僕自身がウマ娘になることだ   作:バロックス(駄犬

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タイトルなんて飾りなんだよ!内容は基本ギャグです。
今回のチャンミはですね……Aグループ決勝始まる直前に完成したSSグラスちゃんがラスト全てをぶち抜いて中距離初のプラチナゲットです。やはり加速ガチャ、加速ガチャが全てを解決する……!

クリスマスオグリ?チョコブルボン?それはワシが封じ込めておいた。(運が良かっただけです)


今回は時系列的に40話に関連したお話ですね。


42.稲妻は決意する

白を帯びた空の果てが徐々に闇を溶かし始めている。

陽は登り、遮る雲の隙間から照らされた近くの小屋からは朝を迎えたことを告げる鶏鳴が響いた。

 

「はっ、はっ、はっ……」

 

 トレセン学園で飼育されている鶏小屋で愉快なモーニングコールを聞き流しながら、青鹿毛のウマ娘ブラックサンダーは一人早朝ランニングに勤しんでいた。

 しかし、そのペースはかなり遅く、車並のスピードで走るウマ娘でありながらその速度は普通の人間よりも遥かに遅いジョギングのペースだ。

 

 

―――『これより次走が決まるまで、キミは暫くトレーニングを禁止にする』

 

 

 僕のトレーナーである、ミスターXが日本ダービーが終わった次の週のミーティングでそう言ったのを思い出す。

 ダービーウマ娘という称号を手に入れるために出走した日本ダービーで僕は4着と言う結果に終わった。

 

 その後、いつものように高熱を出しては寝込んだわけだがダービーで酷使した僕の身体はミスターXが想定した以上に疲弊していたみたいなのか、急遽身体が回復するまではメニューは禁止されたのであった。

 

 

・・・・・実際に脚に痛みが残っているわけじゃないんだけどな。

 

 

 レース後に動けなくなるくらいに疲弊し、三日の療養するほどの高熱を出すこと以外、普段の僕とは変わらない。

 変わらない、筈なのだが、こうしてランニングしていて僕の身体は少しだけ違和感があった。

 

 

 熱が入らない。

 

 

 端的に言えば、そういう感じだろうか。

 エアシャカール的に言わせれば、「だりぃ」、みたいな、五月病にでもかかってしまったんじゃないなかと疑ってしまうくらいに僕のやる気は低かった。

 

 

 

 「日本一を競う舞台に出て、勝利する」。

 それは僕が学生の時に抱いた望み。

 

 

 人間の頃はどんなに努力しても挑むことすらできなかった、全国世代最強を決める戦いに、ウマ娘になる事でその舞台に登り詰めた。

 嬉しかった。

 楽しかった。

 全身の血が湧きたつような、頭の中がショートするかのような、自らの全てを投げ打っているあの瞬間。

 背後から並び立たんとする他のウマ娘達の足音が僕の背を叩いている時。

 

 僕は、一生このままゴールしなければいいと思っていた。

 あの瞬間をカメラで切り取って、永遠に保存していたいくらいだった。

 それくらい、あの日本ダービーは熱くなれて、幸せになれたレースだった。

 

 

 負けた事に悔しさはあれど、僕の……山々田山能としての心は満たされたのである。

 

 

 だからだろうか、あのダービー以降は日常生活において、走る事において、全てにおいて、以前のような熱が湧いてくる事が無くなったのだ。

 燃え尽き症候群という奴だろうか、普通は勝負の熱を思い出して更なる目標を見つけて練習に打ち込めるはずなんだけど。

 

 

 こうしてランニングしていてもどこか身体に重みを感じながら、気分の晴れない状態でゴール地点に辿り着く。

 朝の個人的なメニューは終わりだ。メニューは禁止されてはいるが怠けない程度にやる事は必要だと思って誰にも見られない朝一に走ってはいるのだが……、

 

 

「効果は薄い、よな」

 

 お忍びでメジロライアンが筋力トレーニングをコーチしてくれる「レッツ・マッスル!!」という筋トレ教室に通っているが、講師・メジロライアンからも『ブラックサンダー!どうしたの?マッスルが足りてないよ!?プロテインとトリササミ上げようか?』と言われたくらいだ。

 

 

 

 バーンアウト(燃え尽き症候群)という言葉がある様に、ある一定のレースを境に調子を戻せず、引退へと追い込まれるウマ娘も多いが、まさかそれに自分がなるとは思いもしなかった。

 

 

