研修先が埼玉だったこともあり、休日は東京、千葉と渡り歩き人生初の競馬観戦で皐月賞を観戦することが出来ました。ソールオリエンスのラストの追い込みを生で見れただけでも感無量。諭吉が消えようが私の心は満たされたッッ
「ブラックサンダーさん、大丈夫かな」
トレーナー室で今日のトレーニングメニューの整理を行っていたライスシャワーは一人、喧騒の絶えない学園の外の光景を窓から見ては、そう呟いていた。
昼休み直前に始まったゴールドシップの怪放送。
ブラックサンダーとミホノブルボンを捕まえるという鬼ごっこイベントが突如として開始され、温泉旅行券を信じたウマ娘達が学園内で二人を追いかけ回されていた。
きっと、以前に公園で話していた事をずっとブラックサンダーは憶えていたのだろう。
――――僕が、何とかして見せる。
その約束を。
藁にでも縋る弱弱しい自分の願いを叶えるために、ブラックサンダーはミホノブルボンとコンタクトを取ろうとしているのだと思った。
そこにどうして温泉旅行券とゴールドシップが絡んでしまったのかは分からないが。
・・・・ほんとに、ほんとうにもう一度ブルボンさんとお話が出来るかも知れない……!
少しだけ、希望が広がった気がした。
引退するという話をミホノブルボンがしてから、直接どころか、電話でのやり取りも出来ていない。
このまま疎遠になるというのは、嫌だ。そう思ったライスシャワーがこのまま上手くいってほしいとただ願うのである。
だけど、
「うひゃうっ!?」
ポケットからバイブレーションと共にスマホの着信音が鳴る。
思わず素っ頓狂な声をあげてしまったライスシャワーは慌ててスマホを手に取った。
誰からだろうか。
お兄様の方はよくメールや電話で『俺はお兄様だぞ』とワンフレーズだけ送ってきてライスシャワーを困らせる常習犯だ。
お姉様の方は他のチームに所属するウマ娘の勝負服のレプリカを秋葉原で購入してはその日にコスプレ大会を開催してライスシャワーを困らせる常習犯だ。
今日は一体、ダブル常習犯のどっちからだろうとライスシャワーは震えるスマホの画面を見る。
「え……これ…」
思わず、画面を二度見した。
画面のに映し出される着信者の名前は、ミホノブルボンだったからだ。
「え、ええ!?ぶ、ブルボンさん!?え、なんで!?」
驚愕が強すぎてスマホが手の中でファンブルし、床に落としそうになるのを慌てて両手でキャッチし、せっかくの機種変更で購入したスマホが落下するのを阻止する。
ライスシャワーは再度震えるスマホの画面を見て、落ち着いて、呼吸して、表示されている名前がミホノブルボンだという事を再確認した。
・・・・・ほんとに、ブルボンさんだぁ。
徐々に驚きが薄れて、自然と笑みが零れる。
自分が怪我をしてから、どこか声を掛けても反応は薄くなっていた。
次の年になってからは、声を掛けても、電話を試みても無視されて嫌われてしまったのではないかと思ってしまったくらいだ。
せめて、ミホノブルボンと何でもいいから話が出来れば、そんなことを考えていた矢先にこの着信。であれば、この機会を作ってくれたのはやはり、
「ありがとう、ブラックサンダーさん……」
青鹿毛のウマ娘、ブラックサンダーに感謝をしなければならないと、ライスシャワーは思った。
だがブラックサンダーは何故かトレーナーであるお兄様やお姉様が厳重に警戒をしている存在、何かアクションがあった時は必ず自分たちに相談してほしいと言うくらいだ。
そこまでの危険なウマ娘に見えるだろうか、とライスシャワー恩人とも呼べる彼女の扱いを疑問視していた。
自分たちではどうすることも出来なかったミホノブルボンとのコンタクトを形はどうであれ実現させてくれたのは彼女で間違いないのだから。
「よ、よーし……ライス、がんばる」
ここからは自分の番だ。
鳴りやまぬスマホと睨めっこしては、通話ボタンを押すのを少しばかり躊躇いが生じる。
今まで何度も電話や会話をしてきたはずなのに、疎遠気味になっても学園内では何度も見かけていたハズなのに。
何よりも共にレースを走り、競い合い、お互いを目標に定めたライバル同士だったハズなのに。
何と声を掛けたらいいか。
何を話すべきなのか。
聞きたいことは一杯ある筈なのに、いざスマホ越しの先にミホノブルボンがいるのだと知ると、急に言葉で浮かんでこなくなったのだ。
「う~~~~っ~~~う~~~っ!」
逃げるわけにはいかない。
こういう時こそ、根性だ。
まずはボタンを押して、話の内容はそれから考えよう。
ありったけの想いを早口になってもいいから、伝えるんだ。
「もう一度、ブルボンさんと……」
