ちなみに今年の宝塚記念は珍しくワイドが全頭ぶち当たりましてよ。
ソールオリエンスくん、流石やで...
〜宝塚記念・京都・芝 2200m〜
グランプレース、宝塚記念はトゥインクルシリーズ前期の総決算レース。年末の有馬記念と同様、ファンによる投票によって選ばれたウマ娘が出場できるG1レースの一つ。
また、シニア期のウマ娘とクラシック期のウマ娘がぶつかることもあるレースだが、過去に一度もクラシックのウマ娘がこのレースを制したことはない。
皐月賞、ダービーを制したウマ娘が制した事もないウマ娘がこのレースに、ブラックサンダーもまたミホノブルボンと決着をつけるべく、ファン投票に選ばれていたのであった。
「あぁっ!?前日にミホノブルボンのトレーナー煽ってどうするんだよ」
その控え室、僕こと、ブラックサンダーがそのトレーナーであるミスターXに対して怒号にも似た呆れ声を発したのはレース出走の数十分前のことだった。
聞くところ、京都に前乗りすりる前日にミホノブルボンのトレーナーと会することになったらしく、向こうがやたらとやる気になってしまったらしい。
『煽ったとは人聞きの悪い、私はただ復帰するために努力するライスシャワーの姿をせっかくだから見せただけだよ。ついでに、これから引退するミホノブルボン陣営を少しでも揺さぶれないかと思ってね』
「地雷原踏み荒らしてんじゃねぇか!クラッシュバンディクーでニトロ箱に自分から飛び込んでるようなもんだぞ!」
番外戦術が悪手に回ってるじゃないか、と僕は頭を掻く。
ウマ娘同士のバトルにトレーナーが首を突っ込むのは控えていただきたいものである。
『想像以上の覚悟を決めていた。それほどにミホノブルボン陣営がこの宝塚記念をラストレースに据えるのも分かる気がする……向こうの陣営にとってもこのレースは総仕上げだ。その上で君に聞きたい……勝てるか?』
「なんだよ、ミスターX……前にも言ったとおり、僕は勝負する前に負けることを考えない。どこかの会長様が言ったがレースに絶対なんてものはない」
向こうが進退を賭けてレースをするようにこちらにも引けない理由があるのだ。
相手が誰であろうと、こちらは決して逃げることは許されない。いや、レースでは逃げるんだけども。
『君だけに背負わせはしない』
ミスターXの電子音はそう言った。
『現役最強相手に啖呵を切り、あまつさえ世間さえも敵に回した君にかかるうプレッシャーは相当なものだろう。君が身体に負担を感じていなくても、精神は別物だ。
ならば、トレーナーはその負担を軽くする為には動くのは当然。番外戦術だってそうだ。トレーナーの腹の探り合いや、記者達に追い切りの誤情報を与えて、ブラフをかます事だって厭わない』
「……バレてる奴らにはバレているだろうけどな」
宝塚記念の公開追い切りで、ミスターXが僕に出した指示は定められた区間を決められたラップで走り切ること。
序盤を早めに、終盤を緩ませて、メディアや他の陣営にこちらの調子を誤認識させるもの。
『観客の期待を裏切ることになるかもしれないが』
「勝ち負けが分からないからレースってのは面白くなるんだ。それにジャイアントキリングできた時が観客も上がるぞミスターX」
上向きではない、下でもないがと言うのをモットーに。調子が下のような……と相手が思ってくれればラッキー。
よくある、マークを上手く外すためのブラフ作戦だ。
『皐月賞は距離延長による僅差の2着、日本ダービーはスタミナ切れでの4着と2000m以上の距離にはまだ安定感がないことはまだ拭いきれていない。そして君はダービーの後に気を失うほどに消耗している。あれが美味しいブラフに化けてくれることを祈ろう』
「色々と手の込んだことやらせてくれたな」
あたかも、日本ダービーの疲れがまだ残っているかのような演出をする必要があった。
追い切り後の息遣いや、記者に見られる前に顔に霧吹きをして発汗しているかのように見せたりしたものだ。
名だたるG1に出ているウマ娘達の何人かは釣れるだろう。
まるでセイウンスカイになった気分だ。これからはブラフをかますピエロウマ娘を目指すか。今度ナカヤマフェスタやセイウンスカイに助言してもらおう。
正々堂々と戦ってください、とグラスワンダーには怒られそうだが。
「コート、取ってくれよ」
『ああ』
出走の時間が差し迫った事もあり、ミスターXへ彼の隣に置かれたハンガーラックに掛けられている黒の勝負服のコートを要求する。
ハンガーラックを覆う程の大きな手が器用にも持ち手部分を摘むと繊細な動作で持ち上げて、僕に上着が引き渡される。
『京都の外回りは先行勢が有利だ。逃げはミホノブルボンと3番のカラミティチェスで3人、後ろ脚質に不利はあるが油断はするな。1枠のナリタタイシンにも注意しろ』
またしても外枠、5枠10番と追いやられた。ポジショニングが重要とされるこのレースで枠順が外を引いてしまうのは神からの試練か。しれっとミホノブルボンは3番にいるし。綺麗に内枠決めるのは天運を掴んでいるに違いない。
『ハナを取れればベスト、2、3番手で付けれれば勝負になる。君のイナズマスタートを見せてやれ』
無茶を言う。
まるでスタートテクニックだけなら、他の重賞ウマ娘に引けを取らないと言いたげな。
お前の持ち味を存分に振るって来いっと激励されるような言葉に少しだけ自信がつく。他のトレーナーに啖呵を切ったこの男もトレーナーとしてウマ娘である僕と同じリスクを背負い込もうとしているのだろう。粋というか、なんというか、意外にもウマ娘側に歩み寄ろうとする覚悟をしっかり持っていることに驚きだ。
ああ、そうだとも。勿論、スタートを譲るつもりはない。
「勝ったら焼肉だ。学園でナリタブラインに許可出してもらって焼肉パーティと行こうぜ。さりげなく
『最高級の京都姫牛を予約しよう』
「言ったな、もう取り下げんじゃねぇぞミスターX」
黒のコートを受け取り、着こなした僕はそんなセリフを吐いては控え室を後に地下バ道へと向かって行った。
ウマ娘メインストーリー、新しいのが更新されてましたよ。いいですね、今後の展開が楽しみで脳味噌が膨らむ前のポップコーンみたいな感じです。
この作品であなたが気になるウマ娘は?(略、今あの娘どうしてるの?
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