 いや、もしかしたら時間の問題だったのかもしれない。

 元々、オリンピック選手になるとか、プロのスポーツ団体に入団するとか、そういう道を目指していたわけではなく、ただ日本一を決める華やかな舞台に出たい、というあまりにも簡素でその場限りの夢を追い駆けていた僕には夢を叶えた先の目標が無かったのだ。

 

 

 日本ダービーと言う山を終えて、目標を失った僕がこうなるのは必然だったのだと思う。

 

 

 ならばどうするか。

 レースをするウマ娘にとって気力の部分が大きく削がれている状態が続くのであれば、僕ことブラックサンダーを待っているのは引退と言う二文字だ。

 

 

「今日って一限は……なんだっけ」

 

 

 ランニングを終え、更衣室のシャワーで軽く汗を流し、髪を乾かし、ブラッシングで整え、トレセン学園の制服に着替えると僕はバッグに入れていたクエン酸入りのスポーツドリンクが入ったペットボトルに口を付ける。

 

 クエン酸特有の酸っぱさが口いっぱいに広がるともともと目が覚めていたのに、脳から直接たたき起こされたようなスッキリさを覚える。これならランニングした後に授業でうっかり寝てしまうという事はない。

 

「ん」

 

 

 全国のウマ娘が集まるトレセン学園は非常に広大な敷地を持つ。

 そしてその校舎も外観から内装まで酷く拘っており、この学園を作る際にとんでもない金がかかっている事は間違いないだろう。

 

 しかし、僕はこの学園の敷地内を全て網羅しているわけではない。

 現に、ウマ娘になる前から随分とこの学園には在籍しているわけだが未だに踏み入れたことのない場所も多く存在する。

 

 

 例えば、二階の教室に向かう為の階段にはいくつものルートがあり通常の階段のものもあるが、校舎裏の玄関から入ると目の前には何故か螺旋階段があったりする。

 シャフトの物語シリーズでヒロインが落ちてきそうな螺旋階段だ。作りこみがなんだか違う、世界が西尾ワールドにここだけ切り替わったかのようである。

 

 

 カツン、カツン、と鉄板を踏みしめていく音が響く。

 始業まではまだ時間がある、焦る必要はないのだ、と僕はゆったりとしたペースで階段を上って教室を目指す。

 運動後にシャワーを浴びて、若干濡れた頭部に開けはなれた窓から入り込んでくる風が当たって心地良い。

 

 

 心身ともにスッキリしていく感覚がある。暫くは授業で寝落ちすることは無いだろうと、そんな事を思っていた時だった。

 

 

 室内、螺旋階段の天井は透明なガラスがある。

 そこから真下に向かって陽の光が後光のように差し込んでいるのだが、それを浴びていた僕の視界にいきなり影が差したのだ。

 

 

「――――」

 

 不意に暗くなって、顔を上方へと向けた僕は口を空けたまま、飛び込んできた光景に目を見開いた。

 天井のガラスの光が重なっていたが、それは確かに人の影だった。

 

 

 目視でも30m程先にあった影は次第にその形を大きくしていく。

 間違いなく、接近して来ていた。というか、もう落ちていると言ってもいい。

 

 

「おっ、おっ……は、はぁっ!?」

 

 

 空から人が落ちてくる。

 そんな天空の城のヒロインのような、物語シリーズのヒロインのような状況に出くわした僕は運動後の覚醒した脳内で最速の判断を下した。

 

 

 

 避けるより正しい判断、だっただろう。

 いや、()()()()()()()()()()()()()

 

 

「お、お前は……スペシャルウィーク!!」

 

 

 何故なら、そのウマ娘の少女……スペシャルウィークの体重は()()()()()()()()()()()()だ。

 

 

 

 ウマ娘である僕でなければ、常人よりも骨格、筋力で優れているブラックサンダーの身体でなければ、受け止められなかっただろうが。

 空から落ちて来たシータを受け止めたパズーのように、スペシャルウィークごと落下しそうになる身体を踏ん張って、なんとか耐える。

 

 

「う、うぅ……」

 

 体力を半分ほど持っていかれるほどの消費をして、スペシャルウィークの顔を覗き込んだ僕は自身の顔をしかめた。

 

 

 酷く、酷く顔色が悪い。

 頬が少しだけ、痩せこけている。

 額に手を当ててみるが、熱を出している様子はない。

 

 

 だが、軽い。

 スペシャルウィークの体重がとても軽いのだ。

 触れただけでウマ娘の体重を言い当てられる僕が危惧するほどに、体重が無いのだ。

 