そしてライスシャワーは遂に、スマホの通話ボタンを押した。
〇
ライスシャワーは歩いていた。トレセン学園内の廊下を、ただひたすらに、下を向きながら。
それはさながら生きる気力を失った者の瞳をしており、何かにぶつかってしまえば軽く吹き飛ばされてしまうくらいに揺らめいていた。
―――私は、ライスさんの事が嫌いです。
頭の中では、どうして?という疑問よりもミホノブルボンに言われたこの一言が、この一言だけが壊れたラジオのように再生される。
再生されてはライスシャワーの心が軋み、少しずつ砕けていくような感覚があった。
「あれ?ライスシャワーさん……どうかしたの?」
学園の生徒が声を掛けるも、その声はもはやライスシャワーに届いておらず、心配する言葉に耳を傾ける余裕もないライスシャワーはまるで幽霊のように歩みを進める。
途中で見知った顔に声をかけられたりもしたが同じようにスルーを繰り返して、たどり着いたのはライスシャワーのトレーナーがいる部屋の扉の前であった。
「……」
『嫌い』
なぜここにきたんだろう、ライスシャワーは扉を開けようともせずに思った。
ここに来て、自身のトレーナーにこのことを喋ってから、どうなるというのだろうか。
迷惑じゃないだろうか、ミホノブルボンのように、こんな鈍くさい自分のことをもしかしたら嫌いなのかもしれない。
ライスシャワーは一番信頼できる間柄のトレーナーでさえ、信じられなくなっていた。
いつも暖かく迎えてくれる笑みを浮かべる二人の顔の裏には激しい嫌悪感が隠されているのかもしれないと思うと、この扉を開ける勇気がなかった。
もう、昼休みも終わるし、教室に戻ろう。ライスシャワーがその場を去ろうとした時だった。
閉まっていた扉がゆっくりと動き、一人の男がライスシャワーを見下ろしていた。
「ん?どうしたんだライス、こんなところで」
「----」
こちらを見るのはトレーナーで、ライスシャワーがお兄さまと呼ぶ人物である。
身長が高く、筋骨隆々としていて、それでいて顔は常に不機嫌そうに眼は吊り上がっていて、まるで睨みつける眼差しは見るもの全てを射竦めるものだ。
一般の人やウマ娘が彼を初めて見たのであれば間違いなくその場で道を譲ろうとするし、場合によっては不審者だと通報されることも間違いではない。
だけど。
「ちょうど学園の調理室使ってパンケーキ作ったんだけど、食べてくか?昼ご飯食べてお腹いっぱいだったら包んで持ってってくれてもいいぞ。
ライスシャワーは知っている。
周りから悪人のように扱われる彼が朝から学園の花壇の花たちに水をあげ、道に迷って困っている老人に道を教えたりする心優しい人物なのだと。
担当のウマ娘が何度もレース後にバッシングの雨に晒されたときは身を挺して守ってくれた。
ライスシャワーの意志を尊重し、望むがままの道を進ませてくれた。
今の自分があるのは、この人のお陰なのだと思ってしまうくらい、彼の事を信頼している。
だから、今回もきっと相談すればこのトレーナーは助けてくれるだろう。
故に、
「なんでもないよ、お兄様!」
ライスシャワーはトレーナーに対して今できる、精一杯の笑顔を向けて、そう返した。
それは、単に心配を掛けさせたくなかったという理由だけではない。
もう自分は、トゥインクルシリーズを駆けだし始めた最初の頃の自分ではないのだ。
多くのレース経験を通して、ある程度の自立心は養えているのだ。
いつまでも、トレーナーに対しておんぶされているというのは彼やサブトレーナー、同じチームのメンバーに示しがつかない。
「あ!パンケーキ、ライス欲しいな!今日の練習終わりにターちゃんとソーちゃんにもあげてもいいかな?」
「……ああ、いいぞ。アイツらも喜ぶだろ」
「やったー!ありがとうお兄様……うぁ、いい香り」
手際よくパンケーキを包んだ袋をライスシャワーが受け取ると焼きたての甘い香りが鼻腔をくすぐる。
きっと、とても美味しいに違いないと、自分のこの心の悲しみも吹き飛ばしてくれるだろうと、ライスシャワーは思う。
「じゃあねお兄様、またミーティングの時に!」
―――これでいい、これでいいんだ。
そう自身に言い聞かせて、颯爽とその場を後にしようとした。
「なぁ、ライス……なにか、あったか?」
「……!」
呼び止められたのだ。彼に。
不意を突かれたライスシャワーは彼の言葉を背に受けて足を止める。
だけど、ここで彼に事の真相を明かしては先ほどの決意が全て無駄になる。
ライスシャワーはシラを切る事にした。
「あ、あのね!ライスったら今日の宿題提出予定だったのに寮に忘れちゃって!
