鉄製ゲートが開いた瞬間、14頭のウマ娘が一斉に飛び出しのを合図に、宝塚記念は始まった。
『ゲートが開き、各ウマ娘が走り出しました。
先手を打って前に行きますのは2番、ミホノブルボン。今日のレースがラストランーーさぁ、ここで!?10番ブラックサンダーも前に行きました!外枠10番ブラックサンダーが好スタートから飛ばしてミホノブルボンと並ぼうと言う勢い!ミホノブルボンの隣にいた3番カラミティチェスはブラックサンダーの後ろに着きました。
ナリタタイシンは後方から3番手ーー京都レース場、最初のコーナーまで397mありますが隊列は決まりつつあります。ブラックサンダー、ミホノブルボンの後ろに入り、それを追うカラミティチェス、更にその集団を追う11人!少し長めの隊列か?』
悪くないスタートだったと自分でも思う。スタート直後の数歩で加速をモノにした僕は一気に内に切り込みをかけることに成功した。
不利な枠番を覆す策はしっかりと機能し、トップスタートを決めたミホノブルボンと並走をしてみたものの。
(コイツ……ブレない)
一度はそのままハナを奪ってやろうとしたがミホノブルボンがこちらを一瞥したことにより思い留まった。
その視線を向けたのは一瞬のことであったが、それはまるで「抜きたければ抜けばいい』と言っているようにも見えた。
彼女はきっと揺さぶりを序盤でかけてもペースを乱す事はない、だろうと。
無理に仕掛けるのは得策ではない。ならば、それは最後の時までに温存しておくべきだ。
後ろにスペースがまだ空いていたこととが幸いし、すんなりポジションを入れ替えることに成功する。
後ろを見て隊列を確認したが、やや縦に長い。序盤はコーナーまでの直線が長く、オマケにほとんど平坦なためにスピードが出やすい。
逃げ先行が3人いるともなれば、こうなることは必然か。だが飛ばし過ぎたペースではない。先頭を仕切るミホノブルボンによって管理された絶妙なペース配分だ。
ならば、ミホノブルボンのペースについていくのが妥当だろう。彼女はこのレースを本気で勝ちに来ている。そのためのペースでこのスタートを切ったはずだ。
僕はそのペースに乗っかることでミホノブルボンの仕掛けどころに併せてスパートをかけることが出来る。完全受身な作戦この上ないことだが、他人が敷いたレールを走る事ほど、楽なものはないのである。体力温存という意味でだ。
「おっとぉ?」
真後ろについてなるべく体力を温存へと舵を切った僕は隣にいた同じウマ娘、カラミティチェスが僕の真横をズイズイと通り過ぎていくのを見た。
序盤でバナを挫かれたカラミティチェスは軽やかなペーストは言い難い力の入れた加速でミホノブルボンの真横をも通り過ぎると、なんとそのままミホノブルボンの前へと躍り出た。
『最初のコーナーに入る直前、カラミティチェスカラミティチェスが動いた!まるでレースの主導権を握らんとばかりの前進!前走はダイヤモンドステークスで入着する実力あるウマ娘です。スタミナを活かして揺さぶりを掛けていきます!』
(3番の動きは……揺さぶりか?そういえば、クラシックの菊花賞でミホノブルボンは序盤でハナを取りきれずにいつもの自分のペースで走れてなかった。
それがきっかけは分からないが、最終直線ではライスシャワーとマチカネタンホイザに差されている。今回のはその菊花賞の再現か)
やはりG1レースとなれば、相手の痛いところを突くためになんでもやって来る。おっかないところだなーと思ったところで、今のミホノブルボンに通用しているか怪しいが。
後ろのウマ娘達も冷静だ。誰1人として釣られている様子がない。
普通はペースが遅いから先に仕掛けたウマ娘の方に追っていこうか維持するか迷うはずだが、罠や誘いを一瞬で見抜いた上で動かない彼女達を見ると、ますますG1レースを走ってるんだなと実感が湧く。コイツらウマ娘版人造人間サイコショッカーかよ。
なんだかんだ、みんなしてミホノブルボンを倒したいんだな、と集中してマークされるミホノブルボンに同情してしまう。もちろん、僕も彼女をマークする1人なのだが。
⚪︎
同時刻、宇宙空間スペースシャトル、『黄金旅程』にて。