 

 

 ぎゅるるる……

 

 

 しかし、原因は明確である。

 その制服越しの腹部から唸りをあげている音が空腹状態を示していた。

 だが、いくら大食いのスペシャルウィークであっても、朝や前日のご飯を抜いた程度でこのような状態にはならないはずだ。

 

 

「無理な減量でもしてるのか、スペシャルウィーク……」

 

 

 いくらレースにウェイトという要素が足枷になる事を考えていたとしても、これはやり過ぎだ。

 トレーナーはちゃんと彼女の栄養管理を行っているのだろうか。

 

 

「……あ、あれ、私なんで」

 

「気付いたのか、スペシャルウィーク」

 

 瞳を数度瞬かせて、力の無い声とともに視線が交わった。

 数秒ほど見つめて、相手が僕だと気づいたスペシャルウィークは次にとんでもない事を言うのである。 

 

 

「グラスちゃん、の……トレーナー、さん…?」

 

「!?」

 

「なんで、グラスちゃんのトレーナーさんが、ここ、に?」

 

 力のない声で、スペシャルウィークがそう続ける。

 僕は戸惑う。何故、彼女にはウマ娘ブラックサンダーの名前ではなく、山々田山能の名前を口にしたのか。

 

 

 

・・・・・見えているのか、僕の本当の姿が。いや、いままで学園で僕の姿について言及してきた奴は一人もいないが……幻覚を見ているのか。

 

 

 自身の肉体が一時的に戻った事はない。

 犬夜叉が新月の日だけ人間になるような事もなければ、僕の肉体はいつでもウマ娘のままだ。

 僕はスペシャルウィークが空腹で幻覚を見ているという可能性に懸けた。

 

 

「どうしたんだ、スペシャルウィーク。急に空から落ちてくるとか、お前は物語シリーズのヒロインか?」

 

 

 夢ならば、夢のままで押し通そう。

 

 

 幸い、ここにいるのは僕とスペシャルウィークだけ。

 後で彼女が学園に『グラスワンダーのトレーナーが帰って来た!』と吹聴しても、この現場を見た第三者が居ない限り、その証言に信憑性はない。

 あえて、トレーナーとして僕はスペシャルウィークと接することにした。

 

「あ、朝から頭がぼーっとしてて、私、教室に行こうとしたら……バナナの皮で滑って…」

 

「このご時世にそんなギャグマンガのようなコケ方をしたのかよ!?」 

 

 

 この学園でまさか本当にバナナの皮で滑る奴がいるとは思わなかった。 

 ポイ捨ては本当に良くない、そして僕は今日、彼女が滑る原因となったバナナを捨てた犯人を決して許さないだろう。

 

 

「僕と一緒に良い所に行こうか、スペシャルウィーク」

 

「ど、どこに行くんです、か」

 

 弱り切っているスペシャルウィークは僕の両腕に抱かれたままだ。もはや、抵抗する気も無いようである。

 

 

 今の彼女だったら、きっとされるがままだろう。

 

 

 好都合だ。

 口の端を少しだけ上げると僕はスペシャルウィークを抱いて、階段を上っていく。

 ウマ娘の肉体を手にしただけあって、この程度の階段をウマ娘一人抱いたまま上るなど、僕にとって造作もない。

 

 

 

「素敵な所だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 だから僕は、スペシャルウィークを人気の無い部屋へと連れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 だから僕は、スペシャルウィークを人気の無い部屋へと連れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 だから僕は、スペシャルウィークを人気の無い部屋へと連れ込んだ。

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 身体の弱ったウマ娘が転がり落ちる可能性のある階段に放置するのはとても危険である。

 

 

 そう思って僕が向かった先は、トレセン学園の保健室だった。

 保健室の職員は不在だったためか、鉢合わせることなく、僕はスペシャルウィークに購買で購入したゼリー飲料を飲ませてからベッドに横たわらせた。

 

 

 少しだけ胃の空腹感を満たせた彼女は、今は静かに寝息をたてて眠っている。

 

 

「すぅ……すぅ…」

 

 

 日本の総大将。

 グラスワンダーの最強の宿敵、スペシャルウィーク。

 トゥインクルシリーズを熱狂させた、〝黄金世代〟を築き上げたウマ娘の1人。

 

 

 そんな彼女が、何故ここまで自らを追い込んでいたのかは()()()()()()()()()()

 

 

 だけど、保健室に向かう道中で、

 

 

