるでしょう……しかし、それすらも跳ねのけて勝利を手にしてほしいと私は願っています。
そして私はこう見えても実況者。全てのレースに対して平等の価値観を持ち、平等の視点から解説するつもりです』
『嘘つけ、絶対レース始まったら解説そっちのけ推しウマ娘の応援始めるゾ』
〇
「世間一般に、今回のキミのダービーの挑戦は厳しいというのが多数あるが……そこらへんはどうなんだい、ブラックサンダー」
「アグネスタキオン、正直なところを言うと周囲の評価なんてあまり気にはしていない。
せめて一言あるとすれば、こんな不安要素しかないウマ娘である僕を2番人気に推してくれたことに感謝したいという事だ」
レース場へと繋がる地下バ道を進みながら僕は道中で出会ったアグネスタキオンと言葉を交わす。
既に僕は勝負服に身を包み、パドックでの紹介を終え、準備万端の状態だ。あとは、本番のレース場へと向かうだけであった。
「ミスターXと、何か話をしたか?」
「いや……」
アグネスタキオンの問いに肩を竦めて僕は答える。
あの得体の知れない悪役幹部の如き僕のトレーナーは日本ダービーという大レースの前、ミーティングを行ったが、その内容はミーティングというほどの内容ではなかった。
彼から言われたのはただ二つだけ、〝坂路走で培った力を出してみろ〟と〝後悔はするな〟だった。
「?それだけなのかい?彼から言われたのは」
「ああ、まるでスポコンコーチが言いそうなセリフだった。見た目に似合わず、熱血なのかもな」
コースの特徴や、各出走ウマ娘のデーターを資料で配られたりするくらいで、作戦と言う作戦は特に明示されていない。
皐月賞のような特殊なコースを走るというプランも今回は何も言われなかった。
「まぁ、でも。これは多分手抜きとかじゃなくて、打算があるんじゃないかと思うんだ。
アイツは多分、ダービーより先の事を考えてる……今の僕にそれを伝えても、変に落ち着かなくなるだけだから、多くを語らなかっただけだと」
「ますます何を考えているか分からない男だねェ」
四六時中、マッドな発言してるお前に言われたくないなアグネスタキオン。
内心でそんな事を考えながらいると、アグネスタキオンが立ち止まり、僕に対して背を向ける。
「何か一つ、キミから意気込みが欲しいねェ」
「ダービーウマ娘に僕はなる!!」
「ドン!!とかのテロップ付けてあげようか?」
まぁ、ともあれ。と、アグネスタキオンは続けて。
「私としても、キミに掛ける言葉は一緒だよ。あの男と。
付け加えるなら、私の研究の為にちゃんと無事に帰ってくることだろうね」
「新手のツンデレ発言にしてはレベルが高いな……というか、僕はいつからお前の検体になったんだ」
「最初からさ!キミは最高のモルモットだァ!!」
ゲンムの社長みたいな声で高らかに言うアグネスタキオンを背にして僕は進んだ。
バ道の出口付近、一人のウマ娘が静かにこちらを見て待っている。グラスワンダーだ。
「……」
「……」
凛とした碧の瞳は皐月賞と同じように目だけで僕に意思を伝えている。
彼女の情熱が、僕に対するエールが瞳を通して伝わってくる。
視線を交えて数秒、身体がすれ違い、グラスワンダーを背にした僕はレース場に出る一歩手前で立ち止まる。
「……?」
恐らく、グラスワンダーはいつまでたってもレース場に入らない僕を不思議に思っている事だろう。
僕はそんな彼女に背を向けたまま、言葉を作り、言う。
「今日はさ、普通じゃ足りないと思うんだ……ちょっとお前の力を貸してくれ、グラス」
少しだけ屈んで、黒の勝負服に包まれた背を突き出す。
今日だけは、それを許してほしい、彼女の助力に甘える事を、どうか許してほしい。
次の瞬間、甲高い音が地下バ道に響き渡った。
「―――ひぎっ!?」
ばしっ、ではなくバシンッ!と服の上からなのに直接皮膚をぶっ叩かれたかのような鮮烈な痛み。
グラスワンダーの張り手が僕の背を強く叩いたのだ。
全力全開の、ウマ娘パワーで繰り出される強烈な張り手の痛みに情けない声を出しながら、僕はその痛みをなんとか堪えようとする。
今の僕は、ラピュタのパズーが浮かべそうな苦悶の表情になっている事だろう。
背を打たれて数秒、痛みの引いてきた身体の背筋を伸ばし大きく息を吐き出す。
死ぬかと思った。レース前に出走取り消しになるところだった。
でも全身に喝が入った。
グラスワンダーは本気で打ち込んでくれた。
こんな時でも手加減をしない彼女には感謝しかない。
本気で叩かれて、肉体が無理やり起こされるような、そんな感覚がある。
「ありがとう、行ってくる」
この痛みはグラスワンダーそのものだ。
僕はこれから一人で走るわけではない。
ファンの期待、仲間の声援を背負って走る。
そして、グラスワンダーの想いも一緒に連れていく。
「トレーナーさん……ご武運を」
力強く放たれた背後の少女の一言に僕は嬉しさを感じ、サムズアップをしながら戦いの場へと消えていく。
見ててくれ、そして一緒に行こう。
そして僕の駆ける姿を見て、感じてくれ。
山々田山能という男が目指した日本一への憧れを。
『20万人の観客が見つめています。東京レース場、日本ダービー。
1万人のウマ娘の中から選ばれた18人、この中から日本一の座に輝くウマ娘は一体誰なのか。
さぁ、これより始まるのはその18人に贈られる日本ダービーのファンファーレ!!』
この作品であなたが気になるウマ娘は?(略、今あの娘どうしてるの?
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