「あん?宝塚記念の勝ち筋ぃ?オイオイ、トレーナーよぉそんな豆腐をカツオでしばいたらアボガドサラダだが立つみてぇな質問すんじゃねぇよ」
スペースシャトル船内で赤い宇宙服に身を包んだ長身のウマ娘、ゴールドシップは無重力空間で座禅を組みながら宝塚記念が映し出されているモニターを1人の男とともに見つめていた。
「そんなもん、第3コーナー手前からのロングスパートに決まってんだろ!ゴルシちゃんの華麗なる戦法で菊花賞を勝ったの忘れちまったのかぁ!?こりゃ重罪だな。あとでトレーナーの食べる宇宙食、スパムーチョ味からガラムマサラ味に変更してやるぜ」
「あんな戦法で勝てるのはお前ぐらいだろゴルシ。っていうかなんだガラムマサラ味って。俺普通にメキシカンマルゲリータ味が食いたいんだけど」
「うえ、オメェあんなゲテモノ味が好みなのかよ、もしかしてアタシのトレーナー味覚センスなさすぎ?」
「お前にだけは言われたくはなかった。と言うか、なんで俺たち宇宙空間で宝塚記念見てんの?なんで宇宙に来れたの?訓練とかどうした?NASAはどうした?」
「知らねえのかよトレーナー、ウマ娘は正式にNASAとスペシャルコラボしたんだぜ?ケンタッキーとだってコラボした。
今じゃ日本から裏側のブラジルまで世界共通で知れ渡ってることだろうが!!アンタ言ったよな!?アタシと宇宙で宝塚記念見たいって!青く輝く地球を見下ろしながら、カルパス摘んでカルピス片手に実況すんだって!!」
言った覚えはない。少なくともゴールドシップのトレーナーはそう思った。
突如として例の如く麻袋に包まれたトレーナーはあれよあれよと車で拉致られ、気づけば宇宙服を着せられた状態でゴールドシップと一緒に地球圏を脱出していたことには驚いたが、相手がゴールドシップなので今更感がある。
「逃げが3人もいるこのレース、通常ならもっと隊列が長くなってもおかしくない。そうはならないのは、ミホノブルボン以降のウマ娘が距離を離されまいと前目に動いていっているからだ」
急にゴールドシップが真面目顔になってスルメを齧り始めた。真顔でそれはやめろ。トレーナーはそう思った。
「京都2200mは内側、前目が残り易い。
後ろ脚質のやつほど後半に距離が開きすぎると届かない。大外なら加速のついた3コーナー後の下り坂で遠心力で外ラチまで吹っ飛ばされる。そうなったら目も当てられねぇ」
そうだ。だからこそ、無理をしてでも集団は前目につこうとする。
だが無理をすればペースが上がって4.5mの淀の坂を登り切った最後にスパートをかける体力が残らない。一瞬のスピードの切れ味よりも、最高スピードをいかに長く持続することができるかがこのレースの肝だ。
その点、ゴールドシップはおかしい、というか規格に当てはまらないウマ娘であった。重馬場皐月賞を内進路に構えて最後まで駆け抜け、坂を登る前から超ロングスパートをかけて制した菊花賞とか。
「そして、
まぁこのままヤツが黙っているわけないってこった。最後までわからねぇぜコイツぁ」
「やだ、俺の担当ウマ娘真面目になるとイケメンすぎ!?これ終わったらどうする?ゴルシ、サモンライドやる?」
「いいぜ、イベント限定フィギアとか持ってからラスボス倒す動画あげようぜ、ゴルシちゃんのウマチューブ、宇宙進出だぜ!」
ブチブチ、とスルメを噛みちぎるゴールドシップを他所にレース画面をみるトレーナーは自らのスマホ画面に生徒会エアグルーヴから『ゴールドシップのやつはどこにいる!?私の花壇の土によっちゃんイカを突き刺した責任を取らせる!!今すぐ出せ!』というメッセージに気づくのはこの数時間後のことであった。
ゴルシはいつも通りの運転なんよ。ちなみにサモンライドは某クソゲーyoutuberがレビューするほどのクゾゲーでして、ゲームに使うフィギュアはイベント限定だと数万の値で取引されてたらしいですなぁ。
俺たちのステラヴェローチェくんが天皇賞秋で走りますよ!買うしかありませんなぁ
この作品であなたが気になるウマ娘は?(略、今あの娘どうしてるの?
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