『グラスちゃんのトレーナーさん、ごめんなさい、私、グラスちゃんの力になれなくて……』

 

『グラスちゃんを助けてあげる事が出来なくて……』

 

『ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……』

 

 

 消え入りそうな声で、何度も謝罪された。

 泣きそうな声で、何度も、何度も。

 

 

 

 

 僕は正直、スペシャルウィーク達の事を憎んでいた。

 〝達〟、というのは、彼女を指導しているトレーナーも含めてだ。

 

 

 グラスワンダーにとってスペシャルウィークはトゥインクルシリーズにおいて、切っても切れない存在だった。

 彼女達も、それを指導していた僕達トレーナーもバチバチになっていて、一時不仲説が上がったほどである。

 

 

 実際のところはグラスワンダーやスペシャルウィークも特に親友としての交流は続いていて、僕達トレーナーも睨み合いはしたけれども年末の飲み会ではサシ飲みとカラオケで夜を明かすくらいの仲であった。

 

 

 お互いを認め合える、ライバルの()()だった。

 

 

 だけど、グラスワンダーがレースで成績を落とし始めるようになった同時期にグラスワンダーとスペシャルウィークがやたらと大食いイベントへ参加をするようになり、それがグラスワンダーを貶めるスペシャルウィーク陣営の作戦だったのではないかと思ったのだ。

 

 

 あれ以来スペシャルウィークのトレーナーとは話をしていなかったし、学園で見かけはしても、今はウマ娘の姿だから声も掛けられないし、何も分からず仕舞なのだ。

 

 

 だけど、さっきのスペシャルウィークの言葉に僕は考えを改めさせられた。

 元々、スペシャルウィークは田舎からきたウマ娘だが、真っすぐで、正直で、レースに対して熱い想いを秘めている。

 そんな想いを持つ彼女がグラスワンダーを乏しめるような事をするとは到底思えないのだ。

 

 

「今季のスペシャルウィークのレースは……まだ勝利ナシ」

 

 それは、今年になってからのスペシャルウィークの戦績。

 以前のような追い上げや力強い走りが見られなくなるほどの不調を窺わせるレースの内容ばかり。

 

 

 この極端な減量と今の不調、そしてグラスワンダーとの一件には大きな関りがある気がしてならなかった。

 

 

 

 ならば、僕はトレーナーとして、一人のウマ娘として、グラスワンダーとスペシャルウィークの交友関係を見守る者として、するべきことは一つである。

 

 

「まずは、データだ……データを集めなくては」

 

 

 この弱体化したスペシャルウィークの現状がどれほどに危険な事を彼女のトレーナーに突きつける必要がある。

 スペシャルウィークの年代のウマ娘の平均体重や練習メニュー、そしてメンタルのケアがいかに足りていないかを把握しなければならない。

 

 

 僕はもう一度、復活したグラスワンダーとスペシャルウィークの最強対決を見たいのだ。

 あの有馬記念のラストのように、トゥインクルシリーズを熱くさせたレースのように。

 

 

 それを望む者の1人なのだ。

 こんな所で落ちてもらっては困る。

 

 

「そのために――――僕は、多くのウマ娘を抱く」

 

 

 

 拳を握りしめ、決意を固め、保健室を後にする。

 ウマ娘ブラックサンダーはその謎を解明すべく、多くのウマ娘を抱く為にトレセン学園の奥地へと向かうのだった。

 

 

「ビワハヤヒデ、お前、今日学園でバナナを食べたりしなかったか?」

 

「どうしたブラックサンダー、たしかに私はよくバナナを食べるがそれはあくまでバナナが理想的な栄養素を豊富に備えているからであって。〝好物だから〟という短絡的な理由ではなく―――」

 

「いいかビワ―――バナナ先輩。間違っても学園内でバナナを食べても、そこら辺に投げ捨てるんじゃないぞ」

 

「待て。何故言い直した。というか、バナナ先輩はやめろ!」

 

「琵琶羽矢秀」

 

「文字も直せ文字も!」

 

 何故かビワハヤヒデはとばっちりを食らった。

 

 

 

 




亀更新で済まない。許して。
GW中に何話か作りたいけど、そろそろ本篇行きたい……でも、あともう一個強烈なの作りたい気持ちでいっぱいです。許して。

この作品であなたが気になるウマ娘は?(略、今あの娘どうしてるの?

  • スペシャルウィーク
  • セイウンスカイ
  • キングヘイロー
  • キタサンブラック(ロリ
  • サトノダイヤモンド(ロリ
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