慌てて教室に取りに行ったら教室に戻る途中で大きな鳥さんに取られちゃって先生に怒られちゃってね!もうライスったらドジなんだぁ!」
嘘ではない。全て事実だ。
宿題を忘れ、寮から教室に戻る最中に日本では中々お目に掛かれないコンドルが宿題のプリントを掠め取って遥か上空へと消えていった珍事は実際に起こった事である。
だから、ライスシャワーは嘘偽りなく自信を持ってトレーナーに対していい訳が出来るのだ。
「でももう大丈夫だよ!宿題もこんなこともあるのかなって余分にプリント持ってたから授業終わりにすぐ提出できたから。
お兄様はライスのこと心配し過ぎだよ?もうライスは自分のことは自分で出来るんだから!」
「そうか……」
慣れない虚勢とともに胸を張ってそう答えて見せた。
トウカイテイオーのような自信家を演じた。
上手く言いくるめることが出来たに違いないと、ライスシャワーは自分自身の演技力に花丸を付けてあげたい気分であった。
「じゃあライス……一つ聞いていいか」
「……?なに?」
トレーナーは膝を折り、目線をライスシャワーと合わせた。
やけに真剣な表情で、だけど見ているライスシャワーからどこか悲痛な感情が存在していた。
彼は重々しい口を漸く開いて、言う。
「なんでライスは泣いてるんだ」
「え……?」
ライスシャワーはトレーナーに言われて気付いたのだ。自身の頬から伝う何かが制服の一部を濡らしていたことに。
「あ、あれ……ライス、なんで泣いて…」
それは本人の意志とは無関係に留まる事を知らずに流れ続ける悲しみの水滴だった。
拭おうとも、払おうとも、拭こうとも、如何なる処置を施しても止まる事は決して無いタチの悪いもので。
「お、おかっしい、なぁ……らい、すはもう泣かないって、決めたのに……お兄さまに心配、かけないって決めたのに……なん、で…」
溢れ出る感情が抑えきれなかった。
これまで我慢しようとしていた心のダムが決壊したようにライスはただひたすら謝罪の言葉を口にする。
またしても、弱い自分を見せてしまったと思った。ライスシャワーは自らを情けないウマ娘だとも思った。
「我慢するな」
ふとライスシャワーの頬に大きな手が添えられた。
それは溢れ出る涙を遮り、ライスシャワーとトレーナーの視線が交錯する。
トレーナーはきっと、ライスシャワーが悩みを抱えている事に勘付いていたのだろう。
彼もトレーナーだ。ウマ娘のメンタルを表情から察する観察能力は優れているのは知っている。
「で、でも……このままじゃライスのせいでお兄様に迷惑がかかっちゃう!お姉様にだって……ライスはそんなの嫌だよっ!」
きっと、自分が困っている事を、涙を流している理由を聞いてしまったらお兄様とお姉様は死に物狂いで頭を悩ませながら問題の解決に動くだろう。
だが、彼らはもうライスシャワーだけを請け負う新人のトレーナーではない。今は数名の(未デビュー)のウマ娘を受け持ち、指導に明け暮れる中堅のトレーナーなのだ。
これ以上、仕事に支障を来すような事にはなって欲しくなかった。
ライスシャワーは自分のせいで親しい者達が不幸になる事を望んでいなかったのだ。
「俺らは一度も、一度たりとも迷惑だなんて思った事はないぞ?
なにか、あまり聞いてはいけない話の内容があったのはライスシャワーは聞き流す事にした。
「ライス……ウマ娘はベテランになったらトレーナーの元を離れて自立することもある。そうやって海外レースに出走する為に拠点を海外に移すヤツもいるからな。
だけど、ウマ娘・ライスシャワーはな、どんなに時間が経ってもさ、俺の担当ウマ娘なんだ」
「ライスが、走れなくなっても?」
「ああ。俺は永遠にライスのトレーナーだ。そして、永遠のお兄様だ」
だから、と彼は続ける。
「聞かせてくれ。お前の悩みを。涙の
屈託のないその笑顔はあの時と同じだった。
走る事を恐れていたライスシャワーの手を取り、暗い世界から連れ出してくれたあの日と。
普段の強面からは想像できないような笑みに何度自分は救われ、導かれてきたのか。
もう甘えてはいけないのだと思った。
もう頼ってはいけないのだと思った。
自分で解決しなければ、意味が無いのだと思った。
トレーナーの負担になる事はしたくないからだ。
「……ありが、とう。お兄様」
「ああ」
だけど、それも関係なく、トレーナーは「力になる」と言ってくれた。
これほどまでに心強い言葉がこの世にいくつあるだろうか。
ライスシャワーにとって彼の言葉は有名なスポーツ選手、自己啓発本に載っている言葉よりも説得力のある言葉だった。
「お、お兄様……あの、ね?聞いて欲しい事があるの」
涙を拭ってトレーナーに理由を話し始めた頃、ライスシャワーの重苦しかった心は少しだけ軽くなった気がした。
1月あたりから更新が止まってたから約3か月間ブルボンさんはブラックサンダーさんに体育館倉庫のマットの上で押し倒されたままだった。外でグラスちゃんが構えて待ってるよ。
この作品であなたが気になるウマ娘は?(略、今あの娘どうしてるの?
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